【インタビュー】植田真梨恵、<LAZWARD PIANO>10周年記念アルバム完成「もう一つのバンドだと思ってます」

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植田真梨恵がピアノワンマン公演<LAZWARD PIANO>シリーズ10周年を記念して、1月18日に『BEST OF LAZWARD PIANO -青い箱-』、2月15日にLIVE Blu-ray『LIVE of LAZWARD PIANO “Academic!”』をリリースする。毎年寒冷期に開催される<LAZWARD PIANO>はピアニストの西村広文を迎え、ピアノと植田真梨恵のアコースティックギターと歌のみのスタイルに既存曲をアレンジ、澄んだ空気のなか熱い演奏を届けている。その10周年を記念した『BEST OF LAZWARD PIANO -青い箱-』は<LAZWARD PIANO>コンセプトによるセルフカバーベストアルバムであり、様々な場所、様々なピアノで全32曲、全編新規レコーディングを実施した。

◆LAZWARD PIANO (ラズワルドピアノ) 画像

植田真梨恵のアコースティックギターと歌、西村広文のピアノで作り上げる、シンプルなアコースティックサウンドの中に莫大な感情を詰め込んだ音の小宇宙。<LAZWARD PIANO>の10周年を記念する全編新レコーディングによるセルフカバーベスト『BEST OF LAZWARD PIANO』が凄い。音の一粒、歌の一瞬にまで緊張感がみなぎり、リスナーを圧倒しつつも柔らかく包み込む、壮大とパーソナルとが共存する景色が広い。大傑作アルバム『Euphoria』と対を成す、これが植田真梨恵の揺るぎない現在位置。


   ◆   ◆   ◆

■大きな時間軸でやってることが
■二つ続きました。頑張りました

──最初の質問は、前回インタビューの続きから始めましょうか。構想11年の大作『Euphoria』を完成させて、でもこれは自分の心のままに自由に作ったアルバムだから、その感じを「ちゃんとライブに活かせるかが課題」というところで前回は終わってました。そのあと11月に全国4ヵ所のツアー<植田真梨恵 LIVE TOUR 2022 [Euphoria]>をやって、今どんな感想があるのかな?と。

植田:そうですね、『Euphoria』はインナートリップ的な内容のアルバムだということと、静かで穏やかなんだけど、ノイジーで、実はかなりロックなものであったりするんです。その雰囲気をうまくライブに持って行って、みんなで楽しめるものに昇華できるのだろうか?ということを、すごく不安に思っていたんです。実際ものすごく悩んでいろんな試行錯誤を重ねて何度も曲順を練り直したし、アルバムの空気感を邪魔しない選曲をすごく考えました。それプラス、曲によってはバンドメンバーが普段とは違う楽器を担ったり、一つの楽器の中でも例えばドラムスティックにシェイカーをくくりつけてみるとか、ベースをピックで弾くのか指で弾くのかとか、いつも以上にいろんなことを試しながらみんなで作り上げて、ぎりぎりなんとか形になったかなと思ってます。結果的には“終わってほしくない”と思うぐらい楽しくて、やりがいのあるツアーになりました。

──本当に素晴らしいパフォーマンスで、でも普通のライブとは違う精神状態なんだろうなということは、見ながら思ってました。

植田:勢いだけで持って行けるライブではなくて、自分の内にあるものを形にしていくライブでした。難しいのは、内面と向き合っているようで、お客さんと向き合っていかなきゃいけないから。渋谷クラブクアトロは特に、1曲1曲を初めて聴く人に向けて歌っているような感覚で、“触れたことのないものを今ここに突然出現させる”みたいな気持ちで歌っていたんですよ。そこで何かを見つけたというか、どんどん楽しくなっていって、本当にツアーが終わることが寂しくて仕方なかったですね。

──大丈夫ですか。長年のプロジェクトが完結して、燃え尽き症候群になってないですか。

植田:すぐなりましたよ(笑)。計画としては11年前からあるものだったので、終わったら急に寂しくて。ただ、『BEST OF LAZWARD PIANO』に向けてもう走り出しているという状況がツアーファイナルの前からあったので、ここで立ち止まれないなという部分と、この余韻を噛みしめていたいなという部分と、いろんな気持ちがごちゃごちゃになってました。

──止まらなくてよかったと思いますよ。

植田:そうですね。止まってたら、何したらいいのか、途方に暮れてたかなと思います。

──何度も言うけれど『Euphoria』は本当にすごい傑作で、一生ものの音楽で、出たら終わりというものではなくて、もっともっといろんな人に聴いてほしいアルバムだと思っているので、推し続けたいと思います。

植田:ありがとうございます。そんなふうに言っていただけるものができて、本当にうれしいです。


▲『BEST OF LAZWARD PIANO -青い箱-』コレクション盤


▲『BEST OF LAZWARD PIANO -青い箱-』通常盤

──そして次に出る『BEST OF LAZWARD PIANO』も、一生もののライフワークの集大成というか、大プロジェクトが二作続いてリリースされるということになりました。

植田:『Euphoria』が11年前からで、<LAZWARD PIANO>は10周年ですね。大きな時間軸でやってることが、2022年は二つ続きました。頑張りました。

──ピアニストの西村広文さんとのデュオで演奏する<LAZWARD PIANO>を、ベストアルバムという形でリリースしようというのは、誰がいつ、どんなふうに言い出したんでしょう。

植田:「『Euphoria』を作ろう」という話を2021年の年末ぐらいにしていて、それと同時に、2023年が<LAZWARD PIANO>10周年だねという話はもう見えていたことだったので。2022年頭の<LAZWARD PIANO>を“blue morning, blues”というタイトルでやろうと決めたのは、その次の10周年はもっと定番の<LAZWARD PIANO>らしいラインナップでやりたい気持ちがあったからなんです。だから“blue morning, blues”は教会で、blues(ブルーズ)というものをどーんと真ん中に置いて、これまでとはちょっと違う新しい一面を見せたい、そういう気持ちで曲を再アレンジしていこうよっていうコンセプトにしたんです。

──そうか。あの時からもう10周年の<LAZWARD PIANO>の展望はかなり見えていたと。

植田:そうです。でもそれは私じゃなくてマネージャーが、「来年10周年ですよ」って教えてくれたので、それはきちんとやったほうがいいでしょうみたいな気持ちになって、「ベストも作りましょう」という話もその頃からし始めていました。



──<LAZWARD PIANO>はこれまで、ライブ作品(LIVE Blu-ray『Live of Lazward Piano “bilberry tour” at 東京グローブ座』/LIVE Blu-ray『Live of Lazward Piano -凍てついた星座- at 大阪市中央公会堂』)はあれども、レコーディング音源になったことがなくて。それはライブでしかやらない、音源にはしないというコンセプトがもともとあったんですか。

植田:試してみたことはあるんですよ。「このライブをレコーディングします!」というライブをやったことはあるんですが…難しくて。私も西村さんも、一発勝負、その場でどーん、みたいなものが得意ではあるんですけど、ライブレコーディングとなると、結局ライブのほうを立ててしまうんですよね。しかも“レコーディングしてる”とわかってるお客さんも硬くなっちゃって、“拍手していいのか?” “音を立てちゃいけない”みたいな。ライブの良さもレコーディングの良さもどっちつかずになってしまって悔しい思いをしました。それをやったのがもうだいぶ前で、2013年とか? だからそのときは1曲配信しただけで、いつか音源で楽しめるものを作りたいけど、でも難しいな、と思っていました。

──それが今回、10周年を機についに実現したと。しかもライブハウス、ホール、スタジオ、ストリートピアノとか、様々なシチュエーションで、使うピアノも違えば音質も空気感もまったく違う、この企画は本当にすごいことやったなと思いますけど、これは誰のアイディアですか。

植田:これはね、“マネージャーがそうしてほしいのかな?”と私が思い込んでたんですよ。はっきりとは言わないけど、きっとこういうことをしたいのかな?って…あ、こんなに“マネージャーがマネージャーが”と言うのも<LAZWARD PIANO>というもの自体を、私のマネージャーがすごく愛してくれていて。“とてもいいライブだからぜひ見てほしい”という気持ちがすごく強いから、マネージャーの思ってる“こんなものが聴きたい”というものをいっぱい聞きながら作りたいなと思っていたんですね。

──そもそも<LAZWARD PIANO>というタイトルを付けたのも、マネージャーさんですもんね。

植田:そうです。このライブは何かに向けて作ってるわけではなくて、手ぢからで、やれるだけのことを気合いでやるみたいな感じでやってるから、コンセプトはないんです。常に抜き打ちみたいな感じでやってるので。最初は名前が決められなくて、そうしたらマネージャーが、“二人の音からは青い洞窟のような色を感じる”とか、“赤い炎じゃなくてもっと温度の高い静かで青い炎だ”とか、そういうところから<LAZWARD PIANO>と名付けてくれたんですよ。

──“LAZWARD”はアラビア語で“青”。素晴らしいセンス。まさにぴったり。

植田:私がアコースティックギターを一人で弾くライブに対して、ピアニストのサポートを入れてライブをやってみようということで、心斎橋のアップルストアで、西村さんに入ってもらったのが最初なんですけど。いざ音を出してみたら、サポートという言葉がふさわしくないぐらい、旧知の仲みたいな演奏になったので、ユニットのような、植田真梨恵がやってるもう一つのバンドだと私は思ってます。


▲<LAZWARD PIANO> at LIVE HOUSE

──そういえば、西村さんのnoteって読みました? 12月の頭くらいにアップされたやつ。

植田:読みました。

──彼が書いていた、始まりの頃のエピソードがすごく面白いというか、「ロックバンドだらけのブッキングに二人で乗り込んで、バンドなんかより、こっちのほうがよっぽどロックじゃ!って息巻いてオラついてた」って(笑)。その書き方がおかしくて。

植田:まさに、そんな感じで始まったんです(笑)。そうやって大阪や神戸のライブハウスで始まって、よし東京に行くぞ!って、西村さんが運転する車で、マネージャーと3人で、西村さんがピアノを抱えて搬入してた(笑)。だから本当にそういう気持ちでした。

──西村さんはいろんなお仕事で売れっ子だけど、<LAZWARD PIANO>にはすごい思い入れがあることが伝わってくるし、本当に一つのユニットだなぁと思います。

植田:本当に。

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