【インタビュー】龍ヶ崎リン、4thシングル「Moonshine」に手の届く未来「明日を表現したかった」

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2023年2月にアーティストデビューを果たし、コンスタントにリリースを重ねてきたVTuber/シンガーの龍ヶ崎リンが8月27日、自身4作目となるデジタルシングル「Moonshine」をリリースする。同楽曲は情感豊かなダンスミュージックやエレクトロサウンドで様々なアーティストへの楽曲提供を行うボカロPのポリスピカデリーが作詞作曲を担当したものだ。

◆龍ヶ崎リン 画像

豊かなメロディラインとチルなトラックに乗るのは、“気負わずに気楽に過ごして明日を迎えてみるのも悪くない”という等身大のメッセージ。過去3曲と比較すると爽やかさや軽やかさを感じるも、使われている言葉には所々に痛みを伴うものもある。龍ヶ崎リンは「Moonshine」にどんな気持ちを託したのだろうか。同楽曲を初披露した1stソロライヴ<Garnet Moon>をはじめ、現在の制作状況と絡めながら新曲の背景を探った。


▲4thデジタルシングル「Moonshine」

   ◆   ◆   ◆

■よく見せるためにいろんなものをまとってきた
■そういう鎧のようなものを削ぎ落としている


──2023年6月に開催された初のオンラインソロライヴ<Garnet Moon>がBlu-rayリリースされましたが、龍ヶ崎さんにとってあのライヴはどんな時間になりましたか?

龍ヶ崎リン:今、一番感じているのは“自分にはまだまだ成長できる部分があるな”ということですね。ものすごく素敵な演出を組んでくださったからこそ、“もっと自分はこうするべきだな”と思う部分が具体的に浮き彫りになって。

──6月の時点ではご自分の最大限のパフォーマンスをしたとはいえど、ということですね。

龍ヶ崎リン:そうですそうです。ライヴを終えてからのこの2ヶ月で、音楽に対する気持ちや自分のスキルに対する感じ方が毎日変わっていて。歌を通してどういうことを表現したいのか、どういうことを聴き手に伝えたいのかという、マインド的なところをもっと突き詰めることが課題だなと思っているんです。僕の個人的な考え方なんですけど……歌がうまい人は本っ当にたくさんいらっしゃるじゃないですか。



──そうですね。

龍ヶ崎リン:だから、歌がうまいだけではダメだなと思うんです。僕自身“この人の歌をもっと聴きたい”とか、“この人の歌う言葉が心に響くな”と思える人のことを好きになるんですよね。だからもっと歌詞の理解を深めて、1曲1曲に対して“この曲はどういうことを伝えたいのか”ともっと情熱的に考えたいんです。もっと上を目指すのであれば、今まで以上にそれを大事にしなきゃいけないなと思って。僕、音楽の最前線で活躍するプロの方や、アーティストの方のインタビュー記事や映像をよく見るんですよ。その影響もあって、より強くそう思って。

──最近だとどんなものをご覧になりましたか?

龍ヶ崎リン:TV番組『0年0組 -アヴちゃんの教室-』です。アヴちゃんさんが話す言葉に、今の自分が感化される部分がすごく多くて、今の自分はまだまだだなと刺激になったんです。過去の様々な経験を表現できる力があるからこそ、受け手に伝えられると思うんですよね。僕が音楽をやっている理由も、自分の伝えたいこと、思っていることを音楽にしたいからなんです。もしかしたら自己顕示欲が強いと思われるかもしれないんですけど(笑)。

──いえいえ、そんなことは。生きていくなかで感じてきたこと、得てきた知見を音楽で伝えたいということですよね。

龍ヶ崎リン:音楽は話し言葉よりもまっすぐ自分の気持ちを伝えられる表現だと思っているんです。今を生きている人たちってSNSにかなり影響を受けていて、知らず知らずのうちに“自分は周りからどう見られているんだろう?”とか、“こういうことをしたら悪く言われるかな?”とか、人目を気にするようになっている気がしていて。そうやって他人の目を気にして生きるよりも、自分ファーストで生きていくことの大切さを音楽に込めていきたいんです。僕もVTuberとしての活動を4年近く積み重ねてきたので、今の自分にもっとプラスαしてさらにグレードアップできたらいいなと、前向きな気持ちですね。


──初のオンラインソロライヴ<Garnet Moon>のアンコールで初披露したのが、今回リリースされる4thデジタルシングル「Moonshine」です。今、お話ししていただいたような龍ヶ崎さんのナチュラルなポジティヴィティを感じられる楽曲でした。

龍ヶ崎リン:過去3作品の「Twilight Stream」「追熟」「ギヴミー」が自分自身の過去や内面を辿っていくような楽曲だったので、今回の「Moonshine」は“明日”を表現したかったんです。“未来”は壮大すぎるけれど、“明日”は手の届く範囲の未来だと思っていて。それをライヴのアンコール曲として歌えたのは、自分としてもすごくうれしかったですね。「Moonshine」を歌い終わった後、自然と明日に向かって歩き出せた感覚がありました。

──龍ヶ崎さんが“明日”に描くイメージというと?

龍ヶ崎リン:「Moonshine」に関しては、「風まかせな明日を歌う曲にしたい」と今回の作詞作曲を担当してくださったポリスピカデリーさんにオーダーしました。“いろいろ考えてもどうにもならないこととかあるよね”とか、 “ついてない日もあるよね。明日もぼちぼちやってこか”みたいなイメージを曲にしたかったんですよね。自分がすごくネガティヴに捉えていたことも、角度を変えて考えてみると実は意外とネガティヴではないことってあると思うんです。かなりポジティヴな曲に作っていただきました。

──過去3曲で綴られたいろんな人生経験の末にたどり着いた、セーブポイント(進行状況を記録保存した地点)のような曲なんですね。

龍ヶ崎リン:う〜ん、抽象的な言い方ですけど、螺旋階段をぐるぐる回りながら登ってたどり着いた一番上にある地点というか。「Moonshine」の自分になるまでに、自分を守るため、よく見せるため、隠すためにいろんなものをまとってきた感覚があるんです。だからそういう鎧のような余計なものを削ぎ落としているというか。そのなかで残った大切なものや、等身大でシンプルなありのままを曲にしたかったんですよね。それを踏まえてポリスピカデリーさんがデモを作ってくださったんですけど、聴いた瞬間に“蝶”のイメージが湧いてきて。


──蝶ですか?

龍ヶ崎リン:蝶みたいに踊っている龍ヶ崎リン、というイメージが浮かんできたんです。この曲のフレーズで特に印象的な部分は、“好きなものは最後” “嫌なものも最後”だと思うんですけど、ここは“ご飯食べるときに好きなものを最後に食べても、嫌なものを最後に残すときがあってもいいよね。決め事を作らずにそのときの気分で決めたらいいよね”という楽観さを表現していて。型にはまらず自由に生きようという歌になっています。それが今の自分の物事に対しての捉え方にリンクしていますね。

──最近の龍ヶ崎さんの心には、余裕が生まれたんですね。

龍ヶ崎リン:自分自身を否定されることも多くて、それに対して抵抗したり、怒りを感じていたけど、今は怒りもありつつ、それらを受け入れられる強さを得られたのかなと思っていて。それが楽曲の爽やかさにつながっているとも思います。そうやって人に優しくできるのは過去に傷ついた経験があるからだと思うし、それが「Moonshine」の裏メッセージでもありますね。「Twilight Stream」「追熟」「ギヴミー」で綴った過去の感情があって、「Moonshine」に辿り着けたんだと思います。

──確かにポジティヴなムードが立ち込めているのに、歌詞に選ばれているワードは痛みを感じるものなのも印象的でした。そういうところにも傷ついた過去が滲んでいるというか。

龍ヶ崎リン:触れたら傷ついてしまう悪意を、うまくかわしてるイメージが湧くと思うんですね。それがさっき話した蝶のイメージなんです。余計なものを取っ払って、軽やかに舞っているんだけど、いろんなことを経験してきたぶんどこか妖しげで、ちょっと儚い表情を見せるというか。ただただ幸せな、満足のいく環境でずっと生きてきた人には出せない表情が、うまく伝わるとうれしいですね。

◆インタビュー【2】へ
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