【インタビュー】Shunsuke、“かいじゅう”を生み出した新世代SSW「音楽は競争ではなく、寄り添うもの」

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TikTokをきっかけに10代の弾き語りシンガーが注目を集める近年、独自の活動を繰り広げているアーティストがいる。Shunsukeという東京都出身、2000年生まれのシンガーソングライターだ。高校在学中から楽曲制作を開始し、卒業後の2019年からTikTokに動画投稿を始めると、その年の秋にインフルエンサーが動画内で彼の楽曲「愛溢」を起用。それをきっかけに10代から同年代のリスナーを増やしていった。

どこかの誰かの恋愛模様をのぞき見するような生々しいラブソングや心にじっくり染みるバラードなどを得意としてきた彼だが、2021年5月にYouTubeのみで発表した「ぼくはかいじゅう」はそれとは少し趣向が異なる。穏やかな歌に乗る、いじめられてしまう怪獣の苦悩──彼はどのような思いのもと同曲を制作したのだろうか。彼のバイオグラフィを探りながら、楽曲の背景を探っていった。

   ◆   ◆   ◆

■発表フォーマットはあえてYouTubeのみ
■「聴くだけではなく、観て聴いて曲の意味を知ってもらいたかった」


──SNSで「作詞作曲教室を開いてみようかな」と投稿していましたが、アーティストにはあまりない発想だと思うので驚きました。

Shunsuke:もともと小学校3年生から高校3年生まで、アメリカのボランティア団体が企画する音楽のワークショップに通ってたんです。そこでアメリカ人の子たちと一緒にダンスをしたり歌ったりしていたので、そういう教室には馴染みがあるんです。ファンの方々と交流を持つのは好きなので、“音楽ってこんなにいいものなんだよ”と伝えられる講座が開きたいんですよね。結構興味持ってくれている人もいて、実現できるよう動いているところです。

──小さい頃から音楽が身近だったんですね。

Shunsuke:そうですね。ワークショップの影響で、ヒップホップがすごく好きになって。初めて聴いたヒップホップのアルバムがケンドリック・ラマーの『good kid, m.A.A.d city』なんです。

──それは早熟。楽曲制作を開始したのは高校2年生とのことですが、それにはどんな背景があるのでしょう?

Shunsuke:高校2年生になったときに、いろんなことへの理解も深まったのであらためてもう一度『good kid, m.A.A.d city』を聴いてみたんです。そしたらこんなにも自分のことを表現しつつ、それを聴き手にかっこいいと思わせる世界観に着地させること、聴き手の心を動かす音楽を作ることにとにかく感動したんですよね。そこからヒップホップの制作を始めたんです。まず最初はYouTubeに上がっている著作権フリーのトラックに乗せてリリックを書いたりしていましたね。それを繰り返しているうちに、自分で作曲もできればもっと自分の作りたい世界を作れるなと思って、今のポップス寄りのラブソングやバラードを作るようになったんです。

──なぜ音楽性のシフトチェンジを?

Shunsuke:2017~18年の時点はまだ今ほどHiphopが日本では浸透していたわけではなくて。できれば音楽で有名になって、自分の音楽を伝えたいと当時から思っていたので、みんなに馴染みのある音楽のほうがもっと注目されるのかなと。ひとつの策略でもありましたね。弾き語りのポップスを基盤にしながら、自分のやりたい音楽の1つのHiphopの要素を交えて楽曲制作してみたりと試行錯誤していくうちに、いろんな人が聴いてくれるようになったんです。その結果“これが自分の音楽のスタイルだ”と思うようになって現在に至るという感じです。

──高校卒業後にTikTokで楽曲投稿をするなか、2019年の秋に「愛溢」で注目を集めました。


Shunsuke:TikTokで絶大な支持を得ているインフルエンサー・なえなのさんが「愛溢」を使ってくれて、そこから一気に広がっていきました。“フルバージョンも聴きたい”という意見をいただいて、YouTubeチャンネルを立ち上げてアップしました。そこからYouTubeでの活動もするようになりましたね。でも自分の曲が広まっていくことに、正直実感はなくて。

──ああ、そうだったんですね。

Shunsuke:実際数字はどんどん増えていってるんだけど、ライブ活動をしていなかったのでそれを肌で感じる機会がなかったんです。注目されたいという気持ちは持っていたけれど当時は趣味のようなものだったし、最初のうちは自分のなかでも気持ちの整合性が取れていないまま音楽活動を続けている感じでした。

──そこから音楽活動は本格化し、2020年からはデジタルリリースも盛んになり、ヒップホップユニットTHE SYMが始動。新しいスタートになったのではないでしょうか?

Shunsuke:数字が伸びていくにつれていただくお金が増えていって、アーティストとして働くことへの責任感や、仕事という意識が芽生えてきましたね。でも自分の思い入れが強い曲に限って数字が伸びなかったり、そこまで当たらないんじゃないかと思っていた曲が注目されたりもして。自分の音楽に対する自分の価値観と視聴者の価値観のギャップをどう解消するべきか悩んだりもしました。地元の友達に“音楽でお金が稼げるの?”や“大学行ったほうが生活が安定するよ?”と言われてくじけそうになったり……。

──夢を追う人あるあるですね。

Shunsuke:音楽で生活をしたい気持ちももちろんあるけど、なによりも人の心に寄り添いたい、聴いてくれる人の励みになりたいという気持ちがいちばん大きいんです。自分が人生で挫折したとき、心の支えになっていたのが音楽で。だから自分もそういう存在になりたい。そういう気持ちが小さい頃からワークショップをとおして培われていたんですよね。僕の音楽を必要としてくれるファンの子たちがいるから頑張れたなと思います。

──Shunsukeさんがフィクションのラブソングを多く書くのは、その寄り添いたい精神から来るものでしょうか?

Shunsuke:恋愛は人間にとって避けたくても避けられない、必要不可欠なものだと思うんです。人間らしさの出たいろんな恋愛模様を具体的に描いたら、いろんな人の気持ちにフィットするんじゃないかなって。そしたらその人の人生を肯定できる気がするんです。失恋ソングでも聴いた人が“そういうこともあるよね”と思えて前を向けるようなものにしたい。それもあっていろんな恋愛のストーリーを頭のなかに巡らせて曲を作っていくんです。

──となると、2021年5月に公開した「ぼくはかいじゅう」は、いま話していただいたことと趣向が異なるということですよね。

Shunsuke:はい、そうですね。


──まず、この曲の発表フォーマットをYouTubeのみになさったのはなぜなのでしょう?

Shunsuke:歌詞が大事な曲だからですね。ストリーミングサービスでも歌詞は読めるけど、曲が再生されると同時にイラストと歌詞が表示されると、聴いてくれる人の頭のなかに曲の本質が伝わりやすいかなと思ったんです。それで怪獣が1匹ぽつんと座って泣いている絵と、歌詞が出てくるというシンプルなデザインにしました。聴くだけではなく、観て聴いて曲の意味を知ってもらいたかったんです。

──動画発表から音源リリースを噛まさずにカラオケ配信に至るのも、珍しい経緯だと思います。

Shunsuke:「愛溢」のカラオケ配信は自分で手配したんですけど、「ぼくはかいじゅう」ではお声掛けいただいて、おまけにこうやってピックアップしてもらえるとは。自分の曲がカラオケで配信されるのは不思議な感覚だし、夢みたいです。自分の大事な曲をこういうふうにピックアップしてもらえるのはすごくうれしいことだし、みんなにも歌ってもらっていろんな気持ちを感じてほしいですね。

◆インタビュー(2)
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