【インタビュー】HEESEYのベース人生「美意識・美学っていうのは育っていくもの」

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2022年3月3日にニューアルバム『33』をリリースしたHEESEYだが、この作品には様々な音楽性をまといながら、一貫したロックンロールの楽しさと、ほとばしるようなエネルギーが渦巻いている。一ベーシストのソロ作品というステレオタイプなマニアックでストイックな香りではなく、開放的で楽しくて仕方がないといったバンドサウンドに喜びを寄せた初期衝動そのもののようだ。

プロベーシストとして、ここに到達するまでに踏んできたであろう取捨選択とその紆余曲折は、どういうものだったのか。ベースという楽器を武器に人生を謳歌するHEESEYの言葉に、耳を傾けてみよう。


──楽器を始めた時、最初からいきなりベースだったんですよね?

廣瀬洋一:そそのかされたんですよね(笑)。ベースになる人ってそういう人が案外多いんですけど、中学生の頃、友達とバンドをやるときにベースのなり手がいなかったんですよ。そいつらが僕に「廣瀬、KISS好きだよね」「大好き大好き」「バンドやろうと思ってるんだけど、ジーン・シモンズ好きだったらベースやらない?」「やるやる」って。それにまんまと乗っかったのが僕で、だから最初からベースを目指していたんです。

──ベースがどんな楽器なのかもよく分からない状態で。

廣瀬洋一:何も分からないし、曲で鳴っているどの音がベースなのかも分からない(笑)。ギターとどう違うのかも分からないし、弦が4本というのも後から知るんですよ。

──ベースあるあるですね。

廣瀬洋一:みんなギターが演りたいんですよ。僕らの若い頃ってそれが一番強い時代で、ギタリスト至上主義というか、みんなリッチー・ブラックモア、ジミー・ペイジ、マイケル・シェンカー、ヴァン・ヘイレンになりたくて、どう考えてもギターなんです。でも「あいつの方がうまい」と挫折して「じゃあ俺ベースやるわ」「じゃんけんで負けた」うんぬんがあるんですね。

──ベーシストになって良かった点と、もっと違う道があったんじゃないかってところはどう思いますか?

廣瀬洋一:両方ありますけど、どちらかというとベーシストで良かったなと思います。すごく誤解されがちなのは、「ベースのほうが簡単」「弦4本で楽だ」ってやつ。だけど僕はスタートが「ジーン・シモンズ好きだよね、ベースやらない?」なので、ギターもまあかっこいいとは思ったけど、ギターに挫折してベースになったわけじゃなかったので、後々はベースの可能性・役割をどんどん掘り下げていった。「ベーシストってこうだよね、でもそれ通りじゃなくしちゃえ」っていう。ベースの一番憧れたり惹かれたりするところをどんどん突き詰めていって、最終的に今がある。

──なるほど。

廣瀬洋一:もちろん「ピアノをやっていたらどうなってたかな」「こうなってたかも」みたいな色んな想像もあるんですけど、ベースをやって来れたからお陰様でこういう立場でいられるっていうのもすごく大きい。後々の様々な音楽や人との出会いは、ベースを選んでこの道を歩み出したことから始まっているんです。

──私は若い頃、ベースプレイがバンドの色や空気を大きく左右するという事実を知らなかったので、なかなかベースの面白さに気付けなかったという引け目があります。

廣瀬洋一:ベースって大人しくて、バンドのボトムを支えるみたいなパブリックイメージがあるじゃないですか。もちろんそれは大事でなくてはならないところだけれど、楽器マニアや実際にプレイしている人の目線と、一般的なリスナーの目線ってちょっと違うと思うんです。ミュージシャンなので、どうしたって「自分が目立ちたい」とか「主張したい」っていうエゴが出るじゃないですか。ずっとそれを両立させようとしていました。リズムセクションとしてバンドの屋台骨を支えながらも、個性を磨いて自分のキャラを主張するという。

──スタイルが確立されるまでの話ですね。

廣瀬洋一:掘り下げていくごとにハードロックとかヘヴィメタルが好きになったり、でもザ・ビートルズも好きだし50’sのロックンロールやオールディーズがすごく好きっていうのもルーツにある。ハードロックやヘヴィメタルのようにユニゾンで合わせていくような一体感はかっこいいんですけど、本当に屋台骨だけになっちゃて自己主張できない。オレが好きなのはそれだけじゃないぞっていう思いが強かったな。マッカートニーのベースもかっこいいし、ウッドベースで弾いていた1950年代のベースプレイとかも大好きだから、そういう音楽性と自分のやりたいことを考えると、やっぱりバンドじゃないと表現できないと思って、ベースに特化した人にならずにバンドマンになった。シンガーがいて魅力的な歌を歌って惹きつける歌詞があって、かっこいい曲のアレンジでギターもすごくて…っていうバンドとしてのかっこ良さに憧れていたからね。そういう音楽が好きなんです。そのなかでどう個性を出していくかにだんだんシフトしていった。


──ベーシストがどういう志向性かによって、バンドのカラーって大きく変わっていきますよね。

廣瀬洋一:ベースはドラムと一緒にリズムを担う。そして同時に、キーボードやギターと一緒にメロディ/音階を担う。リズム/グルーヴのアプローチと、メロディックな音階のアプローチを両方兼ね備えているから、ベースはすごく大事なポジションだという話をよく聞きますよね。まさにその通りなんですよ。

──ええ。

廣瀬洋一:ある時期までベースしか演奏できなかったことが逆に功を奏したなって思うのは、ベースでストリングスのようなメロディを弾いてみようとか、サイドギターのような音の厚さを担おうとか、キーボード的な音の重ね方の位置にいてみようとか、アレンジしたりベースが普段やらないことをやってみたことかな。ドラム、ギター、ベースだけの小編成だったから、ベースの可能性を広げるにはそこだろうなと思って、それが自分の個性につながったらいいなとも思った。トリオで太い音を出しているバンドもすごく研究して、「ギターがこう弾いているとき、ベースはこう弾いている」とか「このバンドはこんなベースのアレンジが多いな。」「こういうふうに音の厚みを出すんだ」「逆に敢えて音数を減らして薄くするとこう聴こえるのか」とか。今時みたいにDJも打ち込みもなかった時代だったんで、むしろそれが良かったな。

──同じ8分でも音符の長さでグルーヴが変わるのも、ベースが牽引できる大きなポイントですよね。

廣瀬洋一:僕は意識がメロディに行きがちだったけど、ある時から、音がないかっこよさ、ベースいないかっこよさにも気がついた。ギターのリフとドラムのリズムがあって、途中からベースが入ってきたときのベースの存在感たるや、ね。弾く/弾かないのコントラストとか、音符の長短でリズミックかどうかとかね。ゆったり聴かせるのかリズミックに聴かせるのかは、音符の長さだったりもするし。自分が曲を書くようになって、一瞬ベースがなくなるアレンジのかっこよさ、音符が止まるかっこよさ、伸びるかっこよさを知った。

──ソロ作品では、ベーシストらしさを意識するんですか?

廣瀬洋一:曲を書き出したソロ活動の最初の頃は「ベースがベースが」っていうのはすごくあった。ベーシストでずっとやってきているし一番器用に弾ける楽器はベースなので、アレンジするにあたってもベースの意識が強かった。スーパープレイじゃないですけど、自分本位なこれ見よがしなプレイだったり自信満々なフレーズを入れたりベースラインを優先したりするのが多かったんですけど、だんだん曲を作っていくごとに変わっていった。

──どういうことですか?

廣瀬洋一:メリハリがつけられるようになったのかな。キーボードやギターがいないところでは自分の想像を掻き立てられるように無理矢理アレンジしていたんですけど、あえてそれをギターに任せて「ベースはゆったりしたほうが歌やキーボードなどの他の楽器が引き立つな」といった考え方もできるようになった。「ここはベース無しにしちゃおう」とか「途中から入って来てもすごくいいな」とか、そういうアレンジができるようになってから「ベース、ベース」というのが無くなった。逆にそのほうが「ここはベースでしょ」ってところに注ぎ込めるよね。

──ベーシストって、プロデューサー目線を持つ人が多いですよね。故・佐久間正英さんしかり亀田誠治さんしかり。

廣瀬洋一:リズム/グルーヴ方面と、メロディ/音階面、どちらにも意識を配るということがありますよね。

──音楽を俯瞰で見る能力が上がるのかな。

廣瀬洋一:プレイヤーって、自分の楽器に特化した楽器でインストゥルメンタルの作品を作ることって多いじゃないですか。ピアノでもギターでも、ドラマーもインストでドラムがメインみたいな。でも僕はやっぱり歌が好きで、ぶっちゃけインストにあまり興味ないんですよ。興味のないことをわざわざソロでやらないですよね。ソロでは好きなことやろうと思っているので、いつかやりたくなったらやればいい。今は歌モノで、ちゃんと曲として存在して、あわよくばベースがかっこよければ最高。ライブを想定したとき、歌とベースが両立できないところは「ここは歌を聴かせたいからベースをシンプルにしちゃえ」って感じにどんどん変わってきました。ソロを始めたばかりの頃は「どっちもできなきゃダメじゃん」って思っていたんですけど、スムーズにできるんだったらその方が良いし、ベースのかっこ良さはフレーズなりサウンドなりで充分追究しているから、これで良いんじゃないかって思うようになった。

──ベースが裏メロを奏でていたりすると、歌いながらのプレイは無理ゲーだったりしますね。

廣瀬洋一:自分の中でふたつのメロディを出しているのと同じですから。それはすごく大変だし難しい。だけどそれに挑戦しようとしている気持ちもちゃんと残っていますよ。ベースを弾きながらどこか曲芸みたいになっているのが、自虐的で面白い。ジミヘンがものすごいフレーズを弾きながら歌っているのと近いですよね。歌メロとソロと同時に鳴っていて「なにそれ」ってやつは、憧れるしかっこいいなって思う。


──全国の若いベーシストに向けて、伝えられることはありますか?

廣瀬洋一:今って、サブスクとかYouTubeとかいろんな音楽と簡単に接する機会がものすごく多いと思う。それを上手く活用しながら見い出していってほしいよね。世の中が可能にしてくれていることにあやかって、いろいろやって、最終的に自分の個性を確立すればいいと思います。新しいものだったり…新しくなくてもいいんですよ。「俺は今まで聴いてきた音楽のここが好きだからこれをやる」って、オリジナリティを持ってのめり込んでいったらいいんじゃないかな。憧れること、夢中になることの衝動を大切に進んでいってほしいなと思います。

──音楽を追求するにはいい時代になりましたね。

廣瀬洋一:羨ましいよね。けど、YouTubeやサブスクに接するだけでは編み出せない・見い出せないこともいっぱいあったかもしれない。見れば分かることも分からないから、考えて想像してもしかしたら勘違いしているかもしれないけど、だからこそ新たな発見をするきっかけがあったりもするわけ。本当はその先に可能性がいっぱいあるから、そこで止まっちゃったらもったいない。

──なるほど。ではサンダーバードを手にして我々も頑張りましょう(笑)。

廣瀬洋一:そこもどうでしょうね(笑)。サンダーバードにも弱点はいっぱいあるし、それぞれの楽器にいっぱい良いところも悪いところもあるからね。「サンダーバードでいくぜ」でももちろんいいんだけど、逆に「俺は自分のオリジナリティがほしいから廣瀬と違う楽器を弾こう」で全然いい。サンダーバードのルックスがかっこいいからそれに従うのか、音色のこういうところがかっこいいからもっと違う楽器を追究するのか、そこは自分の感受性・アンテナ・美意識を基準にしてほしい。

──ですね。

廣瀬洋一:でも、それって止まっていちゃダメなことで、美意識・美学っていうのは、どんどん育っていくものだと思うので、敏感なアンテナをもって育てていってほしいな。僕はずっとどこか個性的でありたいと思っていたし、俺だったらこうやるぜっていうのもあった。同時に、バンドとして曲が大事だよねっていうのもあった。難しいだけのギターソロや意味なく複雑な演奏より、やっぱりオーディエンスと分かち合える素晴らしい楽曲の方が好きだな。もちろんドラムやベースも役割はいっぱいあるけど、いいメロディとかっこいい歌詞があいまって、最終的には曲のかっこよさが一番なんだろうなー。その曲のかっこよさをもって生き様やルックスも引き立つんだと思うから、憧れ・夢中になれるもの・初期衝動…たくさん経験してたくさん感動して音楽を創っていってほしいと思っています。

取材・文◎烏丸哲也(JMN統括編集長)



廣瀬“HEESEY”洋一『33』

2022年3月3日(木)発売
PML-2006
[収録曲]
1.NEW DAYS
2.ROCK'N'ROLL SURVIVOR
3.33(Double Three)
4.RALLY ROULETTE ROLL
5.雨音のララバイ
6.オンリーワンラヴソング
7.HIPPIE ROSE
8.THUNDER GATE SHUFFLE
9.SAMBA No.9
10.スーパーハイパーウルトラエクストラ
11.INFINITY OF MY GROOVE
12.NEXT NEW DAYS(New Days Reprise)
CDショップ特典
・Amazon:メガジャケット
・タワーレコード:ステッカー(TOWER RECORDS ver.)
・セブンネット:ステッカー(セブンネット ver.)
・応援店:ステッカー(応援店 ver.)
・HMV:ポストカード(HMV ver.)
・楽天ブックス:ポストカード(楽天ブックス ver.)
・Sony Music Shop:ポストカード(Sony Music Shop ver.)

<HEESEY TOUR 2022『ROCK'N'ROLL SURVIVOR』>

3月26日(土)宮城 仙台 MACANA
3月27日(日)栃木 HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
4月2日(土)広島 SIX ONE Live STAR
4月3日(日)福岡 DRUM SON
4月9日(土)愛知 ell.FITS ALL
4月10日(日)大阪 Music Club JANUS
4月16日(土)東京日本橋三井ホール
東京公演以外:All Standing(立ち位置マークあり)¥5,500(税込)
東京公演:全席指定¥6,600(税込)
※一般販売:2022年2月26日(土)~
SUPPORT MEMBER
・Guitar:菅大助
・Keyboard:おおくぼけい
・Drums:大山草平

◆廣瀬“HEESEY”洋一オフィシャルサイト
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