【インタビュー】さとうもか、“もやもや”を少しずつ解消していったドキュメントAL『WOOLLY』

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■今の環境も幸せで。
■でも今の幸せがあるのは、全部過去があったからだと思う


──もともとさとうさんが作っていた「Cupid's arrow」や「いちごちゃん」のような少女性の強い曲も、『WOOLLY』には重要ですよね。

さとう:たしかに。昔のことを書いた曲を入れてなかったら、きりきりしたアルバムになってたかも。わたしは学校で目立ってたとか、めっちゃ青春したタイプではないんですけど学校が好きで。1年間同じクラスだと、ほとんど喋ったことがない人でも、遠くから様子を見ているとどんな人なのかわかったりするじゃないですか。直接交流を持たないけど、その人のことを知っていけるというのが面白くて。仕事柄、同じ人たち30人くらいと1年間過ごすことがないどころか、年に2回会えば多いほうだから。

──ああ、なるほど。その面白い経験は今だと手に入れられなくて、大切な思い出となっているからこそ、学校や学生をモチーフにした曲を多く残してらっしゃるんですね。「Sugar Science 先生」然り。

さとう:学校で過ごした時のことを思い出しながら曲にしていくのが面白い。会社勤めをしている同世代の子たちと比べると、もしかしたらわたしは幼いのかな?と思ったりもするんです。でも27年近く生きてきた自分の観点と、幼さの観点、その両方を持って曲を作れる感じがして……すごくいい感じ(笑)。「Cupid's arrow」や「いちごちゃん」みたいな無垢な曲が入ったから、『WOOLLY』がひとつのストーリーのように感じられるアルバムになったのかなとも思うし。人間味が増えた気がします。

──Momさんをフィーチャリングした「いとこだったら feat. Mom」も、ハイティーンの少年少女を思わせる曲ですよね。トラックもキュートなヒップホップチューンです。

さとう:「いとこだったら」を作っている最中にふと“ふたりで歌いたいな”って。そう思ったらMomくんしか思いつかなかったです。歌詞を交換日記みたいに作っていって、最初はわたしがアレンジまでやるつもりで頑張ってたんですけど、やっていくなかで“この曲に合うドラムの作り方が全然わからん!”とMomくんに助けを求めました(笑)。Momくんが作ってくれたビートにはかっこいいギターや面白い音がたくさん入っていて、全部をブラッシュアップしてくれました。

──ソロで活動しているアーティスト同士で共同制作ができるのもいいですよね。ひとりで矢面に立つ人にしかわからない何かがあるでしょうし。

さとう:そうですね。Momくんは宅録にこだわって音楽をやっている人で、わたしも1st(『Lukewarm』)や2nd(『Merry go round』)でそういう作り方をして、新しい環境に行くたびに“このやり方も面白いな”と興味が湧いていろんな体制に挑戦していて今に至るんです。だからMomくんとの共作で、取り戻す感覚がたくさんあって。めっちゃ刺激になりました。


──ピアノの弾き語りバージョンも収録されている「ながれぼし」と「運命の糸」は、「melt bitter」に似た切なさや苦しさを孕んだ曲だと感じました。3曲とも岡山で作られた曲というのもあるかもしれませんが、いかがでしょうか。

さとう:「ながれぼし」と「運命の糸」は、絶対に岡山で録りたかったんです。今まで自分がいた場所や環境、出会ってきた人全員に感謝の気持ちを持っているけれど、今の環境も幸せで。でも今の幸せがあるのは、全部過去があったからだと思うんです。めっちゃ感謝してるんだけど、それを伝えられない感じがして──それを曲にしたのが「ながれぼし」なんです。「運命の糸」はロックさと繊細さがいい塩梅になりました。

──「運命の糸」はいきなりの不協和音スタートで、並々ならぬ思いが込められている雰囲気がイントロから伝わってきます。

さとう:恋の終わりの巨大な渦みたいな感じの曲にしたくて。最後はパタッ……と途絶えるような(笑)。

──(笑)。この曲はお友達の話を元にした曲なんですよね。“海”や“夏”というニュアンスもあるので、「melt bitter」と同じ話を違う角度から描いているのかなと思ったんです。

さとう:ああ、たしかに。自分のなかの恋の終わりのイメージがそういうものなのかな。「運命の糸」はなんとなく港町を想像しながら作っていました。

──「melt bitter(Album ver.)」と「運命の糸」で恋のとどめを刺して、シンガーとしてのさとうさんの信念を感じられる「歌をとめない」から「アイロニー」につながっていく。ラスト4曲の怒涛の展開、まさにクライマックスだなと。

さとう:あははは。編曲もいろんな人に協力してもらって、周りの人のおかげで完成させられたアルバムだなと思っています。今回の制作で気持ち的にも成長できた気がするし、「アイロニー」を書き終えてからどんどんエンジンが掛かっていて、今は“次のアルバムを作りたい!”という気持ちになっています。元気が出てきました。

──元気、大事ですよね。元気がないと感情も動かなくなるから。

さとう:自分はメンタルが強いと思ってたんですけど、この1年で“全然強くないじゃん”って思い始めて。それまではたぶん、自分の弱い部分を見ないようにしていたんだと思うんです。弱い気持ちでいるとどんどんテンションが低くなっていくし、感情的になりそうな感じがして。傷つきやすいことを認められなかったのかもしれない。自分と向き合うことはしんどくて、やりたくないことだったけど、しんどくても向き合っていくことで“自分は弱いんだな”から“弱くてもいい!”となれた気がする。“弱い自分も好き”と思えていた時期もあったんですけど、自分のことが嫌いになった時期にそれが全部壊れて。そこからまた一つひとつ積み重ねたことで元に戻れたんだと思います。

──このアルバムの曲たちを実際にお客さんの前で披露することで、またいろんなことを感じるのでしょうし。

さとう:そうですね。それも楽しみ。ツアーは悪い人たちが襲ってくるライブにしたいと思っているので(笑)。

──ツアーの意気込みで聞いたことがない台詞(笑)。

さとう:飽きないライヴにしたくて(笑)。メジャーデビューをしてからライヴもMVも演出でいろんなことができるようになったし、久し振りのツアーなので楽しみです。

取材・文◎沖さやこ

メジャー1st Album『WOOLLY』

2021年10月13日(水)発売
通常盤(CD):UPCH-20596 税込¥3,300(税抜¥3,000)
UNIVERSAL MUSIC STORE盤(CD+DVD+マグカップ):数量限定 PDCN-1930 税込¥5,500(税抜¥5,000)

購入リンク: https://lnk.to/woolly_ec
配信リンク: https://lnk.to/WOOLLY

CD収録内容:
01. Weekend
02. Woolly
03. Cupid’s arrow
04. ながれぼし 
05. Love Buds
06. いとこだったら feat.Mom
07. Destruction
08. Sugar Science 先生
09. いちごちゃん
10. melt bitter (Album ver.)
11. 運命の糸 
12. 歌をとめない
13. アイロニー
両形態、共通13曲を収録
※UNIVERSAL MUSIC STORE盤には+Piano ver.2曲を収録。
14. ながれぼし Piano.ver
15. 運命の糸 Piano.ver

UNIVERSAL MUSIC STORE盤DVD収録内容:
Documentary of "WOOLLY" (制作メイキング映像)

▲通常盤

<さとうもか “WOOLLY” TOUR 2021>

※終了公演は割愛
2021年11月7日(日)東京・渋谷クラブクアトロ
15:30 / 16:00 ※追加公演 18:00 / 18:30

ツアーバンドメンバー
河合宏知(Dr)、森川祐樹(B)、沼澤成毅(Key)、シンリズム(G)

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