【インタビュー】Cö shu Nie、新しいロック「Burn The Fire」で示す闘う姿勢「道標でありたい」

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6月にリリースされた「no future」に引き続き、Cö shu Nieから新たな配信シングル「Burn The Fire」が届けられた。アンニュイな倦怠感を甘やかに捉えた「no future」とは打って変わった、その名の通り激しく燃え上がるようなロックチューン。しかし、そこはCö shu Nieらしく、形骸化したロックの方法論に留まることはない。ヘヴィなロックサウンドの中にジャングルなどのビートミュージックも咀嚼し取り込みながら、異質とも言えるような展開とモダンな空間性をパッケージングした、見事な「新しいロック」を生み出している。ドラムには、Caroline Polachekのバンドメンバーとして今年の<FUJI ROCK FESTIVAL>にも出演していたRussell Holzmanを起用。「no future」に引き続き、「人の手で鳴らされた音」に対してのこだわりも見せている。既に来るべきアルバムのコンセプトはできているというが、アルバムへの期待をさらに高めるシングルである。

どこか肩の荷を下ろしたような軽やかな状態でありながら、新しく背負うべきものはしっかりと背負っている──取材の現場で対面した中村未来と松本駿介のふたりの佇まいからは、そんなことを感じた。今、Co shu Nieはとてもいい状態なのだと思う。自分自身を見つめ、傷を癒したり受け入れたりしながら、自らの人生に筋を通し続けた人たちが見ることのできるとても広くて清々しい景色が、今の彼らには見えているのかもしれない。新しくなり続ける人たちはかっこいいものだ。新曲「Burn The Fire」のことや最近のこと、この先の展望についてなど、いろんな話を聞いた。

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■ 救える範囲や視野がすごく広がっている

──先日、ツアー(<Cö shu Nie Live Tour 2023-unbreakable summer>)を終えられたばかりですが、このツアーは大津資盛さん(Dr)とbejaさん(Key/Gt)というふたりのサポートメンバーを迎えた4人編成になったことで、人間が奏でる音、バンドアンサンブルに今まで以上の意識を向けたツアーになったのではないかと思いますが、手応えはいかがでしたか?

中村未来(Vo, G):手応えはかなりありましたし、新しい編成でできてよかったなと思います。長年ずっとプレイヤーを探していて、今回、この編成でやっとやれたんです。なので、渾身の一撃という感じのツアーでしたね。

松本駿介(B):長いこと3人編成でやっていたし、監督(中村)のピアノフレーズは特徴的だからこそ、「ほかの人が弾いたらどうなるんだろう?」って聴く人が不安になってしまう可能性もあったと思うんです。でも、イメージを超えるものが4人で作れたんじゃないかと思いますね。





<unbreakable summer>ファイナルの模様@Zepp DiverCity(TOKYO)(撮影:河本悠貴)


──このツアーから4人編成になったのは、「no future」という楽曲が生音にこだわった曲だったから、という繋がりもありますか?

中村:とても繋がっていますね。それに、バンドのアンサンブルに私はずっと惹かれるものがあるので。

──今回のツアー、お客さんの反応はおふたりから見ていかがでしたか?

中村:みんな、LAの動画を見てくれているのもあるし(今年7月にロサンゼルスで開催された<Anime Expo 2023>出演時の動画)、「ライブでCö shu Nieを盛り上げるぞ」という気合いを凄く感じて。嬉しかったです。応援してもらえているんだと思ったし、みんな自由に体を揺らしているのもいいなと思ったし……どんどんと、みんな解放されているような気がして。

松本:本当そうだよね。

中村:私自身、解放されていく感じがありました。

松本:曲が終わった後の歓声も今まで以上に大きかったし、場所ごとにお客さんの特色もあって。仙台なんて、「ここ、LAか?」と思うくらい盛り上がってたんです。

──この度リリースされる新曲「Burn The Fire」もこのツアーから披露されていて。この曲は「no future」同様、次のアルバムに向けての曲ということですが、アルバムの全体的なプロットがもう既にあるんですよね?

中村:そうなんです。アルバムの大きなテーマは決まっていて。子供の頃の無敵感ってあると思うんですけど、大人になるにつれて「あの人みたいになりたい」とか、「これができないから自分は最悪」とか、人は自分にいろんなものを課していくことで、自分自身をジャッジの対象にしてしまうし自分自身への愛が薄れていってしまう。そういうところから1度立ち返って、自分自身を愛すことができるようになるような、その道標になるようなアルバムを作りたいなと思って。今は、そのアルバムに向かって制作をしています。

──アルバムを作るうえでテーマを前提に掲げるのは、Cö shu Nieとしては珍しいことですか?

中村:かなり珍しいことです。私は本当にずっと、音楽を作り続けて生きてきた人生という感じだったんですけど、今は、聴いている人に向けてどんなメッセージを飛ばすか、どんな作品を飛ばすか、ということを考えているし、そのために資料まで作ったし。そこに向かって全員で走っている感じなんですよね。ファンのみんなも一緒に走ってくれている感じがする。アルバムを作っていることはもう、みんなも知っているから。

──前回の「no future」も、今回も「Burn The Fire」も、人生や日々、あるいは自分自身に真っすぐ目を向けながら、「どう生きていけばいいか?」という点で聴き手に何かを提案したり、聴き手と一緒に解決を探しに行こうとするエネルギーがある曲だと思うんです。この曲たちを聴くと、メジャーデビュー前後の時期に中村さんの歌詞が変化していったのと同じくらい大きな変化が今、Cö shu Nieに起こっているのでは?とも思うのですが、「変化している」という実感は、ご自分たちとしてはありますか?


中村:あります。それに、研ぎ澄まされていっている感じもします。そもそも、私の心の中にあるものってすごく乱雑なんですよ。それは今までの作品にも表れていると思うんですけど、ジャンル的にもいろんな音楽に興味があるし、私のルーツがクラシックなこともあって、そのルーツからくるメロディにいろんな要素を乗せていこうとする……そういうことを、今までは感覚でやっていたんですよね。でも今はもっと言語化して、整理しようとしている。もっと整理して、「果たして自分はどうありたいのか?」ということを見つけようとしている感じがします。なんというか……すごく逆行している感じもするんですよね。

──逆行ですか。

中村:元々は、言葉にすることによって、自分の感情が箱に入れられてしまう、狭められてしまうような感覚があって。それで、「音楽に言葉はいらないんじゃないか?」とすら思っていたんです。それがメジャーデビュー直前。でも『東京喰種トーキョーグール:re』の主題歌をやらせてもらうことになって、「歌詞がないのはないよね」と思って、自分の過去にしっかりと向き合って本当のことを書き始めて。それまでは自分の逃避の場所を作るような感覚で曲を作っていたけど、その頃から変わっていった。そこから今は、「言葉にすることにこそ、人間である意味があるんじゃないか?」と感じ始めているんです。責任をもって何かを言葉にして、そして言い切ること。それが今の私にとっての闘う姿勢だし、前を向いて何かを引っ張っていく姿勢だよなと思っています。

──なるほど。

中村:ファンの子たちからDMとかをもらうこともあるんですけど、みんな、色々なことを抱えて生きているんですよね。私は苦しいことがあるときにファンのみんなのことを思い出すけど、みんなも、苦しいときには私たちのことを思い出すと思うし。もちろん、色々なことを抱えているのは、ファン以外の人たちもそうだと思いますし。だから、道標でありたいな、と思うんですよね。それは音楽活動としてもそうだし、自分個人の生き方としてもそう。揺るぎないものを作りたい。私は、どんな作品を作っているかによって、自分自身がその作品に寄っていくから。黒い影はずっとつきまとうんです。小さい頃の自分とか。そういうものを、取っ払うというか、連れていけるくらいの強さはほしいなと思う。今はそういうことを一つひとつ、形にしている感じですね。

──松本さんは、今おっしゃった中村さんの変化をどんなふうに受け止めていますか?

松本:「no future」と「Burn The Fire」に関しては、明確に「変わった」と僕も感じていて。言葉にするのは難しいけど、救える範囲や視野がすごく広がっている感じがするんですよね。対面でわかり合えるくらいの距離から、海の向こうにいる人まで会話できる、わかり合えるくらいの距離感にまで広がっている。音楽性が広がると共に、対象が広がっている気がして。

中村:うん、すごいわかる。

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