戸惑い、喜び…知られざるエピソード満載VTR!

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戸惑い、喜び…知られざるエピソード満載VTR!

ビデオを観ることによって再認識させられる事実

最新映像作品

クラシック・アルバムズ:アイアン・メイデン/ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト(VHS)

VIDEOARTSMUSIC VAVG-1098
2002年2月27日発売 3,990(tax in)

【収録曲】
魔力の封印
アカシア・アベニュー22
ザ・プリズナー
吸血鬼伝説
誇り高き戦い
侵略者
審判の日
トータル・エクリプス
鋼鉄の処女
オペラの怪人
3月15日
ほか

【出演】
エイドリアン・スミス
デイヴ・マレー
スティーヴ・ハリス
ブルース・ディッキンソン
クライヴ・バー
マーティン・バーチ
ロッド・スモールウッド
デイヴ・ムステイン
ほか




※より鮮明に、そしてリアルな映像を観たい方はぜひ「Broad Band Barks」のコーナーへ!!!
ブロードバンド対応の大画面で観ることができます。

デビューからすでに22年。

その22年間を常に第1線で走り続けて来た実績は、もちろん凄いが、それ以上に評価すべき点はアイアン・メイデンがヘヴィ・メタルというジャンルを定着させた貢献力だと思う。

レッド・ツェッペリンディープ・パープルが70年代の音楽市場にハード・ロックというジャンルを根付かせたように、アイアン・メイデンも'80年代以降の"へヴィ・メタル"をリードし続けた意味ではツェッペリン、パープルと同次元で語られるべき存在のアーティストのはずだ。

本『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト』はバンド歴、メタル・シーンの双方の観点から捉えても代表作というべきアルバム『ザ・ナンバー・オブ・ザ・ビースト/魔力の刻印』のアンソロジー・ビデオだ。今ではすっかりオリジナル・シンガー然としたイメージのあるブルース・ディッキンソンにしても、この『ザ・ナンバー・オブ~』がメイデン初加入のアルバムだった。そうした当たり前のようで、ビデオを観ることによって再認識させられる事実も少なくない。

冒頭、ブルースは「ザ・ナンバー・オブ~」のソングライトを例えに出して、バンド加入時の戸惑いを語っている。ホラーっぽい歌詞の世界はブルースにとって未知の世界だったことが、ここで明らかにされる興味深いシーンだ。

一方、ブルースを迎え入れたメイデン・サイドにとっても、『ザ・ナンバー・オブ~』がターニング・ポイントとなった。バンドのリーダー、スティーヴ・ハリスは「
ステップ・アップをするためにはシンガーの交代が必要だった」と語っている。そう、メイデンの初代ヴォーカリストはポール・ディアノ。ポールは『鋼鉄の処女/アイアン・メイデン』('80)、『キラーズ』('81)と2枚のアルバムに参加後、バンドを去っている。スティーヴは「1stと2stで書き溜めておいた曲は全て使い果たし、3rdでは新たな曲作り、スタイルを開拓しなければならなかった」と語る。ともすれば、パンキッシュで荒削りな印象を抱かせた初期2作からの脱皮、スティーヴはそのことを念頭に入れ、ブルース加入を決め、『ザ・ナンバーズ・オブ~』の制作をスタートさせた。

ところで、本ビデオでは『ザ・ナンバーズ・オブ~』誕生のエピソードを綴ると同時にそこに辿り着くまでのヒストリーもフォローされている。

ポール・ディアノ時代のレア映像を交えつつ、当時のメイデン、へヴィ・メタルを取り巻く環境も浮き彫りとする部分も見どころのひとつだ。中でも、メイデン加入前、彼らと同期のメタル・バンド、サムソン在籍時のブルースのパフーマンスはちょっとしたお宝映像のはず。

そして、その当時のエピソードを育ての親であるマネージャー、ロッド・スモールウッドが語る部分も説得力があり、興味深い。さらにブレーンについて言えば、プロデューサー、マーティン・バーチのコメントも見逃せない。マーティンはかつてディープ・パープルの『ライヴ・イン・ジャパン』(洋盤)や『嵐の使者/スートームブリンガー』を手掛けた敏腕プロデューサーでメイデンとは『キラーズ』が初仕事。そんな彼が『ザ・ナンバーズ・オブ~』のレコーディングの際、“
何故、もっと早く、自分に仕事のオファーが来ないのか!!”とヤキモキしたエピソードはちょっと微笑ましい。と同時にいかに当時のメイデンがクリエイターとしても魅力的だったのか、垣間見れる。

自信作『ザ・ナンバーズ・オブ~』リリースと共にメキメキ頭角を現すメイデンは、これを契機にアメリカ進出も果たす。積極的なライヴ活動でファンが急増した時は彼らも人の子、ハメを外してかなり“イケナイ遊び”もしたブルースが照れくさそうに告白(?)する場面もあったりする。

ただ、ツアーの秘密兵器として特に力説しているのが、メイデンのマスコット・モンスター、エディについて。『ザ・ナンバーズ・オブ~』とほぼ同時期にステージ・デビューを果たしたエディ。

そのインパクトはブルースをして“
コイツは一体何者だ!”と絶句させるほどのインパクトがあったという。そして、スティーヴは「今後はエディにもインタビューするべき」と結ぶところもジョークたっぷりで面白い。とは言え、モンスター、エディの存在やホラーちっくなバンドのイメージ故、周囲からは(特にアメリカ)悪魔崇拝者としてのレッテルを貼られアルバムを燃やされたと苦々しいエピソードも明かされる。

ともかく、メイデンは『ザ・ナンバース・オブ~』の成功で彼らを取り巻く環境が一変、マネジャーのロッド・スモールウッドの言葉を借りるなら「
ブリティッシュ・へヴィ・メタルのメイデンから世界のメイデンへと急浮上した」、その大出世の戸惑い、喜びがこのビデオには良く現れていると思う。

そして、そのメイデンに憧れて自分も同じ世界に入ったメガデスのデイヴ・ムスティン、さらには『ザ・ナンバーズ・オブ~』を最後にバンドを脱退したドラマー、クライヴ・バー(懐かしい~)らのコメントも紹介されているので、彼等のファン問わず、メタル・マニアならば一見の価値は充分だ。

奇しくも今年は『ザ・ナンバーズ・オブ~』リリース20周年に当る年。この際、メイデン、さらにはメタル史においても最高傑作とされる名盤とじっくり付き合ってみるのも意義のあることだと思う。

北井康仁/YASUHITO KITAI

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