【インタビュー】yukihiroが語る、ACID ANDROIDという果てない音の極致「納得できるものを追い求めてしまうんです」

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■最終的にはアルバムにしたいとは思っています
■新曲は作り続けたい


──取り入れているのは、それまでにないような自分の感性とか価値観とか知識とか、そういうものということですよね。例えば最近、“これは自分の中になかったものだなぁ”っていうような、そういう刺激を他の音楽から受けたことはありますか?

yukihiro:“自分の中になかったな”というのではないんですけど、“今はこういう音を出す人がいるんだなぁ”とか、そういうことは感じますね。

──若い人が過去の音楽を再解釈してやってる。

yukihiro:こういう表現の仕方もあるんだなぁという、驚きというか発見みたいなものはありますね。

──具体的に何かありますか?

yukihiro:ちょっと前になりますが、ライヴを観に行ったのは、ドライ・クリーニング。ああいう語り口調のヴォーカルで、ポストロックみたいなバンドが増えている気がします。あとは、ロンドンのPVAっていうバンドも良いなと思いました。

──いわゆるポストロックとかポストパンクとかエレクトロニカとか。

yukihiro:そういう音楽を自然に取り入れてアウトプットしていて、プレイもループっぽいんですよね。次のジェネレーションの音楽なのかなと感じますね。

──そこら辺の境目っていうのはどんどんなくなっていますね。だから、“あなたの音楽はテクノロジーを取り入れて…”なんていう質問自体がもはや無意味っていうか。そんな中から新しい感覚というか、新しいやり方をする若手も出てきているという感じ。

yukihiro:そういう人達の音楽が今の僕の音楽に入ってきているのか、反映されているのかはちょっとわからないですけどね。


▲デジタルシングル「pale fire」/2023年8月4日配信開始

──今の若い奴はこういうことをやるのか、ああいうやり方があるのか、とわかっても、そうはいっても俺は俺だっていう、そういう気分もやっぱりあったりするんですか?

yukihiro:そういう変なこだわりはないですね。ただ自分のやりたいと思っていたことが、今はやれるようになったという変化はありますね。例えばシンセサイザーの音作りとか。

──技術的に、ということですか?

yukihiro:そうですね。機材に対する知識とか。始めた頃よりは今のほうがあると思うので、そういう意味では変わってきていると思います。

──電子楽器の扱い方とか、ミックスの技術面も含めて、だんだんスキルを学んでいって。以前だったらやれなかったようなことがやれるようになった。その分、自分の理想とするものにだんだん近づいているという、そういう実感がある?

yukihiro:でも余計遠くなる感覚もありますよ(笑)。これができるなら、もっと先までいけるのかなぁとか。

──ああ、学ぶことによって更に目指すべき場所が先になるみたいな。

yukihiro:そうそう。

──あぁ。大変ですね(笑)。キリがない。

yukihiro:まぁ、でもそういうものじゃないですか? 今回の新曲も、今だからこういう形になったと思うんですよね。

──なるほどね…今回、Lillies And RemainsのKAZUYA (G)さんも音源では初参加してます。

yukihiro:はい。

──KAZUYAさんを呼ぼうと思った理由は? 自分で弾こうと思えば弾けるでしょう。

yukihiro:絶対弾けないです。フレーズは考えていますけど、それを満足いくような形になるまで自分で弾こうと思ったら、それこそ、またすごい時間がかかっちゃいます(笑)。ギターは、最初からKAZUYAくんに弾いてもらおうと思っていました。

──なるほど。でも最近は、何でもできちゃうじゃないですか。実際に誰かに弾いてもらわなくても、音源を使ってできる。

yukihiro:ギターのソフト音源もそうなんですが、ストリングスとかピアノは別として、生楽器をシミュレートしているソフト音源には、ほとんど興味が無いんです。

──それは音がつまらないということ?

yukihiro:ソフト音源を使うんだったらプレイしようよ、って思っちゃいますね。


▲デジタルシングル「demonstration」/2023年8月18日配信開始

──ヴォーカルに関してはどうでしょう。ご自分でないと出せないニュアンスがある?

yukihiro:ニュアンスっていうよりは…歌い回しとか、熱量とか、そういうものは伝えづらいですし、もう今は人に頼もうとは思わないです。

──声の違いっていうのは当然ありますしね。

yukihiro:そうですね。

──ご自分のヴォーカルこそが、自分の音楽の理想を表現するための最適なツールであるという感じがある?

yukihiro:人に歌ってもらうのは違うかなって感じます。一番変わるのは、温度なんですよね。

──yukihiroさんのヴォーカルのほうが温度が低い?

yukihiro:低いと思います。

──確かにあの感じは他の人では出せない。

yukihiro:自分のやりたい音楽を完成させるためには、こういう感じの歌がいいというヴィジョンがあるので。

──そのためには自分のヴォーカルスタイルが一番合っているということですね。

yukihiro:今回ヴォーカルに関しても、マイキングと機材セッティングだけスタッフにお願いして、録りは自分ひとりで録って、ディレクションもしました。今までやったことなかったんですけど、今回初めてやってみたんです。

── 一人の作業って孤独ですけど、それは別に気にならない?

yukihiro:ACID ANDROIDはもう、そういうものだと思っているので、そのぶん完成したらいろんな人に“ちょっと聴いてみて!"っていう感じです(笑)。

──でも、一人の作業って、これで終わりっていうフィニッシュが決めづらくないですか?一人でやっているから際限なくやれるし、締め切りが決まっているわけでもないから…どこで終わりを決めるんですか?

yukihiro:今のところは、“もういいや”って思う時にしています(笑)。現状ではここまでかなっていう。

──それは自分でわかるもんなんですか。

yukihiro:自分の力量だったらここまでだろうなっていうのは何となく。

──でもその限界っていうのが、やっぱり年月を経るにしたがって段々、伸びてきている感覚があるわけですよね。

yukihiro:そうですね。

──なるほど。まだまだ発展途上であると。で、今回の4曲を出して。最初にお話してましたが、これをまとめてアルバムにする予定があるんですよね?

yukihiro:ここから曲を増やして、最終的にはアルバムにしたいとは思っています。曲はあるんです。ただ、いろいろなことも並行しているので、ちょっと後回しになってきちゃっています。

──でも、それを全部完成させればフルアルバムをできるくらいの曲はあると。めどは立っているんですか? いつ頃とか。

yukihiro:うーん…(笑)。まぁ年内には、と思っています。

──おお! 期待してます。

yukihiro:リリースじゃなくて曲の完成を年内、にしといてください(笑)。でも新曲は作り続けたいと思っています。

取材・文◎小野島大

   ◆   ◆   ◆

ACID ANDROIDの活動と並行して、L’Arc-en-Cielのyukihiro (Dr)、MO’SOME TONEBENDERのkazuhiro momo (Vo, G)、 凛として時雨の345 (Vo, B)からなるスリーピースバンドgeek sleep sheepが、2017年以来6年ぶりにライヴイベント<slice of alcove>へ出演することも発表されている。11月24日に東京・SPACE ODDで開催される同イベントへyukihiroはDJでも出演するほか、スタッフによる公開ドラムセッティングも実施される予定だ。

新曲や今後の活動にも期待が高まるgeek sleep sheepだが、yukihiro曰く「もちろん、なにかやれればやりたいですね」とのこと。ACID ANDROIDがyukihiro自身の頭に描いた音の極致を追い求めるものだとすれば、必要最小限のスリーピースによる邪念のない音のスリルを体感できるのがgeek sleep sheep。11月はその両者のコントラストを楽しめることになる。

さらにPetit Brabanconは2024年1月に東京と大阪でライヴシリーズ<EXPLODE -02->を開催、その直前となる2023年冬に新曲の配信リリースも予定しているなど、yukihiroの多彩な過密スケジュールが続く。ファンには嬉しい状況だ。

   ◆   ◆   ◆

■デジタルシングル ※新曲4曲隔週配信リリース

・7月21日(金) 「dealing with the devil」
・8月04日(金) 「pale fire」
・8月18日(金) 「demonstration」
・9月01日(金) 「idea」

■<ACID ANDROID LIVE 2023>

11月13日(月) 池袋 LIVE SPACE harevutai
11月14日(火) 池袋 LIVE SPACE harevutai
open18:30 / start19:00
※SOLD OUT

■<ACID ANDROID LIVE 2023>追加公演
11月23日(木/祝) 渋谷 SPACE ODD
open17:30 / start18:00
※SOLD OUT


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