【ライブレポート】ヨーロッパ「この瞬間はとても特別なものです。共に分かち合いましょう」

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スウェーデンを代表するハードロックバンド、ヨーロッパが約5年ぶりとなる来日公演を行った。初期は北欧メタルの始祖的存在とも言われ、大ブレイクした1986年発表の「The Final Countdown」はバンドは知らずとも一度は耳にした事があるはず。2023年9月からスタートしたデビュー40周年を祝う<タイムカプセルツアー>は、欧州を周り母国スウェーデンのショウで2023年を締め括られた。そして2024年のツアー開幕はここ日本からのスタートとなる。

冒頭、ヨーロッパとして活動する前の、バンドがフォースとして活動していた初期の頃を5分間ほどのビデオ映像で紹介される。そして ジョーイ・テンペスト(Vo)が「ヨーロッパ」というバンド名を提案したとき、「ヨーロッパって大陸なの…?」とジョン・レヴィン(B)が当時の反応を思い出しながら語るシーンや、ジョーイがピアノをいじりながら「The Final Countdown」の伝説的なキーボードイントロがどのように思いついたのかについても説明していた。


オープニングの「On Broken Wings」は、アルバムでは『1982-1992』のベストアルバム収録。当時のアナログ「The Final Countdown」のシングルB面曲であり隠れた名曲である。これでスタートを切るとは素晴らしいアイディア。ここから40年の歴史を辿る旅が始まり、瞬く間にステージを掌握していくジョーイ。


「Seven Doors Hotel」、そして「Rock The Night」で更なる歓声が沸き、ミック・ミカエリ(Key)がハモンドの音色をちょっぴり挟んだのも効果的でもうオープニングの3曲からまるでアンコール曲のような並び。再結成一発目の作品である「Start From The Dark」ではジョン・ノーラム(G)はストラトキャスターからレスポールに持ち替え、ダウン・チューニングとライティングも終始暗めの演出でシーンにカムバックした頃を思い起こさせるし、荘厳なイントロからのクラシックハードロック調な「Walk The Earth」で成熟した今のヨーロッパの真骨頂を見せる。



「この瞬間はとても特別なものです。共に分かち合いましょう。ジャーニーは続きます。長年のサポートをありがとうございます」と、日本語で話すジョーイ。彼の事だからかなり練習したのではないだろうか。常にストイックで自分の魅せ方を研究している人であるから。

反響もとても良かったニュー・シングルの「Hold Your Head Up」から、ミックがジョーイを率いてのピアノバージョン「Dreamer」では観客の合唱を誘う。骨太で芯のあるサウンドながらきっちりメロディも聴かせる「War of Kings」、そしてインストゥルメンタル曲「Vasastan」ではスポットライトを浴びたノーラムがゲイリー・ムーアに見えた人も多かったことでしょう。

ジョーイが衣装を替えて登場したキー・マルセロ(G)時代の名曲「Girl From Lebanon」が毎回セットインするのも嬉しい。現在もクラシックメンバーでありながら、毎回この曲を演り続けるのはバンドの代表曲のひとつであるということ。セットリストはメンバー全員で決めているそうだ。











またビッグヒットしたナンバー「Carrie」では、ミックが「ジョーイと一緒に書いた最初の曲だ」と紹介。歌詞の一部を「Again..Tokyo Again..」と歌ってくれていた。これまでも何度も聴いてきたはずの定番曲をライブでまた新鮮に思わせてくれ、今の彼らがプレイする事で一段と楽曲の良さが再認識できるのも凄いところ。「Stormwind」で前半の幕を閉じると、イアン・ホーグランド(Dr)の声で「またすぐに戻ってくる」とアナウンスがされる。

20分のインターバルで、後半も再びイントロ映像から始まる。バンドが13年間の活動休止を経た2003年の再結成より10年後、スウェーデンロックフェスティバルのステージに戻ってきたところからであった。メンバーがお互いを特別な関係であることや、ジョーイはバンドを異なるパートで構成された“1つの魂”に例えていたが、その絆とバンドを思う気持ちがこちらにも伝わってきた。



正式な再結成の前にミレニアムを迎える1999年の大晦日にスウェーデンで一夜限りのショウが行われたのは周知されている。この時やりたがらないジョーイを説得したのはノーラムであり、彼が「キー(マルセロ)も呼んで一緒に演ろう」とも提案し、そのショウが実現したからこそ後に正式な再結成への布石となった。一時期はバンドを離脱したノーラムがこの役割を果たした事、いま目の前で観ているステージの充実度の高さからこれまでの様々な出来事を振り返ると胸が一杯になった。

グルーヴィで重厚な「Always The Pretenders」も近年の彼らの代表曲のひとつ。本当にこの手のサウンドが似合うライブバンドになったと改めて感じたし、疾走感溢れる「NINJA」ではエンディングからジョーイもエレキギターを持ちツインギター編成に。そのままジョーイはギターヴォーカルで壮大な「Prisoners In Paradise」へ。



キーボードソロからの「Sign Of The Times」に続き、ジョーイとノーラムはデヴィッド・ボウイの「Space Oddity」の完璧なアコースティック・ヴァージョンもプレイしてくれた。特に出だしのジョーイの歌声はかなりボウイを意識したものになっていて驚く。ノーラムもここで歌唱を披露。

ヘヴィな「Last Look At Eden」を挟み、ジョーイとノーラムがアコースティックギターでの「Open Your Heart」。レヴィンのベースソロも含めたファーストアルバムからの「Memories」は久しぶりに聴けたし、「More Than Meets The Eye」からイアンの「ウィリアム・テル序曲」に合わせたドラムソロに突入する。とにかく長丁場を全く退屈させない構成であるのと、ほとんどの曲を原曲キーで歌い、力強いステージングのジョーイ。ノーラムも終始素晴らしいトーンとビブラートで観客を痺れさせていた。



再びジョーイも白いレスポールを持ちツインギターでの「Ready Or Not」、個人的にも大好きな曲であり、終盤に向けてのテンションも上がる。本編の締めくくりに相応しい「Superstitious」でも今回の特別仕様、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの「No Woman No Cry」の一部を取り入れて披露してくれた(東京公演2日目は、ホワイトスネイクの「Here I Go Again」だった模様)。とにかく時系列ではない時代の異なる楽曲たちが、どれを取っても紛れもなくヨーロッパだという、初期のみ馴染みのあるファン、カジュアルなファンにも改めて名曲揃いな事を知って貰えたのではないだろうか。



アンコールは「Cherokee」とあのキーボードイントロでラストにまた会場が大きく沸いた「The Final Countdown」。ヨーロッパと言えば多くの人がこの曲が浮かぶであろう事はバンドにとって祝福でもあり、また呪いでもあったと思うが、今回のステージでも証明されたようにヨーロッパがここまで長く成功したのは理由があるということ。これまで国内外で何度も彼らのステージは観てきたが、素晴らしかったのは決して今回だけではない。スペシャルな演出を除けばいつも通りのクオリティのライブなのである。ただ、今回<タイムカプセルツアー>というタイトル通り彼らの歴史を一緒に辿り、初めて観る一面もあり、予想以上のものを見せてくれて誰もが楽しめるものがあった。まさにタイムカプセルな夜、この先もまだまだRock The Nightし続けて欲しい。



文◎Sweeet Rock / Aki
写真◎東京公演/ Yuki Kuroyanagi、大阪公演/ Johan Ceder

<EUROPE ~THE TIME CAPSULE 40YEARS "EVENING WITH" JAPAN TOUR 2024~>

202年2月1日@Tokyo Dome City Hall
【Set1】
1.On Broken Wings
2.Seven Doors Hotel
3.Rock The Night
4.Start From The Dark
5.Walk The Earth
6.Hold Head Your Up
7.Dreamer
8.War Of Kings
9.Vasastan
10.Girl From Lebanon
11.Carrie
12.Stormwind
【Set2】
13.Always The Pretenders
14.NINJA
15.Prisoners In Paradise
16.Sign Of The Times(Keyboard Solo)
17.Space Oddity
18.Last Look At Eden
19.Open Your Heart
20.Memories(Bass Solo)
21.More Than Meets The Eye
~Drums Solo~
22.Ready Or Not
23.Superstitious
~Encore~
24.Cherokee
25.The Final Countdown
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