【インタビュー】松本孝弘、ソロアルバム『Bluesman』完成「それでもまずは想うことが大事だよね」

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■去年の旅先だったと思います
■BARKSさんの記事で知って

──では、改めて楽曲についてうかがいたいと思います。「BOOGIE WOOGIE AZB 10」では、フェンダー製のスティーヴィー・レイ・ヴォーン・シグネチャーを使ったそうですが?

松本:これはBARKSさんの記事で見たんじゃないかな。載せてましたよね?

──はい。去年、間違いなく掲載しました。『Winter NAMM 2019』で発表されたもので、フェンダー・カスタム・ショップが徹底したプロファイルでレイ・ヴォーンのギターを忠実に再現したモデルですね。

松本:そうですよね。そのギターが発売されるというニュースをBARKSさんの記事で知って。去年の旅先だったと思います。

──ありがとうございます(笑)。

松本:もちろんレイ・ヴォーンは大好きだけども、これは単純にギターとしてよさそうだなと。実際に試奏してみたら、本当によかったんです。ただ、ブリッジにレフティ用が搭載されているモデルなので、そこは普通のリバースではないブリッジに改造して、ピックガードも“SRV”というロゴマークを“TAK”に変えました。ピックアップ(TEXAS SPECIAL)の出力の関係だと思うけど、普通のストラトよりちょっと歪むんですよね。そして音が太い。

──ストラトならではのトーンで奏でられたプレイが秀逸です。最後はアーミングも披露されていますか?

松本:そうですね。この曲は一番最初にブリッジのセクションからできたんです。ずっと3連のフレーズができて、コードは後からつけました。今回はけっこうそういうパターンが多いかな。

──「Be Funky !」のカッティングも粋ですね、遊び心もあって。

松本:セブンスとナインスを交えたプレイなんですけど、ああいうのいいですよね。だいたいどのセクションでも5本くらいのギターでそれぞれ弾いてみて、それらを聴き比べたうえで使うギターを決めるんですけど、やっぱりあのカッティングはストラトが合いました。

──「Here Comes the Taxman」ではオルタードスケールを使っていますか?

松本:使ってるかもしれないね。「BOOGIE WOOGIE AZB 10」の最後のほうでもオルタードっぽいのを使ったと思います。

──「Rainy Monday Blues ~ 茨の道」はホールトーンスケールを使ってますね。

松本:ホールトーンは、どこでもアリなスケールですからね(笑)。

──そういった音使いは2010年のラリーさんとの共演以降の活動が血肉になっているのかなと思ったのですが、いかがでしょう?

松本:そうですね。ただ、それが自然に出てくるときもあるけれども、ある程度コード進行を考えながら構築しているところもありますね。

──「漣 <sazanami>」と「Waltz in Blue」は、トーンやニュアンスの美しさが凝縮されていますが、やはり弾いていて気持ちのよいものですよね?

松本:そうですね。僕、メジャー系よりはこういうマイナー系のほうが得意なんですよね。自分ではそう思ってます。


──「花火」もマイナー系で、日本歌謡的な切なさがあります。そして意外と、B’zの「LOVE PHANTOM」にも近いコード進行じゃないですか?

松本:あ、そうですか? 確かにこの感じのコード進行は、B’zの曲にもあると思いますね。マイナー系で言えば、僕たちの世代は昭和歌謡曲が全盛の時代だったから、本当に毎日のように歌番組が放送されていたんですよね。実際、いい曲がたくさんあったんですけど、その中でメジャー系の曲はあまり記憶にない。日本のマイナーを代表するような演歌の人気もすごかったので、そこに影響を受けないわけがないですよね。だって、生活しているだけで耳に自然と音楽が入ってくるんだから。

──特に「月光かりの如く」から「Asian root」までの流れは、“ジャパニーズ・ブルーズマン”という言葉の意味が感じられます。

松本:すごく日本的ですよね。

──はい。最後の「Lovely」は代表曲のひとつとなりそうな楽曲だと感じました。

松本:うん、これは意外かもしれないけど、今回のレコーディングで一番最初にできた曲なんですよ。これもメロディから……出来たフレーズにコード進行を練ったんだけど、いい雰囲気になったと思います。

──全編をとおして基本的にはバンド形式で、場合によっては上モノとしてストリングスやホーンが加わる編成ですが、このスタイルが最も演りやすいということでしょうか?

松本:リズム隊があるないは別として、僕のプレイは、やっぱりコードがないと自分を生かしきれない気がするんですよ。ピアノでもギターでもいいから、和音が鳴っているうえで弾いたほうが自分のよさを出せる。だから「漣 <sazanami>」のように、ストリングスとギターだけで演ってる曲もあるんですよね。

──もうひとつ気になるのが、Tak Matsumotoの活動として、“よっしゃ!”と思えるラインはどこなのでしょうか?ということでして。というのも、もはや売り上げやノルマを気にする必要もないでしょうし、「50歳までにグラミーを獲る」という目標も2011年に叶った。今、目指す場所はどこにありますか?

松本:それはありますよ。まだ言わないですけどね(笑)。グラミーだって、だいぶ前から「50歳までに獲る」と自分の中では決めていて。前回のBARKSさんのインタビューでも話しましたけど、『華』(2002年発表)の一番最後に「2011」っていう曲を収録しているんですけど、それは、“たぶん50歳になったらジャズっぽいことやってるんだろうな”と思って創った曲で。そうしたら、きっちり“2011”年にグラミー賞を獲ることができた(笑)。

──そういう予言めいたことを現実化してしまいながらも、しかし現在の目標や想いは自分のなかで秘めておきたいんですね?

松本:はい、まだ言わないです(笑)。何もしなければ何も叶わないだろうし、やっぱり想うことは大事だよね。“こうなったらいいな”って。振り返れば、B’zでデビューしたときもそうだったんですよ。目標に向かってもちろん努力はするけれど、努力しても叶わないことだってある。ただ“自分には無理”とか思わないことが大切で。僕自身、“是が非でもやってやる!”ってタイプではないし、“なったらいいのにな”ぐらいなんだけど、それでもまずは想うことが大事だよね。

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