【BARKS編集部レビュー】50セント・プロデュース、STREET by 50 DJの真価

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私はDJではないので、片耳だけハウジングがずれる必要もないし側圧がそんなに強い必要もないのだけれど、DJ用という触れ込みだけで“自分には縁のないモデル”と疎遠になってしまう人が相当いるのではないか…そう思ってのご紹介だ。というか、実際自分がそうだったので。偏見というのは本当に出会いのチャンスを反故にする悪しき習慣だよなあ…という反省の意も込めて。

◆STREET by 50 DJ画像

▲STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones。こちらのカラーはシティ・グレイ。

▲ヒンジ部分は、折れ/回転/伸びとマルチな動きをするが、頑丈に作られており堅牢性は十分と思われる。

▲イヤーパッドは低反発のふかふか。

▲付属品は、ハードシェル・キャリーケース、クリーニングクロス、ケーブル2本、金メッキ製ステレオ標準プラグアダプター、取説他。

このヘッドホンは米SMS Audioのフラッグシップ、STREET by 50 DJ Pro Performance Headphonesである。CEOの50セントは「音楽は私の情熱であり、リスナーには最上のオーディオ機器を提供することが重要である」と明言する。SMS Audioの社名は「Studio Mastered Sound」を由来とし、スタジオ録音された音源を忠実に再現できることをコンセプトにしているという。

私がSMS Audioを知ったのはかれこれ2年前。かの50セントのプロデュースによる新ブランドということで、SMS Audioに強い興味を持ち、ワイヤレスでもノイズキャンセラー付でもない、最もスタンダードなオーバーイヤータイプSTREET by 50 OverEarを手にした。極めて強いドンシャリサウンドに対し、私は「現場主義のアイテムであり、オーディオリスニングというよりもヒップホップ/クラブ文化に根ざした個性あふれるサウンドを最大の魅力とするブランドなんですね」と、SMS Audio自体をざっくり認知してしまった。一部のギタリストしか分からない例えだけど、マーシャルでもフェンダーでもメサでもなく、その音はまるでDiezel VH-4やBogner Uberschallのようなミッドをがっつりカットしたウルトラゲインの激烈ドンシャリ・チューニングだったのだ。非常に魅力的だが一部特化の個性派と言うべき、汎用性に欠けるピンポイントな魅力で勝負するサウンドに聞こえたというわけだ。

そんな印象を持っていたので、さらなる現場特化と思しきDJモデルとあれば、STREET by 50 DJは、高い遮音とともにキックのビートと金物の刻みをきっちりと組み上げるド派手チューニングですよね?と勝手に判断、リスニングにはちょっと厳しいものと敬遠していたというのが本音だった。

ずいぶんと前置きが長くなってしまったけれども、オフィシャルサイトに掲げられている「音質は低中域に寄ることなく高域までバランス良く調整され、クリアで迫力のあるサウンドが楽しめます。」という説明に虚飾はなかった。偏見だらけだった私の目線から言えば、意外にもSTREET by 50 DJは、耳に痛くないチューニングが施された、素晴らしいリスニングモデルだった。むしろトーンは落ち着いたもので、派手な演出はどこにもない。

超高域まで音はしっかり再生されているのは確認できるのだけど、どっしりとしたトーンに聞こえるのは、1.2Khzあたりの中域の押しの強さにポイントがあるようだ。お陰で、聴き疲れせず高い没入感に身を委ねることができる。耳へのいたわりを欠いてはいけないけれど、ボリュームをクイッと上げ大音量で楽しむと、ストレスなく自然に身を任せられる心地よさに包まれる。この感覚は、クラブイベントやライブパーティーでの爆音サウンドの心地よさとちょうど同じものだ。

側圧は強いが、イヤーパッドがもっちもちのふっかふかで、超厚ホットケーキのような質感が気持ちいい。耳介全部をもふっと覆うように密着するので完璧な遮音を生み出すが、パンケーキ級の柔らかさのため、痛みは最小限に抑えられる。筐体はそれなりの重量があるけれど、その分堅牢性は高く、運搬時の折りたたみ機構やDJ時の片耳モニターを実現するハウジングの回転といった可動部分も非常にしっかりしており、危なげなところが一切ない。DJという過酷な現場でもトラブルを起こさないために、安全係数を一桁上げての設計/製作であろう安心感が嬉しい。家庭での使用ではオーバースペックな気もするけれど、ぞんざいな扱いでもびくともしない頼もしさは末永く愛用するにも大事なことだ。

ハウジングには左右どちらにも入力端子がついており、ケーブルは左でも右でも好きな方を使うことができる。この辺りも現場主義の設計によるものと思われるが、どちらもつなげて2つの音源を同時入力することも可能となっている。通常のリスニングでは想定外の機能だけれど、余ったジャックに別のヘッドホン(イヤホン)をつなげれば、同じ音楽をふたりで共有することもできる。いわゆるデイジー・チェーンという使い方だが、ラブリーなリア充男女が電車などでいちゃいちゃお楽しみいただければこれ幸いだ。

見た目やカラーリングは好みの問題だけど、しっかりとした作りと高いデザイン性、その上で気をてらぬサウンドを持った密閉型というと、意外に選択肢は広くない。Beats by Dr.DreやSOUL by Ludacrisに飽きたらないマニアはもちろん、他の人たちと同じ人気モデルは嫌だなというこだわり屋さんであれば、このSTREET by 50 DJは最初にチェックすべきモデルの筆頭だ。ブランドイメージは悪くないし、何より音がいい。

唯一、個人的に嫌だなと思ったのは、付属のメインケーブルだ。2本付属するケーブルのうち、DJプレイに最適というカールコードは、むしろクールでイイと思ったが、iPhone対応コントローラー付きの青いケーブルが、頑固な癖がついたまま真っ直ぐに伸びてくれない。青いカラーが非常に目立つこともあり、ヘッドホンからぶら下がっているビビッドなブルーケーブルがぐにゃぐにゃと癖がついた状態で空を泳ぐのは非常にダサいと思うのだけど、どうなのでしょう。お湯につけたりドライヤーを当てると癖が取れるという噂もあるけれど、保証外のおイタはしたくない。できればこの厄介な癖は改良して直して欲しいなあ。ケーブルはノーマルな3.5mmステレオミニプラグなので、ケーブル交換も簡単なんだけどね。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●STREET by 50 DJ Pro Performance Headphones(DJ用オーバーイヤー)
本体価格:34,560(8%税込)
・ドライバーサイズ:40mm
・ドライバーユニット:ダイナミック型
・ハウジング:密閉型
・ケーブルタイプ:マイク・リモコン付き着脱式ストレートケーブル(1370mm)、着脱式コイルケーブル(最短約1470mm)
・プラグタイプ:金メッキ製ステレオミニプラグ(3.5mm)
・リモコン機能:再生・停止・選曲スキップ、通話切り換え(ボリューム調整なし)
・カラー:シャドウ・ブラック、シティ・グレイ
・質量:360g(本体のみ)
・付属品:ケーブル(2種)、金メッキ製ステレオ標準プラグアダプター(6.3mm)ハードシェル・キャリーケース、クリーニングクロス


◆STREET by 50 DJ Pro Performance Headphonesオフィシャルサイト
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル
◆BARKSヘッドホン・チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆AK240×カスタムIEM(2014-03-16)

■RHA MA750(2014-03-09)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)

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