【インタビュー】龍ヶ崎リン、4thシングル「Moonshine」に手の届く未来「明日を表現したかった」

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■神秘的で強さを感じる灯火のような
■そういうアーティストになりたくて


──象徴的なのはタイトルにもなっている“Moon”というワードだと思います。ライヴタイトルも<Garnet Moon>だったり、龍ヶ崎さんと所縁の深い言葉だと思うのですが、月とはご自身にとってどんなモチーフなのでしょう?

龍ヶ崎リン:子どもの頃からすごく月が好きなんですよ。天体図鑑をノートに書き写したり、セーラームーンがすごく好きだったり、月をデザインしたものを持っていたり、幼少期からずっと自分の身近にあるものなんです。「Moonshine」というタイトル自体は、ポリスピカデリーさんがつけてくださったもので。僕から“月をモチーフにしてください”とリクエストをしたわけではなかったのに。

──そうだったんですか。ポリスピカデリーさんも、龍ヶ崎さんから何らかの月のイメージを感じ取ったのかもしれませんね。

龍ヶ崎リン:今度ご本人に聞いてみたいですね。だから僕のなかで、この曲は“蝶”と“月”なんです。それで、ふと“蝶と月に何か関係はあるのかな?”と思って調べてみたら、蝶は夜に飛ばないんです。だから、“蝶が月明かりのなかで飛んでいる”っていう「Moonshine」に抱いた僕のイメージって、ありえない状況なんです。でも、そういう普通じゃない状況は、自分の個性にもすごく当てはまるんですよ。いろんなものを経てたどり着いた龍ヶ崎リンの在り方が、「Moonshine」という楽曲と、この曲を聴いた自分が瞬間的に受けた蝶のイメージにつながることに驚いて。あと、ジャケットのイラストを描いてくださったイラストレーターの木澄玲生さんが、そういうイメージを僕が持っているなんて何も伝えてなかったのに、蝶を入れてくださってるんですよ。

──なんて奇跡的な。

龍ヶ崎リン:すごく感動しました。だからミュージックビデオにも蝶が飛ぶシーンを入れてもらって。絶対に混じり合わないものを表現できるのはイラストならではなので、そういうものを作っていただけて本当に良かったです。

──“夜に飛ぶ蝶”は果敢にチャレンジしていく龍ヶ崎さんのイメージにもつながります。

龍ヶ崎リン:アーティスト活動を始めてから、よく“どういう自分になりたいのか”と考えるんです。VTuberの音楽シーンを見渡すと、知名度が高い人は太陽みたいなイメージがあるけれど、自分はずっと月みたいな存在になりたいなと思っていたんです。燦々とした明るさではないけれど、神秘的で強さを感じる灯火のような、そういうアーティストになりたくて。だから「Moonshine」という言葉にも魅力を感じますね。


──トラックはY2Kリバイバルを意識したそうですね。2000年前後に流行った2ステップがシンボリックで、日本ではm-floが「come again」で取り入れたことで知られています。

龍ヶ崎リン:リファレンスとしてお送りしたのはNewJeansの「Cookie」やチョン・ソヨン「Jelly」みたいなK-POPなんです。音楽ジャンルだと2ステップやUKガラージを入れていただいているので、m-floさんや宇多田ヒカルさん、Crystal Kayさんを思い出す方も多いんじゃないかなって。最近のK-POPはY2Kテイストの音楽がすごく多いですし、僕もその頃の日本の音楽が大好きなんです。だから聴いてくれる方にも“なんか懐かしいな”とか“平成感じるな”と思っていただけるような曲にしたかったんですよね。

──龍ヶ崎さんの考える、2000年前後の音楽の魅力とは?

龍ヶ崎リン:やっぱり“頭に残る”というのが強いかもしれないですね。今の時代にも素敵な楽曲はたくさんあるけれど、20年経っても色褪せない曲であり、口ずさめるというか、ずっとフレッシュなままで記憶に残っている。日本の女性R&Bの代名詞的な時代だと思うし、僕も刺激を受けてきたので、Y2Kテイストの楽曲を歌いたい気持ちはずっとあったんです。ポリスピカデリーさんならそれを叶えてくださるんじゃないかと思って、今回依頼しました。インターネットのラップシーンはだいぶ前からチェックしていて、ポリスピカデリーさんの「Rumor」を聴いてすごく耳に残る曲だなと思ったんです。

──確かに「Rumor」も2000年代の日本のR&Bを彷彿とさせる楽曲ですよね。センチメンタルなメロディに優しくトラックが絡んでいくような。

龍ヶ崎リン:あと、ポリスピカデリーさんの作るボーカロイド曲は生々しい感情があるように聴こえるし、楽曲もボーカルの調整も含めて、機械に感情を与えられるボカロPさんだなと思ったんです。それで2年前に僕も、ポリスピカデリーさんが作曲しているnqrseさんの「泡沫の夜」をカバーさせていただいて。ポリスピカデリーさんがたくさん楽曲提供をなさっているのを見てきていたので、いつか絶対に!と思っていたことが今回叶ったんです。

──「Moonshine」は今のモードや明日への気持ちが反映されつつ、幼少期から今までの人生の歴史が封じ込まれているということでもありますか?

龍ヶ崎リン:たとえば、いろんなものを詰め込むと解釈にも時間が掛かるじゃないですか。だけどサウンドと言葉選びで、それを爽やかにコンパイルしていただけたと思います。その軽やかさも素敵ですし、僕らしい曲を作っていただけて感無量です。


──デビューから半年間で4曲リリースされて、龍ヶ崎さんの音楽表現もリスナーに伝わってきていると思います。そんな龍ヶ崎さんが、今後音楽を続けるにあたり、次に必要なことはどんなことだと考えていますか?

龍ヶ崎リン:自分の言葉で作った曲ですね。自分の気持ちを作家さんのフィルターを通して音楽にするというアウトプットは残しつつも、龍ヶ崎リンから直で出てきた言葉で曲も作りたい……というか今そういう曲を作っている最中で。

──龍ヶ崎さんはこれまでもラップ詞を書いていますし、今まで作詞をやらなかったことが不思議なくらいです。

龍ヶ崎リン:3年ぐらい前からマイクリレーで自分のバースのリリックを作ることはやってきていたんですけど、1曲まるまる作詞するのは初めてですね。これまではずっと“自分が1曲まるまる書けるわけがない”と避けてたんですよ。それなら作家さんとやり取りをして、自分のイメージを作家さんなりに具現化していただいたほうが絶対素晴らしいものになると思っていたから。音楽業界はいいものが評価される場所なので、そこに自分の書いたものを差し出す自信がなかったんですよね。

──でも尊敬するクリエイターさんとオリジナル曲を制作していくごとに、自分で歌詞を書く必要性を感じ始めたと。

龍ヶ崎リン:自分で言葉を書くことに意味があるんじゃないかなと最近すごく思っていて。一回自分の言葉で書いて、それが認められなかったとて、売れなかったとて、ほんとにありのままの、自分から出てきた歌詞そのままを見てもらいたいと思ったんです。それで初挑戦してるんですけど……実際作ってみて思うのが、“自分、作詞得意かも!”っていう(笑)。

──避けてきたのは何だったんでしょう(笑)。「Moonshine」のように“風まかせ”な気持ちになれたからこそ、なかなか自信の持てなかった作詞にも飛び込めたのかもしれませんね。

龍ヶ崎リン:本当にそうですね。なんでもやってみないとわからないし、やってみてこそ意味があるなと、作詞にチャレンジしてすごく思いました。これからそういう曲も世に出せていければいいなと思っています。

取材・文◎沖さやこ

■4thデジタルシングル「Moonshine」

2023年8月27日(日)配信開始
1. Moonshine
2. Moonshine (Instrumental)
Lyric:ポリスピカデリー
Music:ポリスピカデリー



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