【インタビュー】佐藤タイジ、開催目前の<THE SOLAR BUDOKAN>を語る「フェスという文化を守りたい。開拓者でありたい」

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■コロナ禍において“セッション”が
■とても意味深いものになっている

──有観客開催から配信への変更は、ある種、急ハンドルを切ったところもあると思うのですが、出演アーティストの方々も即座に賛同してくれて、一緒にやろうという感じになったんですか?

佐藤:ほとんどの出演者はそうです。もちろん、配信はしないというスタイルの方もいらっしゃって。考え方の違いは仕方がないですし、そこについては、配信に変更となってしまったことを謝罪するしかないという。

──なるほど。ただ、昨年のハイブリッド型オンラインフェス<THE SOLAR BUDOKAN 2020>は、それまでの配信ライブの概念を超越したものがありましたよね。中津川、猪苗代、中野サンプラザ、ビルボード東京等でのライブ収録や無観客生配信がオンラインで実施されたわけですが、特に中津川や猪苗代などでは広大な自然と一体となって演奏しているアーティストの姿が収められて、映像作品のようでしたし、革新的だなと思いました。

佐藤:よかったですよね。<THE SOLAR BUDOKAN 2020>では配信に対するネガティヴなイメージが払拭できたと思っています。今年もクオリティは絶対に下げたくないので、観てくれた人全員が“去年よりいいもんになってる”と思えるものにするつもりです。


▲佐藤タイジ(シアターブルック) in <THE SOLAR BUDOKAN 2020>9.26@中津川公園

──そういう昨年の成功体験があるからこそ、今年の有観客から配信への開催直前の変更も可能となっているはずですし。先ほど挙げたメッセージでもタイジさんは、“私たちは去年より高いクオリティ、そして去年よりオモシロいものを目指します”と宣言しています。

佐藤:僕が求めているのは、そこだけなんです。もちろん、みんなが出演アーティストを好きになってくれることってすごく大事やと思う。でも、アーティストが、自身の求めるクオリティを達成させることと、みんなが求めているものを作ることって、同じようで違うじゃないですか。例えば、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』とかボブ・マーリィの『ライヴ!』とか、過去の名盤ってオーディエンスが求めたものではく、アーティストの“ここまで到達したい”っていう意思が作品に表れたものだと思うんです。僕はそういうものを聴いて育ってきたので、アーティストが作りたいものを作りたいクオリティで作った音楽に、みんなもインスパイアされてほしい。そこで大事なのは、聴いたみんなが“ほな、お前は何がやりたいねん?”って自分に問うことで。そういう意味で俺は純粋にやれているし、本当にギターのおかげやなくらいに思ってます。

──“お前は何がやりたいねん?”って問いに対するタイジさん自身の答えですね。

佐藤:ほんまにギターしかできないんです。ギター練習しといてよかったですよ(笑)。<THE SOLAR BUDOKAN>の出発点には東日本大震災があるんですけど、“原発はイヤやから太陽光でやろか”って実施してみたら、ギターサウンドが断然良かったんですよ、太陽光発電のほうが。それが<THE SOLAR BUDOKAN>が続いている核の部分で。<THE SOLAR BUDOKAN>に出演してくれるミュージシャンは、みんなそこに賛同してくれてると信じてる。僕にとっては、やっぱりギターがあってこそなんですよ。


──今年の<THE SOLAR BUDOKAN 2021 ONLINE>の内容をお訊きする前に、改めて昨年の<THE SOLAR BUDOKAN 2020>を振り返っておきたいのですが、映像収録では参加アーティスト個々の意見を吸い上げながら作り上げていったんですか。

佐藤:そうですね。スケジュールとかを照らし合わせながら、誰がどんなロケーションなら似合うだろうと考えてオファーしたり。3〜4年前の<中津川ソーラー>の打ち上げで、TOSHI-LOW (BRAHMAN / OAU)が、「全部のステージにタイジのギターとアンプがあって、あらゆるアーティストのステージでタイジがギター弾いてるみたいなことをしちゃえばいいんじゃない?」って……まあ彼らしい乱暴で無責任な意見を言ったんですけど(笑)、案外それはありだよなというか、核心を突いてるなと思ったんです。ということで昨年は、セッションをたくさんしたんですね。そうすると、他のフェスとの違いにもなるし、何より予想を超えたステージになって、出演者含めてみんなが楽しい。それに、このコロナ禍において“セッション”というのが、とても意味深いものになっていると思うんです。

──人と人とが分断されようとしている時代ですから。

佐藤:まさにそう。野外フェスを攻撃するメディアは、野外フェスが何をやろうとしてるのかを聞いてから報道するべき。そうしなければフェアじゃない。つまり対話なんです。フリーセッションって、一緒にやっている人のプレイをよく聴かないと成立しないんですよ。例えば、ドラマーがどんなテンポやノリでくるのか。それをしっかり聴かないと一緒に音楽を作ることができない。ソーシャルディスタンスという言葉がありますけど、音楽に携わる人間からしたら、“ソーシャルディスタンス=ファック”、そこに音楽はないんです。相手のプレイ……相手の言おうとしてることをよく聴くという概念とソーシャルディスタンスは相反するから。だからこそ、この時代においてセッションというのはすごく重要なんです。もちろん精神性の話で、感染防止対策の話ではないですよ。

──はい、わかります。

佐藤:去年、4DAYSの無観客配信フェスとして実施したことで、この時代に僕たちがやろうとしてるセッションやフリージャムの概念がより理解できた。相手のことを聴いて、自分のことを聴いてもらって、ひとつのものを作り上げて共有するということ。それは伝えていきたいですね。今の日本社会に足りないのは、それ。


──<THE SOLAR BUDOKAN>を貫く大きなメッセージは“太陽光から生まれた電気でロックコンサートを”というものであり、年ごとにテーマが掲げられています。今年もいろいろなメッセージが込められていそうですね。

佐藤:そうですね。おそらく時間が経てば、人類はコロナをクリアできると思うんです。未来へ目を向けるという意味で、今年は気候変動を取り上げようと思っています。<THE SOLAR BUDOKAN>は、気候変動というワードが現在のように広まる前から太陽光発電を使っているから、俺自身は“今ごろ何言ってんの?”って感じだったんです。でも、諸外国に比べると日本の気候変動に対する意識は低いと感じていて。“太陽光でフェスをやれてるから、敢えてそこに触らなくてもええ”というのではダメだなと。気候変動のこと、それが将来に及ぼすリスクを説いていかないと意識の底上げにはならない。<THE SOLAR BUDOKAN>は説得力をもって、それが出来うると思うんです。

──<THE SOLAR BUDOKAN>の意味合いをここでもう一度伝えるには、いいタイミングでもありますか? 2012年の初回武道館公演から、今年10年という節目でもありますから。

佐藤:まさにそうですね。今の状況の中で<THE SOLAR BUDOKAN>が果たす役割も意味合いも、去年よりわかってきている。そのためのステージ構成が、段々固まってきています。

──ちなみに昨年のテーマは“FUTURE CHILDREN”で、今年のテーマは“HAPPINESS”。ここにはどういう思いを込めたのでしょうか。

佐藤:中津川公園は使えないけど、中止にはしたくない、でもコロナ禍。実際、ライブハウスはしんどいし、居酒屋や酒が悪者になったり。この逆風の中で敢えてフェスをやるわけだから、最初は“HAPPINESS?”をテーマにしようと考えていたんです。

──“?”を付けることで、問いかけようと。

佐藤:“私たちは今、幸せなの?”ってね。でも、“?”を取れば、より意味が広がると思ったんです。これは僕の考えですけど、ミュージシャンにとっては演奏することが幸せなんです。しかも、思うようなプレイが出来たら幸せこの上ない。それが実現できたら、思った以上のギャラが得られるかと言ったらそうではない(笑)。そこが音楽の面白さで。それぞれにとっての幸せが、今、問われている。幸せとは何か、ということを打ち出すタイミングかなと。家にこもることで感染リスクを下げて生き長らえる幸せも絶対にあって、それは否定しない。一方で、演奏する幸せを誰にも否定されないぞって。

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