【プロミュージシャンのスペシャル楽器が見たい】BANANA NEEDLE キムラ、超ユニークなタム無し3スネアのドラムセット

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BANANA NEEDLEの幅広い音楽性を多彩な音色とリズムで支えているのがドラマーのキムラ ミツノリ。試行錯誤を重ねながら今の形にたどりついたという彼のドラムセットは、タムがなくスネアが3つという超ユニークなもの。どうしてこのようなセッティングになり、このセットでどのように演奏しているのだろう。同バンドのオルガン市塚裕子、ベース三重野徹朗にも同席してもらって、キムラ ミツノリに話を訊いた。

――とてもユニークなドラムセットですが、どんな構成になっているんですか?

キムラ:まずタムがないので、見た目がちょっと変わってますよね。普通タムがある位置には、ローランドのSPD-SXというサンプリング・パッドをつけています。それから、フロアタムのところにあるのがいわゆるフロアスネア。そしてハイハット側にもサブスネアがあるので、メインのスネアと合わせて3つのスネアが並んでいることになります。


――どんな狙いでこういうセットを?

キムラ:BANANA NEEDLEはロックとかファンク、ラテンなど、色々なジャンルの音楽をやっています。だから色々な音を出す必要があって、普通のセットでは対応できなくなってきたんです。あれも追加、これも追加、という感じで、いつのまにかこういうセットになっちゃいました(笑)。

――さまざまな音を出すために色々と追加していくのは理解できるんですが、なぜタムがなくなっちゃったんですか?

キムラ:色々な音を出そうとしていたら、叩き方も変わってきたんです。それで叩きやすいようにまずハイハットの置き方を変えたら、タムが普通の位置に置けなくなっちゃって。色々とセッティングを試していたんですが、ベースの三重野さんから“タム、いらないんじゃない?”と言われたこともあって、思い切ってタムをなくしてしまいました。


――タムがないドラムセットって、違和感はないんですか?

キムラ:やっているうちにこだわりがなくなってきて、タムがなくてもいけるな、と思うようになりました。タムのぶんはフロアタムでも補えるし、セッティングの幅も広がった。今はこれがやりやすいですね。

――バスドラムやフロアタムはどんなものを?

キムラ:今日はスタジオのものが混在したセットですが、普段はヤマハのYD9000シリーズで、22インチのバスドラム、16インチのフロアタムです。



――そこにスネアが3つ。

キムラ:セッティング的には、3スネア1フロア、という形ですね。

――3つのスネアの真ん中が、メインのスネアですね?

キムラ:そうです。これはラディックのLM400で深さは5インチ。69年のビンテージものを見つけて買いました。材質はラディアロイ。ラディック独自のアルミ合金ですね。もう王道のスネアですし、カッコいいから気に入ってます。


――左手側のサブスネアはどんなものを?

キムラ:とくにどのスネアと決まっているわけではなくて、なんでもいいからとにかくハイピッチのスネアを置くことにしています。サイズはたいてい14インチですが、浅めのものを使うことが多いです。レコーディングではちょっと小さめの10インチのスネアで、おもちゃっぽい音を出すこともあります。


――そして右手側がフロアスネア。

キムラ:エリスアイランドというブランドのサイドスネアです。脚がついていてフロアタムっぽい形ですが、口径14インチ、深さが10インチという、フロアタムとしてはちょっと変わったサイズです。裏にスネアと同じようにスナッピーがついていて、ちょっと前に流行った深胴スネアみたいな音が出せるんです。横についているスイッチでスナッピーをオフにすれば、もちろんフロアタムとして使えます。

――スネアだけでなくフロアタムとしても使っているんですか?

キムラ:両方使いますね。曲によってずっとスネアとして使うこともあるし、曲の途中でスナッピーのオン/オフを切り替えることもあります。


――3つのスネアはどのように使い分けているんですか?

キムラ:基本的にはピッチで。左手側がハイピッチ、右手側のフロアスネアはローピッチという並びになっているので、盛り上がったら左手側に行って高い音を出す、という感じかな。あとはジャンルでも使い分けます。スカとかラテンとか、低いピッチのスネアでは雰囲気が出せないときには、ハイピッチのサブスネアをメインで使いますし、ヒップホップとかループ系みたいな音楽のときは、ローピッチのフロアスネアがメインになりますね。

――ピッチの違うスネアが常時3つある、というセットなんですね。

キムラ:そうですね。曲ごとにスネアを交換して使い分ける、という方法もあると思いますが、僕らの場合はライブでMCもほとんどなくて、曲の間がなくぶっ続けでやることが多いんです。だから取り換える時間がない。だったら並べて置いてしまえ、と(笑)。

――シンバルはすべてジルジャンのKシリーズ。

キムラ:基本的にKジルでそろえてます。20インチのライドと、ダーククラッシュの18と16が基本。この構成も王道的ですよね。これに、必要に応じてチャイナシンバルや数枚重ねたエフェクトシンバルを追加します。Kジルにしたのはもちろん音が好きだからですが、昔から色々なドラマーが使っているのを見て憧れていた、というのも大きいですね。チャイナシンバルを左側にセッティングするのは、僕の好きなヴィニー・カリウタの影響です。



――すべて、比較的ダークな音色のシンバルですね。

キムラ:レコーディングではほかのシンバルも色々使いますが、ライブだとメンバーから“シンバルがうるさい”と言われることもあるので、今はダークなKジルに落ち着いています(笑)。

三重野:一時期ほかのメーカーのシンバルも使ってたよね。でもマイク乗りはきれいでも近くで演奏してると聴こえにくいものもあったし、うるさいのもあった(笑)。今のKは僕らにとってもちょうどいい感じ。


――エフェクトシンバルはどんな音のものを?

キムラ:今日持ってきたコレは、小さめのシンバル3枚を重ねたものです。ガチャッとしたアタックだけで音が伸びない、クラップみたいなイメージの音を出すために、すき間なくきっちり重なるものを選んでいます。エフェクトシンバルはもともとそんなに好きだったわけではないんですが、使っていないシンバルを重ねてみたり、色々と試していたら、意外に面白い音が出る。それですっかりハマっちゃいましたね。

――バスドラムにはツインペダルを使っているんですね。

キムラ:DW9000のツインペダルです。これはセッティングがちょっと特殊だと思います。


――左側のペダルがハイハットの外側にありますね。これは珍しい。左右をつなぐシャフトは邪魔にならないんですか?

キムラ:いい位置を見つけるのに、めちゃくちゃ頑張りました(笑)。ハイハットを1バスのときと同じような位置に置いて、そこにおまけでツインペダルをつけるというイメージでセッティングすると、僕にとってこれが自然な配置になるんです。以前はもう一つ、さらに左側にハイハットがあって、左足で左端のハイハット、右足でツインの左側のペダルを踏むというスタイルもやってました。ステージでドラムセットを横向きにセッティングするので、その体勢だと客席に正面を向いて演奏できるんです。

――タムのところにあるサンプリング・パッドはどのように使っていますか?

キムラ:実はこれ、最近導入したばかりなんです。ほかのメンバーがシンセで色々な音を出して“ビャーー”とかやっているので、僕もそういうのやりたいなと思って(笑)。まだ試行錯誤中ではあるんですが、エフェクトシンバル系の音とか、電子的なスネアやバスドラムでリズムマシンのような音を出す、という使い方が多いです。サンプリングで色々な音を使えるので、これで曲を流しながら同期して叩く、というのも考えています。


――ホントにユニークなところだらけのドラムセットですね。

キムラ:そうですね。スネアとかシンバルとか、使っているものはそれぞれ王道の楽器なんですけど(笑)。でもタムがないセットなので、客席から手元までよく見えていいと言われます。

――もともとは、普通のセットを使っていたんですよね?

キムラ:そうです。どこのスタジオにもあるような2タムのセットで。でもこのバンドに入ってから徐々に変わってきました。最初はかたくなに2タムでやってたんですが、あるときライブを見に行ったら、ドラマーが1タムでシンバル2枚だけのシンプルなセットでやっているのがすごくカッコよくて。それでメンバーに“1タムにしようと思います”と言ったら“え、なんで?”って驚かれちゃった(笑)。

三重野:いくら言っても頑なに2タムだったのに、急にそんなこと言うから(笑)。僕としては、胴があるタイコはチューニングで色々な音が出るけど、金物、シンバル類はその楽器にしか出ない音がある。だからもう全部金物にしちゃえばいいじゃん、って言ってたんです。個人的には、ライブでは基本の3点セットの音を出してくれればそれでいいから、タムなんていらないと思ってました。

市塚:今、全ドラマーを敵に回しましたよ(笑)。

キムラ:色々やってみたうえで納得してこの形になっているので、僕は問題ないですけど(笑)。


――ドラムでこんな音を出してほしい、とほかのメンバーから要求することがあるんですか?

市塚:私はドラムの音はあまり気にしてはいないですけど、ピッチとかシンバルの音色は気になるかな。

三重野:市塚は、その音色ではしっくりこない、とか、テンションが上がらない、みたいなことはときどき言ってますね。

――普通のセットからここまで変化してきて、これからまた変えていきたいところはありますか?

キムラ:これまで色々やってきた中で、このセッティングが一番しっくり来てますね。まだなにか追加する可能性もありますが、今後もこの3スネア1フロアというのが基本の形になると思います。

三重野:もっと変なセットにしてもいいと思うけど(笑)。


――ではこのユニークなドラムセット、キムラさんにとってどんな楽器ですか?

キムラ:何でもできるセットだと思います。3つの音色のスネアがあって、どんな曲にも対応できる。僕にとってはこれが万能のドラムセットだと思っています。

取材・文:田澤仁

リリース情報

『オルガン・ニュー・ワールド』
2020.11.11 Release
発売元:ステップス・レコーズ
販売元:ヴィヴィド・サウンド・コーポレーション
品番:STPR020
価格:\2,500プラス税
44.1kHz/24bitおよび44.1kHz/16bitデジタルアルバム同時配信
〈収録曲〉
1.So Happy Day 作曲:市塚裕子
2.バタフライ 作曲:市塚裕子
3.Inco 作曲:市塚裕子
4.Tokyo City 作曲:市塚裕子
5.Virtualand 作曲:市塚裕子
6.Golden Drop 作曲:市塚裕子
7.Having a Giraffe ! 作曲:三重野徹朗
8.STEPS 作曲:市塚裕子
9.Stay be 作曲:市塚裕子
10.Valk 作曲:市塚裕子
11.Cosmo 作曲:市塚裕子
12.YOLO 作曲:市塚裕子
13.Interlude 作曲:市塚裕子
14.Up to 作曲:市塚裕子

ライブ・イベント情報

時節柄、出演日程を会場にご確認ください。

2021年6月6日(日)
横浜 Mr.Brooklyn(045-442-8293)
https://mrbrooklyn.owst.jp/

2021年6月20日(日)
赤坂 CRAWFISH(03-3584-2496)
http://crawfish.jp/access.html

2021年7月2日(金)
越谷 EASY GOINGS(048-963-1221)
https://www.easygoings.net/index.html
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