【BARKS編集部レビュー】素晴らしさ染み渡るスルメ系イヤホン、RHA MA750

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「トーンバランスがよく、誰が使ってもどんな音楽でも正確に音楽を再生し、満足度高い音楽体験を正しく提供してくれる、安心と安定の鉄板機種」ということで、RHA MA750を新定番モデルとして推薦したいんですけど…さて、誰に言えばいいんでしょう。イヤホングラミー賞なるものがあるとすれば、2014年新人賞のRHA MA750ノミネートはもう決定ね。最優秀新人賞は、海外部門のDUNU DN-1000とMeze 11 Decoあたりとで競り合う感じ?堅実で実直な生真面目さが高評価の対象であれば、もうこいつでキマリでしょう。

◆RHA MA750画像

▲RHA MA750。こちらはリモコン無しバージョンだが、Apple製品互換の3ボタンリモートコントロール付きモデルMA750iもラインアップされている。

▲削りだしステンレス製のハウジングが、高品質なサウンドを生み出す大きなポイントのひとつ。質感も高く、使い勝手もいい。

▲左はRHA MA600、右がMA750。MA600はMA750の下位モデルで、ケーブルもハウジング素材も変わり、サウンドもミッドが薄くなりハイとローが前面に出るトーンバランスとなる。軽快さは増すもののMA750のような濃厚さが失われ、サウンドキャラクターは一変する。現代的なメリハリのあるサウンドなので、むしろこちらのほうが好みという人もいることだろう。私はMA750のアナログっぽい崇高なサウンドが好み。

▲付属品も豪華。十分なバリエーションのイヤーチップにしっかりしたキャリングケース、ケーブルクリップ、説明書が同梱する。

RHAは、英グラスゴーに本拠を置くヘッドホン・イヤホン専業メーカーで、2013年12月に日本上陸を果たしたブランドだ。総輸入代理店ナイコムによると“歴史あるイギリスの雰囲気を体現する重厚かつ濃厚なサウンドが特徴”とあるが、まさしくその通りで、ボトムのしっかりした安定感のあるサウンドを非常に心地よく聞かせてくれる。一発で「うわー、音いいなあ」と小躍りさせるようなキャッチーなトーンではないけれど、安心して音楽に没入できる懐の深さがあり、5分も使っていれば、完璧なバランスをもった音楽鑑賞の至福の時が流れだし、不満要素は皆無状態に至る。スルメ系というか、使うたびにその素晴らしさがしみじみと染み渡っていくタイプで、ジャンル問わず高いパフォーマンスをみせつけてくれるので、使い続けていても全くの不満を生じない。

真っ直ぐに筋の通ったサウンドで妙な癖やピーク&ディップが見当たらないのが最大の武器で、大音量で聴いてみると、レコーディングスタジオのコンソールルームで爆音再生している時のような、見事な極上サウンド空間が現れる。過剰な音量は耳を痛めるのでくれぐれも適切なボリュームで楽しんで欲しいのだけど、十分な音量を出した時のバランスの良さとすべての帯域での表現力の高さ、それによる極上の没入感こそが、RHA MA750が本領を発揮した状態だ。

RHA MA750は、理想的なリファレンスモデルとも言えそうなサウンドキャラクターで、モニタリングにも好都合だと思われる。「モニター的サウンド=没個性のつまらない音」との意見を耳にする事があるけれど、私が思うにそれは完全に認識違いで、オーディオ機器自体が個性を持ち、音空間に色付けすることの是非は、また別レイヤーの話。元来オーディオのあるべき姿は、本来のままに音楽を再現することであって、究極のオーディオ機器はその存在が無になることを意味する。本当に忠実な音楽再現ができたなら、それほど刺激的で興奮することはないわけで、もしそれでつまらければ、それはその音楽がつまらないということだ。興奮を呼び起こすのは、あくまで音楽であり、その興奮を喚起する音楽を正しく再現するのがモニターサウンドだ。

普段立派なオーディオ環境で音楽を存分に楽しんでいるという人がイヤホンを手にする場合に、RHA MA750は最善な選択肢のひとつになると思う。ジェイク・バグは「数学や国語は脳を使うが、音楽はハートとソウルから生まれる」と語っていたが、音楽は、まさにハートを震わせソウルまで届くような力みなぎるトーンで鳴らさないと、その存在意味すら失われてしまう。ここ、非常に重要なポイントね。

RHA MA750に弱点はないのか? 強いていうならば、さらなる強力な解像度をもった上位機種が想像できる点だろうか。すでに必要にして十分な解像度も表現力も持ち合わせているのだけど、史上最強レベルかといえば、現時点ではカスタムIEMをも含め上の中~下レベルというのが私の感覚だ。ただしMA750の凄さは、このサウンドが市場価格13000円程度で手に入ってしまう驚きにある。カスタムIEMの各フラッグシップのような微細な描画力をも獲得すれば、それはダイナミックドライバーが叩き出す最高峰サウンドの誕生を意味するけれど、おそらく価格は軽く数倍に跳ね上がる。…まだ見ぬ妄想の上位機種と比較するのも不毛だ。

弱点といえば、気になるのはケーブルの質感であろうか。ぶっといグレーのケーブルは、理科実験室に転がっていそうなゴムっぽいもので、おしゃれ感ゼロ。もちろん使用に問題はないし、絡まるストレスもなくタッチノイズも気にならないので、実質上の問題はない。…のだが、どうにも自転車のタイヤに差し込まれている虫ゴムを思い起こす。まぁいいけど。

使用感/フィット感は最高だ。ハウジング自体も奇をてらった形ではないので、多くの人が自然にフィットするのではないかと思われる。私の場合も、耳穴に差し込むだけでそのままあっけないほど安定し、しっかりとした遮音が手に入る。ケーブルを耳にかけるいわゆるSHURE掛けが基本だが、本家SHUREよりも装着は100倍簡単で、初めての人でも装着に戸惑うことはなさそうだ。

ケーブルの見た目は微妙だけど、その他の作りや質感は非常に高くしっかりしている。メーカー保証も3年間をうたっており、確かな品質の自信が伺えるというものだ。充実した付属品も所有感を心地よく刺激してくれるもので、「あー、いい買い物をしたなあ」としみじみ実感させてくれる。イヤホン初心者にもイヤホンジャンキーの貴兄にも自信をもってオススメできる、ダイナミックドライバー×1発の名作だ。

text by BARKS編集長 烏丸哲也

RHA MA750
14,200円+税
・ドライバー:ダイナミック型560.1
・再生周波数帯域:16-22,000Hz
・インピーダンス:16ohms
・感度:100dB
・最大出力:1/5mW
・重量:35g
・ケーブル:1.35m 強化スチール OFC線
・入力プラグ:3.5mm 金メッキミニプラグ
・同梱物:デュアル・デンシティシリコンイヤーピース×6ペア(S,M,L各2ペア)/ダブルフランジシリコンイヤーピース×6ペア(S,M,L各2ペア)/形状記憶イヤーピース×2ペア/ステンレス製イヤーピースホルダー/プレミアムキャリーケース/クリップ


◆RHAオフィシャルサイト
◆BARKS カスタムIEM専門チャンネル
◆BARKSヘッドホン・チャンネル

BARKS編集長 烏丸レビュー(■イヤホン ●ヘッドホン ◆カスタムIEM ◇他)
■Meze 11 Deco(2014-03-02)
◇Astell&Kern AK240(2014-02-22)
◆1964 EARS V6-Stage(2014-02-17)
◆カナルワークスCW-L32V(2014-02-09)

◇EarPeace HD(2014-02-02)
◆Noble Audio Kaiser 10(2014-01-19)
◆Clear Tune Monitors CT-300Pro(2014-01-04)
◇KLIPSCH KMC1(2014-01-01)
■DUNU DN-1000(2013-12-30)

◆Ultimate Ears Reference Monitors(2013-12-16)
◆Ultimate Ears 11 Pro(2013-12-08)
◆earmo Tune5(2013-12-03)
●オーディオテクニカATH-OX7AMP(2013-11-23)
■音茶楽Donguri-欅(KEYAKI)(2013-11-17)

■オーディオテクニカ ATH-IM01~04(2013-10-27)
◇Astell&Kern AK10(2013-10-25)
●フィリップス Fidelio M1(2013-10-22)
◆earmo Tune4(2013-10-12)
◆Ultimate Ears Personal Reference Monitors(2013-10-05)

◆Sensaphonics 2XS(2013-09-30)
■Earsonics SM64(2013-09-23)
◆LIVEZONER41 LZ12(2013-09-15)
◆Ultimate Ears カスタムIEM全7機種(2013-09-08)
◆null audio Elpis(2013-09-03)

■FitEar Parterre(2013-08-25)
◆カナルワークスCW-L12(2013-08-17)
◆Livezoner41 LZ 4(2013-08-06)
■SHURE SE846(2013-08-02)
■オーリソニックスASG-2 with BassPort(2013-07-28)

■Hippo ProOne(2013-07-21)
◆カナルワークス CW-L51a(2013-07-13)
■EXS X10(2013-06-24)
■音茶楽Flat4シリーズ粋、楓、玄(2013-06-17)
◆LEAR LCM-1F(2013-06-10)

◇Ultimate Ears UEブーム(2013-05-28)
◇Stage93 93PC(2013-05-20)
●Meze Headphones(2013-05-08)
●Fischer Audio Jubilate(2013-04-29)
◇ORB JADE casa(2013-04-21)

◆lime ears LE3(2013-04-14)
◇雑誌「DigiFi 第10号」付録(2013-04-06)
●Ultimate Ears UE 9000、UE 6000、UE 4000(2013-04-01)
■開放型インナーイヤーイヤホンおススメ5モデル(2013-03-19)
◆LEAR LCM-5(2013-03-16)

●フィリップスFidelio L1(2013-02-25)
○スマホが与えた音楽リスニングのモラル変革(2013-02-17)
■Klipsch Image X7i(2013-02-04)
◆LEAR(2013-01-27)
◆カナルワークスCW-L05QD(2013-01-13)

◆earmo(2013-01-02)
◆Westone AC2(2012-12-25)
◇Stage93 93SPEC(2012-12-16)
●California Headphone Silverado、Laredo(2012-12-09)
■音茶楽Flat4-楓(2012-12-03)

◆Stage93 Stage 6(2012-11-26)
●GRADO SR60i(2012-11-19)
◇Astell&Kern AK100-32GB-BLK(2012-11-15)
●オーディオテクニカ ATH-WS99(2012-11-10)
■アトミック フロイドPowerJax+Remote(2012-10-29)

◇VORZUGE VorzAMPduo(2012-10-26)
●ファイナルオーディオデザイン heaven VI(2012-10-16)
●beyerdynamic T 90(2012-10-08)
●GRADO GS1000i(2012-09-30)
●SENNHEISER HD 700(2012-09-16)

◆ACS T1 Live!(2012-09-11)
●オーディオテクニカ ATH-AD2000 ATH-AD1000(2012-09-03)
●GRADO RS1i、SR325is、PS500(2012-08-20)
◆FitEar MH335DW(2012-08-15)
●DIESEL VEKTR(2012-08-07)

◆カナルワークスCW-L51 PSTS(2012-07-30)
●Fischer Audio FA-002W(2012-07-25)
●Pioneer SE-MJ591(2012-07-16)
■GRADO iGi(2012-07-12)
●HiFiMAN HM-400(2012-06-26)

●Klipsch Reference One(2012-06-17)
●GRADO PS1000(2012-06-09)
●ULTRASONE edition 8(2012-06-02)
●PHONON SMB-02(2012-05-28)
■音茶楽Flat4-粋(SUI)(2012-05-20)

●<春のヘッドフォン祭2012>、Fischer Audio FA-004(2012-05-13)
◇Hippo Cricri、Go Vibe Martini+、VestAmp+(2012-05-04)
■ファイナルオーディオデザインheaven IV(2012-04-28)
■フィッシャー・オーディオ Jazz (2012-04-22)
●SHURE SRH1840 & SRH1440(2012-04-16)

■FitEar TO GO! 334(2012-04-08)
◆Unique Melody Mage(2012-03-26)
●Takstar PRO 80、HI 2050、TS-671(2012-03-20)
●klipsch Mode M40(2012-03-15)
■Fischer Audio DBA-02 Mk2(2012-03-07)

◆AURISONICS AS-1b(2012-02-27)
■UBIQUO UBQ-ES503、UBQ-ES505、UBQ-ES703(2012-02-21)
◆Heir Audio Heir 3.A(2012-02-15)
■moshi audio Clarus(2012-02-12)
◆Thousand Sound TS842(2012-02-08)

◆Heir Audio Heir 8.A(2012-02-01)
■CRESYN(2012-01-17)
◆Unique Melody Merlin(2012-01-08)
◆カナルワークスCW-L01P(2012-01-03)
■ファイナルオーディオデザイン Adagio(2011-12-31)

◆LEAR LCM-2B(2011-12-26)
●SOUL by Ludacris SL100、150、300(2011-12-23)
●AKG K550(2011-12-20)
■SENNHEISER IE80 & IE60(2011-12-16)
■DUNU(2011-12-14)

◆カナルワークスCW-L10(2011-12-12)
■オーディオテクニカ ATH-CK90PROMK2(2011-12-09)
◆Ultimate Ears UE 5 Pro(2011-12-06)
■REALM IEM856(2011-12-02)
■ファイナルオーディオデザインAdagio III(2011-11-26)

◇Ultimate Ears用交換ケーブルFiiO RC-UE1&オヤイデ電気HPC-UE(2011-11-25)
●Reloop RHP-20(2011-11-22)
■オーディオテクニカ ATH-CK100PRO(2011-11-14)
■SOUL by Ludacris SL99(2011-11-04)
■Fischer Audio Ceramique(2011-10-25)

■SHURE SE535 Special Edition(2011-10-21)
■JVCケンウッドHA-FX40(2011-10-16)
■BauXar EarPhone M(2011-10-10)
■SONOCORE COA-803(2011-10-02)
◆TripleFi 10 ROOTHリモールド(2011-09-25)

■AKG K3003(2011-09-18)
■Atomic Floyd SuperDarts+Remote(2011-09-11)
■Bowers & Wilkins C5(2011-09-06)
■Westone3(2011-09-02)
◆カナルワークスCW-L31(2011-08-26)

◇ORB JADE to go(2011-08-22)
■YAMAHA EPH-100(2011-08-14)
■NW-STUDIO(2011-08-09)
■NW-STUDIO PRO(2011-08-02)
◆FitEar MH334(2011-07-29)

◆ROOTH SE530×8(2011-07-26)
■Westone ES5(2011-07-21)
●SHURE SRH940(2011-07-17)
◆Ultimate Ears 18 Pro(2011-07-15)
■クリエイティブAurvana In-Ear3(2011-07-06)

◆カナルワークス CW-L01(2011-07-01)
■GRADO GR10&GR8(2011-06-25)
◇SAEC(サエク)SHURE SE用ケーブル(2011-06-21)
■フィアトンPS 20&PS 210(2011-06-17)
■ZERO AUDIO ZH-BX500&ZH-BX300(2011-06-11)

■フィリップスSHE8000&SHE9000(2011-06-03)
■アトミック フロイド(2011-05-26)
■モンスター・マイルス・デイビス・トリビュート(2011-05-20)
■SHURE SE215(2011-05-13)
■ファイナルオーディオデザインPiano Forte IX(2011-05-06)

■ラディウス・ドブルベ/ドブルベ・ヌメロドゥ(2011-05-01)
■ローランドRH-PM5(2011-04-23)
■フィリップスSHE9900(2011-04-15)
■JAYS q-JAYS(2011-04-08)
◇フォステクスHP-P1(2011-03-29)

■Klipsch Image X10/X5(2011-03-23)
■ファイナルオーディオデザインheaven(2011-03-11)
■Ultimate Ears TripleFi 10(2011-03-04)
■Westone4(2011-02-24)
■Etymotic Research ER-4S(2011-02-17)

■KOTORI 101(2011-02-04)
■ゼンハイザーIE8(2011-01-31)
■ソニーMDR-EX1000(2011-01-17)
■SHURE SE535(2011-01-13)
■ビクターHA-FXC51(2011-01-12)

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