【対談インタビュー】OnlyOneOf「ズルい女」カバーに寄せて。つんく♂×チョン・ビョンギ プロデューサー対談

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2022年5月に日本デビューを果たした韓国のボーイズグループ・OnlyOneOfが、2ndシングル「ズルい女」を9月7日にデジタルリリース、10月19日にCDを発売した。この曲は言わずと知れたシャ乱Qが1995年に発売し、大ヒットさせた「ズルい女」のカバーである。

今作のリリースにともない、BARKSではOnlyOneOfのトータルプロデュースを務めるチョン・ビョンギと、当時シャ乱Qとして「ズルい女」の作詞・作曲・歌唱を担当したつんく♂との対談をリモートで実施。これまで2PM、2AM、miss A、INFINITE、LOVELYZ、今月の少女(LOONA)など名だたる人気グループを手がけてきたチョンとモーニング娘。を筆頭に、いわずと知れた日本を代表するヒットメーカー&プロデューサーであるつんく♂。

本気の「つんく♂ファン」というチョンのJ-POPのなかにおけるつんく♂節の分析、つんく♂によるJ-POPとK-POPの違いなど、トッププロデューサー同士ならでは音楽トークをお届けしよう。

  ◆  ◆  ◆

──では自己紹介からお願いします。

つんく♂:はじめまして。つんく♂です。

チョン・ビョンギ:はじめまして。私はチョン・ビョンギと申しまして、これまで20年ほど音楽活動を行っています。

つんく♂:本来なら、会ってチャミスル(韓国の焼酎)でも飲みたいところなのですが、それはまたの機会にして。

チョン:はい。必ずお会いしたいです。私は、じつは幼い頃からつんく♂さんのファンでして。今回のことをとても光栄だと思っております。

つんく♂:こちらこそ、今回は僕の懐かしいヒット曲をリアレンジしてくれて。そして、新しい時代の音楽にしてくれたことを感謝しています。

チョン:いえいえ。こちらこそ、今回はこのようなリメイクを気持ちよく許可していただき、感謝を申し上げます。

つんく♂:これをきっかけに日本の若い世代が新たに韓流に興味を持ち、韓国の音楽ファンに僕の音楽を知ってもらえるのが楽しみです。

チョン:はい。いまおっしゃって頂いたように、この曲をもっと若い人に気楽に聴いてほしい、そんな目標を持って作りましたから。

つんく♂:日本で「ズルい女」が流行っていた頃に、この曲を聴いた記憶はありますか? それとも、もっと時間が経ってから知りましたか?

チョン:私は韓国で日本の音楽が放送禁止の時代から聴いていましたが、この曲がヒットしていた当時は知らなかったです。

つんく♂:「ズルい女」が流行った当時は、日本の音楽を韓国のメディアに乗せることがまだ許されていない時代でしたね。僕が1995年か1996年ぐらいに韓国旅行したとき、テレビのバラエティー番組であのイントロだけが何度も使われてたのは憶えてます。タライが落ちてくるような番組でした(笑)。



チョン:私がこの曲を知ったときは、つんく♂さんは音楽プロデューサーとしてすでに有名でしたから。10代の頃からいろんな音楽を聴いてきていた自分は「どうして1人のプロデューサーからこんなにも多様なジャンルの音楽ができるんだろう」と驚きながら、つんく♂さんの曲を探求していたんですね。それで、つんく♂さんのすべての曲を聴いて、一番気に入った曲が「ズルい女」だったのです。今回はそれを単にリメイクするのではなく、K-POPスタイルに再解釈して若い世代にアピールできたらと思って作ったのですが。今回のリメイクに関して、本当のところ、どう思っているのか。その感想が気になるのですが……。

つんく♂: チョンさんのアレンジは、とても斬新な切り口で、新鮮に聴けました。最後に1度だけあのイントロが出てくるところがとてもおしゃれで、気に入りました。あの有名なイントロをカットして、さらにその上でサビから始まるのでなくてすぐにAメロが始まるのも画期的です。「やられた!」と思いました。

チョン:おぉー、ありがとうございます! この曲をアレンジするにあたって、いろんなヴァージョンを作ったのですが。一番大事なのはあのイントロの部分だったのです。ですから、最初はあれをいかしてやろうとしたんですが、モダンで新しい我々のスタイルでやりましょうということで、最後にあのイントロを使うのが美しいのかなと思って仕上げました。

──このようなリメイクの手法は、日本人にはない発想といえますか?

つんく♂:日本人はあのイントロを含めて「ズルい女」だと考えてると思うので、あれをカットしたところから始めるというのは、誰も思いつかない手法だと思います。いってみれば、サンタクロースにひげがない感じですからね。

チョン:ハッハッハッ! 私は90’sの「ズルい女」を単にカヴァーするのではなく、K-POPの新しいオリジナル曲に仕上げるにあたって、どうモダンにするかを考えて。そこは、自分なりに上手くできたと思っています。

つんく♂:そもそもこの曲はAメロの音符が細かくて、シンコペーションも多いので、日本人がカラオケでこの曲を歌うと違うメロディーになることが多いんですね。


──なるほど。

つんく♂ :しかし、彼らはしっかりリズムを維持して歌ってくれましたね。そこが、鮮度が古くならなかった勝因だと思います。

チョン:あのシンコペーションのところは非常に難しかったです。おそらくシャ乱Qの「ズルい女」をカラオケで歌うとき、つんく♂さん以外はこの細かいニュアンスは聴き取って歌うことはできないと思います。OnlyOneOfも、あのシンコペーションの味をどうやって生かすかが大変重要で。それを現代のフォーマットに落とし込んで生かしていくのが難しかったです。特に彼らは日本語の発音がまだあまり綺麗ではないんですね。でも、そこを指摘して正確に直していくよりは、少し日本語が下手でもリズムを感じて歌っていたほうが「ズルい女」には合うのではないかと思ったのでそうしました。

つんく♂:結果、そのあたりが彼らの可愛さにつながっていってますからね。

──甘い雰囲気もあって。

チョン:ありがとうございます。

つんく♂:だから、ミュージックビデオもいままでのOnlyOneOfの印象より、好感度が高くなってるように思いました。

チョン:ありがとうございます。まだつんく♂さんは聴いてらっしゃらないと思いますが、今回カップリング曲として「ヒドい男」というのを作りましたので、こちらも面白く聴いて頂ければと思います。

つんく♂:「ヒドい女」じゃなくってよかった(笑)。

チョン:はははっ。

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