【インタビュー】ビッケブランカ「面白いと感じたものはどんどんやっていって新鮮な驚きを与え続ける存在でありたい」

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ピアノを弾きながら歌うシンガーソングライターという個性やスタイリッシュ&アッパーな音楽性、高度な歌唱力などが話題を呼び、大きな注目を集めているビッケブランカ。多くのリスナーを虜にした1stアルバム『FEARLESS』(2017.7.5リリース)に続く彼の最新シングル「ウララ」が、4月18日にリリースされる。同作は、様々なジャンルの要素を採り入れたうえで良質なポップスに昇華させるビッケブランカならではの鋭いセンスが味わえることに加えて、全くテイストの異なる4曲が収録されていることも見逃せない。今作を機にさらなるスケールアップを果たすことを予感させるビッケブランカをキャッチして、「ウララ」を軸にいろいろなことについて語ってもらった。

◆ビッケブランカ~画像&映像~

■軽やかでうっすらクラブ感を纏ったサウンドに
■フンワリとした言葉で“別れ”を描いた歌詞を乗せた曲


――まずは音楽的な背景などを教えてください。

ビッケブランカ:僕が音楽に目覚めたきっかけは、マイケル・ジャクソンでした。小学校4年生くらいの時にマイケル・ジャクソンのMVをテレビで見て、すごく惹かれたんです。それでマイケルのダンスを覚えて、学校のヤツら全員に教えて、みんなで踊る…みたいな(笑)。そういう感じで音楽とか歌うことが好きになって、自分でピアノ曲を書いたりするようになりました。

――元々ピアノを習われていたんですね?

ビッケブランカ:いえ、習っていないんです。妹がピアノを習っていて、家にアップライトのピアノがあったんですよ。妹は楽譜を見ながら弾くんですけど、僕は楽譜が読めないから弾けなくて。でも、ピアノが弾きたくて、だったら自分で曲を作るしかないなと思ったんです。そうやって音楽に目覚めて、中学校に入ったらRIZEさんとかリンキン・パークが流行り始めて、バンドをやる友達がチラホラ出てきて。その頃の僕はギターも弾くようになっていて一緒に音を鳴らしてみたりしたけど、僕はバンドという集団に属するというのは肌に合わない気がして(笑)。それで、一人でやれることをやろうと思って、4トラックの小さいMTRで、ラップも混ぜたミクスチャーっぽい曲とかをひたすら作っていました。高校になるとちょっとヒップホップの要素が混ざってきたりもしつつ、中学時代の延長線上で音楽を作っていて。その後20才を超えた頃に、ギターからピアノに転向したんです。それが、自分の中で大きな転機になりましたね。

――それは、何かきっかけがあったのでしょうか?

ビッケブランカ:僕は大学に入学したのを機に、東京に上京してきたんですね。それで、どうやったら有名になれるだろうと考えるわけですよ。ど田舎から出てきたから、何も分かっていなくて(笑)。そうしたら、ライブハウスでライブをしていれば、音楽業界の人に見つけられるらしいという話を聞いて。それで、大学の中でメンバーを集めてバンドを組んで、4バンドくらいのブッキングでライブハウスに出たんです。そうすると、みんな“ジャージャージャーッ!”とギターを弾いているわけですよ。で、僕も同じようにギターを持って“ジャージャージャーッ”とやっていて、これで良いのかなと思ったんです。田舎ではバンドをやっているというだけで珍しい存在だったけど、東京に来たらギターを弾いたり、ベースを弾いたりする人がいっぱいいたから、みんなと同じことをしていても浮上できないんじゃないかなと思って。それに、ギターを“ジャーン”とやっているのが自分には似合っているのかなという疑問もあって。中学生の頃からずっと曲を作っていたから、そういう音楽にちょっと飽きていたというのもあったかもしれない。そうなった時に、自分が持つ楽器を替えようということで、昔ちょっと触ったことのあるピアノにしようかなと思ったんです。


▲1stシングル「ウララ」<初回限定生産盤>


▲1stシングル「ウララ」<通常盤>

――その結果、独自のスタイルが生まれたわけですから、良い選択だったといえますね。では、4月11日に発売されるメジャー1stシングル「ウララ」は、どんな構想のもとに作られた作品でしょう?

ビッケブランカ:2017年の7月に出した1stアルバム『FEARLESS』を作った時と同じように、今回もテーマは設けずに、今の自分が一番良いと思うものを詰め込みました。春に出すシングルだから「ウララ」なのかなと思う人もいるかもしれないけど、意識したわけではなくて。歌詞にはリアルタイムの感情が乗りやすいから“ウララ”という春めいたタイトルですが、サウンドは季節感とかをイメージさせるものではない。軽やかで、うっすらクラブ感を纏ったサウンドに、フンワリとした言葉で“別れ”を描いた歌詞を乗せた曲になっています。

――軽やかにアッパーなサウンドが心地好いです。「ウララ」を作った時のことも話していただけますか。

ビッケブランカ:僕はアレンジも含めて全部自分の家で作り込むんですけど、「ウララ」はイントロのバイオリンが僕の中で会心の一撃でした。“ウィ~ン”と音程が上がって、その後スタッカートが来て、また“ウィ~ン”という風になるという。自分で打ち込んだフレーズをプロのオーケストラの人に弾いてもらったんですけど、ああいうフレージングはあまり無いということでした。そうやって、偶然良いものができたというのがまずあって。あとは、重過ぎない曲ということを意識しましたね。楽器が前に出過ぎていて“踊れ、踊れ!”みたいなものは嫌だし、歌がしっかり聴こえて欲しいし、でもちゃんとノレるものというところを目指しました。それに、間奏の部分は“ブォン!”と広がるキックを足して、ちょっとクラブ調な感じをうっすら出したりしているんですよ。そんな風に、いろんな要素の塩梅を絶妙にやれたなということは感じますね。

――リズムの気持ち良いピアノがサウンドの核になっていて、ピアノを弾きながら歌う人ということが伝わる形になっているのも良いなと思いました。

ビッケブランカ:それは、もう大前提というか。ピアノは常に音の核になるように、引っ込まないように、ちゃんと前に出るようにしました。フレーズ的にも、シンプルだけどキャッチーなものが出てきて良かったなと思います。

――同感です。「ウララ」の歌詞についても話していただけますか。

ビッケブランカ:歌詞に関しては、僕は元々はマイナー調の曲を作って、暗い歌詞を書くことが多かったんです。それは、ミクスチャーとかエモ系とかのコード感が染み付いていたからなんですね。それがピアノを覚えて、曲のテンポがグッと下がって、ポップスのテンポになって…と変化していく中で、曲調も爽やかだったり、軽やかになっていった。そうなった時に、そういう曲調に軽い言葉とか、前向き過ぎる言葉とかを乗せるのは何か違うと思ったんです。それは、音楽というものが生まれた理由と、ちょっと違うというか。音楽には、ツラいことを忘れるために黒人が歌い出したところから生まれたものという面もありますよね。軽やかな曲に明るい歌詞を乗せると、そういうところに通じる大事な要素がなくなって、「イェー! 楽しいぜ、俺達は!」みたいになってしまうから。それは違うと思ったし、実際やってみたけど、全然シックリこなかった。なので、僕が書く歌詞には常に人間の本質的な孤独感とか、淋しさ、絶望感、諸行無常感といったものが滲み出ていて、「ウララ」もそういう歌詞になっています。ただ、僕の曲を聴いた人に最初からそれを感じて欲しいとは思っていなくて。リスナーには、始めは楽しい曲だと思って欲しいんです。だけど、最後まで聴くと、孤独感とかマイナスな部分を引っ繰り返したうえでのプラスの聴こえ方になるようにという心がけがある。そういう中で、「ウララ」の歌詞も書きました。楽しさがあるけど、間奏の一番ピークになる部分は「さよならです」という言葉が聴こえてくるようになっています。この曲はあくまでも別れの歌で、その先を見ている姿勢が前向きなだけで、楽曲としては別れを歌った曲なんですよ。そういう自分の信念を守りつつ、また新しいスタイルで書けたかなと思います。


――心に染みる歌詞になっています。「ウララ」のサビパートでは“Please はる風 catch me”と歌っていますが、平仮名の“はる風”になっていることにも意味があるのでしょうか?

ビッケブランカ:あります。“はる風”というのは普通に“春風”という意味の他に、“気持ちを張らせる風”とか“気持ちを膨らませる風”“上着の裾を膨らませる風”という風に、いろんな風を表現しているんです。だから、はる風という言葉を使うことにしました。そこも感じってもらえると嬉しいです。

――では、「ウララ」の歌録りは、いかがでしたか?

ビッケブランカ:僕は、歌録りが一番楽しいんです。歌録りをする時は声をいっぱい重ねるし、コーラス・ワークも全部自分でやっていて、それがもう楽しくて仕方ない。オケ録りをする時は鈴木正人(b)さん、あらきゆうこさん(dr)といったプロの方が演奏してくださって、一発OKなんですよ。僕が作り込んだ100点のデモを150点にしてくださって“パーン!”と終わるけど、歌録りは緻密に作り込む作業がすごく楽しい。パンニングとかも左右60度に声を振るから、こういう歌い方をしようと考えるし、それが100度だったら違う歌い方になる。あとは、滅多に使わないけど、声を右から左に流したりとか。僕は、そういう声の置き場所ということには、めちゃめちゃ気を配ります。

――たしかに「ウララ」を聴いて、歌の定位が変わっているなと思いました。ダブリングやトリプルの歌はセンターに纏めるのが一般的ですが、この曲は違っています。

ビッケブランカ:僕は、3本の歌を離して置くのが好きなんです。「ウララ」のAメロは同じニュアンスで歌うトリプルではなくて、1本1本歌のニュアンスを変えていて、サビはきれいに歌い方を揃えています。そうすることで、サビの印象がより強くなるんです。でも、Aメロは敢えてメチャクチャ違う歌い方をしました。センターに僕がいて、左右に色っぽく粘った人と、元気な人がいるという設定だったんですけど(笑)。僕は基本的に癖をつけずに歌うので、そういうサラッとした歌が真ん中にいて、こっち側に粘った歌があって、僕は元々声が太いところがあるので、それを打ち消すために反対側に“キンッ!”とした元気な声がいるという。それを混ぜると、ちょうど良い感じになるんですよ。遊び心の延長ですけど、それを真面目にやるんです。歌録りをする時は、毎回そういうことを楽しんでいます。

――ということは、全く違う声質の人の場合もあるんですね?

ビッケブランカ:あります。僕はいろんな人の声を出すのが好きで、福山雅治さんっぽく歌ったり、桑田佳祐さんっぽく歌ったりとか。最初の頃はレコーディング中にディレクターが笑っていたけど、最近は当たり前になってしまって、全然笑ってくれないんですよ(笑)。毎回やるから慣れてしまったみたい。

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