【インタビュー】杉本善徳 (Waive)、「僕はやっぱりWaiveしか好きじゃない」

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■解散中じゃないとダメなんだと思うと同時に
■解散中って何?と思ってる自分もいる

──杉本さんは解散時に「Waiveが最高のバンド」という言葉を残しておられますけど、それがもう、今に至るまでずっと揺るぎないということですよね?

杉本:そう……ですね。「これが最高のバンドで、皆もそう思うよね?」と言って歩く気は全くなくて、リスナー一人一人に好きなバンドがあってそれぞれの最高は違うし。でも、僕がバンドという形態を使って生み出せる、自分なりの最高傑作がWaiveだったとは思っているから。仮に何か新しいことを始めてそれがヒットして、「世の中的最高はこっちだ」と言われたとしても、僕の中では「あんまり分からんなぁ」となりそうな気がしちゃうんですよね。もちろん、曲も昔のものだから今聴くと、「古っ!」て思うから(笑)、「これを超える曲はこの世にないでしょ?」みたいなことを言う気もないし。この曲はこの曲でこのベクトルで一番尖ってるけど、それ以降に書いた曲はこっちはこっちで尖ってるし、と思いながら音楽活動を続けて来てるんだろうから。だから、バンドというのはもう、僕にはできないんじゃないかな……? そんな気がするな。

──ブログにも書かれていましたが、Waiveが進化していくことによって、“最高”が更新されていく、という現象は起きているわけですよね?

杉本:あぁ、それはそう思いますね。特にこの間の<MUD FRIENDS>の時、観に来てくれた人たちから、「今回めちゃくちゃ出来上がってるんちゃう?」という話をされて。僕は、少なくとも2016年のほうが、ツアーも回ったから、ツアーファイナルのほうが出来上がってたでしょう?と思ってたんですよ。でも、同録の映像を送ってもらって観て、「え? 結構ちゃんとバンドみたいやなぁ」とビックリして。あれは何なんでしょうね? 謎(笑)。

──それぞれの場で積み重ねて来たものがやっぱり、出ていたんじゃないでしょうか?

杉本:でも、一人はもう引退して普段は楽器触ってないですよ? フライパンとかしか触ってないですから(笑)。

──たしかに特異なケースですけど(笑)。ベタな言い方になってしまいますが、想いとか、Waiveでしか醸し出せない空気とかが観る者の胸を打ったんじゃないかな?と思うんです。

杉本:どうなんでしょう? まぁ、Psycho le CémuとMUCCがいたから、というのもあるんじゃないすかね? パンフレットか何かの取材の中で、逹瑯(MUCC)から冗談半分で「活動を続けてるバンドとの格の違い見せつけたる」と言われて(笑)。「じゃあ、久々にやることによってどれだけ燃焼力があるのかを見せないと!」というのはしっかりと我々にはあったので。それが上手く化学反応を起こしたんじゃないのかな?とは思ってますけどね。Psycho le Cémuも僕はすごく好きなバンドなので、あのイベントではいろいろと触発されて良くなったんじゃないのかな?と思います。

──先日、「曲をつくっている」とTwitterで書かれていましたね。それはWaiveの曲ですか?

杉本:そうです、そうです。

──胸中の葛藤が伝わってくるような呟きでしたけど……今もその想いの渦中ですか?

杉本:もう、ほぼほぼ曲として各メンバーに投げちゃった後なんですけどね。田澤くんが取材で「新曲は要らない」という話をしてましたけど、僕もそう思ってる節はあるんです。でも、そう思っているからこそ違うんじゃないのかな?という想いも──これは曲に対してだけじゃなく、全部に存在していて。さっき言ってたみたいに、「だからもうWaiveは活動しているバンドであってはいけない。解散中じゃないとダメなんだ」と思うのと同時に、「はぁ? 解散中って何?」と思ってる自分もやっぱりいるし。例えば、曲を書いて皆で合わせました、と。極論で言うと、別にそれを披露しなくてもいいわけじゃないですか? 「セットリスト組んでみたら、やっぱり新曲なんてものは要らないから、やめよう」となっても、損するものでもないし。田澤くんも、もしかしたらあの取材の後、例えば今になって「新曲、あったほうがええんちゃうかな?」と思ってるかもしれないし。

──可能性はありますよね。

杉本:うん。やっぱり〝生″を切り取っていくと、人は常々更新されるから。僕もそうで、書きながらも何回も「いやいや、これもう要らんのんちゃうんか?」と思って放棄しそうにもなっていたし。でも、とりあえず形になるところまでやって、Waiveの4人ないし康雄(山内康雄 / サポートドラム)込みの5人で、この間のライヴ(<MUD FRIENDS>)もあったことだから、「一つの塊をちゃんと残してもいいんじゃないのかな?」という気持ちには、僕的にはなってるんですよね。Waiveは1stアルバムの『INDIES』(2002年)をつくって、2ndアルバム(『INDIES2』/2004年)までに随分と時が経ってるんですよ。「出なすぎやろ!」というぐらい音源が出ないバンドなんです。やっと出ても「いやいや、前と同じ曲入ってるやん!」みたいな(笑)。それぐらい、とにかく新曲を書かないんです。僕が断固としてそのスタイルを貫いていたところがあって、「いや、曲って要る?!」というのが未だにあるんですけど。例えば、X JAPANの場合、もちろん新曲が出たら「うおぉ~X JAPANの新曲や!」という気持ちもある。でも、それとまた別のベクトルで、ライヴでは「紅」や「X」をやってほしい、と求める人はいると思う。LUNA SEAが活動を再開してからの『黒服限定GIG』を観に行った時、昔の曲ばかり披露していて、僕は昔のLUNA SEA大好きやから、「うぉぉ~!」と思って観ていたんですよ。でもアンコールで「ROSIER」を披露した時が一番歓声が大きくて、僕はズコーッ!となったんです(笑)。大衆心理というか、やっぱり多くの人は「知ってるもの」がうれしいんですよね。僕はJUDY AND MARYのファンだったから、解散ライヴを大阪から東京ドームへ観に行ったんですよ。その時も「そばかす」のイントロが一番、お客さんの声は大きかった。「やっぱり分からんなぁ、この人らの感覚は」という経験が、そうやって僕の中ではすごく蓄積されて来ているんです。

──なるほど。

杉本:でも「いざ自分は?」となった時、やっぱり「ガーリッシュマインド」をやらないWaiveって物足りないと思われるんだろうな、と。エンタメってそういうものなんじゃないかな?と思っていて。僕らはロックバンドだから“プロレス”をやりたいわけじゃない。とはいえ、プロレス要素を無視してしまうことは、ただのエゴになっちゃうのかな?と。新曲は別につくってもいいけど、本当にその新曲が次の「ガーリッシュマインド」になることってある?っていうところですよね。僕は「これがシングルだ!」という、自分たちの中での会心の一撃以外は生む必要はない、と思ってるから。その一撃必殺の魔人の斧を振りかざしながら行きたい、というのが音楽に対してはあるので。地道に一生懸命その辺の雑魚どもを倒してレベル上げしていって、次のレベルになったからこの洞窟に入ろうよ、みたいなことをしたくなくて。だから僕は、「『ガーリッシュマインド』が『紅』ちゃうの? (新曲)要らなくない?このイントロでキャー!!でしょ?」と思ってしまう(笑)。そんなところがあったんですよね。

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