トラディショナルとモダンの完璧なパズル

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トラディショナルとモダンの完璧なパズル

 


 



 

 

“伝統的な現代のポップミュージック”。Tahiti 80のフロントマンであるXavier Boyerは自身のバンドの音楽をそう表現した。このフランスのグループにはおそらく予想外の分類かもしれないが、Boyerの説明によると彼とフランス人の仲間たち(ギタリストのMederic Gontier、ベーシストのPedro Resende、ドラマーのSylvain Marchand)は、Beatles、Zombies、Kinksなどの極めてクールな'60年代のポップスバンドを聴いて育ったという。したがって、ポップスに最も自然にフィットする言語を英語だと考えるBoyerが、すべての曲を英語で歌っているのもまったく不思議なことではない。Tahiti 80(この名前はBoyerの父親が'80年代初めごろに持っていた土産物のTシャツからとったという)は'96年にセルフプロデュースによるEPを制作、すぐさまフランス国内で相当な反響を得た。そして現在、Boyerと仲間たちはデビューLPとなる『Puzzle』のリリースによって、自分たちの英語のスキルをアメリカでテストしようとしているのである。


――Tahiti 80の音楽を最もよく表している言葉はなんでしょうか?

Xavier:僕たちはある意味で伝統的な方法で曲を作っているけど、レコード制作の目標は先端のサウンドを追求することなんだ。だから、僕らはある種のトラディショナルでモダンなポップミュージックを作っていると言えるね。それが僕たちの目標なのさ。


――あなたたちはフランスのポップシーンではどんな位置にいるのですか?

Xavier:すべてはDaft Punkのようなエレクトロニックなパンクバンドからスタートしたと思う。それからエレクトロニクスとオーガニックな(生の)音をミックスしたAirのようなバンドが出てきた。そして現在は僕らみたいなバンドがいるというわけさ。現在、フランスには非常に優れたポップシーンが存在する。Phoenixのようなとってもいいバンドもいるしね。つまり今はオーガニックな進化が起こっていると思うんだ。僕らがフランスの一般的なバンドだというつもりはないよ。多くのバンドはフランス語で歌っているけど、僕らは英語で歌っているからね。


――どうしてフランス語で歌わないのですか?

Xavier:僕たちが英語で歌うのは、ポップミュージックを作ろうとするときに英語は最も適した言語だから。ボサノヴァにも同じことが言えるよ。ブラジル語のほうが響きがいいでしょ? フランスの音楽にはフランス語のほうがいい。


――英語で歌うのは難しくないですか? 苦しい作業なのでは?

Xavier:英語は僕の第2言語だけど、いい先生がいるからね。Paul McCartneyJohn Lennonさ。2人は最高の教師だね。でも英語は僕にとって本当に詩的な言語だというのは本当のことだ。だって音楽につながっているわけだからね。


――バンドとしてはどのように団結しているのですか?

Xavier:僕たちを結び付けているのは、まさしくポップミュージックに対する愛情さ。僕らは故郷の大学に通っていて、みんな同じタイプの音楽を聴いていたんだ。僕らのお気に入りはU.K.からやってくるインディーポップ・シーンで、それと'60年代音楽の大ファンだったよ。バンドのメンバーはそれぞれ個性的な連中だ。ギタリストのMedericはJohnny Moore的なスタイルを持っているし、Sylvianはジャズのドラミングができる。Pedroは優れたベース奏者であると同時にプログラミングにも凝っている。だからいいコンビネーションだし、ある種の化学反応が働くんだ。


――批評家の受けはどうですか?

Xavier:今回のアルバムは本国で好意的なレヴューを受けているよ。'60年代の音楽から多くを引用したし、“Mr. Davis”についての歌も入っているからKinksのことを引き合いに出す人も多いね。それにとってもおかしなアイルランドのシンガー、Joe Dillonについての曲もあるんだ。だからそれにばかりとらわれている人もいるけど、Tahiti 80には他にも語るべきことがあると思うな。


――あなたたちは日本で非常にビッグだと聞いていますが、どうなんですか?

Xavier:日本ではゴールドレコードを記録したんだ、信じられないよね。8月の初めに大きなフェスティヴァルで演奏したんだけど、とても大勢の観客の前で演奏できたのもよかったし、聴衆が日本でのシングル「Heartbeat」に合わせて歌詞を歌ってくれたのには興奮したよ。それにラジオのチャートでもNo.1だったんだ。僕たちがBritney SpearsBon Joviよりも上位にいるなんておかしいだろ! 僕たちは実験的な音楽へのアプローチを行なっているから、彼らに気に入られたんだと思うな。日本人は音楽への好奇心が非常に旺盛で、日本ならどんなレコードでも見つかるくらいなんだ。それから日本のリスナーは僕らのことを、たくさんのカリフォルニアのバンドみたいなソフトロックのシーンになぞらえている。素晴らしいことだよ。彼らは本当にいい耳をしているし、音楽的な用語についてもとても勉強している。


――創造すべき新たなポップソングは残されていると思いますか? 新しいポップミュージックを作る余地はまだあるのでしょうか?

Xavier:BeatlesやZombiesを追いかけることはとても難しいと思うけど、それでも何かやるべきことは残されていると思うよ。特に新しいテクノロジー、例えばプログラミングとか、Pro Toolsなんかの新しい録音方法とかを使いこなせるのなら、何か新しいものを引き出すことができるだろう。僕らは新しい種類の音楽を作っているわけじゃなくて、40年もの歴史を持つ音楽に自分たちのバージョンを付け加えているだけなのさ。


――Ray Davisは“Mr. Davis”についての歌を聴いたでしょうか?

Xavier:まさか。でも面白いことにロサンゼルスでラジオに出演したとき、司会者が「RayはL.A.に住んでいるから、この曲を聴いてるかもしれませんよ」なんて言うんだ。彼がこの曲をどう思うかなんてわからないよ。僕らにとってはエクササイズのような曲なんだ。RayはLolaとかVictoriaとかいろんなキャラクターについての歌を作っているから、彼について歌った曲を作れば面白いんじゃないかって考えたのさ。だって、彼は'60年代で最高のソングライターのひとりだと思っているからね。


――あなたの意見では、最高のポップミュージシャンは誰ですか?

Xavier:毎週のように変わっているよ。リストのトップに一番近いのはBrian Wilsonだね。Paul McCartneyにBrian Wilson、それからRay DavisとSly Stoneといったところかな。Sly Stoneは本当に素晴らしいよ。


――好きではない音楽のトレンドはありますか?

Xavier:ヘヴィメタルだけは絶対に嫌だね。ヘヴィメタルは大きなトレンドだけど、僕らには何も共通項が見いだせない音楽なんだ。まあ、むりやり聴かされないかぎりはOKなんだけどね。


――どうやって同じような音楽の趣味を持つ3人のバンド仲間をみつけたのですか?

Xavier:僕たちがバンドを始めたころは、とっても若かった。全員にとって初めてのバンドだったと思うよ。だから僕らは一緒に育ってきた。前にも言ったように僕らは英国インディーズ系ポップスのファンだったし、バンドの全員がジャズについての知識も豊富だった。


――フランスにはアメリカ人が聞いたこともないような、歌を歌わない素晴らしいバンドが大勢いるんでしょうね?

Xavier:さっきも言ったように現在のフランスの音楽シーンは非常に興味深いものだよ。だから、もちろんエレクトロニックな音楽はいっぱいあるし、ポップスのバンドもたくさんいるんだ。'80年代のサウンドにはまっているPhoenixみたいにね。


――あなたがたが知っている、あるいは評価しているバンドはいますか? それともあなたがたと一緒に他のバンドの一群をまとめて挙げることに意味はありますか?

Xavier:米国や英国以外の国からも優れた音楽がたくさん登場していると思うよ。スウェーデンからはCardigansとか、Kentとか信じられないようなバンドが出ている。彼らは本当に素晴らしい。ベルギーのシーンにもSoulwaxなどがいてとても盛んだね。日本からもCorneliusみたいないいバンドが出ているし、アメリカならIvyが気に入っている。Eric Matthewsは非常に優れたソングライターだね。もちろん英国にも少しはいいバンドがいるけど、良いポップバンドというのはもうそれほど多くはないよ。つまり多少は優れたポップバンドはいるけど、僕たちがブリットポップのシーンを気に入っていないことは確かだね。名前は挙げないけどさ。


――あらゆる時代で最も重要なアルバムを1枚だけ挙げるとしたら?

Xavier:Marvin Gayeの『What's Going On』だろうね。素晴らしい作品だと思う。プレイしてみると短いアルバムなんだけど、聴き始めると途中で止めることができないのさ。


――時間を遡ってどんなバンドにでも入れるとしたら、どのバンドを選びますか?

Xavier:Beatlesの一員になりたいな。彼らの成し遂げた偉業は信じられないくらいだ。素晴らしいポップソングを作ったし、スタジオでの実験もやっていた。アルバムごとに何か新しいものがあったよ。だから、なれるとしたらたぶんPaul McCartneyかJohn Lennon……、わからないな。


――Tahiti 80の名前はどこから?

Xavier:この名前は親父のTシャツからとったんだ。家族の友人が'80年にタヒチのお土産のTシャツを買ってきてくれたんだ。そこには“Tahiti 80”とだけ書かれてあった。バンドを始めたころにそのTシャツを着るようになっていたので、グループ名にいいんじゃないかと思ったんだよ。Tシャツからとったなんておかしいだろ。それにどんな言語でも通じる言葉だからね。フランス語でも言えるし、日本でも一般的な地名だし。アルバムのタイトル『Puzzle』にしても同じことさ。


――今後のプランについて教えてください。

Xavier:このアルバムは'98年の11月に録音されて、その1年後にフランスでリリースされた。だから僕らにとってはまるで“ベスト・オブ”的な作品なんだ。つまり約5年間一緒にやってきて、さまざまな時期の最高の曲を集めたようなアルバムに仕上がったからさ。僕らは新しい曲に取りかかっているけど、名作になるようなポップソングを書きたいと思っているし、サウンド的にもエレクトロニクスを使ってダイナミックなものにしたいね。いずれにせよ『Puzzle』とは違ったサウンドになるだろうな。


――あなたたちの野望はなんですか? 30年後に振り返ってどんな自分でありたいと思いますか?

Xavier:僕らのアルバムのひとつを名作だと評価してもらえたら、例えば20世紀のベストアルバムとかのひとつとしてリストに挙げられたなら、何事かを成し遂げたと言えるだろうね。でも、本当に重要なのはアルバムごとに何か違ったことに挑戦することなのさ。さっき'60年代の優れたソングライターたちの話をしたけれど、彼らはその当時に信じられないような偉業を成し遂げているんだ。だから、35年後の僕たちがあれほど素晴らしい曲を作れているかと考えるとちょっとぞっとするね。僕にはわからないけどさ。

 

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