【インタビュー】the paddles、柄須賀皇司が語る20代半ばの等身大「みんなもっと自分のために生きようぜって」

ツイート
no_ad_aritcle

どんな逆風や荒波が押し寄せても、パドル(櫂)を操る手をゆるめずにバンドは進む。2023年のthe paddlesは、ドラマー加賀屋航平の休養という出来事を乗り越え、ライブとリリースに全力を注いで前進してきた。その成果が10月18日にリリースされた『ベリーハートビート E.P.』だ。

◆the paddles 動画 / 画像

先行配信曲「ブルーベリーデイズ」「プロポーズ」を含む4曲+1曲(CDのみ収録)は、深みを増したラブソングと20代半ばの等身大のメッセージを詰め込んだthe paddles流パワーポップの最新進化形。新世代バンドの旗手として注目度が高まるthe paddlesの現在位置について、変わらぬ童顔の内側に強い意志と大人への確かな成長を秘めた柄須賀皇司(Vo&G)に話を聞いた。


   ◆   ◆   ◆

■自分の中のルールがあったんですけど
■今回はそれを壊そうと思ったんですよ


──2023年のthe paddlesの活動で言うと、4月からドラムの加賀屋航平君が休養に入って、サポートドラムで活動を続けることになったことが一番大きかったんじゃないかと思います。今はどんな感じですか。

柄須賀:いろんな友達のバンドにも助けてもらいながらやってますね。今は、だいぶ形になってきたなという感じです。

──あの時、活動休止ではなく走り続けるという決断をしましたよね。

柄須賀:ここで止められへんなと思ったのと、止めちゃったら航平のためにもならへんかなっていうのは、正直あったんで、助けてくれる人がいるんやったら、走り続けたいなと思ってました。そうしたら、めっちゃいろんな人が連絡をくれたんですよ。サポートする前提の前から「普段聴きしてるから、すぐ叩けるで」みたいな、ほんまにようみんな見てくれてんねんなって、死ぬほどライブやってて良かったなっていうのは思いましたね。

──嬉しいですよね。それは。

柄須賀:最初がBye-Bye-Handの方程式の広島公演で、atelier roomという友達のバンドのドラマーにサポートを頼んだんですけど、5日前ぐらいに急に言って、当日の朝にスタジオに入って合わせて、めちゃくちゃ過酷でしたけど何とかやれました。それを逆手に取るというか、“今日はこいつにやってもらいます”みたいなことで、サプライズとしてやっちゃうみたいな感じでやってきて、今は固定で、ソウルフードというバンドのドラムの田中さんっていう先輩にやってもらってますね。

──ドラムが変わるって、すごく影響ありますよね。

柄須賀:全然違いますね。“ライブってこんな変わんねや”ってぐらいに、歌いやすさとかもそうですし、そこで一番バチッとハマったのが田中さんで、ずっとやってもらってます。10月から始まるツアーも、全部田中さんに叩いてもらう予定でやってます。


──ある意味、ピンチを新しいチャンスに変えたというか。

柄須賀:“もうやるしかねえ”みたいな感じでしたね。5〜6月に<余白を埋める-共闘編->というツアーがあって、7月に寝屋川VINTAGEでワンマンやるっていうことは決まってたんで、逆にそれがあって良かったなと思います。今年の大事件としては、そのワンマンをやれたことも大きいですね。ツアーで日本全国に行って、“あの場所にはこのお客さんがいるよな”っていう、“なんとなく顔分かるよな”、みたいなお客さんがちらほら増えてきて、その人たちが俺らの地元のライブハウスに大集合してくれて、無事ソールドアウトになったんで、めっちゃ感慨深かったですね。こんな、何もない汚い街ですんませんって感じなんですけど。

──それは寝屋川市に失礼(笑)。

柄須賀:(笑)。何もないけどほんと住みやすくて、人が良くて。寝屋川市民の誰に聞いても言うと思うんですけど、ほんと住みやすくていい街に、逆にみんなが来てくれたことがすごく嬉しかったですね。

──その時点で、リリースで言うと配信シングル「ブルーベリーデイズ」は出ていましたね。

柄須賀:4月末に配信リリースしてたので、その時には出てましたね。

──その「ブルーベリーデイズ」も入った最新作が、『ベリーハートビートE.P.』です。このドラムは航平くんが?

柄須賀:そうです。レコーディングの時点では、ライブは田中さんにやってもらってたんですけど、やっぱり、航平に叩いてもらって良かったですね。あくまで3人でthe paddlesっていうのは変わらないなということです。


──4月に配信で出た「ブルーベリーデイズ」も、先行配信された「プロポーズ」も、the paddlesらしい、日常の言葉を散りばめたリアルな恋愛ソングですけど、今回は恋愛ソングをメインに書こうみたいな意識はありましたか。

柄須賀:僕の曲作りは、生活の中で登場するものは全部書くんで、“書いてたらそうなった”みたいな感じですね。ただ、今までは輪郭をしっかり引いて、生活の中の恋愛みたいな感じで書いてたんですけど、「予測変換から消えても」(2022年)からは、もっと近い距離で書いてる感じはありますね。それと、“固有名詞を使わない、造語を生み出さない、文法的に正しい日本語でちゃんと歌う”とか、自分の中のルールがあったんですけど、今回はそれを壊そうと思ったんですよ。

──ああー。なるほど。

柄須賀:音楽的にも、自分のルーツをちゃんと自分のものに消化してからやる、というものがあったりしたんですけど、そういうルールを取っ払って、やりたい放題にやっちゃおうかなということで、今回のEPは作りました。だから「プロポーズ」の歌詞も、ビールのグリーンラベルとか、スーパーのライフとか、そういう固有名詞を出したりとか、「WARNING!」も、僕はASIAN KUNG-FU GENERATIONが大好きなんで、曲を作ってる段階から「これはアジカンやで」って言ったりとか(笑)。そういうふうに、もっとわかりやすく言葉が届けばいいなと思ったり、わかりやすく自分たちの好きな音楽が届けばいいなっていうのがありました。


──はい。

柄須賀:“the paddlesってこのバンド好きなんやろな”とか“皇司くん、そんな生活してんねや”みたいなのを、直球で、まっすぐ一本で行くみたいな気持ちでやりましたね。『ベリーハートビート』というタイトルもそうで、最初は「ハートビート」だけだったんですけど、なんか普通なんで、ラズベリーとかブルーベリーとかのベリーと、ベリーマッチのベリーの意味を付け加えて。ベリーは副詞だから、ハートビートにはつかないんですけど、そんなのも無視したいという気持ちなんですよね。変やけど、そのいびつさが面白いみたいなのが、自分の中にあったんで。

──確かに。

柄須賀:だから、意味のない言葉もあるんですよ。「プロポーズ」のサビの“アイマイユーライ”とか、意味ないんですけど、口から出てきたものをそのまま放り込んだみたいな感じです。「ブルーベリーデイズ」は、もともと曲を作っている中で、紫色のイメージがあって、たまたまヨーグルト食べてる時に「ブルーベリーヨーグルト、いいね」みたいになって。チャリンコ乗ってる時にふと出て来た“♪ブルーベリーデイズ”っていうメロディを引っ張ってきて、レコーディング直前に歌詞を全部書き換えて。そういう、自分の中からポッと出てきたものをもうちょっと愛してみよう、みたいな気持ちがあって、だから「その言葉って何?」って聞かれても、「響きがいいから」って思い切って言っちゃうようなことばっかり、やった感じもあります。

◆インタビュー【2】へ
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス