【インタビュー】平岡優也、自身の20代をパッケージした1stアルバム『20s』

ツイート

平岡優也が、10月20日(水)に1stアルバム『20s』(読み:トゥエンティーズ)を配信リリースした。20歳で上京しシンガーソングライターへの道を歩んできた彼は今年で29歳。本作アルバムは、そんな平岡が20代を振り返りつつも、全曲シングルカットできそうな良曲群で1つのパッケージに構築した贅沢な一枚となっている。先日配信された極上のラブバラード「H」、平岡が自身の代表曲と認識している「アマノガワ鉄道」、シキドロップ・平牧仁との共作曲「サンゴー缶」などなど、どこから一聴してもリスナーの耳を捉えて離さない楽曲群の生い立ちを改めて聞いた。

   ◆   ◆   ◆

▲平岡優也/『20s』

■“僕の20代は、こうでした”

──『20s』の制作はどんなテーマのもと、いつ頃から始められたのでしょう?

平岡:制作を始めたのは去年の4月頃からです。ただ、今回のアルバムは僕の20代を総括するというか、“僕の20代は、こうでした”というものを形にしたくて『20s』というタイトルにしたんですね。だから、楽曲自体は20代前半とかに作った曲とかも入っていて、そういう意味で言うと制作期間はだいぶ長いことになります(笑)。でも、実質的なレコーディング等々は、2020年の春から始めました。

──レコーディング自体にも、しっかりと時間をかけられたんですね。20代を総括するとなると、楽曲が沢山あったかと思います。アルバムに入れる曲は、どんなふうに決めましたか?

平岡:僕自身アルバムというものを作るのが初めてだったんですけど、ひと昔前のアルバムは盤面で1曲目から順番に聴いていってもらうことを考えながら作っていたじゃないですか。でも、今の時代はサブスクというものがあるので、あまり順番どおりに聴いてもらえないことも加味する必要があるなと思って。なので、ひとつの作品として流れを作ることよりも、どの曲を聴いてもらってもよさが伝わるというか、いわゆる箸休め的な曲は入れないようにしたいなと思いました。『20s』がちゃんとそういうものになっているかは、わかりませんけど。

──いえ、狙いどおり『20s』は全曲シングルカットできそうな良い曲が並んでいます。それに、歌詞も素晴らしいですね。どの曲も等身大の心情やメッセージが描かれていて、平岡さんの人柄や性格などが伝わるものになっています。

平岡:自分をさらけ出すことには抵抗はないですけど、20代前半に作った曲とかもあるじゃないですか。今回あらためてレコーディングするにあたって、今の自分だったらこういう言葉選びはしないなとか、若いなと感じることはありましたね。中学生の頃に書いた自分のポエムを読むような恥ずかしい気持ちになったりしました(笑)。でも、それはそれでそのときに生きていた自分が間違いなく思っていたことなので、書き直すのは違うなと思って、そのまま活かすことにした。なので、曲によっては他のアーティストが作った曲をレコーディングするような感覚に近い曲もありました。

──歌詞を手直ししなかったのは正しい選択だったと思います。そのまま活かすことで、20代という少年から大人になっていく時期ならではの瑞々しい感性がリアルにパッケージされた作品になっていますので。

平岡:そう感じてもらえたなら、よかったです。

──20代のリスナーはもちろん、幅広い層のリスナーの共感を得ると思います。『20s』はいい曲が揃っていますし、曲調の幅広さも魅力になっていますが、そんな中でも特に思い入れの強い曲などはありますか?

平岡:やっぱり自分の代表曲かなと思うのは「アマノガワ鉄道」ですね。去年の4月くらいに書いて8月にリリースしたんですけど、自分でもすごく気に入っているし、この曲が一番好きだといってくれるファンの方も多いんです。「アマノガワ鉄道」はライブでも、いつも一番最後に歌っているんですよ。今回のアルバムの中でもこの曲を作ってよかったなと強く思える曲だし、もっと多くの人に知ってもらうべき曲かなと思う。僕の中の推し曲です(笑)。


──ピュアかつロマンチックな雰囲気のバラードで本当に良質ですし、歌詞も魅力的です。『天の川伝説』をモチーフにしていながらファンタジーや甘いラブソングではなくて、せつない片想いの歌なんですよね。

平岡:そうです。それに、これはちょっと後づけみたいになってしまいますけど、僕は4人兄弟の末っ子なので、家に兄の世代の映画とか、アニメとかを録画したビデオがいっぱいあって、それを観て育ったんですね。だから、自分の年代のものはほとんど観ていないんですよ。戦隊物とかも一番上の兄の時代の『地球戦隊ファイブマン』とかなんです。『ドラえもん』も、大山のぶ代さんの時期の『ドラえもん』が大好きだった。『ドラえもん』は僕の中でちょっとした目標でもあるんですけど、すごいなと思ったのが『ドラえもん のび太と銀河超特急』という映画があるんですね。のび太とドラえもんが宇宙にいって…というストーリーで裏山から銀河鉄道に乗って宇宙に出発するんですけど、その鉄道を運営している会社が『天の川鉄道』という名前だったんです。でも、僕はそれを知っていて「アマノガワ鉄道」というタイトルにしたわけじゃないんですよね。

──えっ、そうなんですか?

平岡:はい。『天の川伝説』とか、片想いの恋を想像して、こういうタイトルにしようと決めたんです。それで、「アマノガワ鉄道」をリリースした後に、家で『ドラえもん のび太と銀河超特急』を観ていたら「天の川鉄道」と言っていて、“ええっ?”という(笑)。全く覚えていなかったけど、子供の頃に観て細胞レベルで覚えていたのかな…みたいな。ちょっと神秘を感じたんですよね。そういうところでも、「アマノガワ鉄道」は僕の中で思い入れが強いです。

──映画に感銘を受けて、それこそ細かいところまで心に焼きついたんでしょうね。『20s』には「アマノガワ鉄道」の他にも「H」や「僕が君を選んだ理由」といった上質なバラードが収録されています。「H」については以前BARKSでインタビューさせていただいたので、今回は「僕が君を選んだ理由」について話していただけますか。

平岡:「僕が君を選んだ理由」を書いたのは、たぶん5年前くらいだったと思います。別にウェディング・ソングをイメージして作ったわけではなくて、本当に単純に父と母を客観的な目線で見て“なんで、この2人は出会ったんだろう?”とか“なんで、この人を選んだろう?”というふうに思ったところから曲を書き始めたんです。最初は父と母のことを俯瞰で見て書いていたんですけど、書いていくうちに自分もこの2人みたいな夫婦像になりたいなという願望ができたんです。それで、“あなた達に育ててもらったから、僕も2人のようになれる人を、この先の人生で見つけていかないといけないな”と思って。そういう願いを込めて書き進めていって完成させました。

──“幸せよりも不幸せを共に歩ける人と人生を共にしたい”ということを歌っていて、地に足がついた考え方だなと思いましたが、ご両親を見てそう思ったんですね。

平岡:そうです。ライブで「僕が君を選んだ理由」を歌うときもいつも言っていることですけど、幸せな時間というのはアカの他人とでも過ごせますよね。でも、一番ツラい時期、どん底の時期というのは本当にごく一部の人じゃないと一緒にいれない。それこそ家族とかですよね。そういうところで、幸せよりも不幸せを一緒に歩める人を見つけたいし、みんなにも見つけてほしいということを歌っています。


──人の人生というのは基本的に地味ですし、ツラいことやしんどいことのほうが多くて、そういう日常を共に歩んでいくのが夫婦ですからね。『20s』を聴いて、バラードを歌うのが大好きなことをあらためて感じましたが、その辺りはいかがでしょう?

平岡:好きです。“バラーダー”なので(笑)。ただでさえピアノ弾き語りだとバラード寄りになってしまうところがあって、これまで沢山作ってきているけど、それでもやっぱりバラードが好きですね。バラードを作ろうと思って作るときもあるけど、放っておくとバラードになってしまうことが多いので、気をつけるようにしています。

──平岡さんのバラードは楽曲のよさに加えて、歌がクドくないところが魅力になっています。すごく感情が伝わってきますし、深く心に染みますが、暑苦しくなくて透明感があるんですよね。

平岡:その辺りは、どうなんだろう。ただ、僕の中ではもちろん歌を歌っているんですけど、歌って届けるというよりは手紙だったり、言葉だったりを伝えるという感覚が強いんです。音楽的な話をすると音程がどうとか、リズムがどうといったことが出てくると思いますけど、僕がふだんやっている弾き語りというのは自分で弾いて、自分で歌うので、その時々で曲のスピードも違ったりするし、自分でコントロールすることもできるんですよね。そういうところも活かして、ちゃんと伝えるということを意識している。そういうスタンスなので、レコーディングするときもピッチやリズムが合っていればOKではなくて、伝わる歌になっているかどうかということを大事にしています。

──高い歌唱力を持ったうえで、テクニックだけに頼っていないことがわかります。

◆インタビュー(2)へ
この記事をツイート

この記事の関連情報