【連載】いま、聴きたい演歌・歌謡曲 vol.17(コメント動画付き)美川憲一、高橋キヨ子、千葉げん太、長保有紀、成世昌平

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世代を超えて愛される「うた」がある。歌唱したい「うた」がある──。

◆本人によるコメント動画

今月は、周年を迎える日本クラウンのベテラン歌手とその代表曲を紹介しよう。

演歌は長らく歌い継がれる名曲が多く、古きを知ることもまた魅力のひとつであるといえる。

1963年に設立された日本クラウンは、既に60年を超える老舗ではあるが、演歌の世界においては実は後発組。今回紹介するベテラン歌手の中には、クラウンの設立当初から在籍する者もおり、クラウンという会社の歴史の一端を知ることもできるだろう。



■60周年 美川憲一「さそり座の女」



美川憲一は65年に「だけどだけどだけど」でデビュー。クラウンの初期から在籍する生え抜きで、なんとデビュー60周年を迎えた。翌66年に3枚目のシングル「柳ヶ瀬ブルース」が120万枚を超える大ヒット。「新潟ブルース」「釧路の夜」と、60年代はご当地ソングでヒットを飛ばしていく。70年代に入り「おんなの朝」など安定してヒットを飛ばすが、1972年いよいよ運命の楽曲に出会う。この楽曲が世に星占いブームを広めることにもなるほど話題になり大ヒットを記録、これが代表曲となった「さそり座の女」だ。

オリジナルは72年リリース。本来はシングルのB面になる予定だったが、美川がこれをA面にしたいと懇願したというエピソードがある。『NHK紅白歌合戦』でもこれまでに7回も歌っており、まさに代表曲というにふさわしい。

息の長い楽曲だけに再録音もされており、現在のCDで聴けるのは、オリジナルと同じアレンジのまま歌を再録音したものだ。こちらの方が歌い方が滑らかでゴージャス感がある。23年には、91年にリリースされた清水靖晃によるダンスアレンジの新録音バージョンがアナログレコードで再発され、和モノDJのシーンを席巻するなど、まだまだ新たなファンを生み出している。こんな曲はそうそうないだろう。



歌手生活 60 周年記念アルバム『歌いつづけて』発売情報

2024年12月4日リリース
CRCN-41513〜~41518 定価:¥13,000(税抜価格 ¥11,818)

【収録曲】
DISC.1
1.だけどだけどだけど
2.あの娘が好きと云った花
3.柳ヶ瀬ブルース
4.柳ヶ瀬の女
5.まぼろしのブルース
6.ネオン化粧
7.新潟ブルース
8.湖畔のホテル
9.あの星のかなた
10.湯の街艶歌
1.釧路の夜
12.桜木町ブルース
13.霧のバラード
14.夜の慕情
15.女とバラ
16.大阪の夜
17.みれん町
18.おんなの朝
19.おんな町
20.想い出おんな

DISC.2
1.お金をちょうだい
2.うらぎりの町
3.銀座・おんな・雨
4.一番列車の女
5.さそり座の女
6.バラの柩
7.軽蔑
8.聞かせてほしい
9.裁き
10.三面記事の女
11.ナナと云う女
12.はしゃぎすぎたのね
13.くやし涙
14.伝言
15.愛・それはゲーム
16.カスマプゲ(胸がせつない)
17.あゝお酒
18.お待ちしてます
19.気ままな女
20.駅

DISC.3
1.小雨のブルース
2.生命のブルース
3.戎橋ブルース
4.あたし
5.女が靴下をぬぐとき
6.スカーレット・ドリーマー
7.城ヶ崎ブルース
8.さだめ川
9.ふたりの旅路
10.釜山港へ帰れ
11.女って何なんだろう
12.だってさ
13.雨の花
14.愛は暮らした長さじゃないの
15.よせよ
16.てんで話にならないわ
17.あんた
18.別れの川

DISC.4
1.花
2.駄目な時ゃダメよ
3.火の鳥
4.うたかたの夢
5.オイ・オイ賛歌
6.昔あなたを愛した
7.おだまり
8.冬子のブルース
9.幸せになりたい
10.北国夜曲
11.慕情
12.別れの旅路
13.HUN!
14.女の翼
15.永遠にバラの時を
16.大変ね

DISC.5
1.東京ホテル
2.双子座生まれ
3.恋女
4.女のひとりごと
5.湯沢の女
6.泣かんとこ
7.納沙布みれん
8.時という名の岸辺で
9.愛は煌めいて
10.神威岬
11.赤い鴎
12.愛の讃歌
13.長崎みれん
14.古都情念
15.淡雪のひと
16.愛は嫉妬

DISC.6
1.この青空の下で
2.アカシア雨情
3.涙はキランの泉
4.たまらなく淋しくて
5.金の月
6.生きる
7.雨がつれ去った恋
8.吾妻橋で待つ女
9.十三夜月
10.春待ち坂
11.愛染橋を渡ります
12.夜の花
13.こころに花を
14.別れてあげる
15.ふたつの愛
16.歌いつづけて




■60周年 高橋キヨ子「ひぐらし」



高橋キヨ子もまた、美川と同じ65年デビューで、60周年を迎える大ベテランだ。民謡出身で、15歳の時に「秋田おばこ甚句(秋田甚句)」でデビュー。民謡や浪曲出身の多くの歌手が演歌や歌謡曲へと流れる中、70年代には三味線・本條流家元の本條秀太郎に師事するなど、現在も民謡を歌い続けている。2024年には「民謡名人位」を受賞するなど、まさに民謡界の至宝と言える人だ。

そんな高橋の代表曲といえば、81年にリリースされた「ひぐらし」だろう。作詞は、美空ひばりの「柔」や都はるみの「涙の連絡線」が有名な関沢新一。作曲は大ヒットメーカーの船村徹で、この曲は『第2回NHK古賀政男記念音楽大賞』で入賞を果たしている。曲調は古いタイプの演歌だが、ひとつの音をコブシを効かせながらロングトーンで歌う民謡特有のフレーズがふんだんに盛り込まれていることから、かなりの歌唱テクニックと肺活量が求められる難曲だ。歌の世界観だけでなく、技術的なレベルの高さから歌を楽しむのも面白いのではないだろうか。



デビュー60 周年記念曲「花筏」発売情報

2025年3月19日リリース
CRCN-8735 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. 花筏
作詩:Haruyo / 作曲:原 譲二 / 編曲:遠山 敦
2. 月下の宴
作詩:日野浦かなで / 作曲:新倉 武 / 編曲:水谷高志
3. 花筏 [オリジナルカラオケ]
4. 月下の宴 [オリジナルカラオケ]




■50周年 千葉げん太「望郷わらべ歌」



76年に「トラック野郎」(同名の映画とは関係なし)でデビューした千葉げん太は、来年でデビュー50周年を迎える。歌手を志して19歳で故郷の宮城県から上京。俳優・渥美清の付き人などをしながら、9年をかけてデビューに至ったという苦労人だ。

今回採り上げる「望郷わらべ唄」は2001年にリリースされた楽曲で、千葉本人が作曲したものだ(クレジットにある千葉とおるは本名)。タイトル通りの望郷の歌だが、加えて、子供の頃に見た風景を思い起こしているところから、距離だけでなく時間を超えて、誰にでもある「あの頃」に想いを馳せる曲となった。それもあってか、今や若手歌手にも歌い継がれる望郷の歌として定着してきた感がある。リリース当初から好評だったのだろうか、2003年には新アレンジ版が早速リリースされ、近年の千葉は、再び望郷の歌を数多くうたうようになった。




最新曲「夫婦残照 〜令和編〜」発売情報

2024年2月7日リリース
CRCN-8636 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. 夫婦残照 〜令和編〜
作詩:千葉幸雄 / 作曲:宮迫はじめ / 編曲:遠山 敦
2. 酒は明日の力水
作詩:千葉幸雄 / 作曲:宮迫はじめ / 編曲:遠山 敦
3. 夫婦残照 〜令和編〜 [オリジナルカラオケ]
4. 酒は明日の力水 [オリジナルカラオケ]
5. 夫婦残照 〜令和編〜 [一般用カラオケ]
6. 酒は明日の力水 [一般用カラオケ]




■40周年 長保有紀「城ヶ島雨情」



長保有紀はデビュー40周年となる。85年に「女の人生待ったなし」でALTYからデビュー。98年まで在籍し(途中で社名が親会社のアポロンに統一された)、94年には紅白歌合戦にも出場。99年から2003年まではビクターに在籍した。クラウンには2004年から在籍し、今年で21年目。女性の演歌歌手には珍しく、90年代以降は「はずき」の名前で作詞と作曲も手がけるようになった。この長いキャリアの間、ほぼブランクなく毎年のように新曲を発表し、これまでにリリースしたシングルは50枚に及ぶ。

そんな中で今回採り上げたいのは、クラウンへの移籍第2弾シングルとして、2005年にリリースした「城ヶ島雨情」だ。移籍から最初の7枚はすべて作詞を木下龍太郎、作曲を中村典正というコンビによる楽曲を歌った。特に木下はご当地ものや旅情ものを得意とする作詞家ということもあり、この曲も神奈川県の三浦半島の先端に位置する島、城ヶ島を舞台にした旅情艶歌となっている。古くからの景勝地ということを意識したのか、未練の歌でありながら明るく軽快な曲調となっているのが余計に切ない。


「霧笛にぬれて」発売情報

2024年7月2日 Release
CRCN-8671 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. 霧笛にぬれて
作詩:さくらちさと / 作曲:徳久広司 / 編曲:南郷達也
2. おっとり節
作詩:さくらちさと / 作曲:徳久広司 / 編曲:南郷達也
3. 霧笛にぬれて [オリジナルカラオケ]
4. おっとり節 [オリジナルカラオケ]



■40周年 成世昌平「はぐれコキリコ」



成世昌平も長保有紀と同じく85年デビューで、今年が40周年となるが、こちらはクラウンの生え抜きだ。もともとは落語家を目指していたが、高校卒業後、仕事をしながら独学で民謡を歌い始め、77年と78年に産経新聞の民謡大賞で連続優勝。85年に民謡の「博多節」でデビューした。一聴して成世だと分かる艶やかなハイトーン・ヴォイスと滑らかにコブシを効かせた歌い回しが個性的な歌手だ。民謡を歌い始めて45年目となった2019年には、日本民謡協会から第46代の名人位を受章するなど、その実力は現世におけるトップレベルといえる。

「はぐれコキリコ」は1999年にリリースされた9枚目のシングル。99年の日本レコード大賞では作曲賞を受賞していることから、もともと楽曲への評価は高かったが、リリース当初はあまり話題にならず、有線などを通じて徐々に浸透し、数年かけて50万枚を超えるヒットとなった。富山県の民謡である「コキリコ節」をモチーフにしたオリジナル曲で、民謡的な声の調子を存分に活かせる作りになっている。冒頭から成世のダイナミックな歌唱に圧倒されるが、特にエンディングに向かうところのハイトーンの声の響きは凄まじく、これを真似できる人はそうそういないのではないだろうか。





最新曲「あんちゃん」発売情報

2023年11月22日リリース
CRCN-8619 定価:¥1,500(税抜価格 ¥1,364)

【収録曲】
1. あんちゃん
作詩:いで はく / 作曲:聖川 湧 / 編曲:石倉重信
2. 銀河への道
作詩:いで はく / 作曲:聖川 湧 / 編曲:石倉重信
3. あんちゃん [オリジナルカラオケ]
4. 銀河への道 [オリジナルカラオケ]
5. あんちゃん [一般用カラオケ(一音下げ)]
6. 銀河への道 [一般用カラオケ(一音下げ)]




文◎池上尚志



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