【インタビュー】中島卓偉が語る、独立の真意と未来「立ち止まってはいられない」

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■独立したからこそ新しい風を採り入れて
■今までできなかったことを実現させたい

──喉の調子も万全ですか?

中島卓偉:喉はつぶしてきましたけど、ありがたいことに23年キーを下げずにやってこれています。歌えば歌っていくほどかすれていくのは覚悟していますし、倍音は日々増えている。それを受け入れながらも、自分の声が進化していくほうに持っていきながら、歳をとっていく自分の声を自分自身が一番愛してやらなきゃいけないなと思うんですよね。年齢とともにコンディションが戻るのも遅くなっていますから。一日でも長く歌うために今まで以上にケアもしていかなきゃいけないっていう緊張感はあります。酒もタバコもやらずに今日まできて、それはずっと守り続けなきゃ。

──今でも走り込んでいるんですよね。

中島卓偉:やっぱり息切れしてライブはしたくねえなっていう。運動していれば体力って持続できると思うからやめないで今日まできたんで、だから運動もやめられないですね。やめたら体力が落ちるんじゃないかっていう気になっちゃって。どうしても声が出ないときはステロイドの錠剤で乗り切れますけど、やっぱりそういう薬には頼らず、自分の体力と気持ちと精神力で乗り越えていけたらいいなとは思います。喉を補うためにステロイド吸入が欠かせない人もたくさん知っていますから、戦いですよね。ミックスボイスなら何本でもライブができるように工夫できますけど、自分のライブのパッションで考えると、そういうわけにもいかないので。

──ミックスボイスって喉の負担が小さいんですか?

中島卓偉:限りなく小さいです。基本張り上げないですから。声も小さくてイヤモニ用に作られた声で、それを駆使してやっている人はたくさんいるし、全然否定はしないんですけど、僕はさらっと歌うのではなく、ここぞってときに魂を込めて地声で張り上げたいので。

──オペラみたいな発声は、喉に対してどうなんですか?

中島卓偉:あれはもう絶対枯れないですよ。あれはお腹から出すような開いた歌い方なので、声帯をこすりつけるような歌い方ではないんです。僕らはシャウトをするので、ロックボーカリストって声帯を閉じてぐっとこすりつけることによって、ディストーションさせるんです。アンプでいうところのゲインですよね。オーバードライブです。基本的には閉じたままそこに力を入れてこすりあわせるので、閉じるところがギザギザになって、そこから息が漏れる。それでどんどんハスキーになっていくっていう。

──ロックボーカリストって、みんなそういうタイプですか?

中島卓偉:スティーヴン・タイラーも全部そうですね。若いときのポール・マッカートニーやジョン・レノンもそうです。もっと言うと1970年代に活躍した往年のボーカリストたちもみんなそうだと思います、ロバート・プラントもそうだったでしょうし。スティーヴ・ペリーもそうだと思います。

──なるほど。

中島卓偉:耳鼻咽喉科の先生に喉の声帯を見せて「シャウトしてます?」って訊かれて「してます」って言うと、「それ絶対だめだよ」って言われる。声帯が充血してポリープになる人はなる。でもしょうがないですよね、それがオーバードライブだと考えたときに、そう歌ったほうがカッコよくなるからどうしてもそっちをとってしまう。きれいに歌ってもカッコがつかない曲ばっかり書いてきたんで、そこはどうしようもない。B'zの稲葉さんとかすごいと思いますよ。Mr.Childrenの桜井さんもそうだと思うんですけど、それで今も第一線であの声でやられているっていうのは本当に尊敬します。いかにマイクに乗る声を作るかということに命をかけていらっしゃると思うから、自分もそれを頑張りたいですね。


──20年後にはどういう自分になっていますか?

中島卓偉:60歳過ぎているってことですよね。たとえば喉だけでいうとストレッチも毎日やっていて、ライブでは股割りのように足を開いてヒュッて立ち上がるパフォーマンスとかもやるので、これも果たしていつまでできるかって思ってますよ。膝と手首を床に叩きつけているわけですから、絶対そのうち関節やら骨をやられると思うし。でもそれもできるまでやっていきたいし、できるなら20年後も今と変わらない身体の柔らかさをもって、かすれてはいるけれどちゃんと声が出せているっていう、太らずフォルムも維持してそこに立っていたい。

──たぶん何も変わってないんでしょうね。今も20年前と何も変わっていないから(笑)。

中島卓偉:東京ドームの花道一番端で踊りながら歌っているミック・ジャガーを見ると、1970年代と変わらないんですよ。でっかい画面に映ると顔に縦ジワが入っていて、ああもうおじいちゃんだと思うんですけど、フォルムだけ見ると変わらない。すごいことだなとそれに感動したりもする。ダブルのスーツを着てB.B.キングみたいに座って弾いてもカッコいいブルースマンもひとつのジャンルですけど、エンターテイメントとしてファンの期待に応えられるように努力したいですね。

──日本でもロックミュージシャンの生き方が刷新されていくときですね。

中島卓偉:シンガーはスポーツ選手より息長くできる商売なのかなって最近よく思います。プロボクサーってもっと短いですよね。20代で走り続けて完全燃焼する。プロ野球選手もお相撲さんにしても、体力に限界がある。でもミュージシャンはキープできるところはキープしてプライド持つところは持って、枯れていく美学とともにどこまでやれるのかなって思ってます。

──若いときの作品をやり続ける大変さや難しさもあるとは思いますが。

中島卓偉:いつまでも同じようにステージに立ちたい。1stアルバムの曲をキーを下げずにライブで演りますけど、キーを2音下げて1stアルバムの曲を演って喜んでいる姿と、当時と同じキーでお客さんが喜んでいる姿、これはもう雲泥の差なんですよ。そこは強く意識したいところですね。

──デビュー当時の衣装が今でも着れるしね(笑)。

中島卓偉:そうっすね(笑)。ずっと体型もキープしてきたからそれが当たり前になっていますけど、本当に、そこまでやってこられてよかったなって思っているんですよ。デビュー当時ツアーで履いていたパンツを15周年ツアーで履いて、それをMCに入れると結構「えー」ってびっくりされて。これは結構おもしれーぞと思ってね。18年目のときは1stアルバムで着たピンクのスーツを着て出たり。「まだ着られるんだ」って言うと、喜んでくれたりするわけですよね。それもエンターテインメントにできるんだなってことが時間が経って初めてわかりました。それは続けてきて頑張ってきてよかった。

──そこには努力が欠かせなかったでしょうけど。

中島卓偉:やっぱ、あるんですよ。今日は絶対走る日だと決めた日に、めっちゃ雨が降ったり台風がきたり。頑張って筋トレして外走っててめちゃくちゃ土砂降りにやられて“僕は何と戦ってんだろうな”って(笑)。23年間で腐るほどありました。ツアー先でめちゃくちゃいいライブができて、スタッフもメンバーも「良かったね」って。打ち上げに行きたいですけど、僕は「ホテルでだんまり決めます」って言って行かない。しゃべったら喉が枯れるんで。ヘトヘトに疲れているから身体は動かないけど、アドレナリンが出ているから寝られなくて、そのまま「明日も歌うのか」っていう、何と戦っているかわからないことがたくさんあった。それを耐えてきたご褒美が今だとするならば、頑張ってきてよかったなと思いますけどね。

──これからもそのままで(笑)。

中島卓偉:いやいや。まあでも常に進化したいとは思っているんです。焼き直しはダメですし、同じように速い8ビートの曲でも、若い頃の感じではなく、今だからこそ書ける曲調だったりアレンジ・表現力でいきたいですね。進化を遂げて変わり続けることをモットーにしてきたんで“この人は先に進みたいんだな”って思ってもらえるような“変わり続けることが卓偉だ” “先へ進もうとする卓偉が一番カッコいいんだ”と思ってもらえるように。

──それでこそ中島卓偉。

中島卓偉:ポルシェもそうじゃないですか、“最新のポルシェは最良のポルシェ”…素晴らしいキャッチフレーズだと思うんですよね。このキャッチフレーズがあるからこそ、あれだけデザイナーが冒険できるんだと思います。そしてカイエンも大ヒット作になった。

──なるほど。

中島卓偉:時代に合わせたレコーディングの仕方とかライブの仕方とか、時代の環境を受け入れてながらニーズに合わせたやり方に応えていきたい。もちろん古き良きものを長く使い続けることも大好きですけど、どこまでデジタル思考を受け入れられるか、それも自分の気持ちの持ちようですよね。独立したからこそ新しいことを採り入れ、新しい風を採り入れ、今までできなかったことを全部実現させたいです。楽しくハッピーにやれることが一番自分に合っているのかな。

取材・文◎烏丸哲也 (JMN統括編集長)

■Digital Single「風に飛び乗れ」

配信:2022年5月14日(土)スタート
各音楽サイトにて

■<中島卓偉 TOUR 2022「DESTRUCTION chapter 1」>

※全公演1日2回公演開催
【東京】
8月13日(土) Veats Shibuya
・1公演目:open13:00 / start13:30
・2公演目:open16:00 / start16:30
(問)DISK GARAGE 050-5533-0888
【大阪】
8月14日(日) OSAKA MUSE
・1公演目:open15:00 / start15:30
・2公演目:open18:00 / start18:30
(問)OSAKA MUSE 06-6245-5389
【愛知】
8月17日(水) Electric LadyLand
・1公演目:open15:00 / start15:30
・2公演目:open18:00 / start18:30
(問)サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

▼Support Musician ※全公演共通
G:you (Nicori Light Tours / ex.Janne Da Arc)
B:Ju-ken
Dr:SHINGO (THE TERROR’S 666 / ex.JURASSIC)】
▼チケット ※全公演共通
前売り ¥6,500-(税込) ※ドリンク代別
一般発売:7月9日(土) 10:00~
【オフィシャルファンクラブ先行】
受付期間:5月30日(月)18:00~6月12日(日)23:59


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