【インタビュー】acane、確立できた“真っ直ぐ歌を伝える”想い。仲間へ、結婚相手へ向けた4曲EP「君の歌」

ポスト

■「頑張れ」って口で言われても頑張れない時が私自身にもあるからこそ、
■音楽を通して仲間の背中を押せたら


──ではここからは、acaneさんご自身のことについて聞かせてください。もともと歌うことが好きだったんですか?

acane:大好きでした。どうやったら歌手になれるんだろうって、ずっと思ってました。これは私の勝手なイメージなんですが、お金を持っている友達はみんなボイトレに通っていたから(笑)、ボイトレとか行って、事務所に見てもらわないと歌手になれないんだなと思っていたんです。私は部活もしていたし、ボイトレに行きたいということを親に言い出せなかったりしたんですが、高校3年生の時に初めて、親に音楽の学校に行きたいということを話しました。

──進路について考える時期ですね。

acane:担任の先生からは、お前が歌が好きなのはわかるけど、上手いわけじゃないから諦めた方がいいと。険しい道なんだから、学校に行くよりも就職した方がいいと進路相談の時に言われて「やっぱりそういうものなのかな」と思い、就職したんです。でも1年ぐらい経つと、やっぱり音楽がやりたいなという気持ちになって。

──諦めきれないですよね。

acane:今の旦那さんが見つけてくれたテレビオーディションで審査員特別賞みたいなのをもらい、某アカデミーみたいなところに行くようになったんですが、周りは子供ばかりでこれはちょっと違うなと。そんな時に、今は大阪で活動しているBigfumiくんが路上ライブをすると共通の友人から聞いて。音楽がやりたいならちょっと見に行く? って誘われて行ったら、「歌ってみれば?」と言われ、そこで初めて路上ライブで歌ったんです。あぁ、こういうやり方もあるんだなという感じでした。音楽の学校とかボイトレとか行かなくても、歌えるんだなって。で、アカデミーを速攻やめたんです。その時は、絢香さんの「Jewelry day」を歌いました。

──その様子は、acaneさんのインスタグラムにもアップされていますね。

acane:はい。それまでに人前で歌ったのは、高校の文化祭とテレビのオーディションだけ。その路上ライブではBigfumiくんのファンの人たちが聴いてくれていたんですが、「うま!」って言ってくれて。私、「え?上手いの!?」みたいになって(笑)。

──そのときの気持ちが、自分でもやろうというきっかけになったんでしょうか。

acane:そうですね。週に1回とりあえずやってみようと思って、毎週金曜日に歌うようになりました。何があっても絶対に1年間は続けるって決めて。その半年後くらいには、「100万回の「I love you」」の動画でも一緒に歌っているオオカワセイヤくん達と出会って、土日も歌うようになりました。


──どうやったら歌を聴いてもらえるか、いろんな工夫もされたそうですね。

acane:みんなacaneのライブを見に天神に来ているわけじゃないから、そこで足を止めてくれたとしても、1番だけ聴いて帰ったりするかもしれない。それをどう引き止めるかはすごく考えました。これは東京に来てからなんですが、間奏の部分を無駄にしないように、そこにいる人たちに「あなたの24時間をください!」って呼びかけることにしたんですよ。みんな「何?何??」ってなるじゃないですか。みんなに歌っているacaneを動画に撮ってもらって、私をタグづけしてインスタのストーリーに載せて! ってお願いするんです。

──それ、すごくいいプロモーションの仕方ですよね。

acane:私、福岡のソフトバンクで働いていたんですが、営業で、個人としてのケータイの売上げが全国で1位になったことがあるんですよ。これ自慢なんですけど(笑)。

──全国1位(笑)!?

acane:他社のケータイを買いに来た人にも、ソフトバンクのケータイに乗り換えて買ってもらってた(笑)。そういう時って、ひと言目で引きつけないといけないんですよ。相手がどこの会社を目当てに来ているとか、自分がソフトバンクの制服を着ているとか関係なく、まずは「こんにちは!」って喋りかける。そしたらいきなり「No」とか「大丈夫です」にはならず、とりあえず「こんにちは」になるんですよ。そういうことをずっとやっていたから、どうやったらいいかな、惹きつけられるかなってことは常に考えているんですよね。もちろん、まだまだなんですけど。


──人の心を掴むのがそもそも上手いと思うのですが、きっとそのための努力もすごいんだと思います。

acane:いやいや、そんな(笑)。でも、いつも<1対1>であると思うようにしています。ライブの時も「みんなありがとう」とは言うけど、ひとりひとりに対して「ありがとう」って思うようにしてますね。

──そんな福岡の街を離れて、東京に出ることになったのは何かきっかけがあったんですか?

acane:福岡で4年間やってきたんですが、ラジオにも出られるようになって、CMに自分の曲が起用されたりして、調子に乗ってたんですよね。井の中の蛙じゃないけど、全然売れてないのにギャラとか貰えるようになって。でもある時ふと、やっていることは前の年と全然変わってないなって思ったんです。その時に、もうやめてしまおうと思ってマネージャーに伝えました。私は自分の誕生日が周年なんですけど、5周年でやめるって。そしたら、「やめるんだったら、1年だけ東京で勝負してみよう」と言ってくれたんです。

──そこで音楽仲間が一気に増え、acaneさんの音楽にもいい影響が出てきたと。

acane:福岡にいた時は、例えば仲間がCMが決まったりするとめっちゃ悔しかったんですよ。なんで私じゃないんだろうとか、なんで私が落ちたんだろうとか思って、すごく悔しかった。でも東京に来たら、めっちゃ嬉しい!って感じるようになったんですよ。私も頑張ってるけど、仲間が頑張っているのも知っているし、私がどうとかじゃなく、その人が本当に素晴らしいんだって思えるようになったからでしょうね。自分の中の妬みとかがなくなった気がします。悔しいとかむかつくとか、全然ない。それくらい、尊敬しているんだろうなと思います。仲間だけど、尊敬する人が多くなったからかなって思うんですよね。

──自分の音楽、自分の歌にも何か変化がありました?

acane:いわゆる歌が上手い人、めちゃくちゃ多いじゃないですか。R&Bの仲間なんかはフェイクもめちゃくちゃ上手かったりするし、路上ライブをやる時も、フェイクとかハモリとかができるとやっぱりかっこいいんですよね。でも、私はフェイクとか全然できない。じゃあどうするかと考えた時に、ちゃんと伝えることだなと。私はみんなの目を見て、真っ直ぐ主メロを歌って、曲間でちゃんと「ありがとう」を伝える。そういう方が私らしいかなというのは、より思うようになりました。

──そうやって自分自身のことがわかってくると、じゃあどういう曲を歌おうかということにも繋がっていきそうですね。

acane:まさに、最初にお話しした「君の歌」がそうなんです。今回は「ザ・王道」みたいな曲を作りたいねっていう話をしていたんですね。日本人が聴きやすい、そして思わず聴きたくなるような曲。この「君の歌」で“真っ直ぐ歌を伝える”ということが自分の中で確立できたかなと思うし、繰り返しになってしまいますが、「頑張れ」って口で言われても頑張れない時が私自身にもあるからこそ、音楽を通して、仲間の背中を押せたらという思いも形にすることができたんです。

──そんなacaneさんの今後、こういう歌手を目指したいという理想像などはありますか?

acane:私はAIさんが大好きなんです。私の中では、いわゆるR&BのAIさんというよりも、「ハピネス」のように、みんながハッピーになれるような歌を歌っているAIさんっていうイメージが強いんですね。もちろんR&Bシンガーとしてもめっちゃすごいけど、私はハッピーなオーラを持っているAIさん自身が好きなんです。結婚して子供を産んでも、AIさんというシンガーでいられることがすごいなと思っているし、自分もそうありたいなと思っています。

取材・文◎山田邦子

▲acane/『君の歌』



NEW EP『君の歌』

2021年9月10日 配信スタート
収録曲:
1.君の歌
2.FLY AWAY
3.RHYTHM
4.伝えたいこと

この記事をポスト

この記事の関連情報