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“エレクトロニカ”と呼ばれるジャンルを築くアーティスト達

レディオヘッドのアルバム『KID A』『AMNESIAC』、そしてビョークの最新作『ヴェスパタイン』の登場により、かなりの幅広い層が耳にしたであろう“エレクトロニカ”というジャンル。

しかし、その“エレクトロニカ”という言葉が持つ音楽の意味を正確に伝えることができる人は数少ないだろう。
ただ、この言葉の響きからもわかるようにエレクトロニックの語尾に“a”を付けた言葉。大抵の解釈としては“電子音楽でのエクスペリメンタルな一面”というとこだろうか。

一般的に浸透してきたエレクトロニック・ミュージックが、その後更なる新しい衝撃と感動を求め、未だ見ぬ領域に挑戦する。
そんな謎だらけの解釈不能のジャンルだからこそ、“エレクトロニカ”に注目が集まるのだろう。

しかし、そんなジャンルに固執するべきなのか…。

良い音楽をカテゴライズするのはとても無意味なこと

レイ・ハラカミ最新情報

『trace of red curb』

Sublime Records 10月31日発売
IDCS-1007 2,100 (tax in)

1 unexpected situations (rh re-arrange)
2 the backstroke (rh re-arrange)
3 vapor/put off_I do it (Wechsel Garland remix)
4 red curb (Atom Heart remix)
5 led curve again
6 put off and other (Matsuo Ohno remix)
7 again (Okihide remix)
8 cape (rh rearrange)
9 red curb (Indopepsychics reflex)
10 lobe


レイ・ハラカミ、オリジナルステッカーを
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2001年夏には、<フジロックフェスティバル’01>や<くるりpresents 百鬼夜行2001>などのイベントに多数出演し、エネルギッシュなライヴ・プレイでジャンルを超えた多くの人の心に響かせたハラカミ・サウンド。

今回リリースされる『trace of red curb』は、前作『red curb』からのリミックスと彼自身のリアレンジ曲&新曲が収録されている。

ハラカミ氏の原曲をフルにいかしたリミックスはM4、Atom Heart Mix。初めはゆったりめの音響から「red curb」の旋律を細かく切ったような展開は原曲を崩さず、Atom Heartらしく絶妙な仕上りだ。
M7のOkihideリミックスも大胆なエレクトロニック音のビートと哀愁漂うメロディが絶妙だ。
また、他のリミキサー陣も先日来日したドイツ、エレクトロニカで話題のWUNDERことヴィクセル・ガーランド、テレビアニメ『鉄腕アトム』などを初めとした日本の音響技師、第一人者である大野松雄、さらに最近イベントで活躍するDJ Kenseiを初めとしたD.O.I.、NIKのユニット、Indopepsychicsと、個性溢れる人選だ。
しかし、原曲が独特な世界観を響かせるのでリミックスにはとても苦戦したようにも見受けられる。
また、最後に収められている新曲「lobe」も繊細且つ細かい響きとそれに対照的なゆったりと流れる時間が味わえるステキな一曲。

ハラカミ氏の次の作品も待ちきれない。

今回取材したイベント<extremes44>の為にドイツから来日した、ヴィクセル・ガーランドも“エレクトロニカ”に注目が集まる現象に一役買ったアーティストのひとりであることは間違いないだろう。

今回が初来日となるだけに、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみにしていた人は多かったとはずだ。原宿にある洋服のセレクトショップn44°主宰なだけに、ファッション好きの女の子が目立ち、アロマキャンドルの焚かれた会場は、いつものリキッドルームとは少し違った雰囲気に包まれていた。

最初に登場したのはレイ・ハラカミ。実はハラカミ氏のライヴを観るのは初めてだったが、始まるや否や、一聴してそのサウンドの虜になってしまった。まず初めに脳を叩きつけたのは、複雑で自由なリズム! それと同時にその上に心地よくのっかる美しいメロディ・ライン。先の展開が全く読めない変化球だらけのトラックに、心も身体もすっかり踊らされてしまっている。 大好きなアーティストの聴きなれた曲を期待するのもよいが、これだけ予測不可能なのはそれ以上に楽しい!!! 次は何がくるの!? どんな球が飛んで来る? 最初から最後まで、とにかく期待しっぱなしの裏切られっぱなし(もちろんいい意味で)。

ハラカミ氏の奏でる音楽もまた、エレクトロニカと呼ばれるが、彼の音を聴いていると、ジャンルというものが全く無意味に思えてくる。フリージャズ~ミニマルミュージック~カンタベリー・ロック、現代音楽.…彼が影響を受けたとされるどの音も、全てハラカミ・ワールドの中に消化され、まるで原形をとどめてはいない。残念だったのは、スタートということもあり、まだ会場の入りが鈍かったこと。私はこのライヴを体験して、一人でも多くの人にハラカミ氏の音楽に触れてほしいと心底思った。

こういったイベントには欠かせなくなった、DJ Kenseiのプレイを挟みつつ、Museum of plate~ASSEMBLER(竹村延和)とライヴは進行していく。

塚本サイコさんのユニットMuseum of plateは流麗なピアノがメインのサウンドで、彼女の創り出す世界もまた、フリーで独創的だ。

少し前はかなりノイジィなライヴを行なっていた竹村延和氏も、別名義ASSEMBLERでの今回のプレイは少し趣きが違ったようだ。トレードマークの長髪にスーツを着た姿は、さながら"音響系の貴公子"といった雰囲気。竹村氏のライヴに女の子率が高い理由は、こんなところにもあるのかもしれない。

そして最後にメインのヴィクセル・ガーランドが登場。

ヨハン・フォラー率いる、4人のメンバーがステージに登場。かな~り地味めに登場した彼らは、「“エレクトロニカ/音響系”のカルト的存在」という音楽各誌の表現が、とっても大袈裟に聞こえてくる。キーボードの前に座り、ゆっくりと歌い出したヴィクセル・ガーランドの姿は、あまりにも自然体でこちらが拍子抜けする位だった。

エレクトロニカという言葉とは裏腹に、ヴォーカルや生演奏を多用したり、あくまでもアナログなライヴ演奏。来日以前の評判ゆえに、見る方も特別な"何か"を期待していた様な気がするが、彼らの音は初めから"自然体"だったのだ。

エレクトロニカという言葉が定着する遥か前から、独ケルンにはそういったシーンが存在していた。その中でケルン出身のアーティスト達は、ごくごく自然にそれを取り入れてきたのだと思う。それが"オーガニック・エレクトロニカ"と呼ばれる所以であり、普段のさりげない生活の中から、彼等の音が生まれ、溶け込んでいくのだろう。

妖艶な女性ヴォーカルの歌声は、いい意味で力の抜けた大人っぽさがあり、機会があれば今度ゆったりとおいしいお酒と食事を楽しみながら、彼等の演奏を聴いてみたいと思わせた。特別な"何か"を期待するのではなく、今度はさりげない日常の中で彼等の音を楽しんでみたい。

これからも“エレクトロニカ”という言葉を様々なシーンで見たり、聞いたりするであろう。しかしながら、エレクトロニカとはあくまでも手法であり、このライヴ・イヴェントを通じて良い音楽をカテゴライズするのは、とても無意味なことに感じた。特別な気負いなく純粋に“音”を楽しみたい。そんな基本的な衝動を思い出させてくれた今回のイベント。“KEEP TO THING SIMPLE”、音を楽しむことは、ほんとにシンプルで、自然な行為なのである。

文●三島珠美枝(Bonjour Records)


about Wechsel Garland(ヴィクセル・ガーランド)

ヨルグ・フォラー率いるプロジェクト。日本ではWunder(独語読みでヴンダー)として多くの人に知られる。

'98年に独ケルンのレーベルKaraoke kalkから 1stアルバム『Wunder』をリリース。当時、日本には数枚しかレコードが入ってこなかったが、後にエレクトロニカや音響、そしてドイツの音楽が注目されるようになり、1年後には一気にその名が知れ渡る。

ケルン・シーンは、ケルン派の父・シュトックハウゼンが試みた実験性と、ポップな“今”の気分を軽やかに融合させ、“プチエレクトロニカ”又は、“オーガニックエレクトロニカ”と呼ばれている。

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▲ヨルグ・フォラー
そんなシーンの中においてもWunderサウンドの不思議な佇まいは、飛びぬけており、世界中から大反響を得た。

また、'01年にはWechsel Garland名義で2ndアルバムがリリースされ、このアルバムからメンバーが増え、更ににアコースティックな部分をより多めに効かせている。

また、リミキサーでも活躍し、Silent Poets、朝日美穂他、Chidl's View、そして最近ではレイ・ハラカミの新作『trace of red curb』にもリミックスを提供している。