【インタビュー】プリティ・メイズ「これまでよりも少しダークでメランコリック」

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プリティ・メイズが通算15枚目となるアルバム『キングメーカー』を完成させた。攻撃的なナンバーからポップな曲までメロディアスな楽曲が並んだこの作品は、モダンなアプローチを積極的に取り入れているのが大きな特徴となっているが、そうした中でも、ロニー・アトキンス(Vo)が歌う叙情派のヴォーカル・メロディなど、プリティ・メイズの基本スタイルを変えることなく、音楽的に進化を遂げているのが彼らの魅力だと言える。

◆プリティ・メイズ画像

往年のファンから新世代のメタル・ファンまで間違いなく魅了すると思われるこの新作について、ロニーに語ってもらった。



――新作『キングメーカー』がついに完成しましたが、今作はどういった作品にしたいと考えていましたか?

ロニー・アトキンス:とにかく素晴らしいアルバムを作りたいと考えていたけど、最初に色々と考えるは難しいことだよ。その時々に自分のできる限りのことをやる、そして、自分で感じたままに感じたままのものを生むまでだ。それに加え、前作と同じことをリピートしたくはないといつも思っている。でも言うまでもなく、同じバンドでありプロデューサーも同じなわけだから、前作とでは共通する部分は確実にあるけど、それでもとにかく前作とは異なるものが完成したと思っているし、俺は非常に満足している。非常に素晴らしい曲が数多く収録されているというのが、俺にとっては最も重要なことだからね。それに、プリティ・メイズのアルバムが持っているべき要素が、この中にはちゃんと詰まっていると俺は感じている。良いメロディ、良い曲…。それと、これまでよりも少しダークでメランコリックかもしれない。歌詞もこれまでよりも少しシリアスな内容になっているかもしれないな。

――曲作りはいつものようにケン・ハマー(G)と2人で行なったのですか?

ロニー・アトキンス:ああ、基本的にはそうだ。すべてのアイディアではないけど、ベーシックなアイディアは俺が書く。俺の場合、物凄い数のアイディアが生まれる時が1~2週間続いたかと思えば、その後しばらくギターに触れさえしない時期があったりする。いつもそんな感じなんだ。ケニーの場合も同様だ。それから2人で向かい合い、アコースティック・ギター片手に曲を書いていく。その後に俺が歌詞を足していくというのが通常のやり方だ。ギリギリになってから歌詞を足すこともあるけどね(笑)。俺はある程度のプレッシャーを感じないとダメなんだ。

――ギター・リフはケンのアイディアから生まれることが多いと思いますが、彼が考えるギター・パートについてはどう評価していますか?


ロニー・アトキンス:彼のギター・パートにはいつだって満足しているし、そうでなかったらこれだけの年月一緒にやってはいないだろう(笑)。互いのアイディアややっていることに対して満足しているよ。それに、俺もギター・リフに取り組んでいるんだ。ギターを弾きながらアイディアを生み出すんだけど、俺はギタリストではないから、ケニーに「こんなものが良いと思うんだけど…」と言っては、彼にギターで弾いてもらったりもする。でも、ギター・リフは基本的には彼が作っているし、俺は彼の作るものに満足しているよ。

――歌詞に関しては何かコンセプトはあるのですか?

ロニー・アトキンス:いや、特にはない。まずはアルバム・タイトル『キングメーカー』だけど、今回も『マザーランド』(2013年)や『パンデモニアム』(2010年)のように、ワンワードのものを考えていた。実はアルバムのアートワークを担当した人物が、この“KINGMAKER”という単語を思いついたんだ。俺は「KINGMAKER っていったい何だ?」と訊いてしまったんだけど…(笑)。それで辞書を引いてみたんだけど、KINGMAKERというのは、黒幕のような役目を果たす実力者のことを指すんだよ。だから、あの曲の歌詞は基本的にそういうことについて綴られている。

――他の曲はどういった内容のことを歌っているか簡単に教えていただけますか?

ロニー・アトキンス:そうだなあ、では「ラスト・ビューティー・オン・アース」について話そう。実はワイフのことを少し思い浮かべながら書いた歌なんだ。彼女とはこの間、結婚25周年を迎えたばかりなんだよ。あの歌詞は、彼女に対するスピーチのようなもの。落ち込んでいる時にも必ずそばにいてくれた彼女のこと…。だから少々個人的な歌詞になっている。それから「キングメーカー」は、キングの背後にいる黒幕、裏で糸を引いている人達のことだ。でも、歌詞のことを説明するのはいつも難しい。ある特定の気分でいる時に書かれたものだったり、ある特定の雰囲気の中で書かれたものの場合もある。だから、その時々のことを適切な言葉で説明するのは難しいよ。かと思えば、読んですぐに意味が理解できる、非常に分かりやすい歌詞もある。例えば「ワズ・ザット・ホワット・ユー・ウォンテッド」は世界が中東にどのようなことをしてきたかを書いた曲だ。これは大なり小なり、今、世界で起こっていることのすべての始まりとなったことだと俺は思っている。世界のあの地域に近づかなければ良かったんじゃないか…と。すべては石油、カネ、そういったものから始まっている。こういうことに関して書いたのは、初めてのことではないんだけどね。でもこれは、他の曲の歌詞とも少々繋がりがある。世界中で起こっている腹立たしいこと、それから政治家達のこととか選挙運動中は色々な公約を掲げるけど、当選したら言ったことを何ひとつ実行に移そうとはしない(笑)。俺は別に政治的なことを言うつもりはけど、批判的な姿勢でいたいだけなんだ。俺はジョン・レノンではないしボブ・ディランでもないからね(笑)。ごく普通の人間が共感できるようなことを、ごく普通の人間の観点から物事を書きたいと思っているだけだ。それから、歌詞はその曲のメロディ次第でもある。例えば、さっき話した「ラスト・ビューティー・オン・アース」ようなバラード・ナンバーだったら、ISについての歌詞は書けない(笑)。歌詞が凄くメランコリックな場合もあるけど、それは音楽が凄くメランコリックだからそうなったわけだ。歌詞は音楽に合ったものでなければならない。そのバランスは大切だ。俺はそういうことを意識しながら曲作りに取り組んでいるよ。

――普段はどういった音楽からインスパイアされているですか?

ロニー・アトキンス:ノスタルジックな気分に浸ってしまうことが時々あって(笑)。それで昔のコレクションからブラック・サバスなどをよく聴いている。1960~1970年代の自分が聴いて育ったような音楽をね。もちろん新しい音楽も聴くことはあるけど、熱心に聴くタイプではない気がするし、やっぱりどうしても昔のバンドを聴いてしまう。俺はもう20歳ではないので、昔のように新しいヘヴィ・メタルを追い掛けてはいない。そうする必要性を感じないし、他のアーティストのライヴへも滅多に行かない。ツアーをしていて色々なフェスティバルに参加している時、時々新しいバンドに遭遇して聴くことはある。息子に「ねぇ、パパ、○○は凄いよ!聴きに行こうよ!」と言われて、「じゃあ、行ってみるか」となる場合もあるよ。

――ケンはどうですか?最近どのようなバンドや音楽を聴いているのですか?


ロニー・アトキンス:彼もまた俺と同じような感じだと思うけど、でも何か新しくて興味深いバンドが出てくると、俺よりは聴きに行ったりしているんじゃないかな。俺よりもずっとずっと最近の音楽をよく聴いているように思う。でも、音楽の好みに関して言えば、俺達2人は基本的に同じようなものが好きだね。「良い音楽」に対する2人の感覚は同じだ。それと、ケニーはモダン・カントリーが大好きなんだ。国内には優れたミュージシャンや曲が数多く存在する。俺自身は特に大ファンというわけではないけどね(笑)。

――では、最後にファンにメッセージをお願いします。

ロニー・アトキンス:ニュー・アルバムが完成すると、自分達では満足していても、やっぱりみんなの反応が凄く気になるものなんだ(笑)。でも、今回その反応が物凄く良いんで、凄く嬉しく思っている。「『フューチャー・ワールド』(1987年)以来の力作だ!」とたびたび言われてもいて、その都度「本当かよ?」って思うんだけどね(笑)。1980年代当時のバンドと現在のバンドなんて、比較のしようがないんだし…でも、それだけみんなが気に入ってくれているのは、俺達としては物凄くハッピーなことだし、ありがたいと思っているよ。

文:Jun Kawai


プリティ・メイズ『キングメーカー』

2016年10月21日日本先行発売
【100セット通販限定CD+サイン入りカード】¥4,000+税
【CD】¥2,500+税
※日本盤限定ボーナストラック/歌詞対訳付き/日本語解説書封入
1.ホエン・ゴッド・トゥック・ア・デイ・オフ
2.キングメーカー
3.フェイス・ザ・ワールド
4.ヒューマナイズ・ミー
5.ラスト・ビューティー・オン・アース
6.ブルズ・アイ
7.キング・オブ・ザ・ライト・ヒア・アンド・ナウ
8.ヘヴンズ・リトル・デヴィル
9.シヴィライズド・モンスターズ
10.シケニング
11.ワズ・ザット・ホワット・ユー・ウォンテッド
12.キングメーカー(エクステンデッド・ヴァージョン)*ボーナストラック
13.ヒューマナイズ・ミー(エクステンデッド・ヴァージョン)*日本盤限定ボーナストラック

【メンバー】
ロニー・アトキンス(ヴォーカル)
ケン・ハマー(ギター)
レネ・シェイズ(ベース)
アラン・チカヤ(ドラムス)

◆プリティ・メイズ『キングメーカー』オフィシャルページ
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