【BARKS編集部レビュー】音茶楽Flat4シリーズ、粋と楓と玄…どれを選べばいい?

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▲左がカスタム(イヤモニ)、右がインナーイヤー型のゼンハイザーのMX 985。

イヤホンを使うときは、カスタム(イヤモニ)を使用することが多いのだけど、一方で最近は開放型のインナーイヤーイヤホンがツボだったりもする。いわゆるiPod付属の白いイヤホンと同じような構造なので、遮音性はゼロ、音漏れもするという昨今のトレンドとは真逆のレガシーな設計なのだけど、何より閉塞感のないサウンドが理屈抜きに心地よい。

◆音茶楽Flat4シリーズ画像

耳穴へちょこんと掛けているだけなので使用上の圧迫感もないし、耳にしているのも忘れるくらいの自然さで開放感あふれる音を聞かせてくれる。ここ最近のヘビロテはもっぱらゼンハイザーのMX 985だ。物足りない帯域もなくイケイケで元気な音を叩き出す貴重なインナーイヤー型ということで、これからの季節、暑い夏の室内使用にもうってつけなのだ。

いきなり的外れな話をしてしまったけれど、カナル型の長所を徹底追及したカスタムと、開放感が最大の魅力となるインナーイヤー型という両者は、いわば両極に位置する特性を持っており、両者のいいところを取り込んだ究極キメラのようなハイブリッドな存在は夢のまた夢。そもそも100m走選手とマラソン・ランナーが両立できないように、求める骨格が両者で全く違うからだ。

しかしながら、時代はいつもサプライズの繰り返し。そもそも無理だと思われていたことが現実となり、エポックメイクの鐘が鳴り響く。ほら、人間が想像できることって全て実現可能だっていうじゃない?

▲音茶楽Flat4シリーズの現在までに発表されている全ファミリー。左が、第一弾モデルでありシリーズの基本形となる「粋」、中央が「粋」をブラッシュアップさせた最新作の「玄」、右が天然の楓木材をキャビネットに起用し漆フィニッシュを施した、日本の美学と匠の結晶「楓」。

▲左から、「粋」「玄」「楓」。「粋」と「玄」は素材がアルミという共通点を持ち、「玄」と「楓」は筐体サイズが共通。高い解像度にどえらい周波数特性、異常なほどの空間表現力は、3モデルで共通した最大の特徴と魅力である。

▲Flat4シリーズのベーシックモデル「粋」。29,800円(税込)という値下げは朗報だ。これを機に、是非ともFlat4シリーズの現実離れした音の良さを体感いただきたい。

そんなハイブリッドキメラ的究極イヤホンの誕生に最も近い位置にいるのが、この音茶楽のFlat4シリーズだ。なぜか…、その詳細はFlat4-粋、及びFlat4-楓の過去レビュー記事(下記リンク)を参照いただくとして、多くの特許機構のもと画期的な構造を搭載することで“聴覚に喜びをもたらす”という、これまで誰も踏み込まなかった角度から革新的なサウンドを生み出してきているのがFlat4である。

2012年5月に第1号機Flat4-粋が登場し、その年の11月には天然素材にこだわったFlat4-楓が完成、そして2013年5月には、Flat4-玄というFlat4-粋の上位機種が登場した。これはFlat4-粋に残されていたという微細な機械振動を制振することによって、それによる付帯音を抑えたという最新モデルだ。そして先日、音茶楽創業3周年を記念してFlat4-粋が33,000円(税込)から29,800円(税込)に値下げされたことが発表となった。日本設計/日本制作というメイド・イン・ジャパンにこだわるFlat4シリーズだけに、円安のあおりを受け多くの海外製オーディオ商品が値上げを断行するのを横目に見ながらの粋な計らいだ。そう、まさしく粋である。

基準と言えるFlat4-粋が29,800円(税込)、そのブラッシュアップ機Flat4-玄が42,000円(税込)、そしてキャビネットに楓を起用し漆塗りを施したFlat4-楓が71,400円(税込)と、Flat4ファミリーも3モデルに拡大、どれを選べばいいか悩ましい状況にもなってきた。

最も高価であるFlat4-楓は、トーンの艶やかさと滑らかさが突き抜けており、完成度が別次元だ。サウンドの図太さ・厚さ・深みが一枚上手で、中低域の質感が明らかに上質になっている。3モデルの中で最もダイナミックな響きを持ち、低域の温かさと粒立ちの細やかさ、それでいてキレの良いタイトな低音が何より魅力だ。結果、琴線を震わせる色気や艶めかしさをスポイルすることなく表現してくれる感じで、楽曲によってはエロいグルーブだったり、タイトでクールな美しいビートだったり…と、アーティストが表現したかったであろうそのニュアンスをしっかり保持して提供してくれる。楓の最大の魅力はこの表現力の豊かさにある。とにかく“気持ちいい”という表現がぴったりだ。

一方、最新作のFlat4-玄は、スッキリした清楚な音で雑味がなく、美味しいダシで丁寧に作ったおすましのような上品なトーンとなる。タイトで無駄のない響きがクリーンな心地よさを生み出している感覚だ。ただ、このニュアンスもあくまで楓と比較した場合の微細な違いに焦点を当てたディテールの話であって、一般的なカナル型イヤホンと比較した場合は、存分な熱量と全帯域にわたって強い主張で前に出てくるサウンドで、他を圧倒するダイナミックでワイルドなものであることは何も変わらない。

Flat4-玄は、第1号機のFlat4-粋に制振効果を施したモデルだが、粋と比べるとサウンドに大きな影響を与えるであろうセンターキャビネットの設計自体にも大きな変更がかけられている。粋よりも一回り太くなった楓と同サイズになっており、その分粋よりも肉厚なアルミが使われている。そういう意味では、粋の改良版というよりも、楓の素材を天然木材からアルミに変更し共振塗料を貼付した「楓のバリエーション・モデル」と捉えたほうが分かりやすい。

さて、6月1日から29,800円(税込)に値下げが断行されたFlat4-粋だが、今もなお相変わらず良い音を奏でてくれる。とにかく明るい音で、玄と比較することで気付かされる高域のざわざわした部分も、若々しくはつらつに響かせる魅力的な要素であり、マイナスポイントには聞こえない。いわばこの個性はストレート・コーヒーの産地による味の違いにも似て、全ては好みが優先するというのが結論だ。ちなみに個人的感覚で言えば、楓はブルーマウンテン、玄はモカ、粋はキリマンジャロという感じだろうか。筐体をカーボンで作ったらマンデリンのような音が、セラミックで作ったらグァテマラのような、スティールで作ったらブラジルのような…そんな妄想も広がったりして。

Flat4シリーズ粋と楓と玄…、価格の違いはそのままサウンドの質感の演出にきっちり反映している。コストは指数関数的に増加するので、高価格帯になればなるほど微細な効果向上に多大なコストがかかってしまう。その費用対効果をどうとらえるかは個人の価値観次第だけど、目線を変えてみると、正統進化を続けているFlat4ファミリーのこれまでの足跡は、アーティストのアルバム・リリースのような印象を受ける。

例えが変なのだけど、Flat4-粋はアーティストの1stアルバムのような作品なのだ。その後経験を積みスキルも上がって素晴らしい作品を生み出していくわけだけど、やはり1stアルバムには、そこにしかない「才能の原点」「がむしゃらなエネルギー」「蒼々しくはつらつとした瑞々しさ」などが渦巻いていたりするもの。粋にも、そのようなFlat4の原点として求引された渦巻くエネルギーのような胸熱なサウンドがする。

だれにも止められない勢いで碧く響くFlat4-粋のサウンドを29,800円(税込)で体験し、そこから楓や玄という円熟のサウンドにステップアップする…そんな体験が、音茶楽を存分に堪能する正攻法な気がする。

text by BARKS編集長 烏丸

●Flat4-粋(SUI) 29,800円(税込)
●Flat4-玄(KURO) 42,000円(税込)
●Flat4-楓(KAEDE) 71,400円(税込)

◆音茶楽Flat4オフィシャルサイト
◆音茶楽Flat4販売サイト(フジヤエービック オンラインショップ)
■音茶楽Flat4-粋レビュー記事(2012-05-20)
■音茶楽Flat4-楓レビュー記事(2012-12-03)

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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