【インタビュー】ASH DA HERO「100年後も“僕という現象”が」

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■血なまぐさいアルバム『THIS IS A HERO』から、次は思いっきり裏切ってやろうと

──それぞれのストーリーとは?

ASH DA HERO:『THIS IS ROCK AND ROLL』は、通称“からっぽの街”にASH DA HEROという男が現れて、街で織りなす人間模様を眺めながら、皮肉や憂鬱な感情を持ったりする。それでも、そんな世の中や居場所が無い人に対して、何もできないんだったら僕が作ってあげるよ、と宣言するところで終わるアルバム。

──次の『THIS IS A HERO』は?

ASH DA HERO:“からっぽの街”の噂を聞いた別の街の奴らのところに、突然ASH DA HEROが現れて、「お前ら何をそんなモヤモヤしているの?」ってヒーローを気取り始める。最初は「なんだ気持ち悪い」って石を投げつけられるんだけど、だんだん彼に引き込まれて。「THIS IS LOVE」っていうメッセージを最後にASH DA HEROが去っていった物語。

──そして、今作『THIS IS LIFE』は?

ASH DA HERO:僕たちの街……多分東京という具体的な街に、ASH DA HEROが現れて、「まだメソメソしてんのかよ、お前たち!」みたいな感じでいつもどおり歌い始めるんだけど。そもそもASH DA HEROがなぜヒーローになったのか、なぜこういうことを始めたのかを紐解いていく物語。サーガの最終章にして“エピソード0”みたいな内容です。

──先ほど“過去から現在、未来へ”という話がありましたが、『THIS IS LIFE』の歌詞には時間の流れがありますね。

ASH DA HERO:歌詞の時系列としては、5曲目「いつかの街で」から始まるんですよ。これが“ASH”になる前夜なので、4曲目が本当のエンディング。物語の時系列で言うとそうだけど、僕は音楽家だから、音楽として現在、つまり物語の後半から聴かせたほうがいい。だから「Overture」は“ここから『THIS IS LIFE』の先のASHのお話が始まります”という立ち位置なんです。

──ASH DA HEROという人物像の時系列と、ひとつのアルバムとしての音楽的配列が考え抜かれているという?

ASH DA HERO:人間が集中して音楽を聴ける時間は大体25分が限界って言われているから、そのなかに収められるように1枚目は23分、2枚目は24分ジャストで終わっているんです。今回のアルバムは、1~4曲目まででちょうど20分ぐらいなんだけど、その間に必ず4曲目の「Everything」を聴かせたかった。本当であれば、「いつかの街で」から始まって、最後が「Everything」っていう並びが物語の時系列としては正しい。でも僕が一番聴かせたかったのは「Everything」だから、時系列を変えて持ってきたと。


──その「Everything」をフックとして、物語が5曲目から始まるという。

ASH DA HERO:だから本当に映画的な作り方ですよね。映画って、撮っていくうちに、「最初はエンディングって考えてたこのシーンは頭に持ってきた方がいいね」ってなったりもする。そういう感じで作ったかな。

──そういう曲づくりがASH DA HERO流のやり方?

ASH DA HERO:そう。僕のスタンダードな作品の作り方。もちろん1曲単位で集中して作るんだけど、欲しがりなんだろうね。1曲で完結じゃなくて、10曲で完結させるみたいなことを昔からやってきたから。例えば、5~7曲目は3曲で1曲みたいなところがある。クラシックが好きだからね、オペラとかサウンドトラックとか劇伴も好きだから。

──収録された楽曲は、バンド感が強い前作『THIS IS A HERO』に対して、今回は生のストリングスを多用したり、前作以上にバラエティに富んでいますが?

ASH DA HERO:そう、今回のアルバムはそこを変えたかったし、僕のなかで構想はできていたから。曲調も全体のアルバムの色もラインナップも、『THIS IS A HERO』のレコーディングが終わった頃には、もう出来ていたんですよ。この次にはソフトな曲とか壮大な曲とかができあがっていくだろうから、『THIS IS A HERO』はすごく激しいものにした方がおもしろいなって、逆算して作ったんです。

──あえてギャップを作り出したような?

ASH DA HERO:血なまぐさいアルバム『THIS IS A HERO』から、次は思いっきり裏切ってやろうと。ただ、バンドサウンドは一発録りで、ストリングスや打ち込みは、そこに乗っかるという手法は変わっていない。でもね、生のストリングスが入るだけで、一気に幻想的にもなるし壮大にもなるんですよ。たしかにストリングスとかコーラスは多用しましたね。結果、色は柔らかくなっているし、幅広く聴いてもらえる気がする。

──一方で、「You Gotta Power」はボン・ジョヴィを彷彿とさせるなど、ASH DA HEROの音楽的バックボーンを感じさせる部分もあります。

ASH DA HERO:「You Gotta Power」はボン・ジョヴィから盗みましたからね(笑)。最初はストーン・テンプル・パイロッツとかアリス・イン・チェインズみたいな曲だったんだけど。試行錯誤するなかで、ボン・ジョヴィの「リヴィン・オン・ア・プレイヤー」とか「イッツ・マイ・ライフ」とか「ハヴ・ア・ナイス・デイ」とかのエッセンスを取り入れたら絶対おもしろくなるかなと思って。で、アレンジャーの宮田“レフティ”リョウとあれこれ模索しながら、「「イッツ・マイ・ライフ」の“ダン ダン”っていうリズムで始まる曲って、あんまりないよね」って話になり。リズム自体に著作権はないですから。

──クイーンの「ウィー・ウィル・ロック・ユー」とか、ハノイ・ロックスの「マリブビーチ・ナイトメア」とか。もっと言えば、モータウンビートとかは受け継がれるべきリズムですよね。

ASH DA HERO:そうそう。リズムやフレーズを受け継いでいくっていうのは絶対必要だから、思いっきり盗ませてもらいました(笑)。

──アレンジャーの宮田“レフティ”リョウさんは、いくつか作曲もしていますね。

ASH DA HERO:「Anchor」と「上京難民」かな。僕が最初に作った原曲の「上京難民」のデモテープをレフティが聴いたとき、「これめちゃくちゃいい曲だね。でも、このままやるとさだまさしになっちゃう。ASHに四畳半は似合わない。もっとアーバンにした方がいい」となり(笑)。「ザ・ルーツみたいな感じにしよう」ってその場で曲を書いてくれたので。

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