【インタビュー2/3】デフ・レパード「モット・ザ・フープルは偉大なバンド」

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デフ・レパードの最新ライヴ作品『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム…ライヴ・フロム・デトロイト』発売を記念する、シンガーのジョー・エリオットへのインタビュー第2回(全3回)。デヴィッド・ボウイやモット・ザ・フープルを敬愛するジョーは、彼らの楽曲をカバーするバンド、サイバーノウツとダウン・アンド・アウツを結成するほどの傾倒ぶりだ。

◆デフ・レパード画像

今回はジョーが愛してやまない両アーティストへの想い、そしてカバー・バンドでの活動について語った。


──2016年後半からデフ・レパードがオフを取るそうですが、あなたは何をする予定ですか?

ジョー・エリオット:主に家族のことだね。奥さんと子供たちになかなか会えないから、彼らと一緒にいたいと考えている。母親に会いに行ったりね。しばらくツアーからは離れるけど、音楽は続けるよ。ホームスタジオで曲のアイディアを録音したり、モット・ザ・フープルやイアン・ハンターの曲をカバーするダウン・アンド・アウツの新作スタジオ・アルバムも作るつもりだ。それからカナダ出身の女性ヴォーカリスト、エム・グライナーとコラボレーションする予定もあるんだ。彼女はデヴィッド・ボウイのツアーでバック・ヴォーカルを務めていて、ベーシストのマーク・プラティが紹介してくれたんだよ。素晴らしいシンガーで、いつかアルバムを出そうって話していたんだ。彼女と最初に共作したのは6年ぐらい前だった。ぜひ彼女とアルバムを作りたいと考えるようになったら突如デフ・レパードの人気が急上昇して、延期にせざるを得なかったんだ。時間の流れとは無関係な音楽をやっているし、6年越しになっても濁ることはないと思う。幽玄な、デヴィッド・ボウイの『ハンキー・ドリー』的で、ピアノもたくさん入っている。「ライフ・オン・マーズ(火星の生活)」とか「チェンジズ」みたいなタイプの曲だよ。いわゆるロックとは異なるかも知れない。このプロジェクトは俺にとって大事だけど、毎日15時間をかけるつもりはない。週のうち数日、少しずつ完成させていくつもりだ。みんな忘れているかも知れないけど、俺たちは人間で、家族や友達もいるんだ。ここ数年、友達たちとの交流はメールだけだった。ビールを飲みに行くとか、まったくなかったんだ。そろそろ人間であることに追いつこうと思っているよ。デフ・レパードの世界から抜け出て、人生のバラの香りを嗅ぐつもりだ(笑)。とはいっても、2017年4月には2週間デフ・レパードのツアーがあるんだけどね。それが終わったら1年間、バンドとしての活動はないんだ。ファンの前から消失するよ。

──ダウン・アンド・アウツの新作について教えて下さい。

ジョー・エリオット:うん、必ずやるよ。もうレーベルと契約してしまったし、やらないわけにはいかない(笑)。ダウン・アンド・アウツのスタジオ・アルバム2作とライヴ・アルバム2作はこないだ日本で出たばかりなんだ。次のアルバムはすべてオリジナル曲になる予定だよ。既に俺は6曲書いているし、他のメンバー達はクワイアボーイズのスケジュールが空いたら合流してくる。2017年内には完成させるつもりだ。デフ・レパードとはまったく異なった音楽性で、ピアノ入りのロックンロールになるよ。初期のクイーンやデヴィッド・ボウイ、モット・ザ・フープルがそうだったようにね。

──イアン・ハンターのニュー・アルバム『フィンガーズ・クロスド』は聴きましたか?

ジョー・エリオット:もちろん!素晴らしいと思った。「モーフィアス」という曲はとても美しいし、マーク・ボッシュがミック・ロンソンばりのギター・ソロを弾いている。ボウイに捧げた「ダンディ」も素晴らしい。それと日本に来る2日前、イアンの32枚組ボックス・セット『Stranded In Reality』を入手したんだ。まだ箱を見ただけなんで、家に戻ったらじっくり聴くよ。オリジナル・アルバムは既に聴き込んでいるけど、リマスターがどんな音質か楽しみだし、ボーナス音源は聴いたことがないものが多いから、2017年がデフ・レパードにとってオフになったのは幸いだったね!

──イアン・ハンターと話したとき、ダウン・アンド・アウツでのあなたのヴォーカルを絶賛していて、『オーヴァーナイト・エンジェルズ』(1977)からの曲は気に入っていないけれど、あなたが歌うバージョンは大好きだと言っていました。

ジョー・エリオット:イアンは俺にもそう言っていたよ。「『オーヴァーナイト・エンジェルズ』は作って後悔しているアルバムだ。君が歌った方がずっと良い」ってね。「ハッキリ言って、あなたは間違っている。あなたがあのアルバムを出したことを、俺は悔いてないです」って言ってやったよ(笑)。ロイ・トーマス・ベイカーのプロデュースも良いし、素晴らしいアルバムだ。おそらく彼があのアルバムを気に入っていないのは、どの曲もキーが高すぎて、歌いづらかったからだと思う。アルバムを作っているときにスタジオが火事になって、彼自身が死にそうになったとか、悪い思い出があることも原因かも知れない。イアンはダウン・アンド・アウツのアルバムを気に入っていると言ってくれたよ。『ザ・ファーザー・アドヴェンチャーズ・オブ・ダウン・アンド・アウツ』(2014)を作ったとき、彼にもサンプル盤を送ったんだ。そうしたら深夜零時ぐらいに電話してきて、電話口の向こうで奥さんと友人夫婦が話しているのが聞こえるんだ。一杯やりながらアルバムのリスニング・パーティーをやっているんだってさ!「オリジナルよりずっと良い」と絶賛してくれたから「それはさすがに褒めすぎですよ」って答えておいた。

──ダウン・アンド・アウツではモット・ザ・フープルやイアンのソロの曲を歌っていますが、まだ歌っていなくて、これから歌いたい曲はありますか?

ジョー・エリオット:全部だ!モット・ザ・フープルの『ブレイン・ケイパーズ』(1971)の曲、イアンの『バイオレンスの扇動者』(1979)からの曲…全部歌えるし、これからも隠れた名曲を掘り起こしていくつもりだよ。もしかしたらダウン・アンド・アウツの次のアルバムで、イアンの曲を1曲やるかも知れない。ダウン・アンド・アウツは元々“バンド”にはならない筈だったんだ。俺は25年間、モット・ザ・フープルがいかに偉大なバンドであるかを宣伝し続けてきた。周囲がザ・ビートルズやレッド・ツェッペリンの話をしているとき、俺だけモットの話題を出してきたんだ。勝手に広告塔を買って出てきたせいで、彼らも喜んでくれて、2009年にロンドンの『シェパーズ・ブッシュ・エンパイア』で行われたモット・ザ・フープル再結成ライブに来て欲しいと言ってくれた。当初俺はバンドを紹介するとか、そういうのだと思ったんだ。2002年にイアンの『ストリングス・アタッチド』でもやったみたいにね。でも彼らは「そうじゃなくて、オープニング・アクトをやって欲しい」と言ってきた。デフ・レパードとしてやるのもおかしいし、どうしようかと思ったら、イアンのエージェントをやっているミック・ブラウンがクワイアボーイズとの仕事もしているんで、彼らとの共演を打診してきた。クワイアボーイズのシンガーであるスパイクは快く一歩退いてくれて、俺がシンガーに収まることになった。

──ダウン・アンド・アウツとしての2009年、ロンドン公演は『ライヴ・アット・ザ・ハマースミス・オデオン2009年10月6日』としてDVD+CD化されていますが、どのように選曲したのですか?

ジョー・エリオット:まず、モット・ザ・フープルの前座をやるんだから、彼らにゆかりのある曲をプレイしたかった。でも俺たちの後に彼らが出演するんだから、重複する曲をやるわけにはいかない。だからモット・ザ・フープルの後にメンバー達が発表した曲をプレイしたら良いと思ったんだ。それでイアン脱退後に残されたメンバー達が“モット”名義で出したアルバム、後継バンドのブリティッシュ・ライオンズ、それからイアンのソロ作からの曲をやることにした。もし俺があの日最前列にいたら、こんな曲を聴きたいだろうと思える曲をピックアップしたんだ。その時点ではダウン・アンド・アウツとしてのショーは1回こっきりの筈だった。でも俺たちのステージを終えて、モット・ザ・フープルのショーが始まる前に会場のパブ・スペースに行ったら、キッズ達に壁ドンされて、「レコードはいつ出るんだ?」と詰問された。そのとき初めて、レコードを作ることを考えたんだ。それでみんなと話して、気持ちが盛り上がっているうちにスタジオに入ろうってことになった。それで作ったのが『マイ・リジェネレーション』(2010)だったんだ。そしたら「イングランド・ロックス」がアメリカのラジオでトップ5に入ったり、「オーヴァーナイト・エンジェルズ」がデイリー・チャートで12日間連続でナンバー1になった。“本物のバンド”でもない俺たちがエリック・クラプトンを押さえて1位だから、自分でもビックリした。それでサイド・プロジェクトとしての可能性にようやく気付いたんだ。米『ローリング・ストーン』誌でも高評価だったし、トラヴェリング・ウィルベリーズになった気分だった。それで2枚目のアルバムを作ることにしたんだよ。それが『ザ・ファーザー・アドヴェンチャーズ・オブ・ダウン・アンド・アウツ』(2014)だった。今回は“モット・ザ・フープル時代の曲はNG”という縛りがなかったんで、当時の曲もカバーしている。俺は2作目の方が気に入っているよ。「マリオネット」みたいな複雑な曲もやっているし、「ザ・ジャーニー」は12分の大曲だ。作っていて楽しかったよ。デフ・レパードのアルバムと違って自分で曲を書かなくていいから、気楽だったしね(笑)。

──ならば、ダウン・アンド・アウツの新作をカバーでなく、オリジナル曲のアルバムにするのは何故ですか?


ジョー・エリオット:2年ぐらい前、インスピレーションを受けたんだ。ピアノの前に座って、1日1曲を書いていた時期があった。ダウン・アンド・アウツの最初の2枚に通じる1970年代フィーリングがあって、ダウン・アンド・アウツとしてレコーディングするのが最も理にかなっていると感じたんだ。モット・ザ・フープルっぽい曲がいくつもあるし、ブルース・スプリングスティーン、クイーン、ボウイ…彼らに通じる音楽性がある。

──ブルース・スプリングスティーンですか?

ジョー・エリオット:うん、彼の初期の曲はとてもシアトリカルだと思うんだ。「明日なき暴走」なんてドラマチックだし、「マリオネット」や「アリス」、「クラッシュ・ストリート・キッズ」みたいなダイナミズムがある。音楽を比較するとまったく似ていないけど、似た空気があるんだ。

──あなたはサイバーノウツ名義でスパイダーズ・フロム・マーズ、ダウン・アンド・アウツでモット・ザ・フープルへのトリビュートをやったわけですが、第3弾トリビュート・プロジェクトをやるとしたら、どのバンドに捧げますか?

ジョー・エリオット:うーん…やるとしたらTレックスかな。ただサイバーノウツもダウン・アンド・アウツも「さあ!トリビュート・バンドをやるぞ!」と意気込んで始めたわけではなく、偶然の産物だったんだ。スパイダーズのミック・ロンソンが亡くなって、妹のマギー・ロンソンがトリビュート・コンサートを行うことになった。それで俺とフィル・コリンにデヴィッド・ボウイとミックの代役をしてくれと頼んできたんだ。あまりの大役に「頑張ってみます」としか言えなかったよ。ウッディ・ウッドマンジーとトレヴァー・ボルダーと共演したのは、まるで夢のようだった。何回かやったショーのうちダブリン公演をレコーディングして、CDとして発表したら、日本からも招聘オファーがあって、2001年に行くことができたんだ。日本のリハーサル・ルームで数曲をレコーディングしたり、最高の経験だった。

──サイバーノウツはもう終わりですか?

ジョー・エリオット:トレヴァーは亡くなってしまったし、キーボードを弾いていたディック・ディーセントも去ってしまった。だから新作を作るのは難しいけど、『サイバーノウツ』の拡大盤を出すつもりだ。未発表スタジオ・トラックもあって、既にウッディはドラムスをレコーディングしている。それに俺とフィルでオーヴァーダビングするんだ。新規にメンバーを補充するよりも、ベースも俺とフィルが弾くつもりだよ。それも2017年にやることのひとつだ。

最終回となる次回、第3回ではジョーがさらにディープな音楽偏愛談義、そして地元シェフィールドのシーンを振り返る。

取材・文:山崎智之
Photo by Ross Halfin assisted by Kazuyo Horie & John Zocco


デフ・レパード『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム… ライヴ・フロム・デトロイト 』

2017年1月27日日本先行発売
【150限定通販限定Blu-ray or DVD+2CD+アルバム『デフ・レパード』+Tシャツ+2017年カレンダー】¥14,000+税
【完全生産限定Blu-ray or DVD+2CD+アルバム『デフ・レパード』+Tシャツ】 ¥14,000+税
【初回限定盤Blu-ray or DVD+2CD】 ¥8,800+税
【通常盤Blu-ray or DVD】 ¥6,800+税
BD/DVD
1.レッツ・ゴー
2.アニマル
3.レット・イット・ゴー
4.デンジャラス
5.フーリン
6.ラヴ・バイツ
7.アーマゲドン
8.ロック・オン
9.マン・イナフ
10.ロケット
11.ブリンギン・オン・ザ・ハートブレイク
12.スイッチ625
13.ヒステリア
14.レッツ・ゲット・ロック
15.シュガー・オン・ミー
〈アンコール〉
16.ロック・オブ・エイジズ
17.フォトグラフ
ボーナス映像
1.レッツ・ゴー(リリック・ビデオ)
2.レッツ・ゴー(ミュージック・ビデオ)
3.デンジャラス(ミュージック・ビデオ)
4.マン・イナフ(ミュージック・ビデオ)
5.ウィ・ビロング(ミュージック・ビデオ)

【メンバー】
ジョー・エリオット(ヴォーカル)
フィル・コリン(ギター)
ヴィヴィアン・キャンベル(ギター)
リック・サヴェージ(ベース)
リック・アレン(ドラムス)

◆デフ・レパード『アンド・ゼア・ウィル・ビー・ア・ネクスト・タイム… ライヴ・フロム・デトロイト 』オフィシャルページ
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