過去の作品でまとった神話性を解体し、素のままのU2を見せた新作

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過去の作品でまとった神話性を解体し、素のままのU2を見せた新作
 
「このレコードが手ごわいものになることはわかっていた

最新 Single

Elevation
ユニバーサル インターヴァショナル UICI-5004
2000年7月11日発売 1,260(tax in)

1 Elevation(Tomb Raider Mix)
2 Elevation(Escalation Mix)
3 Elevation(Influx Remix)
4 Elevation(Quincey & Sonance Remix)
5 Last Night On Earth(Live From Mexico City)


▲最新アルバムからの第3弾シングルは、「ELEVATION」のアルバム未収録リミックスと、メキシコでのライヴを含む日本オリジナル編集盤。ELEVATIONは、日本ではこの秋公開のアクション・アドヴェンチャー映画『トゥームレイダー』で大々的にフィーチャーされ、主人公を演じるアンジェリーナ・ジョリーとメンバーが共演したプロモ・ヴィデオもかなり話題を呼んでいる(4/10付ニュース参照)。M1の“Tomb Raider Mix”は、Nine Inch Nailsの元ドラマー、Chris Vrennaによるリミックス、M3の“Influx Remix”はライヴでメンバーが登場するときに使われるLeo Pearson and Johnny Moyによるリミックスだ。

最新 Album

ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND
ユニバーサル インターヴァショナル UICI-1002

2000年10月25日発売 2,548(tax in)

1 BEAUTIFUL DAY
2 STUCK IN A MOMENT YOU CAN'T GET OUT OF
3 ELEVATION
4 WALK ON
5 KITE
6 IN A LITTLE WHIL
7 WILD HONEY
8 PEACE ON EARTH
9 WHEN I LOOK AT THE WORLD
10 NEW YORK
11 GRACE
12 THE GROUND BENEATH HER FEET(Bonus Track)


最新アルバム『All That You Can't Leave Behind』を制作する苦難のプロセスを歩んでいるとき、このアイルランド出身の4人組は何かの使命を実行しようとしていた。

このレコードが手ごわいものになることはわかっていたよ」とフロントマンのBonoは説明する。「僕たちは“本当に心地よく感じるものを作ろう。今週の流行りが何かとか、今いる瞬間がどうだとかに関係なく”と考えたんだ

僕たちはそういうものに抵抗してきたし、ロックミュージックは巷の状況、つまりR & Bやヒップホップの挑戦といったことには関係ないという考え方もあると思う。それで僕らは単にそうした状況にノーと言って、“まず僕たちよりも良い曲を書けよ、君たちが誰なのかはそれからだ”と言ってやりたかったのさ。これが新作での僕らの姿勢といったところだね

ちょっとした姿勢が大いに効果をもたらすことがあるが、U2の場合は実際にそうなった。およそ半年前にリリースされた『All That You Can't Leave Behind』は、Billboard Top 200の第3位にいきなりチャートインし(英国では第1位)、200万枚以上を売上げたうえ、ファーストシングルの「Beautiful Day」はグループにグラミー賞の3部門をもたらしたのである。

言い換えれば、彼らの使命は達成されたのだ。

こうしたプロセスはBono(本名Paul Hewson)とバンドメイトのギタリストEdge(Dave Evans)、ベーシストのAdam Clayton、ドラマーのLarry Mullen Jr.にとって、ある意味でルネッサンスとなった。つまり、かつてRolling Stone誌が“80年代のバンド”と評したアーティストが、ダブリンでの結成から25年近くを経ても健在であるという意味でのルネッサンスである。

僕らはバンドとして新しい地平を切り開くことで生き残ってきた」とEdge。だが、同時にU2は意味のない再発明からは着実に身を守ってきたと彼は付け加えている。

ルールは嫌いなんだ。クリエイティヴな状態にあるときには、真に絶対的なものが存在するみたいな考え方がいやなのさ。自分自身のクリエイティヴな直感に従うべきだと思うし、自分が正しいと感じたものを貫くべきだ。それで最終的には自分の耳で判断するのさ。何かが本当に機能して、聴き手とつながっていたら、それを疑うことは絶対にないね

その哲学は、U2のキャリア全体を通じて見事に効を奏した。BeatlesRolling Stonesといった古典的大物や、,ClashPatti Smithのようなパンクヒーローをお手本に、彼ら4人はアイルランドから溶鉱炉のように台頭したのである。彼らが携えていたのは新世代の賛歌(「I Will Follow」「Pride」「I Still Haven't Found What I'm Looking For」)、キリスト教信仰に対する非弁証学的な献身、鋭い政治意識、一時的な耽溺を償う以上に公正な自己批判へとつながる激烈な情熱などだ。

だがU2は揺らぐことのない活動を続け、'87年の『The Joshua Tree』で大成功を収めた後も、10年間にわたって『Achtung Baby』、『Zooropa』、匿名的なアンビエントのサイドプロジェクト『Passengers』、そして'97年の『Pop』といったアルバムでサウンドの探求を決然として行なった。ただし『Pop』での実験的試みは満足できるような完成度ではなかったと、今では彼らも認めている。

『Pop』は米国でチャートの1位に初登場し、世界的にもヒットするなど成功を収めた。また続くPopMartツアーは、時には幻惑的なくらい圧倒的なヴィジュアルでスタジアムを制覇したのである。彼らはアルバムのキャンペーンで、ニューヨークシティのK-Martの店頭に登場することまでやった。Bonoによれば、彼とバンド仲間は'80年代後半にU2を取り巻いていたほとんど神話的なイメージを解体し、価値を低下させる必要を感じていたという。だが、これは「観客のユーモアのセンスを過剰に試してしまったかもしれない」と彼も認めている。

時には別のことに興味を持って追求したこともあったと思うな」と39歳のEdgeは付け加えた。彼は'92年のZoo TVツアーに参加した、ベリーダンサーのMorleigh Steinbergと結婚している。

それがロックンロールバンドとしての在り方の限界を広げてくれたこともあったし、極端なときにはバンドを解体して別の美学で再構築してしまうこともあったよ。『Achtung Baby』の時はインダストリアルミュージックの影響を受けたし、『Pop』の時はトリップホップとヒップホップだったね

『All That You Can't Leave Behind』で、僕らはとってもダイレクトなレコードを作ったと考えている。まったく策を弄せずに、あらゆる意味で骨格だけにそぎ落とされた作品なんだ」とEdgeは続ける。「だけど、このレコードが安全な作品だという印象は持ってほしくないね。違った形ではあるけど、これこそが僕らにとって非常に革新的なものなんだ。今度のアルバムでは、テクスチャーの数を押さえ、他の方向への広がりも控えて、シンプルさを保つことにフォーカスした。バンドそのものと音楽の要点だけに絞ってシンプルな形を目指すというアイデアは、バンドが一緒に演奏するのケミストリーを探求することでもあるんだ

それは、3月後半にマイアミでスタートしたU2のElevationワールドツアーのテーマでもある。現在ツアーは北米を巡っており、夏には欧州へと向かう予定だ。今回は'90年代のZoo TVやPopMartツアーで見られたようなスタジアムでのスペクタクルは避けた内容だが、Edgeが指摘するように「もちろん、カラーライトが2、3個の飾り気のない舞台だけなんてことはない」。実際、Elevationショウは'80年代におけるU2の呪術的な儀式にちょっとした視覚的なゴージャスさを加えたものだ。U2は1台1台がメンバー専用になっている4台のビデオスクリーンの下とビデオエフェクトが明滅する壁の前で演奏し、フロアには一般席の観客を取り囲むようにハート型の花道が伸びている。

正直なところ、前のツアーでは一部の曲がたぶん霞んでしまっていたと思う」と41歳のBonoは認めている。彼は先ごろツアー中のブレイクを利用して、4人目の子供の誕生に立ち会うためにダブリンに飛んで帰った。

今回はそんな事態にはならないだろう。スペクタクルではなくバンドを主役にしたショウだからね。でも何か特別なものにしたいことは確かだよ。お客さんがわざわざアリーナまで見に来てくれることを思えば、彼らをブッ飛ぶくらいに驚かせるのが僕らの仕事なのさ

Edgeはこの花道に特に満足しているようだ。フロアでの事故を防ぐ自然な仕切りとして機能するだけでなく、U2のメンバーもこれまで以上にオーディエンスへ近づくことができるようになるからである。

まるで僕が17、18歳のころにダブリンでギグに通っていたころのような状況なんだ。僕が思いだすのはバンドが演奏しているときに前へと押し出されていく肉体的な感覚なんだよ。何ものにも換えがたいことだね

再スタートできるという考え方が好きなのさ」と語るのはBono。「用意されているルートや過去に自分で用意しておいたルートをたどる必要もなくて、右へも左へも曲がれるし、まっすぐ行くこともできるんだ。おそらく唯一できないのは、じっと立ち尽くしていることだけだろうね

いずれにせよU2が立ち止まるという計画はない。Edgeによれば、Elevationツアーは今年後半にもう一度アメリカを回ることも含めて拡大される予定だという。だが、『All That You Can't Leave Behind』を制作したときの楽しさによってU2のクリエイティヴな炎が燃え上がり、メンバーは“スタジオに戻りたくてしょうがない”状態のようだ。

いまのところ僕らは年内でツアーを終えて、次のレコードを素早く制作するためにスタジオに戻れるようにするという方向にかなり傾いている。スタジオに入るときにはいつでも、前はあんなに完璧なレコードができたんだから、同じアルバムを作ろうとトライするんだ。もちろん、結局そういうことにはならない。だからこそ、その時々で次のアルバムを完成させることができたんだろうけどね。おそらく今回も同じ目的を心に描いて、スタジオに向かったり、曲を書き始めたりするだろう

結果は誰にもわからないよ。今回は本当に同じようなアルバムを作るかもしれないしね

By Gary Graff/LAUNCH.com

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