[クロスビート編集部員リレー・コラム] 編集長大谷編「エコー&ザ・バニーメン」

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9月に行なわれたワンダー・スタッフの17年振りの来日ライヴは、『ザ・エイト・レッグド・グルーヴ・マシーン~20周年記念エディション』を引っ提げていただけに、デビュー・アルバム中心のライヴだった。2006年のサマーソニックではメタリカが『メタル・マスター』中心のセットでプレイし、エアロスミスはアメリカで『闇夜のヘヴィ・ロック』ツアーをやっていた。普通ツアーというものは新作中心となるので過去の名盤の代表曲以外は埋もれがちになるが、最近キャリアのあるバンドはこういった企画ツアーが目立つようになってきた。

そこでこのエコー&ザ・バニーメンである。彼らの最新ライヴ作品『Ocean Rain Live 2008』は、何と『オーシャン・レイン』ツアーを収録。2008年に行なわれたこのステージではストリングスをたっぷり使ってオリジナル・アルバムの奥行きを引き出し、ヒット曲“キリング・ムーン”では合唱に包まれるほどの盛り上がりだ。

しかしこの作品、先着1,000人が直筆サイン付というサービスが痛い。これじゃ、まるでベテランの演歌歌手のドサまわりみたいなノリである。これが往年のアイドルならわかるが、あのエコー&ザ・バニーメンなのだ。今のファンは知らないだろうが、かつてはU2と肩を並べていたニュー・ウェイヴの急先鋒である。1984年の初来日では会場が座席付の渋谷公会堂なのに、最後は観客がステージ前に殺到してグチャグチャになるほどの熱狂振りだったほど。商業主義にツバを吐いたパンク・カルチャーで育ったバンドだけに、この現実が少し悲しい。

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