【インタビュー】BAROQUE、重要作『SIN DIVISION』完成「本当の悪は、善より純粋なのかもしれない」

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■“ああ、こういう表現だったんだな”と
■ライヴに来て気付いてもらえれば

──これは作り手自身に語ってもらうべきことじゃないかもしれませんけど、実際、この音が今の世の中にどんなふうに響くことになると想像していますか?

圭:そうだなあ……。音楽の聴き方というのも多様化しすぎていて、正直、わからないんですよね。世代によっても全然、音楽への価値観とかが違うだろうし。だからこそ世の中みんなが好きになるようなものというのが生まれづらくなってるんだろうし、これがいわゆるJ-POP、J-ROCKの第一線に出ることになる音楽なのかといえば、それは違う気がするし。そういう意味では、どう受け止められるかなんてわかってないのかもしれないですね、俺らは。ただ、ここ3作のBAROQUEのアルバムは全部そうですけど、たくさんの人に聴いてもらいたい、これはそれに値する楽曲なんじゃないかと信じて作ってるというのもあるし、そのエネルギーが高まってるのは感じてるんです。なんかこう、普遍的なものというか、時間が経っても変わらないものにはなってるはずだ、と。10年後、20年後に聴き返してみたとしても。

怜:世の中にどう響くかというより、まずはとにかく受け取ってもらえればいいな、と思うんです。だからそういう意味では俺も、あんまり深く考えてはいないかもしれない。

圭:最近の俺らはそうかもね。

怜:うん。それを考えて作ってたわけじゃないんだな、というのを改めて実感してるというか。とにかくこれを生むことにばかり夢中だったから。制作期間も短くてすごく大変だったけど、楽しかったんですよね、こうして音楽と向き合ってる時間が。全部が終わった時、実際そんな話もしてたんです。それこそライヴでは『PUER ET PUELLA』の世界を表現しながら、夜遅くに帰ったらこのアルバムに向き合って、今度は悪魔になったりしなきゃいけなかったわけだけど(笑)、なにしろ好きでやってることなんで。結果、楽しかった、ということに尽きちゃってるというか。だからもう、あとは受け止めてくれた人たちに任せます。それぞれの聴き方もあるだろうけど、いつ、どんなふうに聴かれてもいいと思ってる作品だし。自分たちとしては、どんな人が聴いてもいいと思ってくれるはずの作品だと信じられてるだけでいいんじゃないかな、と思う。

──そんな言葉を聞けて嬉しいです。結局、“たくさんの人に聴いてもらえる音楽を!”という発想で作ろうとすると、その時代にいちばん持て囃されているものに接近しようということになりがちな部分というのがあると思うんです、音楽に限らず全般的に。そういう考え方では全然ない、ということが重要だと思います。

圭:2人とも、そこでマーケティング的な努力をして上手くやれるタイプでもないし。この3枚を通して、自分たちがよくわかってる音楽、BAROQUEならではの個性というのを突き詰めた表現を常にしてきたつもりだし、いつのまにかその存在が特別なものになったり、他とは違うものになればそれでいいのかな、と思うんです。そのエネルギーをどこまで高められるかにかかってるかな、と感じます。

──ええ。売れているものに近付こうとするのでも、他とは違うものを作ろうとするのでもなく、自分たちが表現したいことを目いっぱい突き詰めたら、他にはないものになった。しかも往年のヴィジュアル系の王道に通ずる要素もありながら、それを30年続けてきたバンドが作るものともやっぱり違う。そういう意味でも、本当にBAROQUEならではのものになっていると思うんです。

圭:そうですね。そこでの感覚については、ここ1年くらいで腹を括れたようなところがあって。もう迷わない、というか。以前はやっぱり、そういうところで考え込んでしまいがちなタイプでもあったんで。1曲作っても“いや、でも今の時代はこういう感じだし……”とか考えてしまったり。

──時代に対して遅れをとっていたくない、という気持ちはどんなアーティストにも少なからずあるはずだと思います。

圭:そういうのも当然あるし、やっぱり考えちゃうと思うんですよ。それが届くか届かないか、ということを。ここまで突き詰めてしまった時にファンの人たちは理解してくれるだろうか、とか。そういうことを気にしつつやってたと思うんです。だけどそういうことを考えてると時間ばかりかかっちゃうんで、最近はもう、いいものが作れたらもうそのままでいい、という感じで。それが自分の感覚なんだから他のことはどうでもいや、ぐらいの感じになっていて。そうやって腹を括れたらすごくスピードが上がった、というのものあるんです。

──自分たちの感覚を信じられるからこそそういったスタンスになることができたし、それが現在のBAROQUEにとっての制作プロセスをより機能的なものにした、ということですね。同時にそれは、聴き手のことをより信頼できているからでもあるはずだと思うんです。

圭:ある意味、そうですね。聴き手に対しても、自分が感じてるそのままのものを出すことが誠実さというか、やらなきゃいけないことかなと思うようになった。

怜:その感じというのは、やっぱり伝わてくるんですよ。それは自分がいちばん良くわかってる。なにしろ誰よりも先に、圭ちゃんの発するものを俺が受け取るわけなんで。そこでの速度感もそうだし、曲に対してのその瞬間に感じてることとか……。そこから純粋に、“ああ、今すごくいいモードなんだな”と思わされたし。だからこそ俺も、そこに対してはすごく純粋に向き合ってましたけど。


──素晴らしいことだと思います。さて、ここのところ、やや複雑な時間の流れを経てきました。ツアーをしながら次のアルバムを作り、それが出る頃にはまた次の、と言うような。この先に控えている<SAINTS OR SINNERS>は、純粋にこのアルバムに伴うツアーということになるわけですか?

圭:基本的にはそうですね。ただ、『SIN DIVISION』には全12曲ありますけど、これまでの2枚からの曲も当然入ってくると思うんで。

──つまり“saint”にあたる曲たちが入ってくるわけですね?

圭:そういうことです。そこで、どの曲がどんなふうに入ってくると面白いのかな、とか考えていて。さっきの話じゃないけども、この赤黒いものが軸になってるなかに白いものが置かれることで、それがいっそう真っ白く見えることになると思うんですね。そういった対比によって感じられることもあるだろうし、より闇も深いものとして感じられるようになるはずだし。そこで“光”の役割を果たす曲にはどれがいいんだろう、とか。そこは選択肢も増えてきてるわけなんで、いろいろと楽しみたいな、と思いますね。

──衣装はどうしましょう? これまでサポート・メンバーの方々も白いコスチュームを着ていましたけど……。まさか全員が赤い服を着るとか?

怜:あ、そっか。どうしよう?(笑)でもまあ、そこは照明の使い方とかでもいろいろと工夫できるだろうし。まだ実際にはセットリストも決まってはいないんだけど、こうして3枚揃ったわけで……なんか、いちばんいい時期を迎えられるんじゃないかな。お客さんにとってもそうだと思う。

──前作完成の時点では、この2人体制になってからの曲だけでワンマン・ライヴが成立する曲数が揃った、という状況だった。そしてそこに今作が加わったことによって、より立体的で深みもあるライヴができるようになる。そういう意味でも今回のツアーは、この体制になってからの時間の流れの集大成のようなものにもなるはずで。

圭:そうですね。なんかやっぱ自分たちでも、こうして自分たちの両面を形にして出せたことで、ある意味、完全体になった気がするというか。より自然な姿、本来の姿を見てもらえるんじゃないかと思っていて。精神的な制約がなくなった、というか。

怜:うん。だから、これを作って良かったな、と思います。ここでの歌い方についてはもちろん自分としてはいろいろと試してきたりもしたし、感情面でもあれこれ考える時間というのがあったんですけど……実際、俺自身、かならずしも綺麗な生き方をしてきたわけじゃないし、そういうところも出してしまっていいんだな、というのを曲にわからせてもらえたというか。曲を受け取るということは、そこで俺も考える、ということなんで。考えて、答えていく。そこで自分にあるものすべてを使って表現していいんだな、と改めて思えました。そういう意味ではある意味、気楽といえば気楽なのかもしれない。

──すごく健全な状態であれているわけですよね。

怜:うん。たとえばライヴに向かっての緊張感というのも当然ありますよ。だけど変に肩に力が入ってるような感じではない状態でライヴができるだろうな、と思う。こうしようああしようと考えるんじゃなくて、“ああ、多分こういうことが起きるんでしょうね”みたいな感覚で。

──ある意味すごくコンセプチュアルにも思える今作が、逆に自由さや自然体をもたらしてくれる。それこそアルバムの物語に沿ったライヴをやろうとすれば、赤い絨毯が敷かれたステージに祭壇があって、燭台があって、そこに悪魔が……みたいなセットを思い浮かべてしまいそうになりますけど、そういうことをやればいい、ということではないだろうし。

怜+圭:あはははは!

怜:でもそれ、わかる。だから多分、そこは受け取ってくれるみんなに自由に考えてもらって、BAROQUEのライヴに来て、“ああ、こういう表現だったんだな”と気付いてもらえればそれでいいと思うんです。本当に祭壇とかあったら面白いですけどね(笑)。

──どうなるか楽しみにしています。さて、ここで気になるのは、これが完成したとなると、しばらくは創作モードにはなりにくくなるのかな、ということなんですが。

圭:いや、実はもうやってますからね。新しい曲も作ってるというか、実際すでにできてるんで。このアルバムの制作の最後のほうから、同時進行で始めてるんです。だからこの先には、また新しいことが待ってますよ。

取材・文◎増田勇一

■アルバム『SIN DIVISION』


【一般流通盤 (CDのみ)】PGSK-031 ¥3,500+税
※紙ジャケット スリーブケース仕様

【会場・通販限定盤(Blu-spec CD2+CD+USBハイレゾ音源)】
PGSK-032〜33 ¥15,000 (税込)
※数量限定
※特殊パッケージ仕様
▼封入特典
・DISC 2 (ライブ音源収録)
・USBメモリ (『SIN DIVISION』ハイレゾ音源収録)
・インタビューを掲載した大判デザインブックレット
・スペシャルパッケージ

▼DISC 1 ※一般流通盤および会場・通販限定盤共通
I. RITUAL
II. END VISION
III. SIN QUALIA
IV. REDME
V. FALLEN VENUS
VI. SUCCUBUS
VII. SABBAT
VIII. GLOOMY LILITH
IX. FROZEN ABYSS
X. COCYTUS
XI. I LUCIFER
XII. INFERNO
▼DISC 2 ※会場・通販限定盤のみ
1. BIRTH OF VICTORY
2. PUER ET PUELLA
3. HITO NO IRO
4. AN ETERNITY
5. GIRL
6. YOU
7. RINGING THE LIBERTY
※Live Take at 代官山UNIT on July 31, 2019
8. PURIFY
9. LAST SCENE [Acoustic Ver.]
※Live Take at 日本橋三井ホール on April 30, 2019

通販サイト http://www.galaxybroadshop.com/artist/baroque/

■<BAROQUE TOUR「SAINTS OR SINNERS」>

2月27日(木) 大阪・梅田Zeela
3月07日(土) 愛知・名古屋APOLLO BASE ※公演中止
4月09日(木) 東京・TSUTAYA O-EAST
5月04日(月・祝) 大阪・umeda TRAD
5月05日(火・祝) 静岡・浜松窓枠
5月09日(土) 宮城・仙台MACANA
5月10日(日) 岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
5月17日(日) 千葉・柏PALOOZA
5月23日(土) 群馬・高崎club FLEEZ
6月06日(土) 滋賀・滋賀U★STONE
6月07日(日) 岡山・岡山IMAGE
6月28日(日) 神奈川・横浜Bronth.LIVE
7月03日(金) 石川・金沢vanvanV4
7月04日(土) 長野・長野 LIVE HOUSE J
7月10日(金) 埼玉・HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3
7月12日(日) 京都・京都MUSE
7月18日(土) 愛知・名古屋ReNY limited
7月19日(日) 新潟・新潟CLUB RIVERST
7月26日(日) 兵庫・神戸VARIT.
8月13日(木) 東京・マイナビBLITZ赤坂

▼Support Members
Bass:高松浩史(THE NOVEMBERS)
Drums:KENZO
<5/9仙台、5/10盛岡、5/23高崎 公演のみ>
Bass:高松浩史(THE NOVEMBERS)
Drums:山口大吾(People In The Box)

▼チケット
【5/4梅田公演~7/26神戸公演】
オフィシャル先行受付:3/1(日)12:00~3/14(土)21:00
https://eplus.jp/baroque20-hp/
【8/13 BLITZ公演】
オフィシャル先行受付:4/1(水)12:00~4/21(火)21:00
https://eplus.jp/baroque20-hp/


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