【インタビュー】TENSONG、リスナーの“らいぶ(生きる・暮らす)”に寄り添う気持ちを込めて

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2月18日から47都道府県対バンツアー<~JUST FOR FUN 2023~>をスタートさせたTENSONG。彼らがそのツアー初日に、新曲「らいぶ」をリリース。ファンの変わらない場所であり続けたいという思いと、楽曲を聴いてくれるリスナーの“らいぶ(生きる・暮らす)”に少しでも寄り添いたいという気持ちが込められたミディアムナンバーは、どこか懐かしさを感じさせる、時代を超えて愛される1曲に仕上がった。昨年秋の<MINAMI WHEEL 2022>にて初の有観客ライヴを行い、47都道府県ツアーを回る選択をしたのはなぜなのか。ライヴや「らいぶ」に対する思いを聞きながら、今のTENSONGの音楽のモチベーションを探っていく。

■3人で一生懸命目を合わせながらやる感覚がなくなったら
■この3人で一緒にやっている意味がなくなっちゃう


――TENSONGは昨年秋に開催された<MINAMI WHEEL 2022>で初の有観客ライヴを行いました。公式コメントによるとどうやらそれまでは“思い描く理想と現実の差に立ち止まってしまうこと”があったとのことで、まずそちらについて詳しくお聞かせいただけますか。

拓まん(Gt):ライヴをしたくでもできない状況にモヤモヤしていました。コロナ禍という状況もそうですし、技術的にも人前で演奏できるレベルには至っていないんじゃないかと考えることもあって。だからこそ3人とも技術を上げるために努力をしたり、作詞作曲の勉強をしていたんですけど、やっぱりライヴができない状況はダメージが大きくて。そういう意味での“理想と現実の差”ですね。

アルフィ(DJ):音源を作る技術と、人前で演奏する技術は違うものなんだなと思いました。だから1年間しっかり技術を蓄えてから、初めての有観客ライヴを迎えたいということで、<MINAMI WHEEL 2022>で初めてお客さんの前に立ったんです。有観客ライヴをすることはすごく待ちわびていたけれど、ちゃんとできるだろうかという不安も大きかったです。

拓まん:TENSONGは何もない状態からSNSで始まったので、初めての有観客ライヴは僕たちのことを知ってくれている人、知らない人、いろんな人がいるフェスがいいんじゃないかと思ったんです。そういう環境でどれぐらいの実力を出せるのか、試されているという感覚も大きかったですね。


▲Gt. 拓まん

――実際にステージの上からお客さんを目の前にしてみて、いかがでしたか?

拓まん:アドレナリンが出すぎてあんまり覚えてないくらい、とにかく楽しかった。それだけですね。

アルフィ:あとはファンの皆さんと初めて会うことができて、それはすごく感動的でした。

拓まん:ああいう人のぬくもりを感じるのはライヴならではだよね。僕たちはSNSから始まったから、これまではコメント欄や数字でしかお客さんの気持ちを感じられなかったんです。人のぬくもりを初めて感じて、音楽をやっていてよかったなと思えた瞬間でもありました。

たか坊(Vo):始まる前は緊張していたんですけど、お客さんの顔を見ていたらすごく安心できましたね。どんどん緊張がほぐれていった結果テンションが上がりすぎて、ただでさえTENSONGの曲はキーが高くて歌うのが大変なのに息継ぎできないくらいでした(笑)。有観客ライヴをしたことで、3人で音楽をやる意味や生きがいを見つけられた気がしました。人から求められていることをすごく身に染みて感じて、それが心地よくて。直感的に“自分は人前に立つ人間なんだな”と思いました。それまでは“俺みたいなやつは表に立つべき人間ではない”と思っていたので。

――そうだったんですか。ご自身の考えを堂々と曲になさっているので、すごく意外です。

たか坊:表ではそう振る舞っていたけど、悩みに悩んで拓まんとアルフィに相談したことも何回かあります。みんな“歌うまいね”と言ってくれるけど、もっとうまい人はたくさんいるじゃんって思っていたし。そういう悲観的な自分を見せられるのはメンバーくらいでした。

拓まん:それこそMINAMI WHEELの2、3週間くらい前に、たか坊から“今のお前らと音楽しててもなんも楽しくねえ”と言われたんですよ。

たか坊:ちょっと! その言い方は語弊がある!!


▲Vo. たか坊

――何があったんですか?

たか坊:去年の春に上京をして、いろんな人と出会って、歌唱力のある人やすごく技術の高い人と一緒に音楽をする機会が増えたんです。そうしているうちに“俺が拓まんとアルフィと一緒に音楽をやる意義って何? ふたりが俺と音楽をやる意義って何?”と思ったんですよね。結成当初より技術は上がっているはずなのに、それぞれがそれぞれのスキルを伸ばすことに集中しすぎて、ふたりの音で歌っていても居心地の良さを感じられなくなっていたんです。それで“今のお前らとは音楽をやりたくないけど、将来的にはずっと3人で続けていきたいからもっと頑張れ”と言いました。

アルフィ:それをたか坊から指摘されて、確かにそうだなと思いましたね。自分のことばっかりで、たか坊や拓まんのことを考えきれていなかった。

拓まん:そのときにたか坊から“お前ら音楽を始めた頃の気持ちを忘れてないか?”とも言われたんです。俺もアルフィも個人の技術を上げることに集中しすぎて、3人でどうしていくかをよく考えていなかったことに気付いて。最初の頃って“俺たち3人ならできる!”という根拠のない自信が漲っていて、そういう感覚がその時の俺らには足りていなかった。たか坊からそう言ってもらって、あらためて頑張らなきゃと思いましたね。

――大学時代の友達としての感覚がTENSONGには重要だったと。

たか坊:間違いないですね。それがなかったら、この3人で一緒にやっている意味がなくなっちゃう。文化祭に出たときの3人で一生懸命目を合わせながらやるあの感覚がなくなったら、ほかの人で全然いいじゃんって話になっちゃうんです。だからその感覚に、高いレベルの音楽的な要素を加えたいんですよね。

――そういう気付きがあって、初の有観客ライヴを迎えられたのは、バンドにとって良かったことではないでしょうか。

たか坊:本当にそう思います。ずっとたまりにたまっていたものが爆発してふたりにその話をしたんですけど、ためたままMINAMI WHEELのステージに立っていたら……と考えるとゾッとしますね。完全に崩壊していたと思います。リハでは僕が引っ張っていたんですけど、先ほども話したように僕は初ライヴでテンションが上がりすぎちゃったんですよね。でもそれを拓まんとアルフィがカヴァーしてくれたんです。僕の幼い精神年齢を支えてくれるのはやっぱりこのふたりなんだなと思いましたね。


▲DJ. アルフィ

――そして初ライヴの次のライヴが今年2月から開催される47都道府県対バンツアー<~JUST FOR FUN 2023~>。SNS発の方々は東京ワンマン、もしくは東名阪+地元くらいの規模から始めるものですが、なぜこの大規模ツアーに踏み切ったのでしょう?

たか坊:若手で全国を回る人、あんまりいないじゃないですか。だからです(笑)。でもいちばんの理由は、SNSで出会ってくれた人が日本全国にいるので、その人と直に会いたいなという気持ちからですね。

拓まん:47都道府県ツアーというと規模がでかいですけど、1個1個丁寧に回りたいという気持ちが大きいんですよね。地道な活動から大きくなっていきたいんです。

アルフィ:対バンのファンの方々の前で自分たちが演奏したときに、ちゃんとTENSONGの音楽っていいなと思ってもらえるかどうかを47回挑戦するような感覚ですね。いつかワンマンをやるときにバシッとライヴができるように……という修行の意味もあります。

たか坊:僕らがSNSを通じて知ってもらったからこそ、誰とでもつながれることを実感しているんです。そんな時代だからこそ、ちゃんと顔を合わせて人と人のつながりを大切にできるバンドでありたいし、TENSONGの良さを感じられるのがSNSだけじゃないところを見せたいんですよね。

◆インタビュー(2)へ
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