熱狂的ファンをノックアウトした復活ライヴ

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熱狂的ファンをノックアウトした復活ライヴ

アーティストにはファンがいて、そしてファナティック(熱狂的ファン)と呼ばれる人々がいる。

ファンはコンサートのチケットを買い、ヒット曲に合わせて首を振り、会場からの帰路には値段の高いTシャツに遭遇するかもしれない。

ファナティックは良きにつけ悪しきにつけ、自分の人生のかなりの部分を憧れの対象であるアーティストのライヴ演奏に投資している。チケットを何カ月も前に手に入れるために早朝から列を作り、開演の何時間も前に会場に到着し、そして胸を弾ませながら笑い、泣き、踊り、あらゆる曲のすべての歌詞をバンドに合わせて叫ぶのである。

この日の夜ソールドアウトとなったシカゴのMetroは、数年間の沈黙を破って戻ってきたWeezerのファナティックで一杯であった。実際に電飾付きの軽い空飛ぶ「W」(バンドのロゴ)が登場しただけで、歓喜の叫び声が溢れだしたのである。

だが、その絶叫もバンドがステージに現われて、フロントマンのRivers Cuomoが「My Name Is Jonas」をスタートさせたときの興奮とは比べものにならなかった。たとえ会場に懐疑的なリスナーがいたとしても、すぐに圧倒的な熱狂のパワーとバンドのうなるような轟音に押し潰されてしまったであろう。

「El Scorcho」でT.Rex風のサウンドを披露するころには、会場の湿度は急上昇し、群衆の密度が増したため、ダンスは単純なジャンプへと変わり、ビートに合わせて拳を突き上げるのが精一杯となっていた。

ステージではバンドが大きな期待を裏切らない演奏を繰り広げていた。変な角度に足を突き出し、半袖ボタンダウンのマドラスシャツと黒の角枠メガネをまとってしゃがみ込んだCuomoは、変わり者とか負け犬とか一度でも呼ばれたことのある人々にとっては今でもヒーローなのである。

その夜を通じて彼はバンドメイトを率いて、セカンドギタリストのBrian Bellや新しいベーシストのMickey Welshとフレーズをやりとりしながら、アリーナロックとパワーポップをブレンドさせたサウンドを聴かせたのだった。

Cuomoと仲間がギターおたく賛歌の「In The Garage」をブチかますころには、屈強なガードマンが水の入ったボトルを使ってステージに最も近いところにいる連中をクールオフさせ始めた。それはまるで電気仕掛けの聖餐式を見るような、奇妙であると同時に感動的な光景であった。

セットの中盤でWeezerは新曲をいくつか披露したが、それらはバンドにとっての大きな飛躍を感じさせるサウンドで、間もなく登場するアルバムを待ち切れないファンに多少の希望を与えたのである。

そして、Weezerは「Buddy Holly」の乗せ乗せヴァージョンをアンコールに演奏して、約90分間のステージを締めくくった。

観客は汗まみれの群衆として外へ吐き出されたのであるが、不満そうな者は誰一人いないようだった。だが、それがファナティックというものなのだろう。

by Tim Sheridan

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