【楽器人インタビュー】Caravan「楽器や音楽が自分をニュートラルに戻してくれる」

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ミュージシャンが放つ音楽は、いわゆる「リズム」「メロディ」「ハーモニー」という3大要素さえ整えば完成するものではない。その3大要素によって設計された音楽が、どのような味付けを持ってどのような色彩を放ち、どのような感情がまとわりついて、どのような情景を帯びるのか。表現者の放つ色は、音楽というキャンパスの上で自らの色彩を描き込んだミュージシャンの資質によって決定づけられるものだ。

自らが求めるサウンドと自分から発せられる音楽…そのふたつがピタリと符合したシンガーソングライターの作品が得も言えぬ説得力と人の心を震わせるパワーを宿すのは、音楽を織りなすあらゆる要素が100%の純度で構成されているからだろう。その人そのものと言える混じり気なしのサウンドは、優しく人の心をノックするように自然と耳に溶け込んでくる。

Caravanもまた、やりたいこととやるべきことがひとつになり、生きざまと音楽そのものが図らずも同居しているピュアなミュージシャンだ。自らの音を具現化するために秘密基地のようなプライベートスタジオを作り、鳥がさえずるように、風が吹くように、音とメロディを紡いでいく。

ミュージシャンが行き着く先は、どんな世界なのか。自然体で音楽家の生き様を身にまとうCaravanに話を聞くべく、彼のプライベートスタジオにお邪魔した。


──なんて居心地のいいところなんでしょう。ミュージシャンにとって楽園ですね。

Caravan:子どもの頃からプレイベートで音楽ができる部屋って憧れだったんです。メジャーレーベルにいたときもあったんですけど、やがては自分たちで自分たちだけの音楽を売り歩けるスタイルというか、自立した小さなレーベルを立ち上げられたらなあって、昔から思っていたんです。そこでちょうど震災があったりして2011年にスイッチが入ったんですよね。大きいものに属して依存して動いていくよりも、小さい船で自分たちのフットワークで動いていける環境を作りたいと強く思うようになり、まずは音楽アジトというか制作基地を作ろうと覚悟してですね、元々は古いスナックだったんですけど仲間たちとぶち壊して壁を張ったり天井抜いたり床張ったりして、そこからSlow Flow Musicというレーベルをマネージャーと2人で始めたんです。

──夢のある話だなぁ…現実なんだけど。




Caravan:立派なスタジオにはクオリティは叶わないけれども、自分が創りたい音は作れるし、それまでやってきた宅録の延長線であればいいと思ってました。まずは自分たちの力で制作することはできる。予算が下りないから無理とかディレクターがOKを出さないからできないではなく、自分たちが出したいときに出したい音楽を作って出すことができる。

──ミュージシャンとして生きていくことを覚悟した瞬間はあるんですか?

Caravan:子どもの頃からなりたいものがミュージシャンしかなかったというか、やりたいことが音楽しかなかったっていうか(笑)、それしかやりたくなかったっていうのが正直なところで、覚悟っていうのはぶっちゃけあんまり意識したことはないんです。学生時代はバンドをやったり就職もせずに売れないバンドをずっとやってましたけど、やっぱり現実が押し寄せてきてメンバーがひとり辞めふたり辞め、気がついたら自分ひとりになってたんですが、それでもまだ音楽を辞めようという気持ちにはなれなかった。ミュージシャンになろうという覚悟というよりもそれしかやりたくないっていう(笑)。

──生まれながらにこうだったんですね。

Caravan:だから「俺はミュージシャンになるぞ」とか「武道館に立つぞ」みたいなことは一回も思ったことないんです(笑)。

──自分にとって「音楽が特別なもの」という自覚は?

Caravan:いろんな音楽を聴くのも好きだし、新しい音楽と出逢ってゾワゾワする感覚も好きだし、節目節目で音楽に助けられた経験や感覚があるので、それに近づきたいというかそれになりたいというか、おこがましいけれどそこに行きたいというか…そういう憧れみたいのがずっと消えなくて。


──手にしてきた楽器はどういうものだったんですか?

Caravan:初めてやったのは中学生くらいのドラム。姉がコピーバンドでドラマーをやってて、その影響でドラムってカッコいいなって思ってて見よう見まねで、ビスケットの缶とか少年ジャンプとかを積み重ねて「こんな感じかな」みたいな。

──わかります(笑)。

Caravan:缶の中に砂利を入れるとザッザッて言い出してちょっとスネアっぽくなったりして「こんな感じこんな感じ」って(笑)。でもそのうちギターとかにも目が行くようになって「持ち運べるしいいなあ」「ギター欲しい」って思ってたら、よくある話ですけど住んでた団地のゴミ出し場にガットギターが捨ててあった。これは神の啓示だと思って(笑)、そこからはのめり込んでいきました。ガットギターにスティール弦を張ってエレキギターの真似したりして、高校生になってお年玉とか貯めてエレキギターを買って…。

──エレキギターを初めて買ったときの喜びって、忘れられないですよね。

Caravan:魂が震えた。町田のタハラ楽器にしょっちゅう見に行っていつもベタベタ試奏させてもらっていて「嫌なガキ、また来たな」って思われてたと思うんだけど(笑)、遂に買うという日に行ったら、欲しかったグレコのレスポールタイプが売れちゃってた。で、急遽三鷹楽器まで買いに行ったんですけど、電車の中でギターが重くて、その重みがすごい嬉しくて。なんかすごいもの買っちゃったっていう興奮のまま、道中もあんまり覚えてないくらいワクワクしてました。

──グレコのEGですね。

Caravan:白いカスタムでした。それが欲しくて欲しくて。当時からサザンロックとか、いなたいチョーキングがいっぱい入ってるCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)とかレイドバックしたロックが好きでしたけど、回りはBOΦWYとかザ・ブルーハーツ好きばっかりだったから、そういうのをコピーしてバンドをやってました。


──一番ワクワクして聴いていた音楽って?

Caravan:雑多で何を聴いてても楽しかったです。姉貴の影響でヘヴィメタルとかも聴いてたし、一方で尾崎豊とかも聴いてた。レコードからCDに移り変わる頃、近くの友&愛(レコードレンタル)でレコードを100円とか50円で叩き売りしていたので、500円玉を持って全然知らない洋楽のレコードを買い漁ったんです。それっぽい見たことあるジャケットのザ・ビートルズとかキャロル・キングとか、その中にデヴィッド・ボウイの『ジギー・スターダスト』もあった。すごい格好した人がロンドンの片隅に佇んでて「なんだろこれ、すごいカッコいいな。これはよさそうだな」ってジャケ買いですよね。で、家で聴いたら本当にゾクゾクってきた。「Five Years」って曲で始まるんですけど、ドラムがフェードインしてきてバーンってピアノが鳴ったら「おおっ」「洋楽すげえ」みたいな。得体の知れない感動を覚えて涙出てくるくらいのショックを受けて「なんだこれは、なんて美しい音楽なんだ」って。そこからいろんな洋楽を聴きだしたりしたんです。あの瞬間は今でも覚えています。

──そこがCaravanというミュージシャンを生み出す原体験なのかもしれませんね。

Caravan:そこからは、いろんな恥ずかしいこともありますけど、もうちょっとブラック・ミュージックというかファンキーな音楽を目指した時もあったり、高校のときにギター+ギター+ドラムっていうベースレス・トリオでブルースバンド気取りだったと思うんですけど、今聞くと長渕剛みたいな音楽だったり(笑)。気持ちだけはそうなんですけど全然届いてない(笑)という時代もありました。カッコから入ってウエスタンブーツとか履いてザ・アメリカなスタイルで演ってたけど、いざアメリカに行ったらそんな格好している人は誰もいなくて、みんなタンクトップにバッシュだったりとか。変な日本人来たみたいな、カルチャーショックを受けました(笑)。

──その後の楽器遍歴は?

Caravan:実はそんなに楽器にこだわりがなくて「もうこれでいいや」って感じだったんですよね。もっと良いギターが欲しいなとか、あれもこれもっていうのは大人になってから。いいアコギが1本欲しいと思ってギルドのD-25Mを買ったんですけど、アコギが楽しくなっちゃってそればっかり触るようになった。そこから今のCaravanになってるのかなって気もするから、そのギターからもらったインスピレーションはすごく大きくて、多分手放せないギターです。今はメインで使ってないんですけど、お守りとして持っていたいギターの1本ではありますね。


──それも出会いですね。ギルドではなくギブソンやマーティンだったら、また受ける刺激が違ったかも。

Caravan:かもしれないですね。ギルドっていうブランドが持っているサブカル感というか…でもいろんな音楽を聴いていくと、ポール・サイモンもギルドだとかリッチー・ヘブンスもギルドだと知ったりして、ギルド愛用者にわりと好きなミュージシャンが多くて、嬉しくなって余計愛着湧いちゃって(笑)。それでギブソンとかマーティンに目が行かなくなったから、高い買い物をしなくて済んだなぁ(笑)。

──エレキはテレキャスがメインですか?

Caravan:エレキギターの中では一番しっくりくるんです。もともとギブソンのギターが好きだったんですけど、あるときテレキャスのジャキっと芯があってクリアな感じを「あ、そっか、これだったのか」って思って、それからすごい好きなギターになりました。

──メインで使っているのは?

Caravan:よく使っているのは、マーティンのトリプルオーの黒いやつ(OOO-17 Black Smoke)と、ギブソンのES-330っていうエピフォン・カジノのギブソン版みたいなやつ。この2つがライブでのメインです。

──このマーティンはどこで手にいれたんですか?

Caravan:2~3年前なんですけど、マーティンがスポンサーのラジオ番組で、マーティンで弾き語りをしてくださいって言われたんですけど「すみません、マーティン持ってないんですよ」って(笑)。そしたら「持っていきますからカタログで1本選んでください」というので、マーティンを黒く塗っちゃうなんてすごく邪道でいいなと思って、一番マーティンぽくないルックスの「この黒いの」って言ったら、「これ結構いいんですよ」って当日持ってきてくれたんです。で、弾いたら凄く良くて欲しくなっちゃって、お買い上げしちゃいました。

──どんなサウンドですか?

Caravan:マーティンってスプロースにローズウッドとか、わりと硬めの木でカリッと明るい音が多いと思うんですけど、これはマホガニーなのでギブソンっぽいというか、あんまりキラキラギラギラしてないんです。黒く塗装してある影響もあるのかな。ライブで使う時はピックアップとか付けたりするので、めちゃくちゃいいマーティンとかは求めてなかったんですけど、でもやっぱり作りはすごくちゃんとしてて変なトラブルもないし、さすがだなと。最近のライブではメインで使っています。

──ES-330は?

Caravan:これはCaravanのPAをしてくれている方のギターなんです。その方が学生時代に買ったギターで「ずっと家で眠ってるギターがあるんだよね。使う?」って話になって、「ぜひぜひ」とうちにやってきました。このギターを弾くときは、すごく嬉しそうに音をミックスしてくれるんですよ(笑)。

──お借りしているギターなんですね。

Caravan:借りてる体で、勝手に改造とかしちゃって(笑)。弾きやすいし、1960年代のギターなんで音もカラッとしてる。なぜか古いギターのほうが壊れないんですよね。新しいギターって、ネックが反るとかPUが鳴らなくなるとかジャックがガリガリいうとかすぐ起こるんですけど、古いギターというのはトラブルがないんです。いろいろ経験してきて一周しているのか、全然びくともしない。機材車ってすごく暑くなったりするんですけど、そういう中でも平気でちょっとやそっとじゃ動じない。新しいギターのほうこそ、すごくネックが反っちゃってたりする。

──こりゃES-330も手放せないですね。

Caravan:これ手放したら怒られますね。PAがいなくなります(笑)。


左:C.f.Martin OOO-17 Black Smoke、右:Gibson ES-330

──そして、テレキャスは?

Caravan:白いのがフェンダーで、黒いのがナッシュギター。

──ナッシュ、いいですね。

Caravan:レリック・ギターの走りみたいな。いろんなテレキャスと弾き比べたりしたんですけど、これが良かったというか、ビンテージ感があったんでこれにしたんです。

──ナッシュギターって、フェンダーよりもフェンダーしているところがありますよね。お安くないけど。

Caravan:そうなんですよね。お安くないけど、でも同じクオリティのビンテージを買おうと思うとゼロがひとつ違ったりするから、それと比べるとリーズナブルですよね。

──そしてこちらはカスタムショップのフェンダーで。

Caravan:詳細はよく知らないんですけど、1年前くらいに中古で出ていたのを一目惚れで買いました。フロントにグレッチのフィルタートロンPUが付いてて、グレッチの音も好きなので面白そうだなって思って。

──随分と変わったスペックですよね。

Caravan:いわゆるテレキャスではないので、ほんとにソリッドでシンプルなテレキャスターが好きな人には、見向きもされないタイプ(笑)。まだライブでは使ってないんですけど録音では使いましたよ。


左:Fender Customshop TELE、右:Nash Guitars T-model

──このStudio BYRDには、自分の表現したい機材は一通り揃っている状況のようですね。

Caravan:とりあえずそうですね。かゆいところには届いていて、自分の欲しいものは最低限揃ったかな。あっちにはアコギとかダンエレクトロの古いやつとかバンジョーとかあります。

──あのマーティンのブルーケース、気になるな。

Caravan:古いやつですよね?あれはケースだけ(笑)。お義父さんが「かっこいいギターケースがうちにあるんだけど、持っていっていいよ」って。中身はもうないんだって話で。

──1970年代のマーティンですけど、中身はどこにいっちゃったんだろ。

Caravan:中身が欲しかったですよね。マーティンとは縁がないんです(笑)。

──でもいろんな人や楽器が集まってくる、そんな魅力があるスタジオですね。

Caravan:缶ビールをもってフラッときたりしますね。そこのRhodesもそうなんですけど、年配の先輩が「弾いてないRhodesがあるんだけど使ってよ」とか、そのバスドラとかシンバルとかタムもドラマーの友人が「これ使っていいよ」って、ありがたいことに楽器が集まってくる(笑)。家に置いてても仕方ないし「使って」って。すごく嬉しいです。



──大活躍してくれそうな楽器たちですね。

Caravan:機材もどんどん進化してるし価格も安くなってるし、集め出すと新しいものってきりがないけど、このスタジオは、手元にある一番いいもので作ろうという発想で作ったので、バッチリ吸音しているわけでもないし防音してるわけでもない。もしかしたら外を走る車の音とかもマイクに入るかも知れないけど、それすら含めて生活音としていいじゃないかって思って作ったスタジオなので、常に最先端のものを集めるわけではなく、今まで出会ってきたものを使って一番良い形の音楽を自分なりに作る、それがテーマです。

──つまり、自分にとっての正解ですね。

Caravan:楽器とか機材って、長く使わないと分かんないんです。鳴らし方だったりセッティングだったり合う弦だったり、長く使っていると「これがおいしい音なんだよな」って分かってくるので、それをいい音で録りたい。いい音っていうのも概念がいろいろだし、そもそも正解がないから全員を満足させられるっていうのは端から無理なわけで、だからこそ自分なりの「これが好きなんだよ」「この音なんだよ」っていうのをここで録れたら、それが幸せなんです。



──必要にして十分な環境ですが、いわゆるストラトとかレスポールのような王道機材はないんですね。

Caravan:その辺は段々興味がなくなっていて。もともとストラトは昔から好きじゃなかった…というか形が好きになれなくて。

──え?そうなんですか?

Caravan:あれが基本なんでしょうけど…なんかね、形がすごく不自然というか、もうちょっとゴツゴツしててほしいんですよね(笑)。流線型でスポーツカーっぽいっていうか、自分はもうちょっとトラックっぽい方が…。

──無骨な感じが好き?

Caravan:野暮ったい方が好き。なめらかなルックスがちょっと…。

──「俺イケメンだろ」って自覚してる感じ、ありますよね(笑)。

Caravan:使ってる人に上手い人も多いじゃないですか。Charさん然り。そこと比べられてもヤダなって(笑)。

──いわゆる変形ギターにも興味なさそうで。

Caravan:今までも通ってきていないですね。でもノンリバースのファイヤーバードとかは若い頃に買ったことあったなぁ。トラフィックってバンドが好きでファイヤーバードいいなって思って買ったけど、なんせ弾きにくいし、座ると左手遠いし、立ってもネック下がっちゃうし、ケースバカでかいし、これはちょっとなあって、すぐ手放した記憶があります。でもランダムスターみたいなギターは1回も買ったことがないですね。

──自分の趣味嗜好とは違った?

Caravan:中学生の頃はハードロック・ブームで、そういうギターもカタログにあって凄いなあとは思ってたけど、でもそこにはあまり憧れがなかったですね。

──異性にモテたくてバンドを始めたという話はよく聞きますけど、Caravanは常に音楽そのものへの衝動で、そこに邪念がないんですね。

Caravan:ぶっちゃけ自分がギターを始めた頃っていうのは、バンドブームは終わって世の中はDJブームだったんですよ。だからモテたい人はまずターンテーブルを買って、レコード屋さんの袋持って学校行くみたいな。そういうトレンドの時代に、Fenderとか書いてあるソフトケースを持ってるのってカッコよくないっていうか(笑)、残念な時代だったです。

──それは無念(笑)。

Caravan:ちょっと残念な時代の隙間で、自分の世代ってわりとミュージシャンは周りにもいっぱいいるんですけど、振り返るとみんなどのブームにも乗れなかったみたいな人が多くて。ちょっと上のお兄さんたちはハードロックだったりBOΦWYだったり時代性があるんですけど、うちらの時代ってそういうスターがいなくて、気付いたらちょっと下の世代はヒップホップとかDJとかやり出して「ハウスのクラブで回してます」みたいな子もいたりして。そこにも乗れず、わりとひとりで部屋でギター弾いてますみたいな人が多くて、だから同世代にシンガーソングライターが多いのはそういうことなのかなと思ったりもするんですけど。

──そういう時代を通ってこそのスタジオですから、Caravanセレクトの楽器に囲まれた秘密基地であればこそ、健全に音楽活動ができるというわけだ。

Caravan:良くも悪くも世間とつながってないというか、自分の部屋なので自分の好きなものしかないし、自分の集めたモノしかないし、すべてが説明できるものだけ。だから、いろんな情報が入ってこないっていうのは、実はすごく大事な気がしていて。

──?

Caravan:アンテナを張るっていうこともすごい大事なんだけど、それで振り回されちゃうっていうか、いろんな情報とか物がありすぎて「あれもいいな」「これもいいな」「あの人、こういうことやってる」となっちゃうのはどんどん軸がブレていっちゃう原因でもあって、ある程度はシャットダウンしアンテナを降ろして情報を必要以上に入れずに、自分の小宇宙みたいなものを守るっていうのも、オリジナリティを守るっていう意味では必要なのかなという気がしています。

──なるほど。

Caravan:そういう意味で、ここはちょうど良いというか、好きな音楽を好きな音で聴けて、好きな楽器があって、本当にマイワールドの集大成。これ以下もこれ以上も要らない。もちろん改善していきたいところはいっぱいあるしリニューアルもしていきたいけど、基本的には足りてますというか、そういう感覚って必要だなって思っているんです。「もっともっと」ってなるときりがないし、もっと集めたところで気にはなるし「足るを知る」っていうのがすごく必要なことなのかなって気がします。

──ステキです。

Caravan:コロナ禍で、人と人との物理的な距離が離れていって、いろんな人との意見の分断があったりして、こっちの人はこう言ってる、ああ言ってるって、どんどん孤立しちゃったり偏ったりするなかで、お互いを否定しないというスタンスがより求められる世の中なのかなって思う。これだけみんなが同じ状況で苦しんでいることが世界的に起こることって、人生でもう経験しないくらいの特異なものでしょう?出口が見えず、相変わらずみんなトンネルの中にいる感じではありますけど、そこで楽器や音楽が自分をニュートラルに戻してくれる。何物でもない自分に戻してくれるものでもあるんです。



──なるほど。9月18日には<HARVEST 14th Anniversary Special "The Blessing">がありますが、どんなライブになりそうですか?

Caravan:今はライブができること自体が第一の目標で、まずは無事に開催できるってことだけで十分だったりするんですけど、やるからにはその時間だけでもみんなを解放できるような気持ちをね。マスクしてくださいとか、話さないでくださいとか隣と離れてくださいとか、そういう制限はいろいろあるんだけど、それでも気持ちを少し解放できるようなものにしたいなと思ってるんですよね。

──楽しみですよ。とても。

Caravan:この状況下でライブに来てくれるっていうのは、今本当にライブが必要な人たちだと思うんです。GOMA & The Jungle Rhythm SESSIONとツーマンでやるのでGOMAちゃんとも話してるんですけど、この状況でライブに来てくれるのは本当に生音に飢えている人たちだし、配信じゃなくて生音で浴びたい人たちだから、全力でやりたい。みんなで多幸感…ハッピーな気持ちを共有したい。

──音楽を聴きたいだけなら家で聴けばいいけど、ライブは体験ですからね。

Caravan:ライブへ足を運ぶっていうのは、人の気配を感じたい人だと思うし、波動みたいなものを感じたい人だと思うし、自分たちもそれが欲しいからライブをするんだと思う。この日を良い日にしたいです。GOMAちゃんとも何曲かセッションできたらなと思ったりもしています。

──楽しみにしています。ありがとうございました。

取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)


<HARVEST 14th Anniversary Special " The Blessing ">

2021年9月18日(土)
@日比谷野外大音楽堂
出演:Caravan / GOMA & The Jungle Rhythm SESSION
指定席 ¥5,700(tax incl.)
OPEN 16:45 /START 17:30
◆ライブ詳細/チケット発売情報

◆Caravanオフィシャルサイト
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