【ライブレポート】<千歌繚乱vol.18>V系インディーズバンドの魅力

twitterツイート

BARKS主催のヴィジュアル系イベント<千歌繚乱>。18回目を迎えた今回の公演はヘルタースケルター、EVERSSIC、More、The Benjamin、Soan プロジェクト with 芥という面々が揃い、9月26日に渋谷REXで開催された。

◆ライブ写真(90枚)

この日のライブは“歌”のチカラが強いという共通の特徴がありながらも、カラーの異なる5バンドの競演ということで楽しみにしていたのだが、同じように感じたリスナーは多かったようだ。当日は雨の平日という厳しい状況にも拘わらず、渋谷REXには開演時から多数のオーディエンスが集まり、熱気に包まれた中でのイベントとなった。


先陣を切ってステージに立ったヘルタースケルターは、どこかノスタルジックな雰囲気が漂うメロウ・チューンの「シュレディンガーの猫」からライブをスタートさせた。イベントのトップバッターでいながら肩に力が入って空回りしたり、舞いあがったりすることもなく、しっとりとした世界を瞬時に創りあげたのは見事。静かな始まりだったが出鼻をくじかれた感覚は全くなく、ステージに強く惹き込まれた。


その後は、「頭振りまわして、楽しんでいきましょう!」という朝比奈 悠(Vo)のアジテートを挟んで、アップテンポの「密室」や「斜陽」、アッパーな「夏模様」などを相次いでプレイ。キャッチーなメロディーを活かした楽曲やメリハリを効かせたサウンド、メンバー全員が織りなすフィジカルなパフォーマンスなどが一体になったステージは魅力に富んでいて、場内は華やかな盛りあがりを見せた。暴力的にいきあげるパターンとは異なり、心地好さを押し出したライブでオーディエンスの心を掴んでみせたことからは、彼らのポテンシャルの高さがうかがえた。

パワフルな「ワールズエンド」でさらに場内の熱気を引きあげた後、ラストソングとしてR&Bに通じる洗練感を纏った「仔猫と飴玉」が演奏された。落ち着いた楽曲を最後に持ってきて、尻すぼみな印象を与えることなく強い余韻を残したのもさすが。始動から2ヶ月にして完成度の高いライブを見せただけに、今後のヘルタースケルターの活動が本当に楽しみだ。

◆関連:【インタビュー】ヘルタースケルター、V系歌謡曲で勝負


EDMテイストを活かしたオープニングSEに続いて「いくぜ、渋谷! お前達の最大の力を見せてくれ!」というmasaya(Vo)の力強い声が響き、EVERSSICのライブは疾走感に溢れた「STORMY」で幕を開けた。1曲目から激しいステージングを展開してパワフルなサウンドを叩きつけてくるEVERSSICと、熱いリアクションを見せるオーディエンス。「STORMY」に続けてアッパーな「ムラサキドクアゲハ」で畳み掛ける流れも決まって、ライブは上々の滑り出しとなった。


「こんばんは、EVERSSICです。<千歌繚乱>ということで、今日はいろんな歌が聴けると思います。そんな中でも、みんなの心になにかしら残せるといいなと思っています」というmasayaのMCを挟んだ後は、パワフルかつ爽やかな「SAIL AWAY」とダンサブルな「トライアングル・パラドクス」を続けてプレイ。気持ちを引きあげる楽曲に加えて、情熱的なボーカルやキャラクターの異なるツインギターによる立体的なアンサンブル、勢いと安定感を併せ持ったリズム・セクションなど、プレイの見どころも多くて楽しめた。

躍動感に溢れた瞬間の連続に場内の熱気は高まっていき、ラスト・チューンの「愛を叫べ」ではオーディエンスが揃ってタオルを振る盛りあがりとなった。目当てのバンドがバラバラなリスナーが集まったイベントで、場内を一つに纏めてみせたのは見事。EVERSSICのライブバンドとしての魅力が光るステージだった。

◆関連:【インタビュー】EVERSSIC、歌モノバンドを流行らせたい


妖艶さが漂う「Twisted Butterfly」からライブを始めたMoreは、“魅せる”という言葉がフィットするステージで楽しませてくれた。翳りを帯びた曲調やセクシーなボーカル、楽曲重視のスタンスが光る楽器陣のプレイ、澄んだピアノをあしらったサウンドなど、構成要素が洗練されたものばかりでいながら退廃的な雰囲気を湛えた彼らの個性本当に魅力的だ。エモーショナルなスロー・チューンの「揺れる」などを交えつつ深度を深めていく構成も決まって、オーディエンスが強く惹き込まれていることが如実に伝わってきた。


Moreのライブを観ると、彼らの世界観を形成するうえで大きな役割を担っているのがボーカルのLokiであることがよくわかる。人種や性別などを超越した存在感を発してパフォームする彼の姿には、目を奪われずにいられなかった。と同時に、楽器陣の3人がLokiに引けを取らないオーラを放っていることもポイントといえる。それぞれが個性を押し出すことで、独自かつ強固なバンド感が生まれていることが印象的だった。

ライブを通して溜め込んだエネルギーを炸裂させるように、ラスト・チューンとして狂騒的な「Whisper」をプレイ。毒気を放ちながら熱くいきあげるMoreにオーディエンスも熱狂的なリアクションを見せ、強いインパクトを残してメンバー達はステージから去っていった。全5曲のショートライブでいながら非日常の空間を創りあげたのは、さすがの一言に尽きる。

◆関連:【インタビュー】More、「音楽も視覚的要素も全部含めたトータルアートとして魅せたい」


続いてステージに姿を現したThe Benjaminのライブは、爽やかな「SORA-Boing229-」を聴かせた後、躍動感に溢れた「BumbleBee」に移行するという流れからスタート。アッパーな楽曲とサウンド、明るいステージング、「SORA-Boing229-」をツブク“Mashoe”マサトシ(B)が歌い、「BumbleBee」はミネムラ“Miney”アキノリ(Vo&G)が歌うというアプローチなどは気持ちを引きあげる力に溢れていて、場内は明るい空気に包まれた。翳りを帯びたMoreのライブの直後にも拘わらず、瞬く間に場内をThe Benjaminの色で染めたことに驚かされた。


「The Benjaminです、よろしくどうぞ。今日は、どのバンドも好きになっていってください。僕らはとにかく君達を楽しませることに全力を注いでいくので、後半もよろしく!」という“Miney”のMC。More、Soanプロジェクトといった親交のあるバンドをユーモラスに紹介して会場に笑いを起こす場面も。その後は、キャッチーな「ベイクドチーズ」やウスイ“Tacky”タクマ(Vo&G)も交えたトリプル・ボーカルとR&Rテイストをフィーチュアした「ベーゼ」、ウォームなスロー・チューンの「バトンタッチ」などを披露。爽快さや前向きなテイストを押し出した手法が奏功して、場内は一体感に溢れた盛りあがりとなった。

オーディエンスの中には、明るいバンドはやや苦手という人もいたと思うが、The Benjaminはそういったリスナーさえも笑顔にする巻き込み力を持っている。それを実感できたし、彼らのライブ後の爽やかな余韻は本当に心地好かった。

◆関連:【インタビュー】The Benjamin、キャッチコピーは“オジかわいい”


場内がいいムードに染まる中、トリを務めるSoanプロジェクト with 芥のライブは「透過幕」から始まった。ステージ中央に立ってエモーショナルな歌声を聴かせる芥(Vo)、ハードネスと耽美感を融合させた楽曲、全身を揺する轟音、メンバー全員が織りなす激しいパフォーマンスなど、とにかくすべての要素の“圧”が強力で、ライブが始まると同時に圧倒されずにいられなかった。オーディエンスのボルテージも一層高まり、場内は膨大なエネルギーが渦巻く空間へと化した。

その後も勢いを保ったままハイエナジーな「薄紅は舞い散り寂光に消える」や「狂騒の踊り子~山紫水明の宴~」などを相次いでプレイ。怒涛の勢いで突き進むステージに客席も熱いリアクションで応えるが、メンバー達は物足りないらしく、Soan(Dr)を中心に楽器陣が歌の合間に煽りを入れまくる。それに呼応して、さらに熱量をあげていくオーディエンス。そんなアグレッシブなライブでいながら抒情性を湛えているのはSoanプロジェクト with 芥の大きな魅力といえるし、常にサウンドがタイトなことも印象的だった。


「見せてくれ! 見せてくれ! 聞かせてくれ!」という芥の熱い言葉と共に、ラストチューンとして「frowery count」をプレイ。スロー・チューンなどを挟むことなく、徹頭徹尾ハードネスで染めあげた彼らのライブの“駆り立て力”は絶大といえる。場内はイベントの締め括りにふさわしい圧巻の盛りあがりを見せ、ライブが終了して場内が明るくなってもオーディエンスのアンコールを求める声がやむことはなかった。ハイボルテージかつ良質なライブが好きなリスナーにはSoan プロジェクト with 芥のライブを体感することを、強くお薦めしたい。

◆関連:【インタビュー】Soanプロジェクトwith 芥、人生のテーマを音楽で表現
◆関連:【インタビュー】Soanプロジェクトwith 手鞠、“心をえぐる”をテーマに表現

   ◆   ◆   ◆

 今回の<千歌繚乱>も充実した内容で、大いに楽しめた。カラーが異なる5バンドの顔合わせでいながら散漫な印象のイベントにならなかったのは、各バンドが強固な世界観を持っているからに他ならない。「また観たい」「ワンマンも観てみたい」という気持ちにさせるバンドが揃っていて見飽きることがなかったし、個性を極めて説得力を持たせることで、リスナーの好みを超えた存在になれることを強く感じた。

同時に、現在のヴィジュアル系には明確なヴィジョンのもとに自分達なりの方法論を突き詰め、独自のエンターテイメント性を確立したバンドが沢山いることもあらためて感じることができた。ヴィジュアル系シーンの低迷が叫ばれて久しいが、魅力的なバンドは数多く存在していて、再び活性化しつつあることは間違いない。それを感じられたという意味でも、有意義なイベントだった。

取材・文◎村上孝之
twitterこの記事をツイート

この記事の関連情報