【BARKS編集部レビュー】Ultimate Ears Reference Monitors、こいつは音のリトマス紙

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前回に引き続きUltimate EarsのカスタムIEMをご紹介したい。前回紹介したUE 11 Proは私のフェイバリット・モデルだったため、いつにも増しておかしなテンションになってしまったが、今回は冷静を努めて、UEの中でもフラッグシップのUE 18 PROと並び最も高い人気を誇るUltimate Ears Custom In-Ear Reference Monitors、通称UERMの紹介である。

◆UERM画像

▲Ultimate Ears Custom In-Ear Reference Monitors。2010年9月に発表されて以来、高い人気と優れた評価を獲得している人気モデルのひとつ。

▲ご覧のとおり、標準仕様だと右のフェイスプレートにキャピタル・スタジオのロゴマークが入る。

▲シェルも綺麗。低域用の大型ドライバーがひとつに、中域用、高域用のドライバーが各ひとつずつセットされている。

▲付属品はケース、取説、クリーニングツールに、標準ジャックへの変換プラグが付属してくる。スタジオでの使用を想定していることが伺えるポイントだ。

UEのカスタムIEM全7機種の紹介(◆【BARKS編集部レビュー】Ultimate Ears日本上陸、カスタムIEM全7機種を徹底分析)をした際に触れたとおり、UERMはスタジオでのモニタリング用途として、アルティメット・イヤーズとキャピトル・スタジオとのコラボレーションによって誕生したモデルだ。機材固有の特性を消し、ソースの特性をそのまま素直に再生することを最大の特徴とし、脚色を与えず音楽そのものを忠実に再生することを美点とするモデルとなる。コンセプトがシンプルではっきりしたモデルであり、リファレンスモニターという名は、まさに的確にUERMのサウンドをそのまま言い表している。

ただし、だからといってたくさんのモデルがひしめくカスタムIEM界にあって、UERMが最も標準的で中庸なサウンドに位置するのかと言われれば、そんなことは全くない。UERMよりも量感の多い低域を叩き出すモデルはたくさんあり、UERMの低域はむしろ必要にして最低限に留められているように聞こえ、相対的には低域は控えめと感じる人もいるのではないか。

逆に、UERMほど明るくストレートに高域をしっかりと鳴らすモデルも他にはそれほど多くは存在しない。UERMのサウンドは極めてフラットで、引っかかるようなピークやトーンのクセがなく、非常に透明感のあるサウンドを聞かせてくれるため、そのクリスタルクリアな透明度の高さに意識が向かうと、硬質で几帳面な高域表現が最大の特徴であり美点と感じることになる。言い方を変えれば、他の多くのカスタムIEMよりも一歩秀でた正確な描画能力は、美しい中高域の再現性に直結しており、フラットさよりも繊細さを印象づけることにもつながるだろう。

同時に、超フラットというのは罪なもので、自分のコンディションをそのまま映しだす鏡のようだったりもする。UERMを愛用していると、日によって変わってしまう自分の感覚の変化をわかりやすく浮かび上がらせてくれるのだ。すべての帯域が過不足なく心地よく響くのが平常時のドライブ感だが、日によっては無理やりシャープネスをあげたトーンに仕立て全帯域がまとわりつくようにビビッドに聞こえることもあれば、日が変わるとどの帯域も抜けてこないシャキッとしないトーンに聞こえることもある。自分の感受性がヘボいとサウンドももっさりし、何も響いてこないが、感度が上がるとバッキバキにエッジが立ち、音楽の細部までが見通せる感覚になる。

Reference Monitorsというその言葉通り、このサウンドを基準にするという本来のリファレンスの目的もさることながら、このサウンドをどのように感じているか、その時の自分を客観的に判断理解するための試験薬的な役割も果たしてくれる。UERMのサウンドをどう感じたのかを確かめるだけで、リトマス紙のように自分のコンディションを言い当ててくれるため、他のイヤホンやヘッドホンに対する感想や評価が自覚のないままぶれてしまうことを未然に防いでくれる、頼れる相棒だったりもするわけだ。

自分の体調に問題がない限り、UERMは常に新鮮でフレッシュな音がする。フラットでありながら、私の耳には高域のきめ細やかさと瑞々しさが群を抜いてすぐれているため、アンビエントやリバーブ成分から認識できる定位や距離感の把握が容易で、作品の持つ世界観を俯瞰で感じることが自然にできる。結果として優れた再生力、あるいは原音の忠実性といった高い評価につながるわけで、キャピトル・スタジオがUERMに求めた最大のポイントもそこであったのではないだろうか。

ちなみに、スペックで評価するのはナンセンスなことだけど、ふと気付き感服するのは、このサウンドがたった3つのドライバーで設計されている事実だ。3ドライバーといえば、市販されているユニバーサルモデルでも特に珍しいスペックでもなく、4ドライバーモデルが市場を賑わせている状況においてはむしろ見劣りせんばかりの状況…だけど、このサウンドを真正面から叩きつけられたら、スペックなんてサウンドの評価には何の役にも立たない事を再確認させられる。

たった3つのドライバーでこれだけのサウンドを放つ傑作UERMは、タイトでくっきりクリア、どこの帯域も一切の雑味がなくだぶつきは皆無だ。聞けば聴くほど奇跡的なバランスを感じさせてくれる、世界中の人気者であり実力者でもあるUERMに是非ご注目を。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

●Ultimate Ears Custom In-Ear Reference Monitors
UE 11 Pro
・通常価格:\139,800(税込)
・入力感度:112 dB @ 1 kHz、1mW
・周波数特性:5Hz~22kHz
・インピーダンス:35 Ohms @ 1kHz
・内部スピーカー構成:3基の専用バランスド アーマチュア、3wayクロスオーバーを搭載
・ノイズアイソレーション(遮音性):-26dB
・入力端子:3.5mmステレオミニ(金メッキ)
・保証:1年間無償保証
・付属品:クリーニングツール、ラージキャリーケース

◆UERMオフィシャルサイト
◆e☆イヤホンUERM販売ページ
◆BARKSヘッドホン・チャンネル
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)
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