【インタビュー】三山ひろし、DAM CHANNEL演歌7代目MCに就任「私にしかできないこともやっていきたい」

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■「演歌は人生のバイブル」だといつも思いながら
■歌ったり、聞いたりしている


──7月にリリースされた新曲「北海港節」もカラオケで歌いがいがある曲ですよね。

三山:ええ、そうなんです。自分がもうカラオケが大好きなので、この歌を始めて聴いたときは「これは、カラオケ通が唸る一曲だな」と思いましたね。とにかく最初のパンチが効いているんですよ。ロングトーンがすごく魅力の一曲なので、これを上手に歌えるかどうかが、カラオケファンの方にとって楽しみになるんじゃないかと思いますし、実際に、「もう歌って楽しんでるよ」と言っていただくことも多いですね。

──レコーディングではどんなことを意識しながら歌われましたか。

三山:作詞のいではく先生、作曲の弦哲也先生などから、この曲をどう歌ってもらいたいのかという思いを伺ったり、細かな部分でご提案をいただきながらレコーディングに臨みました。演歌は特に言葉をとても大切にするので、詞の世界観や主人公の心情を深く理解することがとても大切なんです。この歌は、漁師という職業に命をかけた男の生き様が描かれていますよね。自分が決めた世界で生きていくという男の覚悟の歌だから、そんな思いで歌ってほしいと、いで先生からお言葉もいただきました。



──男の一生の覚悟を歌声で表現するのはとても難しそうですね。

三山:そうかもしれません。ただ、僕自身が40代になり、歌の主人公と似たような気持ちになる瞬間が割とあるんです。40代になると、新人でもなければ、かといって会社の重役とか古株と呼ばれるほどでもありません。中間的な立ち位置で、上下をつなぎながら、自分自身もしっかりしなければいけない立場ですが、内心は揺れ動くところもあるんです。2回目の成人式を迎えたようなタイミングでもあるので、「自分の覚悟をまたここで決めるんだ」と考える人も少なくないのかなと。この先、自分の人生の直しがきかない、そんなターニングポイントを迎えて、一生の仕事を強い意志を持って決めた男の歌は、演歌の道で生きていく覚悟を決めて15年目を迎えた自分と重なることも多かったんですよ。ですから、自然と思いを乗せて歌うことができたと思います。

──カラオケで一般の方が歌われる時は、最初のロングトーンが肝になりますか?

三山:ええ、そう思います。ここは歌っていて楽しいところでもありますが、難関でもあります。かなり息を長く吐くため、「北海港節」を入れたときは、歌う前に酸欠に注意してたっぷりと深呼吸をしてください。このロングトーンを乗り切った後に歌の波があり、いったん引くところが現れます。実は、その引くところをどう歌うかで、歌全体の良さが大きく変わってくるんです。冒頭などの歌い上げるところは、みなさん気持ちよく伸びやかに歌われるのですが、引いて聴かせるところが曲に深みを与えてくれます。ですから、その部分を丁寧に歌いながら、張ったり伸ばすところは思い切り気持ちよく歌っていただきたいですね。

──もう一方の「三面川暮色」は、がらりと雰囲気の異なる柔らかな楽曲ですね。

三山:そうですね。CDをお買い求めになった方も感じたかもしれませんが、これは「北海港節」に対してのクールダウンの1曲なんです。北の海の荒々しさの後に、川のせせらぎを聞いて心を鎮めるというイメージです。リズムもワルツなので、心地よいと思いますし、僕がギターを弾きながら弾き語りで歌ったりするにもピッタリの素敵な曲です。歌詞を読むと、川の情景が時系列で見えてくるんですよね。こうした叙情的な歌詞もなんとも素敵ですし、自分の中にある川の美しい風景を浮かべながら、これから先の人生であったりとか、あるいは昔の青春時代を思い出したりできる一曲だと思います。

──演歌や歌謡曲は歌詞を大事にするため、詞先(歌詞から先に制作する)の曲が多いと聞いたことがあります。

三山:はい、そうなんです。僕は自分にとって「演歌は人生のバイブル」だといつも思いながら歌ったり、聞いたりしています。自分がこれから迎えるであろう、さまざまなライフイベントなど先に経験された先生たち、先輩たちが残してくれたものが演歌には詰まっていると感じるからです。そうした楽曲を聞くことによって、こういう時はこんな風な思いになるんだなとか、この時はどうすればいいんだろうと、指し示してくれるようにすら感じます。師匠の中村典正先生も詞先で作られる方で、歌詞に対してメロディーが浮かぶ人でしたね。だからこそ言葉の繊細なニュアンスを音で表すのがとっても巧みだったのだろうなと。演歌や歌謡曲をお好きな方は、ぜひCDなどを手に取ってくださったときは、中に入っている歌詞カードをまず取り出し、詞をじっくり読んでみてください。曲もしかり、編曲もその歌詞にあわせたものを作っていますので、歌詞を深く理解するとよりその歌全体の魅力が立体的に感じられると思います。

──ほかに、三山さんならではのCDの楽しみ方は?

三山:歌詞をじっくり読み、曲を楽しく聴いていただいた後は、CDに収録されている歌なしのカラオケもぜひ聴いていただきたいですね。音だけで聴くと、歌があるときには気づきにくい音を発見して、「こんな素晴らしい音が入っていたのか」とか「この音色はどんな楽器だろう」と、思いがけない発見がたくさんあると思います。DAMさんは、そうしたカラオケの音色を忠実に再現しているものがありますよね。僕はときどき歌を練習するためにカラオケボックスを利用するのですが、斉藤功さんのギターシリーズが大好きなので、リクエスト入れちゃうとそれに聞き惚れちゃって、全然練習にならないんです(笑)。ギターはこう抱えるのがかっこいいのかとか、靴下がほんのり透けているのも素敵だなとか、細かなところまで見逃せませんね。あの素晴らしい演奏だけで僕はおいしくお酒が飲めるくらい大のお気に入りなので、練習をせずにほろ酔いになってしまうこともあるくらいです(笑)。

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