【インタビュー】J、アルバム『LIGHTNING』を語る「自分自身が射抜かれた稲妻がまだここに存在してる」

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Jが11月3日(水)、12作目となるオリジナルアルバム『LIGHTNING』をリリースする。収録曲は全10曲。コロナの影響でライヴが中止や延期を余儀なくされる中、その感情をぶつけるように制作されたシングル「MY HEAVEN / A Thousand Dreams」に加え、新たに書き下ろされた新曲8曲が収録された。

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前作『Limitless』に続く待望のJのニューアルバムが、ついに登場する。『LIGHTNING』と銘打たれたこの2年3ヵ月ぶりの新作には、「これぞJ!」と叫びたくなるような爆発物のごとき楽曲から、斬新なシェイプとロック然とした本質が同居したナンバー、新たな普遍的名曲と呼びたくなるロッカバラードに至るまでが、お互いの存在感を際立たせ合うかのような機能的な配置で詰め込まれている。コロナ禍の中、前例のない環境下で完成に至らしめられたこの作品の素性について、10月のある日、彼自身にたっぷりと語ってもらった。

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■何ひとつ変わらないと信じてきたことを
■もう一度確かめる機会になっていた

──今回のアルバムができた過程はこれまでの作品とはだいぶ違っていたはずだと思うんです。ただ、前作の『Limitless』の時点で、それこそギターについてもベーシックな部分は自分で弾いていましたよね? その手法って、まるでコロナ禍で人と会うことが難しくなった昨今の状況をあらかじめ読んでいたかのようにも思えるわけですが。

J:はははは! 確かにそんなふうにも感じますね。とはいえ、もちろんこの状況を想定できていたわけではなく(笑)、『Limitless』での方法論をさらに推し進めていくように、その時点でのベストな手法をとるようにしながら作ってきたんです。今回も前作と同様、僕自身の楽曲ばかりじゃなく、ギターのmasasucks、ごっちん (Kazunori Mizoguchi)が書いた曲もそれぞれ1曲ずつ収録されていて。各曲で作曲者がイニシアチヴを握りながらレコーディングに向かっていくという流れが前回とても良かったので、今回もそんなふうにしていて。

──正解だったものを変える必要はない、と?

J:そうですね。曲が向かう先というのがいっそう定まって、明確にイメージできるので。


──『Limitless』の完成当時、限界というものを作ってしまうのは結局のところ自分の想像力、つまり自分はここまでしか行けないと決めてしまうからそうなってしまうんだという発言があってとても印象に残っているんですが、Jさんの創作活動自体、毎回がリミットを押し広げていくかのような作業の連続ともいえるんじゃないかと思うんです。

J:そうですね。自分自身の音楽のスタイルとしてバンドスタイルでやってきた中で、何が必要で何が不必要かみたいな部分を突き詰めていく作業というのはレコーディングを通じて何度も経験してきているし、今回もそのうえで制作してきたわけなので、そういう意味ではこれまでよりもいっそう明確なヴィジョンをもって作業に向き合えていたように思います。ただ、当然、今回の場合は状況が違っていたわけですよね。パンデミックの影響で、レコーディングスタジオを取り巻く状況もやはり全然違っていて、自分たちが従来してきた通りの作業をすること自体が難しかった部分というのも、正直なところあって。ただ、こんな時だからこそ得られるものというのもあったんですよ。オンライン上でのやりとりとかを有効に活用して、それを重ねたうえでタイミングを合わせてレコーディング作業にドーンと入っていけたりとか。そういう意味では迷いもなかったし、無駄もなかった。そういう利点はあったかもしれないですね。

──これまでの作業のやり方に無駄があったわけではないはずですけど、こうして複数の人間が一緒に作業する機会を絞り込まざるを得ない状況にあると、やっぱり効率が重視されることにもなるし、やらなくていいことはやらずにおこうということになりますよね。

J:狙いを定めて、その音色だけを録りにいくような感覚になりますよね。あっちもこっちも求めようとして薄まってしまうのとは違って、ちゃんと狙い澄ましていくというか。

──それができる人とできない人っているはずだと思うんですよ。経験値とかの問題で。

J:確かに。実験的な作業をやろうとする場合でも、この状況下での時間の使い方っていうのは判断が難しくなってくるはずだしね。自分の場合は、これまでやってきたことを研ぎ澄ませていくことでしかなかったかな。

──やはり今回の場合、自宅作業が結構多かったんですか?

J:いや、逆に以前よりも自宅作業の時間は少なかったのかな。というのも、これまでもそういうやり方は重ねてきたから、ここから先はちゃんとスタジオで作業すれば大丈夫だ、みたいな判断ができるだけの経験もしてきたわけで。そういう作業の進め方でも不安がなかったのは、みんなが見てる場所が一致してることが間違いなかったからでもあって。こうして進めていけば絶対にこうなっていく、という確信を持ちながら完成形を描けていたというか。だから、不安のない時間の連続でしたね。

──ただ、配信ライヴがあったり、LUNA SEAのツアーの日程延期分があったりはしたものの、ライヴとかツアーからのフィードバックを作品づくりに反映しにくい状況でもあったはずだと思うんです。そのあたりでの差というのは感じませんでしたか?

J:言われてみれば確かにそうですよね。今になって思い返してみると……これは単純にこの性格のせいかもしれないけど、通常通りにライヴができなかったぶんだけ、そのストレスをアルバムに向けることができてたような気がします(笑)。その想いというのを、全部アルバムに刻み込んでいけたというか。イメージの中で、“こういうビートで、こういうメロディで、こういうサウンドの世界観で……。それをぶっ放したら、会場はこうなるよね?”みたいなところを思い描きながらね。実はそれがいちばん大事なところでもあるし、そういう想いをさらに膨れ上がらせるようにしながら曲作りやサウンドメイクをしてたように思います。

──つまりストレスも燃料になる、と(笑)?

J:そうですね。そいつを有効に使えた気がしますよ(笑)。


──そして、このアルバムは『LIGHTNING』と命名されています。今回も、ありそうでなかったタイトルですよね。

J:いかにも過去にありそうなタイトルですけど、まだ使ってませんでしたね(笑)。

──「Over and Over」という曲の歌詞に‟目も眩む光が”とか‟その閃光を受け止めて”というフレーズがあったり、「Flash」でも‟閃光の傷あと”という言葉が出てきます。そんな具合に、歌詞の端々に闇を切り裂く光をイメージさせるものがありますが。

J:なんて言えばいいのかな? まさにこの2年間、パンデミックが始まって、音楽を取り巻く状況がガラッと変わってしまって……。いろいろと混乱してる世の中にあって、音楽ってものの存在もなんか変わってしまった部分があるのかな、なんて疑ってしまうような瞬間もあったんですよ。そこで、今回のアルバム作りというのは、自分自身から生み出されていく音や自分自身がやってきた音楽、そして自分たちが楽しんできた音楽について、何ひとつ変わらないと信じてきたことをもう一度確かめる機会になっていたと思うんです。その過程で強く思ったのが、それこそ僕が楽器を持つようになる以前、ロックミュージックに目覚めた瞬間、その音楽に触れた時に、この身体をバーン!と射抜いていったものがあったはずだ、ということなんです。まさに稲妻のようにね。そこで“なんなんだ、この世界は!”って感じて、僕の音楽人生が始まり、今現在に至るわけですよね。しかもこれは僕に限ったことでじゃなくて、多分、音楽な好きな皆さんにはみんなそういう経験が必ずあるはずだと思うんです。

──ロック初体験の衝撃を象徴する原風景みたいなもの。それが稲妻だった、と?

J:そう。まさにそれをタイトルに掲げることにしたわけです。自分自身の何かを変えた音楽。そんな音がこの最新作の中にぎゅうぎゅうに詰まっていて欲しいし、そんな音がまさに誰かにとっての稲妻であって欲しいという想い。そして、自分自身が射抜かれた稲妻がまだここに存在してるんだっていうことを表わす言葉として。そういった想いを象徴するものとして、このタイトルはいいかも、と思ったんです。

──つまりJさん自身が閃光に射抜かれたあと、ずっと蓄電されている状態が続いているというか。

J:ははは! そういうことになりますね。自分にとってその衝動というのは、いつでもそこに存在するものだっていう感覚でもあるんで。こうしてやり続けてきてキャリアも長くなればなるほど、当然のように経験値も増えていくことになる。だけどロックミュージックってそういうものさえぶっ飛ばすものだったんじゃないかと思うんです。だから継続してきた年数なんかと正比例の関係にはないというか“キャリアなんか関係ない、これまでやってきたことなんか関係ない”というものでもあるはず。同時に、こうして続けてきたからこそやるべきこと、鳴らすべきものというのがあるような気がするんです。それをトレースして重なり合っていったものが自分自身の今ってものを表す音になっていて欲しい、ということは常に思っていて。そこで変わってしまうことは一番NGですよ。“いまさらどうしたの?”みたいな。

──何事も続けていくためにはある種の変化も必要ですけど、そういった次元ではない変化というのもありますもんね。

J:“いつの間に? 昨日まで違くなかった?”みたいな(笑)。そういうのは僕には絶対あり得ないことだし。

──今みたいな発言を聞いた後では聞くまでもないことなんですけど、何もかもが停滞してしまった状況下でいろんなことを考えさせられ、変化に可能性を求めた人たちもいるはずじゃないですか。音楽をやってきた人たちの中にも、人生における優先順位について改めて熟考した末にそれを諦めることにしたり、音楽を続けていくにしてもアプローチの仕方を変えたりというケースは少なくないはずで。ただ、Jさんにはそういうことはあり得ない、ということなんですね?

J:そうですね。なんかこう、突き詰めて考えていった時に、自分自身が鳴らす音というのは……当然、最初はいろんな憧れや影響ってものから生まれてくるようなところが誰にでもあるはずだし、そこからの過程の中でいろんな気付きを得ながら出来上がっていくものだと思うんです。それに対して今の自分が思ってるのは、たとえば顔を洗うように、食事をとるように、水を飲むように、まさに普通にそこに存在しているものとして音楽を鳴らしているようでありたいな、ということで。決して非日常じゃないってことなんです、楽器を持つことが、曲を書くことが、プレイすることが。

──ええ。最初は非日常的だったかもしれないけども。

J:そう。そもそもは憧れから始まったもの。だけど、長い時間を経た今、自分自身にとってそれはごく自然にそこにあるもので。だからこそ、変わりようがないんですよ。ただ、この状況下にあって音楽を諦めざるを得ない方とか、この世界から離れざるを得ない方たちの気持ちもすごくわかるし、いつかこの状況が晴れた時には、同じ音楽好きとしてまた戻ってきて欲しいな、と思うんですよね。

──ええ、わかります。もしかしたらこの局面で他の道を選ぶことが正解というケースもあるはずだけども、それこそ音楽をやらなくなったことで、どれほど自分がそれをやりたがっていたかを思い知らされる場合もあると思うんです。そういう人たちには、また戻ってきて欲しいですよね。

J:そう、まさにそういうことです。

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