【BARKS編集部レビュー】CW-L51aが示すネクストステージ「カナルワークスがやりよった」

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カナルワークスが2013年5月7日に発表した新たな2ドライバーモデルCW-L12のサウンドがとても素晴らしかったので、そのレビュー記事を執筆するつもり…でいたのだけれど、つるっと横から滑り込んできた同時発表のCW-L51aに度肝を抜かれてしまい、え?え?とキョドッている状態である。とにもかくにもCW-L51aのご紹介だ。

◆CW-L51a画像

▲カナルワークスの最新作でありフラッグシップに当たるCW-L51a。今回はシンプルなブラックのフェイスプレートで制作、シェル・カラーはスモーク。抵抗を交換することで低域の量を調整できるPSTSも搭載したため、小さな抵抗がフェイスプレートに鎮座している。

▲ケーブルとコネクタ部分が一般的なサイズ/形状となったことで、全体的にもスマートとなり、シェルの大きさもコンパクトとなった。フィット感やシェルの綺麗さは相変わらずの高品質さ。日本人職人らしいきめ細かで丁寧な仕事っぷりが良く分かる。

▲左がCW-L51、右が新登場のCW-L51a。型番上は「a」の有無だけだが、そのサウンドは全く違うもの。CW-L51はシャープで冷静、CW-L51aはダイナミックでエネルギッシュだ。

▲左がCW-L51a、右がStage93のStage 6。両者どちらも非常に高い完成度を誇る名機。

▲付属品は、ペリカンハードケース、ソフトケース、クリーニングツール、クリーニングクロス、抵抗説明書、抵抗&ケース。

▲PSTSのオプションを選択すると交換用の抵抗が別途11種類、標準搭載されている抵抗を含め全12パーツが付属してくる。同梱する抵抗値のカラーコード読み方指南書を片手に、小さな袋に仕分けした。低域の量を簡単にコントロールできるので気分や音楽によって気軽に交換するのも楽しい。長い足がしっかりと刺さっているので、ポロリと落ちてしまうような心配はなく、一度もトラブルは発生していない。

CW-L51aは2012年5月に発表されたCW-L51のリニューアル版として登場したもので、型番も小文字のaが付け加えられただけだったので、うかつにもノーチェック状態にあった。型番変化も極小だし、たいした違いはないだろうと根拠ない憶測でスルーしてしまったのがそもそもの過ちだった。

もちろん旧CW-51も素晴らしいサウンドを持っている。キリッと引き締まったトーンを持ち、繊細さとダイナミックさを兼ね備えた超絶クリアな色彩を描き出すモデルだ。シングルドライバーさながらのシャープさをキープしながら、広い周波数帯域で余裕のダイナミックレンジを持つという、マルチドライバーのお手本のような理想的なサウンドキャンパスを描き出す。湿度の低い爽やかなサウンドの筆頭モデルとして、これはこれで完成されたサウンドに聞こえる。

一方のCW-L51aは、性格を異にしている。所有する他のどのカスタムよりもパワフルだが、鈍重な印象は皆無。重厚ながらスピーディで制動がぐっと効いている。強烈な低域の再生を見せながらも、中域や高域の表現を全く邪魔しないという突き抜けた完成度で、高域もきれいに抜けてくる。サウンドにはえも言われぬ甘さが漂い、この滑らかな心地よさを知ると、もうCW-L51aから離れられない。引き締まってタイトなのに甘いサウンドなんて、なかなか味わうことのできない極上の風味だ。この甘さは低域から中域あたりの特性にあるような気もするのだけれど、曇りやシャープさの欠如などを一切発生させない点も何より素晴らしい。

ドライバー構成や、抵抗をフェイスプレート上で交換可能とするPSTS(パーソナルサウンドチューニングシステム)のオプションが選べる点など、旧CW-L51とのスペック上の共通ポイントは多いが、そのサウンドは全く別物と捉えたほうがいい。

PSTSは、付属する抵抗をユーザーが抜き差しし交換することで低域の量をコントロールできるという、カナルワークスの独自機構だが、今回このPSTSも素晴らしい進化を遂げていた。旧CW-L51では抵抗値を変えると低域量が変化すると同時に、中高音もそれに連動して変化する動きを見せる。抵抗ひとつ変えるだけでキャラそのものが変わっていく感覚で、それはそれで多くの楽しみを提供してくれるものの、チューニングの難しさに直面する場面でもあり、低域と高域のトレードオフから逃げられない呪縛に苛まれることとなる。

その点CW-L51aのPSTSは動作が全く違う。今回は文字通り低域の量がきっちり変化し、他の帯域への影響をほとんど与えない。その量感の増減は、まさにオーディオのプリアンプでBASSつまみを上げ下げしたときのような自然なもので、まさに好みで設定すればいいというトーン・コントロールの役目を果たす。デフォルトでは33Ωの抵抗がセットされているが、この状態でも低域は十分に強く、低音を売りにする数多のイヤホンも裸足で逃げ出すほどの量感を有している。

おそらく一般的な感覚であれば、デフォルト33Ωで充分な低域量が出ているだろう。だがしかし、ドンシャリ大好き低域バカの私としては、3.3Ωの抵抗に差し替え+10dbの低域量を楽しむのも大アリだ。このセッティングだと、ベードラの生音を間近で肌で受け取る時のような、どふんと風を感じる極悪な低域が体感できる。このあたりの重低域は実は危険水域で、ヘタをすると風圧は感じるものの段ボールを叩いたような締まりのないぼあぼあなトーンに変貌してしまうことも少なくないのだけれど、CW-L51aはあくまで美音を崩さない。スピード感のあるタイトで引き締まった重低音に、生々しい空気感を感じさせてくれる振動のようなトーンを付加する感覚で、ハイブリッドを含めこんな重厚な低域を叩き出すカスタムIEMを私は他に知らない。簡単に例えれば、ダイナミック・ドライバーのような艶めかしさとKnowles CI22955の叩き出すキレの良いタイトさを2:8でブランドし、制動高くハイファイに再生したようなイメージであろうか。

CW-L51aの完成度は突き抜けている。結果、私にとってCW-L51aは、オーダーメイドのスーツのようにパーフェクトな使い心地だ。私が知っている範囲で最もサウンドが似ているのは、Stage93のStage 6だった。どちらも甲乙つけがたい素晴らしいサウンドで両者のサウンドは非常に近しいと思うのだけれど、やはりここはPSTSを有している分、CW-L51aの方がサウンドバリエーションのキャパシティが広く一歩上手というところだ。

サウンドの素晴らしさに翻弄され、もうひとつ大事なポイントを忘れるところだった。2013年6月という今回のオーダーのタイミングから、ケーブルの仕様とともにコネクター形状が変更となり、UEやWestoneといったデファクトスタンダードとして流通しているケーブル仕様と共通化されている。ケーブルもクリアとブラック、127cmと162cmのバリエーションが用意されており、質感も上々、不満点は全く見当たらない。コネクタもフラットと埋め込みのどちらも指定可能であり、これらの変更により他ブランドのケーブルとの共用も可能となった。

これまでのカナルワークスの製品は、ケーブルやコネクターが大きく太い質実剛健な作りで高品質ではあったものの、サイズの問題からシェルの大きさ(厚さ)が大きくなってしまう傾向にあった。ブランド・オリジナルのスペックのため他社との流用も不可能で、サードパーティのケーブルでリケーブルを楽しむといったことも叶わなかったが、これからは、市場に出回っている多くのケーブルでリケーブルすることもできるというわけだ。

また、今作からはシェル自体もコンパクトになっているのが特筆ポイントで、フェイスプレート自体も薄くなりエッジも以前より丸く柔らかい曲線で仕上げられている。これまでのカナルワークスのカスタムIEMには、ゴツンと大ぶりなイメージがあったけれど、その印象はもはや過去のものとなった。

新たな仕様を引っ下げて出来上がったCW-L51aに隙はなかった。ごく個人的には「カナルワークスついにやりよった」と諸手を上げる完成度である。存分に広い周波数帯域で全域高解像度、分解能も高いままにいて、屈託のない勢いとノリノリなグルーブで身体を動かしてしまうリスニング機としての表現力が何より素晴らしい。

遊びも含めて次に期待したいことと言えば、しっかりとした強い低域を固定したうえで、高域の強さをコントロールできるPSTSを搭載したバリエーション・モデルがあったら楽しいかな。

text by BARKS編集長 烏丸

●カナルワークス CW-L51a
3way/6driver Custom In-Ear Monitor
109,800円(税込)
※PSTS仕様は+5,000円(税込)
ドライバー:バランスドアーマチュア方式(高域×2.中・低域×2.低域×2)
インピーダンス:20Ω
感度:109dB
ケーブル長:127cm
プラグ:ステレオミニプラグ
付属品:ハードケース、ソフトケース、ワックスクリーニングツール、クリーニングクロス

◆カナルワークス CW-L51aオフィシャルサイト
◆カナルワークス CW-L51aオフィシャル販売サイト
◆カナルワークス CW-L51aPSTSオフィシャル販売サイト

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆EXS X10(2013-06-24)
◆音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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