【インタビュー】寺岡呼人「オリジナル・アルバムはワールドカップごとにという感じなんです(笑)」

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■人が生きていく意味っていうのは、生き様っていうものの残像、匂いを残すためなのかな
■作品を残すことよりも生き方みたいなものを残すために生きているのかなぁって思った


 ▲『Baton』初回限定盤
 ▲『Baton』通常盤
──等身大というところでは、「青山通り」なんて、まさにそうなのかな!?って思わずにいられないですよね。徹夜レコーディングの帰り道の景色や心情を描いていて。呼人さんの日常が浮かんできたり。

寺岡:徹夜自体は最近してないんですけどね(笑)。でも、昔は徹夜もしていたし。僕がたぶんやりたいのは、日記みたいなことじゃなく、匂いだと思うんです。でも、それを聴いている人に、“呼人さんの日常を切り取ってますよね”って言われるのは嬉しいわけです。ちゃんとそういう風に思ってもらえたんだって。そこかしこに自分の匂いはあって。例えばそれがフィクションであっても、自分の美学であったり、自分の美的感覚がそこに入るわけで。一見、パーソナルなことなんだけど、実はそれは想像しているかもしれない。そう思わせることが、いわゆるクリエイトするってことだと思うので。

──アルバムのタイトル曲にもなっている「バトン」はMr.Childrenの桜井和寿さんが作詞に参加していますが、この曲はどうやって作業を進めたんですか?

寺岡:この曲は、2013年、僕のソロデビュー20周年記念イベント「Golden Circle Vol.18」の時に、せっかくなので、そこで新しい曲をやりたいということもあって作った曲なんです。桜井くんには、ことあるごとに曲を作ってもらったり、詞を書いてもらったりしてるので、今回も一緒に何かやりたいということで。ほぼデモテープができ上がった状態で、歌詞もだいたいこんな感じっていうのは作って。でも作詞の部分でもっと詰めたいなということで協力してもらったんです。桜井くんとは、その時々でメールでやることもあるんですが、この時は朝9時半くらいにカフェに集合して(笑)。

──結構早いですね(笑)。

寺岡:パソコンに入れた自分のデモテープをヘッドフォンで聴きつつ、これを一旦家に持って帰ったら、また時間がかかると思ったので、紙と鉛筆を用意して“聴きながらメモって!”。その時にメモってたことが歌詞になったと思います。

──結果、この曲がタイトル曲にもなったわけですが。それは早い段階にできていたから?

寺岡:今作は、4年間でチョイチョイ作った曲が結構あるので、そういう曲を除外すれば、早い段階でレコーディングしていた曲ではあります。タイトルはいろいろ考えたんですけど、これが一番かなって感じで落ち着きました。

──歌詞にもあるように、このアルバム自体が、次の世代に渡して行きたいものがあるという呼人さんの思いがこもっているから?

寺岡:そこまで自分が義務を感じて作ったというわけではないんですが、人が生きていく意味っていうのは、結局、何かを残す……。それは「教える」っていう意味の残すじゃなくて、生き様だったり、生き様っていうものの残像、匂い、そういうものを残すために生きているのかなって思うんです。例えば、ああしなさい、こうしなさいということを残すのではなく。僕らで言えば、作品を残すことよりも、もっとその前後にある生き様だったり、生き方みたいなものを残すために生きているのかなぁって。そういうことをおぼろげに考えていた中で、この曲もできたのかなって気がするんです。

──サウンドに関してもすごくこだわりを感じます。特に佐藤竹善さんが作曲をした「Departure」は、音数が少ないだけに音作りがとても丁寧で。最近、ここまでシンプルなものはそうないですし。

寺岡:そうなんですよね。この曲はAORがコンセプトだったんですが、今はそういう音楽がなかなかど真ん中に来ない。技術を持った演奏者とシンプルなアレンジと、曲の持っているもので十分イケるんじゃないかって思うんです。古き良きって感じではあるんですが、それが今の時代では新鮮なはずだっていう考えでやったんです。

──そうかと思えば、「青山通り」は打ち込みのイントロでシンセが80'sですよね。

寺岡:こういう80'sな感じって、ちょっと前ならかっこ悪いなぁって感じたと思うんですが、いまこれがツボにハマるんじゃないかなって。これがカッコいい時代になってくるんじゃないかっていう、自分の中での実験も含めてやってみたんです。

──悲しい曲じゃないのに、キュンと切なくなるんですよね。

寺岡:こういう打ち込みだったり、80年代っぽいシンセっていうのは、ちょっと前だと切なくなる要素じゃなかったと思うんです。でも、今や、そういう音が出るものがクラシック機材になってきて、切ない部類のところに行けちゃうっていうことなんですね。

──70年代や80年代と言えば、ニューミュージック的なフィーリングも漂ってくるサウンドがちりばめられていますね。

寺岡:結局、そういうものが好きなんです。今のムードっていうのは、いくらでも作れると思うんです。じゃあ、その匂いが、来年や再来年も聴けるのか、10年後も聴けるのかってところを考えるのはすごく大事だなと思っていて。エバーグリーンなものがなんにしろ好きなところがあるんです。それは根本的にあると思います。

──4年振りのアルバムを作り上げて、出し切った感じはありますか?

寺岡:割とやり切ったという感じはあります。また好奇心を持って、次の作品に向かっていきたいです。

──アルバムを引っさげてのツアーはバンドと弾き語りの二本立てなんですね。

寺岡:またたくさんやりたいので、フレキシブルに小回りの効くところは一人で行ってみようかなと。そんな感じにしていますね。バンドと弾き語りでは打ち上げの人数が少ないってことで、昨日は大騒ぎしたのに、今日は少ない……とかギャップがありそうですね(笑)。バンドスタイルと弾き語りではアレンジも違うので、そういうのも楽しんで観てほしいです。

取材・文●大橋美貴子


『Baton』
2014年9月23日(火・祝)発売
初回限定盤(CD+DVD):TRJC-1036 ¥3,611(+税)
通常盤(CD):TRJC-1037 ¥2,870(+税)
CD収録曲:
M1.流星
M2.BLOOD,SWEAT&LOVE
M3.バックミラー
M4.バトン(「カミングアウトバラエティ!!秘密のケンミンSHOW」エンディングテーマ)
M5.Departure
M6.Japan As No.1!!
M7.青山通り
M8,Gear~歯車~
M9.天職
M10.スマイル
M11.ご贔屓に
DVD収録映像:
Music Video「バトン」「BLOOD,SWEAT&LOVE」
赤坂BLITZでのライヴ映像
「ブランニュージェネレーション」「競争る為にだけ生まれてきた訳じゃねぇ」「スマイル」「バトン」「スーパースター」

<Yohito Teraoka tour 2014「Baton」バンド編>
11月1日(土)名古屋 ell FITSALL
11月16日(日)東京 Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
11月24日(月・祝)大阪心斎橋 Music Club JANUS
11月29日(土)福岡 Early Believers

<Yohito Teraoka tour 2014「Baton」弾き語り編 徒然道草~第十幕~>
11月23日(日・昼)京都SOLE CAFE
12月2日(火)鹿児島Sitieraホール
12月4日(木)淡路島 Time after Time
12月6日(土)広島 楽座
12月7日(日)仙台 SENDAI KOFFEE
12月11日(木)名古屋 Live DOXY
12月13日(土)金沢 もっきりや
12月18日(木)横浜Thumbs Up
12月20日(土)札幌 くう

<タワーレコードインストアイベント>
9/24(水)21:00スタート @タワーレコード新宿店
トーク&ライヴ&特典会(握手&サイン会)
スペシャルゲスト:佐藤竹善(Sing Like Talking)
9/26(金)19:00スタート @タワーレコードNU茶屋町店
FM COCOLO公開録音イベント/トーク&ライヴ&特典会(握手会&サイン会)
スペシャルゲスト:さだまさし
10/4(土)18:30スタート @タワーレコード渋谷店1F
トーク&ライヴ&特典会(握手&チェキ撮影会)
◎タワーレコード オンライン
http://tower.jp/label/towerrecords

◆寺岡呼人 オフィシャルサイト

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