【連載】フルカワユタカはこう語った 第28回『epoch』

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▲2019.5.9@リハーサルスタジオ。井上司(fox capture plan)をドラムに迎えての初スタジオ

「ドナルドとウォルター」(※2018年6月発表シングル / the band apartの原昌和との共作)をまーちゃんと作ってからちょうど一年。新しいアルバムが完成した。

◆フルカワユタカ 画像

ソロになってこれで4枚目のアルバムだ。Doping Pandaがメジャーで出したアルバムが4枚だったので、その数字に並んだことになる。バンドを解散してから7年。なんだかんだでこうして作品を積み重ねることが出来ているのは、謙遜ではなく、本当にフルカワユタカというミュージシャンが幸運だったからだと思っている。が、少しだけ自分の努力も誇ってみる。そんな気持ちにしてくれる素直でまっすぐで素晴らしいアルバムが出来上がった。




▲<ワンマンツアー「ロックスターとエレキギター」>ツアーファイナル@2018.4.21@渋谷WWW)

アルバムの1曲目を飾るのはbase ball bearと一緒に作った「コトバとオト」。作曲を僕がして作詞は小出くんとの共作。演奏はベボベ(base ball bear)3人と共に。当初は他のコラボシリーズ同様、“feat. 小出祐介”案もあったけど、ベボベのサポートギターをすることで救われて始まった僕の“誰かと音を奏でるって素晴らしいの章”のラストシーンとも言える(って、これからまたひとりぼっちでやってくって意味ではない!)このアルバムには3人とのコラボで、というほうがまったくもって自然だった。

しかしながら不思議な巡り合わせだ。今から14年前、僕らの全国ツアー(<Doping Panda Tour 05>)米子公演の前座としてツアーに来ていたベボベは僕らのライブを見ずにホテルへ帰った。僕はそれをわざわざ呼び戻して叱った。その時のめんどくさい先輩というイメージが残っていたことが影響したのは、まず間違いないだろう。事務所やフェスで会っても挨拶程度のコミュニケーションしか(小出君に至っては挨拶もなかった・笑) 互いに取れず、唯一、人懐っこく近寄ってきたのが湯浅将平だった。

僕らは、僕は、彼らに一体どう映っていたのだろう。ビックマウスで、いつ会ってもトゲトゲしていて、事務所のアーティスト全員が出演するイベントも僕らだけ辞退したし(社内では一大事だったらしい)、自分達でスタジオ作り出すし、“わけのわからない”アルバムを作るし(無論、僕達には“わけ“しかなかったが)、挙げ句、あんだけ大口叩いてたくせに解散しちゃうし。それが僕らなりのロックンロールだったわけだが、カッコ良くて憧れる先輩では……、きっとなかっただろうな。今さら聞きはしないが。

3年前、僕は彼らのツアーをサポートした。それからお返しというわけではないが、僕のイベント(<フルカワユタカ presents「play with B」~with C2~ / 2016年6月18日@下北沢 Garden)にも出てもらった。スタッフを交えず僕らだけで忘年会をしたことだってある。先々月なんて、堀君とプロレス観に行ったし。最悪の出会いから困難を乗り超えてハッピーストーリーへ、ってなんですか、この”メリケンラブコメ”な流れは(笑)。出来上がったばかりの「コトバとオト」を聴きながらふと思う。

“何がどうなってこうなったんだっけ”



   ◆   ◆   ◆

3人とコラボ曲を録り終えた翌日、僕はLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS +で出演する<ARABAKI ROCK FEST.19>に向かった。荒吐はユウタ(HAWAIIAN6)と僕とで市川さん(LOW IQ 01)を挟んで演奏する、それも1万人からを見渡す磐越ステージのトリ、というまさに胸熱なライブで、コラム一話分書けるくらい濃い内容だったのだが、個人的なビッグトピックはその翌々日の札幌で起こった。

荒吐の二日後、場所を札幌に変えLOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERSで出演した<AS ONE FEST 2019>。ツワモノどもの競演よろしくイベントも打ち上げも最高だったのだが、宴の後、深夜1時過ぎ、僕はとある人に声をかけられて市内のバーにいた。その人とは、もちろんこれまでも会う度にこちらから挨拶はしていたが、僕の名前まで認識してもらってるとは思っていなかったし、一次会でも対面に座ってはいたが数言会話をしただけであとはお酌をしていた程度のことだったから、かなり酔っているように見受けられたし、きっと気まぐれではあったのだろうけど、「もう一軒行きますか」と声をかけられた時は本当にビックリした。

「僕で良ければ、是非ご一緒させてください」

しっぽりと飲み直し始めてからさらに1時間、深夜2時のススキノのバーで一体今何が起こっているのだろう。指示されたブルース進行をお店のアコギで弾く僕の目の前で、リーディングポエット風な語りを披露しているのは、あの“チバユウスケ”ではないか──。

そろそろ帰ろうかというタイミングで、チバさんの札幌の友人が引っ張り出してきていたお店のアコギが回り回って僕にたどり着いた。チバさんが耳元で呟く。「F、G、Aマイナーって弾いて」。集中して弾く僕のギターに“あの声”が乗っかる。

“何がどうなってこうなったんだっけ”

が、話はここからだ。一節終わったところで店のマスターが常連客にお前も歌えと指示をした。奇遇にも“フルカワ君”と名乗る髭面のそのお客さんは、なんでもBENBEというバンドのボーカルだとのこと。チバさんの前で歌うという試練にしばしとまどってはいたが、一念発起して歌い出した。それがまたすこぶる素晴らしい。フォーキーかつブルージーに「ウィスキー飲ませろ」と連呼するサビがキャッチーかつノスタルジックで、僕もカウンターをぶっ叩きながら合唱。

“ははは!何がどうなってこうなったんだっけ!”

だがしかし、話はこれで終わらない。ああ楽しかったと、席を立とうとする僕にチバさんがアコギを向けている。“しまえってことかしら?”──否、お前の番だってことだ。いや、こんなバーで歌う曲なんて持ち合わせてないし、即興でブルースをやったって札幌のフルカワ君には絶対敵わないし、何よりチバユウスケに生歌を聴いてもらうとか正気の沙汰ではない!と体感では5〜6分は悩んでいた感覚だったが、そこはさすが東京のフルカワ君、(おそらく)ものの数十秒で意を決して歌い出した(はずだ)。20年超のキャリアが教えてくれている。こういう時はもたついたらお終いだ、生きるか死ぬかはかは二の次で、とにかく飛べ!と。

“♪行く先も何も分からずにこの道をずっと進むけど とりあえずはここで次のバスを待つ”──「バスストップ」(3rdアルバム収録『Yesterday Today Tomorrow』)という、小さな挫折とそれを自然体で乗り越えたいと願う、ある種自分語りのような歌を歌わせてもらった。

「すみません、この場にあった歌が無かったんで」──恐縮気味に僕がことわる。
「その、、、に何が、あん、、?」──緊張から解き放たれた安堵感でぼうっとしていて聞き逃してしまった。
「え?」──急いで聞き返す。
「その先に何があんの?」

酔いが一気に冷めて再び背筋が伸びた。これはまっすぐに答えねば。

「僕にも、まだ、分かりません。ですが何かあるとかないとかではなく、僕はこの道を進み続けた」
「あ、じゃなくて、もう一曲何かねえのかって聞いてんの」

推測だが、札幌のフルカワ君も (彼もチバさんからのアンコールを受けて) 二曲歌ったんだからお前もな、ってことだったのだろう。心を込めて「クジャクとドラゴン」を歌わさせてもらった。チバさん、平成の最後に素晴らしい夜をありがとうございました。また是非どこかでお酒をご一緒させてください。

   ◆   ◆   ◆


▲マスタリングエンジニア:阿部充秦氏と

アルバムタイトルはずばり『epoch』。札幌の夜から遡ること二週間前、自分のツアー大阪公演からの名古屋移動で途中泊した彦根の朝に決めた名前だ。告知解禁が迫った8月のツアーの券面の都合でツアータイトルを決める必要があり、故にアルバムのタイトルを決めねばならず、ひねり出そうと朝早くから缶コーヒーを片手に一人散歩していて思いついたのがこれだった。特に手応えや閃いた実感があったわけではないが、改元のタイミングでアルバムを制作しているという“なんとなく”な偶然を“なんとなく”言葉にしておくのは“なんとなく”今の僕らしい気がした。折り返しの目的地にしていた琵琶湖まで片道30分弱、あと1キロ行けばといったところではあったが、紙に書いた“epoch”の字面を拝みたくて引き返した。

ホテルについて念のためにググったら某アーティストのアルバムにも同タイトルのものがあることが判明。が、メモシートにボールペンで書いた全小文字の僕の“それ”は、某アーティストのものと比べて随分脱力して見えて少し笑えた。エポックメイカーを目指すような野心とは無縁の、たまたま平成の終わりに録音して令和のはじめに混ぜ終わるという、僕の素直でまっすぐで素晴らしいニューアルバムに似合う良いタイトルだと思った。それから、やはり琵琶湖を見ておくべきかな、と思ったのだが、もう集合の時間だった。

今の僕はドラスティックな何かをしようなんて微塵も思っていない。ただ、いい音楽を作る。しかも自分にとってのいい音楽を作って演奏する。それだけのことだ。それだけのことで僕の体は赤く赤く燃えている。仮に野心があるとするならば、昔より自由に歌って自由に弾いて自由に音楽を楽しんでいる僕の姿を、より沢山の、出来るだけ沢山の人にみてもらえたら素晴らしいのになと。だけどそれは野心と呼ぶにはあまりにも無邪気過ぎていて、願いと呼ぶ方が僕には適当だ。また日比谷の野音で歌えたらな。武道館でギターを弾いてみたいな。といった類いの。

では最後は思いっきり自惚れさせていただいて。

えー、僕の新しいアルバムですが、こういう時に最高傑作だなんてのはみんな決まりきって言うし、言うだけなら簡単なんだけど、こと今作に関しては、それこそ彦根の朝以前は日本語で“傑作”ってタイトルにしようと思っていたくらい(笑)、真に最高傑作です。“ソロになってからのか?”って、いやいやとんでもない、これは僕のキャリア最高傑作。メロディー、アレンジ、音、声、ミックス、マスタリング、さらには哲学的になるけど、土台となったこれまでの僕の音楽、とそこに関わった全ての人々、加えて、まだ僕の音楽を聴いたこともないけどこれから関わる“あなた”も含めて、それら全てが最高傑作『epoch』の世界を作るんです。

この道の先に何があるか分からないけど、『epoch』という自分史上最高のバスが来たんで、そいつに乗って今より少しだけ前に進もうかなって思う、そんな春の日々なんです。

撮影◎中條のぞみ (2018.4.21@渋谷WWW)

■4thアルバム『epoch』(エポック)

2019年7月3日(水)発売
NIW147 / 3,056円(+税)
「ドナルドとウォルター feat.原昌和(the band apart)」
「クジャクとドラゴン feat.安野勇太(HAWAIIAN6)」
「インサイドアウトとアップサイドダウン feat.ハヤシヒロユキ(POLYSICS)」
Base Ball Bearとのコラボ新曲含む、全10曲収録予定

■<フルカワユタカ ワンマンツアー「epoch」>

08月31日(土) 千葉・千葉LOOK
open17:30 / start18:00
09月01日(日) 神奈川・横浜F.A.D YOKOHAMA
open17:30 / start18:00
09月08日(日) 群馬・高崎club FLEEZ
open16:30 / start17:00
09月29日(日) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
open16:30 / start17:00
10月14日(日) 埼玉・西川口LIVE HOUSE Hearts
open17:30 / start18:00
10月19日(土) 京都・京都磔磔
open18:00 / start18:30
10月20日(日) 岡山・岡山ペパーランド
open17:30 / start18:00
10月22日(火) 静岡・静岡UMBER
open18:00 / start18:30
10月27日(日) 宮城・仙台space Zero
open16:00 / start16:30
11月02日(土) 北海道・札幌COLONY
open17:30 / start18:00
11月03日(日) 福岡・福岡Queblick
open16:30 / start17:00
11月09日(土) 大阪・梅田Shangri-La
open18:00 / start18:30
11月10日(日) 愛知・名古屋APOLLO BASE
open16:30 / start17:00
11月16日(土) 東京・渋谷TSUTAYA O-WEST
open17:30 / start18:00
▼チケット
4,200円(税込/Drink別)
一般発売:7月6日(土)
【オフィシャルHP 二次先行受付】
受付期間:5月10日(金)12:00~5月21日(火)23:59
http://eplus.jp/furukawayutaka19/

■アコースティック企画<眠りたくない春の夜は>

05月20日(月) 東京・下北沢風知空知
open18:30 / start19:30
▼チケット
¥3,700(税込・別途ドリンク代¥600)

■<HAWAIIAN6 presents 監獄レスラーNIGHT>

06月12日(水) 千葉・柏ALIVE
open18:30 / start19:00
▼チケット
前売り¥3,000 / 当日¥3,500
発売日:4月27日(土)

■<FEVER 10th ANNIVERSARY フルカワユタカ × Keishi Tanaka>

08月06日(火) 東京都 新代田FEVER
open18:45 / start19:30
▼出演
フルカワユタカ / Keishi Tanaka
▼チケット
¥3,900 (税込/1Drink別)
【ローチケ先行販売 ※抽選】
受付期間:5月13日(月)12:00~5月19日(日)23:59
https://l-tike.com/st1/fever-furukawayutaka-keishitanaka

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