【インタビュー】BabyKingdom、新アトラクション『FUNNY∞CIRCUS』はサーカスがテーマ「やっぱり人を元気にする一番の薬は笑顔」

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◾️“笑われる”と“笑わせる”の違い

──今作のコンセプトを「サーカス」にされた理由というと?

咲吾:コンセプトの候補は常に5個ぐらいストックがあって、サーカスというのはかなり前からあったんです。でも、シングルで出すべきではないと思っていて。サーカスってみんながイメージしやすかったり、ピエロという役割があったり、空中ブランコみたいな演目があったりして。賑やかでごちゃっとした感じを出せるから、シングル3、4曲で終わってしまうのはもったいなさすぎると思っていたので、アルバムまで置いておこうと。

──満を持してという感じだったんですね。

咲吾:やってそうだけど意外とやっていなかったコンセプトでもあるんですよね。温存していたコンセプトだったので、衣装作りの段階からかなり気合いは入っていましたね。

──その中でも、タイトル曲の「FUNNY∞CIRCUS」は、まさにザ・サーカスというものを作ろうと。

志記:「FUNNY∞CIRCUS」に辿り着いたのは最後で、その前に「Burning FIRE!」と「ハーレクインの憂鬱」のオケを先に作ったんですよ。BabyKingdomとして表現してこなかったオールドロックな雰囲気のある「Burning FIRE!」と、ヴィジュアル系バンドとしてサーカスをやるのであればこの感じという「ハーレクインの憂鬱」っていう。

──なるほど。

志記:最初は「Burning FIRE!」をリード曲にしようとなっていたんですけど、僕の中でちょっとモヤモヤしてたんですよね。本当にこの曲でいいのかなって。それで、メンバーに「ほんまはどう思う?」って聞いたら、メンバーも「ちょっとモヤっとしてる」って言ってて。元々咲吾から“シャッフル”っていうキーワードをもらっていたんですけど、普通にやってしまうと、僕の中では安直だなってすごく思っていて。

咲吾:昔、「ミステリアスパレード」っていう曲を出したんですけど、それもシャッフルだったんですよ。志記の中で、どうしてもそれと一緒になっちゃうっていう悩みがあったみたいで。でも、「いや、昔の自分、超えていこ?」みたいな(笑)。

志記:それで、シャッフルはシャッフルでも、陽気なシャッフルというか。キャバレーっぽい感じって言ったらええのかな。怪しい感じもあるんやけど、アメリカンでちょっとポップな感じがあるものをサーカスに当てはめてみたら、ピエロが踊っている感じとか、こっちにちょっかいかけてくるようなイメージが湧いたので、そこから24時間で最初のオケを書きました(笑)。

もにょ:「Burning FIRE!」のメロディって、最初はいまと違ってたよな? もっとサーカスに寄っていて、もっと歌モノだった気がする。なんか、咲吾が「この曲は火を吹いてるおっさんしか出てこない!」って言ってて。

咲吾:(志記が)外タレのライブを観に行ったやんな?

志記:うん。オリアンティの。

咲吾:その直後に作った曲やから、たぶん志記の中にある洋楽魂がすごく出てるんですよ。だから、火を吹いてるおっさんのイメージしか出てこなくて。

志記:洋楽のイメージが“火を吹いてるおっさん”なのもおかしいけどな(笑)。

一同:ははははは!(笑)



──「FUNNY∞CIRCUS」は、24時間で作った最初のデモからいろいろと変更も出たんですか?

志記:データ的には、“FUNNY∞CIRCUS 1”から“FUNNY∞CIRCUS 11”まで行きましたね(笑)。シャッフルで疾走感をうまく出すために、ドラムとベースの兼ね合いとか、そこにギターをどう載せるかっていうところで結構苦労しました。レコーディング前日でギターのフレーズも変えましたし。

虎丸:最初は曲の終わりにめちゃくちゃ速いツーバスが入ってたんですよ。

志記:サーカスでピエロやから、変幻自在みたいな部分を入れなあかんと思って。最終的に、シャッフルなんだけどBメロで3拍子になったり、ギターソロで普通のビートに変わって、さらにその後に3拍子にテンポチェンジしてからまたシャッフルに戻るっていう構成にしているんですけど、そこで変幻自在を出せたので、最後のツーバスはカットしました。で、その部分を「ハーレクインの憂鬱」に持っていってます。

虎丸:「FUNNY∞CIRCUS」は、意外とめちゃくちゃ速くて、自分の限界ぐらいの速さなんですよ。なので、それについて行くためにどうしようかなってめちゃくちゃ考えましたね。

もにょ:ベースは、さっきの“たった1小節”の話じゃないけど、レコーディングのときに、“この中の3パターンだったらどれがいいと思う?”って言われて。それをバーっと弾いてみて、どれがいいか選ぶ感じでしたね。ベースは志記の家で録っているので、スタジオみたいに時間が決まっていて切羽詰まった状態じゃないから、1曲でも1日仕事みたいな感じなんですけど。

志記:家、音を出して大丈夫なんで(笑)。

もにょ:この曲も8時間ぐらいずっと録ってたのかな。でも、3時間超えてきた辺りから、「お兄ちゃん、この曲だけで何時間かかるん?」って言われて、いや、お前の意見のせいやろ!みたいな。レコーディングは大概兄弟ゲンカをして、その後一緒に飯食いに行くのが定番ですね。

▲もにょ(B)

──すごい流れ(笑)。咲吾さんは“FUNNY∞CIRCUS 1”から“FUNNY∞CIRCUS 11”までやりとりしていく中で、いろんな意見を出したりしました?

咲吾:僕は志記とは真逆で、直感型というか感覚派なんですけど、いつも話し合うのは構成とか音像の部分ですね。ここは削ったほうがサビにスッと行けるんちゃう?とか、アコーディオンの音がこれだとちょっと現代風すぎるから古いほうがいいとか。

志記:アコーディオンは最初のデモから入れていたんですけど、咲吾さんのお気に入りやったから、あとから高い音源を買ったんですよ。そしたら「それはちょっと違う」って言われて、結局最初のやつに戻しました(笑)。

咲吾:なんか、サーカスの道具ってちょっと年季が入っている感じというか。移動もするし、同じ道具をずっと使い続けていてボロボロになっているイメージがあったから、そこで新しいアコーディオンの音を奏でられてもな……と思って。そういうことを言っていくんですけど、残りの細かい部分は、誰も気づかない志記のこだわりみたいなところが99%なので。そこを本人が納得行くまでやらせようかなっていう感じですね。



──歌詞もいろいろと変わったりしたんですか?

咲吾:いや、最初の段階から変わってないです。テーマが“ピエロの感情”だったので、“笑われる”と“笑わせる”の違いみたいなところを書いていきました。僕はピエロではないですけど、同じ演者ではあるので、その見せ方の部分というか。ピエロって笑われる仕事やから、目のところに涙が描かれているらしいんですけど、ひっくり返って逆立ちすると、涙は風船にも見えたりして。だから、笑われる存在も、視点を変えれば笑わせる存在になるんだぞっていう。

──“笑われる”と“笑わせる”の違いについては、それこそここまでステージに立ってきた中で、咲吾さん自身が強く考え続けていたことでもあるんですか?

咲吾:そうですね。たぶんきっと、笑われるのって簡単なんですよ。それよりも、自分が相手の心を開いて笑わせるほうが難しいし、笑わせるためには頭を使って何か1アクションを入れないといけなくて。笑われるっていうのもね、僕らの関係性を面白おかしく笑ってくれる分にはいいんですけど、バカにされて笑われるのではなく、ちゃんと自分の実力で笑わせたいし、それが自分の目指すところではあったので。だから、ピエロに感情移入して書いて行ったところはありますね。

──実際にライブを拝見していると、4人がお客さんを笑わせるというか、笑顔にしようという気持ちでステージに立っているのがすごく伝わってきます。

咲吾:やっぱり人を元気にする一番の薬は笑顔やなと、僕は思ってるんで。普段笑えなくてライブに来てる人もいるだろうし。サビの入りで《忘れさせるよ》って言ってますけど、嫌なことを忘れさせて、非日常を作るのがバンドやと、僕は思ってますね。

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