【BARKS編集部レビュー】カスタムIEMの売れっ子、1964 EARS V6-Stage一番人気?のワケ

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2013年8月に発表されるや否や世界的に大人気となり、ここ日本でも高い人気を誇るモデルが、1964 EARS(Nineteen Sixty-Four Ears)のV6-Stageだ。現時点でも、おそらく最も人気の高いカスタムIEMのひとつなのではないだろうか。

◆1964 EARS V6-Stage画像

もちろん人気の高さには明確な理由がある。ルックスと使用感、サウンド、価格と、人気条件がおいしく揃いすぎているからだ。

(1)なにしろ美しいシェルと装着感のよい丁寧な作り
(2)万人に受け入れられるであろうわかりやすいトーンバランス
(3)相場よりグッと抑えられた嬉しすぎる価格設定

▲1964 EARS V6-Stage。

まるで、文武両道を体現した優しくて気さくなイケメンみたいな存在なのである。そりゃ、モテモテやろ。

現在1964 EARSでは、V2、V3、Qi、V6、V6 Stageという5つのラインナップが用意されており、V6-Stageがフラッグシップに位置づけられている点も人気を訴求させる大きなポイントと思われる。というのも、ことカスタムIEMにおいては、各ブランドの最上位機種に人気が集中する傾向があるからだ。

カスタムIEMに食指を動かすオーディエンスの多くが、市販されている高級イヤホンに飽きたらなくなったマニアだったりすることもあり、「どうせ手に入れるのであれば、これまで手にしたことのないハイスペックを試したい」という心理が働いたりもする。一方で、カスタムIEMは試聴環境も少なく、そもそも“試聴機”と“耳に完全フィットしたカスタムIEM”ではサウンドの違いが生じ、実際のところ手にするまではどんな音か分からないという現実もつきまとう。であればこそ、最初から各ブランドのフラッグシップをオーダーし、確実に最上位サウンドを狙ったほうが間違いないだろうとも考える。至極真っ当な感覚だ。

事実V6-Stageは、初めてのカスタムIEMとして指名されることが多いカスタムIEMだともきく。もちろん重要なのは、そうして手にした多くの人が実際に高い満足を得ている事実だ。それが現在の高い評価を保ち続けている礎にほかならない。

▲UE900(左)からでもIE800(中央)からでも、V6-Stageへのステップアップは充足感に満ちたひとときを味あわせてくれるだろう。

V6-Stageのサウンド設計は実によく考えられており、市販されているどの高級イヤホンから手にしても、「これはいい」と思わせる絶妙なバランスを持っている。ゼンハイザーIE800よりも中域の透明感をもち、低域の量感と深さも上回っていれば、「これは凄い」と素直に感動できることであろうし、何より高い遮音性とケーブルのタッチノイズのなさは好印象をさらに加速させることだろう。また、イヤーチップというサウンド面で不安定な要素から逃れられないSHURE SE846ユーザーからすれば、全域がクリアに聞こえるカスタム・シェルの使い心地と安定感に感銘を受けるのではないか。一方で、Ultimate Ears UE 900のユーザーであれば、全体のバランスは変わらぬとも全域のクリアネスの向上が、自分の耳型に合わせて作られたカスタムならではのアドバンテージであることを実感するはずだ。

▲美しいシェル、フィット感のいい装着感に淡麗なサウンド。V6-Stageに欠点は見当たらない。

▲比較してみた6ドライバー群。左から1964 EARS V6-Stage、カナルワークスCW-L51a、LIVEZONER41 LZ12、Stage93 Stage 6、Ultimate Ears 18 Pro、earmo Shake 1122。

▲付属品はペリカンケース、クリーニングツール、アダプタ、ケーブルクリップ、取説、ステッカー。

V6-Stageのサウンドを簡単に表現すると、“鮮明な中高域とタイトながら量感ある低域が共存”した、“誰もがイイ音と感じてくれる非常にわかりやすいトーン”だ。まさに使用者を選ばない優しいカスタムIEMといえる。軽快で美しいサウンドなので第一印象も良く、好印象はそのまま末永く続いていく。素晴らしいバランスは不平不満を生まないので、高い満足度を保ったままV6-Stageの評価は安定し、人気モデルとして今後もヒットを続けることだろう。

V6-Stageを究極の一本として愛用し続ければ何の問題もないが、中には「カスタムすげえ」とカスタムIEMスパイラルに新突入する輩も出てくる。問題はここからだ。V6-Stageの場合、極端な癖や強い特徴がない点は、良い所でもありつまらないところでもあるわけで、もっと個性を…という嗜好に至ると、どえらいスパイラルに迷い込むことになる。言ってみれば、素晴らしいバランスモデルなだけに、もっとやんちゃなサウンドや主張あふれる刺激も欲しいなと、興味・知識欲を刺激しやすいキャラでもあるのだ。

あえてネガティブな視点でV6-Stageを追求してみると、聴こえのいい低音は120Hzあたりをピークに持つことで演出されたもので、80Hz以下の極端な重低域が苦手なことを感じさせない巧みさがあることに気付く。軽いトーンは良く言えばキレとメリハリがあるサウンドであり、悪く言えば重厚さに欠けるものと言え、ディープで濃厚なサウンドへの興味が尽きなくなると、V6-Stageで表現できないモデルへの興味が増殖してしまう。

ちなみに、横並びのスペックとして6ドライバーに限って言えば、低域をタイトにスピード感を増し、中域の表現力を求めたければカナルワークスCW-L51aがいいだろう。もっと高域を鮮やかにシズル感たっぷりなブライトさを求めつつ、超重低音もちゃんと出してほしいと願うならばLIVEZONER41 LZ12がばっちり望みを叶えてくれる。レンジをさらに拡大し、元気でパワフルなドンシャリ傾向に楽しみたいと思えばStage93のStage 6が一押しだ。逆にスッキリではなく濃密なトーンでみっちりとサウンドに埋もれたいと思うのであればUltimate Ears 18 Pro一択となる。分離は良くないものの解像度は高く、渾然一体となったトーンの魅力は18 Proの独壇場といえる。もっともっと個性派を求めるのであれば、中域に独特のピークをもったラジオトーンのようなサウンドを聞かせるearmo Shake 1122という選択もある。一聴してレンジの狭い音に感じるものの、実は広帯域をカバーする変わり種だ。

最後に、シェルの美しさについて。1964 EARSの高い評価のひとつに造形スキルの高さがある。シェルは極端に綺麗で装着感も申し分のない最高レベルのクオリティを誇っている。シェルの厚さが非常に薄く作られているのが特徴的で、透明度がひときわ高く見えるのは、この薄さが大きく寄与している。一方で、その分遮音性が多少なりとも犠牲になってしまっているのではないかと懸念するポイントでもある。もちろん個体差もあることなので、1964 EARSの一般論として語るべき事象ではないが、私のV6-Stageに限って言えば、完璧なフィットを見せているにも関わらず、外音はシェルを突き抜けてそれなりに鼓膜へ届いてしまう。

短絡的に「シェルの透明度と遮音性はトレードオフにある」とは言わないものの、シェルの薄さは堅牢性のみならず、遮音性能を左右するかもしれない程度に知識として持っておいて欲しい。

カスタムIEM選びはとにかく大変だ。先に述べたように、厳密な意味で試聴が意味をなさない。出たとこ勝負というか、気にいるか気に入らないかはオーダーしてみないと分からないという博打要素がつきまとう。だからこそ、多くの人から評価されているという事実は、何よりも大きな説得力だ。「よく分からないけど音のいいカスタムIEMが欲しい。もちろん後悔したくない」という人にこそ、V6-Stageがベストチョイスだ。オーディオは主観の塊だけれど、「万人共通の美味しいサウンド」というスウィートスポットど真ん中に位置するのがV6-Stageだから。

なお、既にV6-Stageを所有していながら他のモデルが気になって仕方ないジャンキーな貴兄へ。老婆心ながら、カスタムIEMのサウンドの素晴らしさを追求するのであれば、ドライバーの数には翻弄されない方がいい。「次購入するのは当然6ドライバー以上のモデルじゃなければテンション上がらない」という気持ちは痛いほど分かるのだけど、驚愕のサウンドや好みドンズバのサウンドは、3~4ドライバーあたりに隠れているかもしれない。現時点で私個人の超オススメは、カナルワークスCW-L32V、Livezoner41 LZ 4、そして3ドライバーのClear Tune Monitors CT-300Proあたりだけど、意外にV6-StageよりもV3やQiの方が好みだったということも大いに有り得る話だ。既に複数ものカスタムIEMを所有猛者であればなおのこと、1964 EARS V6-Stageのみならず、その下位機種にも目を向けてみて欲しい。予想を裏切る驚きと喜びは、思いもよらぬところに隠れているからね。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●1964 EARS V6-Stage
オープン価格(市場価格:税込\110600)
・ドライバー:バランスドアーマチュア(BA)
・ドライバー構成:6 ドライバー(LOW x 2, MID x 2, HIGH x 2)
・クロスオーバー:3 WAY クロスオーバー
・インピーダンス:22Ω @1kHz
・周波数特性:15Hz - 20kHz
・採用独自技術:CenterDrive Technology
・感度:115dB @1mW
・遮音性:-26dB
・付属品:48 or 64 inch detachable cable、Personalized protective case、1/4 inch adaptor、Cleaning tool、Shirt clip、保証書(1年間)
[問]ミックスウェーブ TEL:03-6804-1681
販売代理店:e☆イヤホン秋葉原店、e☆イヤホン大阪日本橋本店、フジヤエービック(ブロードウェイ3F 東京中野店)


◆1964 EARS V6-Stageオフィシャルサイト
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル
◆BARKSヘッドホン・チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)

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