【インタビュー】お風呂でピーナッツ、イメージしたのは昭和レトロな歌謡曲「'80年代に僕たちが新曲をリリースしたら」

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■ドラマチックな場面を作る時には型がある
■最初からドラマのワンシーンを思い浮かべていた


──2020年代のコンポーザーとして、当時の楽曲って、何か違いを感じますか。今と比べて。

若林:めっちゃ違うなと思っていて。メロディと歌詞の距離感が、今よりもすごく近い気がしています。たとえば「エンドレス」という言葉が持つメロディというかイントネーションがあって、そこからずらせないというか、言葉に含まれている音階がそのままメロディになっているんですね。それと、サビの展開がたぶん二つか三つぐらいあるんですよ。メロディの展開が。今はループミュージックみたいなものが多いんですけど、あの頃の曲は、サビの中でいくつかのセクションがあって、そういうメロディラインと歌詞との距離感はめっちゃ違いますね。

──ああー。言われてみると。

若林:ビートも、何か違うんですよね。日本の、演歌なのかどうかわからないですけど、もっと前の音楽を脈々と受け継いで来たものが、まだ色濃く残っているというか。今のJ-POPにもそれは残っているんですけど、今はヒップホップとかの要素も強くなっていて、そこのルーツは薄くなっている気がするんですね。でも当時は、そこにどう頑張って洋楽の要素を詰め込むか?みたいな時代だったのかなと感じていて、そこが違うような気がします。

──それはまさに、日本のポップスの発展史に重なる話だと思います。そしてそこが一番面白い。

若林:本当に面白いなと思っていて、今も残ってはいるけど、もっと濃かったと思うし、日本語との距離感がもっと密接だったとすごく思っていて。

──“♪エンドレス”というメロディと言葉の組み合わせの心地よさは、そういうことなんだと思います。ここの言葉は、若林さんが書いたんですよね。

若林:サビの部分だけ作って、そこに物語をつけてくれたのが可弥子です。

──樋口さん、「このサビをふくらませてストーリーを書いて」と言われたわけですか。

樋口:そうですね。最初に若林くんが作った歌詞ありきの曲だなと思ったので、その中のエッセンスを抽出して広げていく作業でした。普段自分で歌詞を書く時もそうなんですけど、自分の中でのパンチラインじゃないけど、ここが一番しっくり思い浮かぶ、というところから穴埋めをしてくんですね。それを普段よりもわかりやすく、型に沿ってやる作業だったので、楽しかったです。“味変(あじへん)”って感じで。

──味変(笑)。なるほど。

樋口:それと、あえてみんなが共有で持っているドラマのイメージとか、汎用性の高い場面や風景がいいなと思って、そこを意識していましたね。“どれだけこの情景が多くの人と共有できるか”みたいな。そういうことは普段あんまりしないので、言い換えれば薄っぺらい歌詞になっちゃうのかもしれないけど、今回はそういう埋め方のほうが、曲の意向と合うかな?と思ってやっていました。

──薄っぺらいとはまったく思わなくて、たとえば“退屈なドライブ”というワードだけで、二人の感情や風景がパッと見えてきたり、“鏡の中の私”“昔くれた香水”とかもそうで、イメージの共有性はすごく高いなと思いました。

樋口:ドラマチックな場面を作る時には、型があると思うんですね。映画でもドラマでも、お決まりの場面みたいなものがあるじゃないですか。そういうものが歌詞でできればいいなと思って書いていました。若林くんの歌詞を見た時に、すごく哀愁漂う曲になるだろうなと思っていて、最初からそういうドラマのワンシーンを思い浮かべていたと思います。


──「エンドレス」って、“エンドレスラブ”みたいな使い方をすると、肯定的になるけれど、“終わりのない”というニュアンスだと、ネガティヴな使い方もできるじゃないですか。そこが面白いなと思ったんですけど、そもそも最初はどういうニュアンスだったんですか。

若林:言ってくださったみたいに、明るい意味でのエンドレスではないですよね。出口の見えないループの中にいるみたいな、そういうイメージで書いた記憶があります。可弥子がそのあとにつけてくれた歌詞に対しても、自分は何も言わなくて、「いいね。そういう感じ」みたいな感じだった気がする。

樋口:何も言われなかった。

若林:めっちゃキャッチしてくれたという印象があります。自分の認識と可弥子の認識が同じだったというか。

──もう一個言うと、この歌詞のストーリーって、二人の距離感がテーマだと思っていて、大人になっていく私と、子供でいたい彼氏みたいな、考え方の違いとか、歩く速度の違いとか、そういうものが見えてくるんですよね。そこで一番グッときたのが、別れの歌なんだけど、歌詞の中の女性は、あなたが嫌いとは一言も言わないんですよ。“時間切れよ”なんですよ。そこがもう、めちゃくちゃグッとくるポイントで、この二人は嫌いで別れるんじゃないんだろうなという、そこが切ないんですよね。

樋口:おおー。

──語りすぎちゃった(笑)。すみません。これはいい歌詞ですよ。

樋口:こうやって感想を聞けるのは、すごく嬉しいです。「エンドレス」は…もうなんか、疲れきってる感じなんですよね。“嫌いとかじゃないけど、もうこれずっとじゃん”みたいな。冷めてるというか。

──そうそう。そこがいいなぁと。

樋口:嬉しいです。歌詞のとらえ方は人それぞれで、今言っていただいた感想と、私が想定していたものと、軸は一緒なんですけど、そこからの細かいプラスアルファの感想が、この曲が広がって豊かになっていく感じがして嬉しいです。

──たぶんそうやって、何千人、何万人が聴くと思うんですよね。そういう力を持った曲だなと思います。話を変えて、若林さん、演奏面でのこだわりや、新しいチャレンジがあれば、教えてください。

若林:今回はドラマーとベーシストに入ってもらって、あとは自分が弾いているんです。ドラマーに関しては今までの曲と同じ人で、難しいこともできるドラマーなんですけど、シンプルに叩いてほしいというディレクションをしました。ベーシストも同じで、今までの曲ではやってこなかったシンプルなアプローチをしてもらっています。最後にギターソロを入れたんですけど、それも今だからのアプローチで弾きたくて、音色的には昔の印象を残しつつ、プレイの内容はすごく今っぽいなと思います。あと、曲の途中のセクションで、フィルターがかかったみたいなシーンがあるんですけど。

──“否定できないディスタンスがある”の二行ですよね。あそこだけエフェクトをかけて、もやがかかった感じというか、遠くから聴こえる感じになっている。あれは?

若林:場面を明確に変えたかったんですね。全体の質感として、音像は新しいと思うんですけど、'80sのニュアンスを伝えるために、時代錯誤みたいなシーンをどうしても作りたくて、エンジニアさんと試行錯誤しながら作りました。時代が戻ったのか、 今が昔だったのか、時代感がぐちゃぐちゃになるようなシーンを作りたくて、あの二行を入れたという感じですね。

──確かに、あそこだけ時間が巻き戻される感じがします。面白いですね、音作りって。

樋口:作っている時に、「ただの'80年代の歌謡曲のコピーにはしたくないよね」という話をした覚えがあるので、すごく意識して構成を考えてくれたのかなと思います。

若林:そうなんですよ。“これが'80年代にリリースされてたら絶対おかしいよね”というような、今だからこそできる要素は絶対入れたくて、“今だから”というものをすごく意識しました。メロディも、いい意味であんまり自分たちらしさはない気がしていて、でもどこかに自分たちでしかできないこと、自分のコンポーズでしかできないことを出すか?ということでしたね。

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