【ライブレポート】vistlip、最高傑作アルバム『CHRONUS』の世界をみごと体現! 渋谷公会堂ツアーファイナル

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vistlip史上、最も完成度の高いサード・フル・アルバム『CHRONUS』を携えてのワンマンツアー<sequence of chronograph>のファイナル公演が7月31日(水)に渋谷公会堂で行なわれた。

◆vistlip<sequence of chronograph>ファイナル公演~拡大画像~

7月7日にZepp Tokyoで行なわれた結成6周年のアニヴァーサリーライヴのチケットはソールドアウト。着実にステップアップしてきたvistlipの強みは透明感と色気のあるヴォーカル、ジャンルを超えていくメロディ、それでいてロックバンドのエッジを持っているところだ。それらが高い次元で昇華されたのが最新アルバム『CHRONUS』である。

アルバムのタイトルは“時間を司る神”という意味。

スクリーンに作品のテーマを象徴する数々の時計が映し出され、1曲目に収録されている幻想的なインスト「First DIMENTION[Instrumental]」が流れる中、メンバーが渋谷公会堂のステージに登場。オープニング曲は切ないメロディとスケール感のあるサウンドが見事に溶け合うミドルチューン「TELESCOPE CYLINDER」だ。夜明け、夕暮れへと色を変えていく空の映像が曲の世界観を増幅させ、ヴォーカルや奏でられる音のひとつひとつが喉が乾いたときの水のように身体の中にしみわたっていく心地いい感覚を覚える。曲が終わった瞬間、会場に拍手と歓声が響きわたった。

「さあ、東京! ファイナルだぞ!」

智が煽り、アルバムの曲がたて続けに演奏される。智のファルセットが活きる開放感と浮遊感のある「WEB」。みんながタオルを振って盛り上がる「RESET CIRCLE」ではTohyaがキレのいいドラムを叩き、瑠伊がフロントに出てきてベースをかき鳴らし、Yuhがドラム台にのぼってギターを弾き、海が小気味いいカッティングでテンションを上げながらラップするなど見せ場満載。5人全員に華があるのも彼らの魅力だ。

「楽しんでますか? ついにファイナルでございます。すげえいいツアーでこれだけ短いと(全6箇所)、寂しいって思ったりしますよ。そう思いませんか?」と智が海に振り、「寂しいと思うのって、どんなときなの?」と突っ込むと「好きなマンガが終わったときとか」という答えが返ってきて、会場は笑いに包まれる。いかにもMCタイムという感じではなく、自然と会話が展開していき、メンバーそれぞれの素のおもしろさが伝わってくるのはいつものvistlip。

「一生懸命、考えたセトリも徐々になじんできたので、いちばん盛り上がるライヴにしましょう。では、アルバムの中でいちばん重要な位置だと思った曲を聴いてください」

そんな言葉に続いて演奏されたのは、限りある時間の中で“悔いなく行きて行くんだ”と歌う「CHIMERA」。色鮮やかな光が客席を包み、ドラム、ベース、2本のギターが緻密に絡みあうアンサンブルに耳を奪われる。突き刺すような痛みを伴う別れと旅立ちのときを歌った名曲「Dr.Teddy」では、スクリーンにつぎはぎだらけのクマのぬいぐるみのアニメーション映像と歌詞が映し出され、説得力あふれるヴォーカルと演奏に惜しみない拍手と歓声が送られた。オーディエンスの心をわしづかみにした後はポップなメロディとシニカルな歌詞、スピード感と爽快感のあるサウンドが絶妙なバランスで一体となった「Prey Shadow」で会場の温度を上げていく。

ライヴでおなじみのナンバーも盛りこまれてはいるが、本編のほとんどの曲が新しいアルバムの曲で構成されている。にも関わらず、vistlipワールドにアッという間にみんなを連れていってしまったのは彼らがバンドとしてパワーアップしている何よりもの証拠だろう。

ツアーを振り返ったエピソードでは見た目とMCのギャップが大きいため、瑠伊が関係者に「今後はしゃべるな」と言われたという話も飛び出し、Tohyaに「ださカッコいい」と突っ込まれながらも、「行けるか!? 渋公!!」と煽るレアな場面も。「B」から始まった後半戦からは時間のスピードがますます早く感じるような熱い空気が会場に充満し、本編ラスト「Recipe」ではゴールドとシルバーのテープが渋谷公会堂に降り注いだ。

大歓声に迎えられたアンコール。

アッパーな曲で攻めるのかと思いきや、何も言わないまま、演奏された曲はいつか訪れる“終り”や“別れ”を見据えながら“絶望は宿っているんだ”と歌う力強くも切ないミドルバラード「Arrythmia」だった。Yuhと海のツインギターが曲にスケール感を与え、アルバムのラストナンバーでもあるこの曲もライヴでさらなる輝きを放っていた。

「『CHRONUS』の全曲を演奏する瞬間が終わってしまいました。俺、本当にこのアルバム大好きで、やっと自分たちがやりたいことが近い形で盤になったから。今日、アルバムを聴きに来て集まってくれてありがとうございました」

感謝の気持ちを伝えて、「瞳孔」からの4曲は思いきり暴れ倒す勢いのナンバーの連続! 最後の曲「LION HEART」では気合いを入れすぎた智が歯が欠けてしまうアクシデントに見舞われるほどだった。

9月6日の千葉LOOKからスタートする大規模なスタンディングツアーは、衣装もメイクもセットリストもいっさい統一しないフリースタイルのライヴになると予告し、今後のへの期待をさらに煽ったvistlip。

終演後のスクリーンには“今冬シングルコレクション発売決定”のニュースと、12月25日に新木場STUDIO COASTでワンマンライヴを行なうという予告がーー。会場が沸きに沸いたのは言うまでもない。

取材・文●山本弘子

◆vistlip オフィシャルサイト
◆BARKS ヴィジュアル系・V-ROCKチャンネル「VARKS」
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