いっそう暗く重厚に……。21世紀のKing Crimson

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いっそう暗く重厚に……。
21世紀のKing Crimson

 

ギタリストのRobert Frippが、長期にわたって活動を停止していた彼のバンド、King Crimsonを80年代に再開したとき、多くの人々は驚いたものだ。その時点ですでに、King Crimsonは最後の息を引き取ったプログレッシヴロックの恐竜のような存在だと考えていた人が多かったからである。しかし、Robert Frippはこのグループを蘇生するにあたって、トレードマークだった数学的な疾風怒濤に、ポップな味付けを盛り込んだ。その目的のために彼が連れて来たのが、(Talking HeadsFrank Zappaと仕事をしていた頃の)シンガー兼ギタリスト兼作詞家のAdrian Belewと、(独特のメロディックな奏法で有名なセッションミュージシャンで、Peter Gabrielの作品でも知られていた)ベーシストのTony Levinだった。

そうして蘇ったKing Crimsonは、一見奇妙なニューウェーヴらしさと、古き良きアートロックらしさと、Beatlesのように耳に残るメロディーを合わせ持つ魅力的なバンドとなった。そして、さらに20年近くを経た今、King Crimsonはいくらか姿を変えてふたたび立ち上がった。シカゴのステージに登場した彼らの演奏テクニックは素晴らしかったが、20年前に彼らを現役のロックバンドたらしめていた目くるめくエネルギーは少しばかり失われていた。

現在King Crimsonのメンバーは、Adrian BelewとRobert Frippのほかに、ベーシストのTrey GunnとドラマーのPat Mastelottoであり、彼らがコンサートで演奏するのは、ほとんどが最新アルバム『The ConstruKction Of Light』の曲である。この日のコンサートには、新譜の美点も問題点も反映されていた。重厚さをいっそう増した彼らの1曲目は“Larks' Tongues In Aspic Pt. IV”だったが、明らかにこの曲は、King Crimsonの脈々と続くインストゥルメンタル叙事詩の最新章で、正確な演奏と不吉な予兆が際立っていた。それよりは気楽に聞ける“ProzaKc Blues”でさえ、重々しい響きは続いていた。ようやく少し緊張が解けたと思えたのは、彼らが'81年の『Discipline』からプログレ・ファンクの名曲“Thela Hun Ginjeet”を持ち出してきたときで、この曲ではBelewは楽しそうにギターの弦を叩き、GunnとMastelottoのリズム隊はしっかりしたグルーヴを生み出していた。

ニューアルバムからの曲は次々と披露された。なかでも“Into The Frying Pan”や“FraKctured”の朗読は派手だったが、観客が盛り上がるのはやはり昔のアルバムの曲だった。この日、歓声が最も大きかったのは、Belewがソロでフラメンコ風にアレンジした“Three Of A Perfect Pair”をアコースティックギターで弾いたときだった。小さい音のほうの旋律はインプロヴィゼーションだったが、King Crimsonは近年インプロヴィゼーションの試みを重視している。たしかに、面白い瞬間もあるのだが、そういう実験は自己満足に陥りがちである。

つまり、今後のCrimsonは次のようになるだろう:

これまでより暗くて重い頑固者で、かつて復活したときのとっつきやすい側面はまるでなし。Belewのオフビートのユーモアも、ふたたび先鋭化した様子である。たとえば“Coda: I Have A Dream”の殺風景な歌詞で、彼は世界の歴史上の残虐行為を延々と挙げている。King Crimsonは心と花について歌っていればいいと言うつもりはないが、彼らは、それほどシリアスでなかった'81年には、ある種の幸福な世界を歌っていたのである。しかし結局のところ、Robert Frippが自分で生み出した気高いバンドをどうしようとも、彼の考えに口出しする資格が私たちにあるだろうか。筋金入りのファンとしてはおそらく、無駄口を叩かずに新しいKing Crimsonをみんなに広めていくべきなのである。

 

 

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