【対談】中島卓偉×来夢(キズ)が語る、<VOCAL SUMMIT>と交錯する音楽愛「最後は人間力しかない」

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9月19日に三井ホール、9月24日にEX THEATER ROPPONGIで開催となる<VOCAL SUMMIT>は、その名の通りシンガーとして際立つ才と魅力あふれるステージパフォーマーを両立させた優れたヴォーカリストたちが集うという、ありそうでなかったライヴイベントだ。

◆中島卓偉×来夢(キズ) 画像

魅力あふれるラインナップと高いパフォーマンス力で好評を博している<VOCAL SUMMIT>だが、今回キズの来夢が初出演を果たすことを祝し、中島卓偉とのヴォーカリスト対談を敢行した。稀代のヴォーカリスト中島卓偉と来夢、お互いの存在を遠目にしながら面識のなかったふたりに対談の機会をセットしてみると、想像を超えた共鳴が見えてきた。

初対面となるふたりだが、九州男児でありステージに生きるロックヴォーカリストであり、コンポーザーでもある両者には、なぞるように重なる資質と全くかぶらない異端な価値観が、まるでお互いの陰影を映し出すように奇妙なシンクロナイズを見せる。このふたりが対峙するとどのようなケミストリーが生まれるのだろうか。

   ◆   ◆   ◆

■ねじ曲がった人間だからまっすぐ生きられない
■卓偉さんのTwitterの一言とかヒヤッとくる

──この対談が初対面だというのに、衣装の色がかぶるというツカミの良さ(笑)。

卓偉:そうなんですよ。まさか緑色はかぶらないだろうと思って選んだんですけど、髪まで緑で。奇遇ですね。

──このふたりが<VOCAL SUMMIT>に登場するなんて、楽しみすぎます。

卓偉:ひとつのバンドに入れ代わり立ち代わりヴォーカリストが変わっていくんですけど、自分の持ち時間の中でも、出演者の方とコラボして歌う曲があったりするんですよ。おもしろい形式ですよね。


▲中島卓偉

──来夢にとって、<VOCAL SUMMIT>参加はこれが初なんですよね。

来夢:そうなんですよ。だからキャストを聞いたとき、“あ、これは俺、処刑されにいく場所だ” “おかしいおかしい、このラインアップに僕を入れるのは”と(笑)。

──なぜお呼びがかかったと思います?

来夢:それがわかんないんですよ(笑)、たぶん殺られるんじゃないかな。

──ははは。V系バンドからヴォーカルだけポンと引き抜かれたのがすごいですよね。

卓偉:そうか、いつもはバンドだからピンで出ることはあまりない?

来夢:ないですね。ひとりで歌うのはなかなかないです。

卓偉:それは来夢くんのファンからすると新鮮かもしれないね。

来夢:メンバーがいないとちょっと寂しいですよね(笑)。でも楽しみでしかないです。いつもキズを背負った状態でバンドから離れる瞬間ってあまりないので、当日めちゃくちゃ緊張するとは思うんですけど、キズのヴォーカリストとして恥じないように出たいかな。

──何の心配もないと思いますけど。

卓偉:言うたら選ばれし人だから。メインアクトはT-BOLANの森友嵐士さんで、毎回ビックゲスト…前回は大黒摩季さんでしたけど、そういう濃い先輩も出るので勉強になることが多々ありますし、来夢くんにとっても勉強になることがあると思うんですよね。

──勉強になるというのはどういう点ですか?

卓偉:ちゃんと歌っているヴォーカリストが集まるイベントなので、僕が気になるのが“喉の駆使”。喉をどんなふうに駆使してやっているのかにすごく興味がありますよね。“たばこ吸っているんですか”とか“お酒飲まれるんですか”って。まったくやらない人とガンガンやってても声が出る人っているので、声の出し方とか気になります。リハーサルではどれぐらいのヴォリューム感でやっているのかも興味ありますし。なかにはそういうことすら興味ない人もいるから、むしろそこもおもしろい。


▲来夢(キズ)

──中島卓偉らしいですね。

卓偉:ヴォーカリスト同士って一番濃いところですし、お互いのリスペクトがあって当然だよなって思っているから。みんなしゃべる声が違うように、歌声もみんな違うわけじゃないですか。なので興味あるし、どんなふうに出しているんだろうって研究もしたくなる。ディスカッションしてみたくなりますよね。

──来夢はどうですか?

来夢:僕は逆でまったく気にしない人。人の歌い方も“すごいなー”って思うだけで“僕にはできない”と思ってる。僕は卓偉さんのTwitterの一言とかも大好きなんですよ。何気ない一言が刺さっちゃう。しかも、笑いを入れながらちゃんと刺さる言葉をツイートする。歌詞もそうなんですけど、僕は卓偉さんに憧れてまっすぐ生きようと思って頑張ってたときもあったんですけど、そもそもねじ曲がった人間だからまっすぐ生きられないことに気付いた(笑)。そこから、卓偉さんが何に向き合っているかっていう姿勢を見るようになった。私生活のTwitterの一言とか刺されば刺さるほど自分が曲がっているときなんですよ。ヒヤッとくるときがある。

卓偉:僕だって曲がっているよ。社会に通用しない人生を生きてるもん(笑)。

来夢:で、九州男児だから。僕も九州なんですけど、先輩に「中島卓偉は見たほうがいい」「会ったほうがいい」って言われてて。先輩のイベンターさんに「上京したタイミングで会いたいヴォーカリストや先輩いる?」って聞かれて「卓偉さん」と言ったら、「紹介するのは簡単だけど、まじめにやってたら、ちゃんと会えるようになるから」と言われて……9年経ちました。

──その時の来夢にとって、中島卓偉はどういう存在だったんですか?

来夢:勝手に先生です。経歴を見てもおかしいんですもん。上京してすぐにメジャーから出して、そういう活動できる人が九州にいるんだって。

卓偉:いやいや僕は高校受験をしてないからね。完全なるドロップアウトなんですよ。家庭環境もいろいろで。家庭環境はいいほう?

来夢:結構、悪いほう。海外に行ったのも、中学生のときに飛ばされたんです。日本であんまり悪さするから、言葉がわからないところに行けって。

卓偉:それで英語しゃべれるんだ。どこ?

来夢:イギリスに。 “ぜってー日本語で通す”って思ってたけど、英語しゃべれるようになった。

──そこで得た刺激も相当あるでしょう。

来夢:向こうはもっと治安が悪いのでアップグレードされて帰ってきました。そこから大変なことになっちゃって。

卓偉:それは何歳くらい?

来夢:中学生です。

卓偉:それでイギリスに飛ばしてくれるお父さん、カッコいいな。俺は学費1円も出してくれなかったから、上京するしかなかった。

来夢:お金の面では恵まれていたかも。放置でした。

──その経験は特別なミュージシャンシップを形成しますね。

卓偉:どういう家庭でもいいと思うんです。家がお金持ちで何でも買い与えて天才になるタイプもいるし、僕みたいに自分でやるしかなかったというタイプもいれば、放置して勝手にしろって言いながら自分の好きなことを見つけられる子供もいる。全然間違ってないと思う。

来夢:ここまでやっていいっていう線引きは大変でした。クソガキだったので、もう全部やってから自分で確かめてたんです。なのでハメを外したこともいっぱいあります。

──与えられた環境のなかでどう生きるかですね。

来夢:そうですね。でもぶっちゃけそんなに深く考えてなかった。イギリスに行ったときも単純に口説きたい女の子もいたし食べたいものもあって、そのためには英語をしゃべらないといけないっていう環境に置かれただけなんですよね。

卓偉:イギリスだったらブリティッシュ発音も学んでおくと世界で通じますもんね。

来夢:シド・ヴィシャスとかピストルズとかの文化がめっちゃ好きだったのでワクワクして行ったんですけど、HIPHOPばかりの時期だったんでパンクはなかった。モチベーション下がっちゃいました(笑)。


──当然ながらふたりはヴォーカリストですが、他のパートと決定的に違うところは何だと思いますか?

来夢:メンバーはスタジオに喜んで一日中入るんです。僕は入れない。これが決定的に違います。メンバーは音楽が好きなんです。僕はたぶん音楽が好きじゃないんです。歌うことや何かを届けることは好きなんですけど、オーディエンスのない音楽とか制作活動はめちゃくちゃ大嫌い。スタジオも年に3回とかしか行かない。

卓偉:でも曲を書くのは来夢くんでしょ?

来夢:はい。全部。だけど「曲を書くのも嫌い」と言っています。伝えたいことをまとめる作業ですけど、そういうのがイヤで逃げてきた人間なんです。けれどそれをしないとライヴはできないから。

卓偉:それでもバンドを背負って自分がコンポーザーなんだからすごいよね。

──逆に、伝えたいことを伝える手段は音楽じゃなくてもよかった?

来夢:よかったです。「音楽じゃなくてよかった」とはっきり言います。

──なぜヴォーカリストなんでしょう?

来夢:不器用だったんです。人に物事を伝えるのが音楽じゃないと恥ずかしかった。だから僕の曲って、対象がひとりに向いていたりするんです。具体的に書くのでひとりに届けばいいって。

卓偉:音楽は手段?

来夢:そう。生活のツール。

卓偉:でもそういう人が多いのも事実ですよね。自分の思いを伝えるために、たまたま音楽を選んだっていう。

──だからといって、誰もがヴォーカリストになれるわけじゃないんだけど…。

来夢:それこそ家庭環境でしょうね。兄貴の影響でギターをなんとなくやっていて、自分が伝えられる手段がそれしかなかった。もっと勉強して俳句とか書けるならそれでもよかった。人の心を動かす方法は、今のところ僕には歌しかないのかな。

卓偉:それは向いていると思っている?

来夢:向いてないと思っています。高校1年生でちゃんとライヴハウスでやり始めたんですけど、何年かかってこんな不器用にやってるのかなって思います。

卓偉:おもしろい。

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