【特集メタリカ】第2部 ジェイソン脱退、ジェイムス入院──そして新生メタリカへ

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ジェイソン脱退、ジェイムスの入院、ナップスター訴訟……
解散の危機を乗り越えた、メタリカの“聖なる怒り”とは?



発売2週目にして、オリコン・アルバム・チャート1位を獲得した『セイント・アンガー』。
11月には来日公演を果たす彼らのロング・インタヴューが到着した。
ジェイソン脱退、そしてバンド内の亀裂、ジェイムスはアルコール依存症で入院……
解散という文字がよぎる。彼らはどのようにバンドを建て直し、そして周囲の予想を裏切り、
会心の傑作アルバムを作り上げたのだろうか?
米LAUNCH.comのロング・インタビューでその核心に迫る。

第1部 バラバラになっていくバンド……、メタリカ解散の危機    6/19掲載
第2部 ジェイソン脱退、ジェイムス入院──そして新生メタリカへ 6/28掲載
第3部 今、振り返るナップスター訴訟、そして『St.Anger』を語る  7/5掲載

ジェイソン脱退、ジェイムス入院──そして新生メタリカへ

最新アルバム


『ST.ANGER』

Sony Music Japan International
SICP-373 /4 3,150(tax in)

01.FRANTIC
02.ST. ANGER
03.SOME KIND OF MONSTER
04.DIRTY WINDOW
05.INVISIBLE KID
06.MY WORLD
07.SHOOT ME AGAIN
08.SWEET AMBER
09.THE UNNAMED FEELING
10.PURIFY
11.ALL WITHIN MY HANDS





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──一連の個人的な変化は、新譜に反映されていますか?

JAMES:あぁ、個人的に、あるいはバンド全体で乗り越えてきた変化のすべてがね。復帰する時、俺はこの雰囲気にまた足を踏み入れることにかなり不安を抱えていた。シラフのままでいられるだろうか。昔とは違う俺にとって、それはどういう意味を持つんだろうか。しかもツアーを控えていたから、それも不安だったんだ。そんな恐怖心を吐き出す、つまり話をするのは良いことだった。何を考えていたんだろうな、俺は。人が俺の考えを読みとってくれるとでも思ってたんだろうか。コミュニケーションてやつが、俺にはなかったんだよ。人と繋がるのは苦手だった。歌詞なら吐き出せたんだけどな。以前の歌詞を振り返って読んでみると、自分の言いたかったことが改めてわかる。今回(『St.Anger』)の歌詞はというと、みんなで話をして、お互い腹を割って、弱いところも曝け出したことで俺たちは不思議と強くなっている。自分たちに対して、よりオープンでいられるようになった。ブラック・アルバム(『Metallica』)以降、歌詞的には内側に向かっている自分を俺は感じていたんだ。人間の破綻ぶりに共感する、というかね。今はBobも含めて全員で歌詞を書いている。リフのひとつも、これからやろうとしていることのアイディアを書きとめたもののひとつもない状態で集まるんだ。そして、「どうだい、ここの音響は? とりあえずジャムってみようか」って感じで演奏を始め、その瞬間を形にしていく。どんな曲にするべきか、なんていう想定はなしでね。『St.Anger』は何もないところから組み立てていったんだ。エゴもなければ、結果にもあまりこだわらなかった。良いものにしたいとは思っていたが、とにかく自由に、自然に自分たちの感情を露呈したのがこれなんだ。

KIRK:いつもとは勝手が違ったよ。どう言ったらいいんだろう、変な気負いがなかったのに、音楽を書こうという切迫感はあったんだ。自分たちの関係がどれだけ脆くて、すべてが崩れ去るカオス状態にどれだけ近い状態にあるかを悟ったからさ。30秒先は涅槃か、はたまた黄泉の国かって、俺たちは昔よく言っていたけれど、それがわかったから俺たちは今を大事にすることを覚えたんだよ。スタジオにいる間中ずっと、バンドの将来のためにも俺たちの将来のためにも、そのこと(バンドの絆がほどけること)がいかに致命的であるかを思い知らされていた。だから、曲を書く時は常に全力を注いだんだ。翌日には何もかもダメになってしまうかもしれないということを知ったからね。そんな切迫感が曲作りに油を注いだ。そして終ってみれば、25曲も書けていた。ずいぶんと色々な意味で曲作りの様々なプロセスに気合を入れてもらったことになるな。



──Larsは、初期の作品の多くはネガティヴなエネルギーに触発されていたと言っていましたが、あなたもそう思いますか?

JAMES:Metallicaがどちらかというと人間の持つネガティヴなフィーリングを燃料としていた、というのはその通りだと思う。自分はまだまだだっていう、俺たちの完璧主義者的な部分がそうさせたんだ。それが次へと俺たちを駆り立てた。振り返っては「あぁ、最高だったなぁ」とか、「すごかったな、おまえ気合入ってたぜ」なんてよろこんではいなかった。素晴らしくあることが、完璧であることが当たり前だったんだ。だから、何か不足があると目立ってしまう、目が行ってしまう、そして次なる場所へと俺たちを駆り立てた。そういう考え方に立ち返ることも、もちろんできるけど、今は前向きになっているんだ。例の『MTV Icon』ってやつをつい最近やったんだが、あんなお褒めにあずかるなんて、今までだったら考えられなかったことだよ。子供の頃から俺たち自身、あの手のものには馴染みがなかったからだろう。Metallicaの素晴らしい実績を振り返って認識し、それを励みに前進していくこと、そして、こういう最高のアルバムを俺たちは書けるんだと自信を持つこと、そういう信頼を糧に、電池のプラスの方を使って進んでいく。まぁ、どっちにしたってエネルギーにはなるわけだから、これで俺たちはパワーが2倍になったってことだな。

LARS:今回の新譜で俺が一番誇りに思っていることのひとつが、自分たちだけじゃなくて、周囲の人間にも証明して見せられたってことでね。本当に攻撃的で怒りに満ちた、ダイナミックで荒々しいとんでもないレコードなんて、バンドのメンバーが仲良くしていたんじゃできっこないと思っている人が多かったんだ。意思の疎通がうまくいっていて、友情も、敬意も、愛情も、そういうものがバンド内に全部揃ってたんじゃ、ダメだろうって。とんでもないレコードを作るには、バンド自体がとんでもない状態でなければと自動的に推測してしまう人が多いんだな。ところが俺たちは、20年という自分たちのキャリアの中でも、最もポジティヴなレコーディングを1年間に渡って体験したんだよ。実際、俺はまさにこの部屋に来るのが毎日楽しみでしょうがなかった。アイディアや、自分の思いや、感じていることを分かち合いたくてね。そんなプロセスのすべてがどんなに特別なものか、それを心から感じたし、ありがたいと思ったんだ。これが3年前、5年前、10年前だったら、朝起きたら最悪の事態に備えるような感じでさ。これから向こうで14時間も山積みの問題や議論や喧嘩や、そういうくだらないことに対処しなきゃならないんだ、少なくとも50%は俺の意見が通れば、それで今日は上出来だな、なんて思いながらね。だから、状況は改善されたんだよ。マネージャーやバンドに近い人間の中には、お互いを尊重してオープンに話をしているようでは、攻撃的で残忍な要素やサウンドや感情を持ち合わせたレコードが作れるんだろうかといぶかっていた者もいるけれど、可能なんだってことを俺は言いたい。俺はそのことを本当に誇りに思ってるんだ。

KIRK:Larsの話はたぶん、クリエイティヴな作業に入ると俺たちはいつもネガティヴなエネルギーを燃料としていたっていう意味だと思う。しかるべき次元でコミュニケーションすることが、俺たちはできていなかったからね。自分の気持ちを口に出したり、互いに素直になったりする能力に欠けていたことが、色々と嫌悪感を生んでしまったんだ。そして、その嫌悪感が、すなわちネガティヴなエネルギーなんだよ。部屋の中に嫌悪感がしきりに漂っていれば、それはネガティヴだ。で、そのネガティヴさこそ、俺たちが音楽に注ぎ込んでいたものなんだ。原動力だったんだよ。でも、そのうちしわ寄せがきた。決して健康的なことじゃなかったからね。最終的には素晴らしいアルバムができるんだけれども、俺たちの関係はその犠牲になってしまった。そんなことを長年続けた挙げ句、俺たちはもはや興味を持てなくなっていったんだ。

──James、もしこのバンドにいなくても、あなたは同じような問題に直面していたと思いますか?

JAMES:やっぱりあったと思うよ。でも、バンドにいると何につけ大袈裟になってしまうんだ。カメラの前に曝すことになるわけだから。それに、音楽やライヴパフォーマンスのことで批判を受け、実は自分らの頭の中に最悪の批評家を抱えている。世間が俺に対して厳しいといっても、俺は自分にもっと厳しいんだから、世間は俺に何を言ってもやりこめることはできないだろう。俺たちはいわば、失敗できない状況に追いやられていたんだ。俺の場合、家に帰れば、「もっといい父親になれるはずなのに」とか、「あ~あ、この家、手入れしなくちゃな」とか思う部分もあって、常にそんな調子だった。気を楽にして、自分で何でもやらなくてもいいんだってことを悟らなければいけない。何でも知っていなくてもいいんだし、今の俺のままでいいんだってことをね。

──:Jasonの脱退や、Jamesがリハビリを決心したことは意外でしたか、あるいはホッとしたんでしょうか?

LARS:どっちの場合も、つまりJasonが脱けた時もJamesのリハビリに関しても、後から考えればもちろん兆しはあったんだよな。それも明らかなやつが。Metallicaで必死に毎日を送っていた時は、脇見をしないように目隠しされて、勝つことばかり考えていたから、そんなことには気づきもしなかった。でも、Jamesが入院すると口にした途端、「そう言えば、'96年のあの時」とか、「あの歌詞はそういうことだったのか」と思い当たることがあった。すべてがつながったし、それはJasonについても同じだったんだ。むしろ後から考えて意外なのは、侮辱するつもりはないけれど、Jasonが14年も続いたのは驚きだと思う。その14年間の大半は、あいつはたぶん不満だったんだろうから。自分たちがあいつの不満の原因にどれだけなっていたのか、俺たちは気づいていなかったし、目が眩んでいたから反省することもなかった。「辞めるよ」とあいつが言って、初めてそれに気づいたんだ。「俺たちが辞めていいって言ってないのに、辞めることはできないぜ。辞める許可は出していないぞ」と自分で言って、はたと思い当たったんだよ、管理とか、俺たちのしてきたこと、俺やJamesがこのバンドをどう運営してきたか、そして、あいつをいかに疎外してしてきたところがあるか。俺たちはあいつを追い詰めていたんだ。Metallica内部であいつを追い詰めておきながら、Metallica以外では何もしてはいけないと申し渡してもいた。だからあいつは、虚無の淵で身動きできなくなっていたんだよ。ついにあいつが、こういうレコードがあって発表したいと思っている、と言い出したら、Jamesが食って掛かって、そんなことはできないと怒鳴りつけた。あれが最後通牒になったんだ。あの出来事、つまりJamesとJasonの口論があったのは、あいつが脱退する6ヵ月前のことだったから、いずれそうなるだろうと俺にはわかっていた。
 Jamesの件は少し意外だったよ。'01年の夏、アルバムに向けての最初のセッションに入って2週間ぐらい経ったところで、ある日、部屋に入って来たこいつが、「入院の手配をしていたところに、ようやく入れることになったんだ。だから俺は席を外すよ」って言い出したんだから。文字通り、それだけ。そしてこいつは部屋を出ていった。残された俺たちは「で、今日はあいつ、何時から歌うんだ?」なんて話していたという、何とも奇妙な状況だった。もちろん、それから数日のうちに、けっこう早くすべてが立ち直ったけどね。あの件は、どちらかというと予想外だったな。後から考えれば辻褄は合うんだけど。

KIRK:どっちもちょっとずつって感じだったな。俺たちの誰もちゃんと気づかないうちに、そこまで悲惨な状態になっていたというのは驚きだったけど、酒の入ったJames Hetfieldが突拍子もなくなるのは事実だったし。楽しそうにしてるかと思うと実は落ち込んでいたり、酷いことになっているのかと思うと最高に楽しいと触れ回っていたり、どこか読めないところがあったんだ。アルコールが抜ければ、すごく安定したJames Hetfieldがそこにいるのに。今度のことは、俺たちみんなが歓迎したはずだ。今のJamesはうんとクリーンになっただけじゃない、理解があって、愛情深くて、人の話もよく聞いてくれるし、今までとは全然違う次元で主張もする。昔から彼を知っている人が会ったら、おぉ、Jamesは別人になったな、と思うに違いない。温かみがあって、オープンで、フレンドリーで。そういうところがあるやつだって、俺は前から知ってたけど、あんまり見せない部分だったんだよな。少なくとも、世間の目に触れることはなかった。Jamesは、というか俺たちみんなそうだけど、当時は表向きのイメージに覆い隠されてしまっていたからね。今のJamesはずっと人間らしくなったよ。偉そうなことを言うのは俺の主義に反するから嫌なんだけど、それが俺に思いつく最適の表現だ。ずっと人間らしくなったし、それは話をしてみれば、実際に会ってみればすぐわかる。話し方にも振る舞いにも、考え方にも如実に表われているからね。まったく、びっくりするよ。

By Dave DiMartino (C)LAUNCH.com

●第3部完結編(7/5掲載予定)に続く……

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