【インタビュー】ベリーグッドマン、人生を映した「愛」の歌

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背中を押す応援歌よりも、優しく包みこむ愛の歌のほうが、心を強く動かすこともあるんじゃないか?──。ベリーグッドマンの新曲「それ以外の人生なんてありえないや」は、それぞれの実体験を強く反映させた、究極のラブソングと言えるバラードだ。この曲を聴いたファンからはウェディングソングとして結婚式で使用したいと声も上がっている。それぞれが思う結婚観について、歌詞に込めた本当の意味について、そして、新たな挑戦となる「結婚式場ツアー」について──RoverとMOCAに話を訊いた。

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■「ちょっと、背中押しすぎたな」

──ベリーグッドマン流の、至高のラブソング。作ろうと思ったきっかけは?

Rover:デモテープを見返すと、2019年の11月だったんですけど、「TEPPAN MUSIC」(※2020年に設立した自主メジャーレーベル)を始めるにあたって、新曲をばんばん作ろうという時に、4曲か5曲か、デモテープを作った中の1曲ですね。番組収録か何かの帰りに、エレベーターの中で僕がボイスメモに録ったものをメンバーに形にしてもらって、歌入れしたらいい感じになったので。「あー、これ、結婚式っぽいな」と思って、MOCAとウェディング特集みたいなアルバムをリリースするとか「そんなんも面白いよな」と言ってたんですよね。でもそのあとコロナになっちゃって…いろいろありました。

──3年越しの、長い仕込み期間を経てのリリースですか。

Rover:でも最初はラブソングを作ろうという感覚はなかったんですよ。僕があんまりラブソングに興味がない時期で、どっちかというと新たな応援歌だとか、メッセージソングをもっと作りたいと思ってたんですけど、ふたを開けると…「アイカタ」という曲が作れたこともあって「このタイミングでラブソングを出すのはいいよな」ってなったんですよね。コロナのせいで、結婚式ができなかった人がすごくたくさんいるという話を聞いたこともあってこのタイミングで出したいな、と。

MOCA:ワンコーラスぐらいのデモが上がった時に、曲に対して思い入れを重ねたほうがいいと思ったんですよ。誰かのドラマを。で、共通の友達のカナちゃんという、一個下なんですけど一個下に見えない女の子がいて(笑)。その子の結婚式にサプライズで歌いに行こうということで、そこに合わせて作っていくことになったんですけど、(新型コロナウイルス感染症の影響で)結婚式がどんどん延期になってしまって。その間にこの曲は、すごくいい形に仕上がっていったので、じゃあリリースしちゃおうと。

──はい。なるほど。

MOCA:それと戦略的な話を言えば、「ベリーグッドマン=応援ソング」みたいなことを言っていただくことが多いんですけど、冷静に分析してる時に、Roverとの共通の知り合いのサエキくんに「ちょっと、背中押しすぎたな」と言われたんですよ。昔はそっと背中を押してくれる感じだったのに「今、ちょっと押しすぎやで」みたいなことを言われた時にハッとした瞬間があって、「確かにな」と。自分たちで「応援ソングだ、応援ソングだ」と思いすぎて、気が付いたら相手の首根っこつかまえて「一緒に行こうぜ!」感が出すぎていたかもしれないと思った時に、作ったのが「アイカタ」という曲で、BGMとしても聴き流せる程度で、でもメッセージは込めてるという、そういうものができた。応援ソングというものは、自分たちの中でいい意味で距離を取ったほうが冷静に見れるんかな?と思った時に、「アイカタ」ができて、さらにその派生が「それ以外の人生なんてありえないや」かな?と思ってます。ほかにもまだ出してないけど、Roverが作ったいい感じの優しい曲もあったりして。そういう流れがあって、また応援ソングに戻って行くんかな?という、そんな思いもありました。



──よくわかります。いろんなことが重なって、ターニングポイントが来たのかもしれない。

MOCA:「アイカタ」の前に応援ソングの「Dreamer」を出していたので、次は愛のある歌がいいなと思ったんですよ。



Rover:でもなんか、そう思ったのも、ライブができなくなったからだと思うんですよね。

MOCA:ああ、確かに。

Rover:ライブだったら気にならないんですよ。背中を押しすぎたりとか、馬鹿騒ぎしすぎてても。でもみんな家にいる時間が増えて、今までの人生とか、これからのことを冷静に考える人が増えた感じがあって。それに対して、「Dreamer」はすごく挑戦的だったし、「アイカタ」はすごく寄り添ったし、今回の「それ以外の人生なんてありえないや」は、ちょっと明るい未来が見えてきたかもしれない、みたいな気持ちは出てきてますね。



──MOCAさんのリリックにある、「ボロボロの車で向かうデート」とか、「ほのぼのとしてるパジャマ姿」とか、かなり具体的ですよね。画が浮かんでくるような。

MOCA:歌詞はおのおのが大切な人を思って作ったんですけど、僕はまさに奥さんと付き合ってる時のことですね。事務所の社長に「ワーゲンバス、買ったるわ」と言われて、ボロボロの車をもらって、それでいつも海沿いを走っていた、みたいなシーンを思い浮かべて書きました。パジャマも実際にあったシーンですね。ジェラピケじゃなかったですけどね、嫁のパジャマは。

──あはは。なぜジェラピケ。

MOCA:ジェラピケのほうが良かったんですけど(笑)。嫁は昔ハロウィンの時に着てた、スーパーマリオのパジャマを着るタイプなんで。ちょっと痛いんですけど。

Rover:痛いとか言うな(笑)。パジャマに痛さとかないやん。

MOCA:それで宅急便とか、受け取ってるんで。ちょっとその神経がわかんないですけど。

Rover:ええやん別に(笑)。

MOCA:そういうピュアな、飾らないところも素敵に思う、ということですね。

──いい話じゃないですか。

MOCA:でもこの曲はやっぱりサビですね。サビが良かったんで、何やってもいけるなということで。

──サビ、Roverさんですよね。これはどんなふうに?

Rover:僕は結婚していないんで、結婚してる人の気持ちはわかんないですけど。結婚する時って、男性から奥さんに対してすごい覚悟がいると思うんですよ。僕は姉二人、妹一人いるんですけど、全員結婚して出産もしてて…で、これはあまり言ってないんですけど、次女の旦那が9月に病気で亡くなったんですよ。まだ35歳だったんですけど、19歳で結婚したので16年ぐらい一緒にいて、子供も3人いて。亡くなった義理の兄は、すごく奥さんを大切にする人なんですよ。なのでこの曲のイメージはそんな感じです。もちろん新郎新婦に向けて歌いたいんだけど、♪それ以外の人生なんてありえないや、というところは義理の兄はこういう思いでずっといたのかな?とか、サビをレコーディングする時にすごく思いましたし、そのあとの♪君に愛を込めて、のところもすごく頑固で男らしい旦那さんだったんですけど、もろいところもあるし、ちょっと自信もないし、でも本当に奥さんのことが大好き、みたいな、そういう男性像があったんですね。僕の実体験ではないけど、ある意味実体験みたいな感じで書きましたね。

──それは…深い話です。

Rover:そう思って作り出した曲ではないから、自分でもびっくりしたんですけど。

──それ、どこまで書いていいかわからないけれど。それを知って聴くと、歌詞の深みがまるで違って聴こえます。

Rover:僕としては隠してるわけじゃないんで、書いてもらって大丈夫です。その義理の兄の次男、僕で言う甥っ子が『SING SING SING』(2014年)のイントロでしゃべってる子なんですよ。そのあと『SING SING SING 4』(2016年)でも、しゃべってもらってますね。そういうのも含めて、義兄貴は僕らのことをすごく応援してくれたし、あの人の魂みたいなものは、絶対残したいなと思いましたね。「ラブソングで世界は救えない」と言う人もいますけど、違う意味のラブソングなら行けるんじゃないか?と思って書いた、そこは挑戦してますね。

──ラブソングであり、ライフソングだと思います。出会いの話から、最後は「何年経っても年老いても」まで行くし。これは年上の人にも響くと思います。

Rover:これ、レコーディングで20本(回)ぐらい歌ってるんですよ。最後の方は疲れてきたし、不安定さもあったりするんですけど、それでも今回は、しっかりきれいに歌うことだけが正解じゃないんだなという思いがあって、けっこうヘタクソなテイクを使ったかもしれない。どれが正解やろ?と思った時に、「かっこつけないものがいいな」という感じでしたね。自分の中で、あまり見せたくなかった、不安定さを見せるというか、そんなイメージです。まあ、MOCAの書いてきたメロディは、全部僕が直したんですけどね。

MOCA:おい! ほんまのこと言うなよ。

Rover:ずっと同じ音やったんで。

MOCA:それは、8年前からずっとやろ!

──確かにこの歌は、かっこつけずに、語りかけるように歌っているほうが、伝わると思います。

Rover:ありがとうございます。リリースできて良かったです。このあと、結婚式場でのツアーがあるんですけど、それも良かったですね。アイディアを出してくれた、事務所の社長に感謝です。

MOCA:まあ、このアイディアを出したのは僕なんですけどね。

Rover:ああそうか、MOCAか。ありがとう。

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